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第四十話
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徴兵年齢が下げられた事で、街は騒然としています。
それはそうよね、十五歳から十二歳に下がるなんて想像もしなかった。
実はお屋敷にも十二から十四歳の使用人がいますが、何とか守らないと!
「エクストレイル様! お話がありま……あら?」
私は何とかしようとエクストレイル様の執務室に乗り込みましたが、すでに何人もの使用人が詰めかけていました。
「シルビア、君もか。まあいい、一度この件についてはしっかり話をしよう」
エクストレイル様は今日中に各所に連絡を入れ、翌日の昼に説明をするそうです。
この連絡はあっという間に街に広まり、翌日の朝から大量の人が集会場に集まったため、急遽公園の広場に場所が変更されました。
エクストレイル様が急造の壇上に上がると、それまで騒がしかった人たちが静かになります。
「これだけの人が集まるのは初めてかもしれないな。まず今回の徴兵年齢が下がった事についてだ」
どうやら徴兵年齢は下がっても強制的に連れていかれる訳ではないようです。
私ったら早とちりしていたわ、てっきり十二歳から四十歳までを連れていくと思いこんじゃった。
そして戦況はかなり良いようで、数か所を同時に攻められているけど全て対応できていると。
「なので強制的に連れていく事は無いが、志願は十二歳から可能になった、というだけだ。しかも戦場に出るのは十五歳以上のままだから、それまでは輸送や後方での手伝いがほとんどだ」
そういう事でしたか。
それなら少しは安心出来ましたが、どうやらウワサが独り歩きしてしまったようですね。
しかし十二歳から志願する人なんて……ああそういう事ですか。
この街にも志願する人が出て来るでしょうね。
広場での説明が終わり、ほとんどの人が納得して帰っていきます。
子供が軍に入るなんてけしからん! という人も一定数いましたが、何にでも反対する人はいるんでしょうね。
そしてその晩、やはり十人以上の十二歳から十四歳が家族に連れられてお屋敷に来ました。
エクストレイル伯爵領では小さいですが、貧民街と呼ばれる地域があります。
両親がいる家庭もあれば片親の家庭もありますが、連れて来た理由はただ一つ『食い扶持を減らすため』です。
しかも軍に入れば衣食住は保障されるうえ、十二歳でも少ないながら給料が支払われます。
そのお金を家族に送れば随分と楽になるでしょうね。
しかも軍に入れば人頭税を払う必要が無くなりますから、二重に楽になります。
でもそうなると軍にとって子供が増えるだけじゃないかしら。
こんな状況で貧民への手助けをする理由はなに?
単純に猫の手も借りたいくらいに人が足りない?
……はっ、また一人で考え込んでしまったわ。
ひとまずは戦場といっても後方支援なので、直接的な危険は無いという事で納得しておきましょう。
今はお屋敷の仕事を優先しなくては。
時間が過ぎて、私がエクストレイル伯爵家へ来てそろそろ一年が過ぎようとしています。
私はしっかりメイドとしての実績を積んでいるのかどうか、そんな事を考えていたある日、待ちに待った連絡が入りました。
『戦争が終わった』
定期的にエルグランド王国が優勢だと聞いてはいましたが、実際にどうなのかはわかりませんでした。
しかし今日になりクラウン帝国は全面撤退し、クラウン帝国に戦争責任を追及する旨が発表されました。
それはもうお屋敷内どころか街中が歓喜でひっくり返りそうです。
「終わったのね。良かった、これで物流も人頭税も元に戻るのね」
「やったぜシルビア! これで元の生活に戻れるな!」
オッティが飛び跳ねて喜んでいます。
実は庭師としても戦争は嫌で、大きな剪定ばさみを取り上げられていたのです。
やはり物資が不足気味だったのでしょうね。
あら? そういえば沢山の鉄を使ったもの以外、特に没収にはならなかったわね。
そして喜びに浸って数日、また商工会から連絡が入りました。
ふぅ、今度はいつ行けばいいのかしら、え? こっちに来る?
なので都合の良い日を連絡しました。
当日になり何故かエクストレイル様も一緒に行動しているんだけど……なんで?
「今日は時間を取らせてしまい申し訳ありません」
「申し訳ありません」
お屋敷に来たアトレーさんとエッサさんの二人は頭を下げます。
あら? もう二人はいないのかしら。
そして予定していた部屋ではなく、エクストレイル様はリビングに通す様におっしゃいました。
「今回はウェイクが来ていないが、あいつは今頃王都で牢屋に入っているはずだ」
「何かあったんですか?」
「ウェイクは……あいつは帝国の回し者だったんだ」
エクストレイル様は何も言わずに腕を組んでいますが、すでにご存じだったんでしょうか。
それにしても回し者……スパイという事よね。
「エルグランド王国の情報を流していた、という事ですか?」
「いや、諜報活動よりも国力を削ぐように動いていた様だ。例えばどこかの都市の働き盛りの男を減らし、税収を減らすといった具合にね」
そんな事をしていたなんて、そんな事をされたら将来的に国力が激減してしまうわね。
長期の計画としては効果的かもしれないわ。
……!?!?
「え! それって今のエクストレイル伯爵領の状態じゃありませんか!」
それはそうよね、十五歳から十二歳に下がるなんて想像もしなかった。
実はお屋敷にも十二から十四歳の使用人がいますが、何とか守らないと!
「エクストレイル様! お話がありま……あら?」
私は何とかしようとエクストレイル様の執務室に乗り込みましたが、すでに何人もの使用人が詰めかけていました。
「シルビア、君もか。まあいい、一度この件についてはしっかり話をしよう」
エクストレイル様は今日中に各所に連絡を入れ、翌日の昼に説明をするそうです。
この連絡はあっという間に街に広まり、翌日の朝から大量の人が集会場に集まったため、急遽公園の広場に場所が変更されました。
エクストレイル様が急造の壇上に上がると、それまで騒がしかった人たちが静かになります。
「これだけの人が集まるのは初めてかもしれないな。まず今回の徴兵年齢が下がった事についてだ」
どうやら徴兵年齢は下がっても強制的に連れていかれる訳ではないようです。
私ったら早とちりしていたわ、てっきり十二歳から四十歳までを連れていくと思いこんじゃった。
そして戦況はかなり良いようで、数か所を同時に攻められているけど全て対応できていると。
「なので強制的に連れていく事は無いが、志願は十二歳から可能になった、というだけだ。しかも戦場に出るのは十五歳以上のままだから、それまでは輸送や後方での手伝いがほとんどだ」
そういう事でしたか。
それなら少しは安心出来ましたが、どうやらウワサが独り歩きしてしまったようですね。
しかし十二歳から志願する人なんて……ああそういう事ですか。
この街にも志願する人が出て来るでしょうね。
広場での説明が終わり、ほとんどの人が納得して帰っていきます。
子供が軍に入るなんてけしからん! という人も一定数いましたが、何にでも反対する人はいるんでしょうね。
そしてその晩、やはり十人以上の十二歳から十四歳が家族に連れられてお屋敷に来ました。
エクストレイル伯爵領では小さいですが、貧民街と呼ばれる地域があります。
両親がいる家庭もあれば片親の家庭もありますが、連れて来た理由はただ一つ『食い扶持を減らすため』です。
しかも軍に入れば衣食住は保障されるうえ、十二歳でも少ないながら給料が支払われます。
そのお金を家族に送れば随分と楽になるでしょうね。
しかも軍に入れば人頭税を払う必要が無くなりますから、二重に楽になります。
でもそうなると軍にとって子供が増えるだけじゃないかしら。
こんな状況で貧民への手助けをする理由はなに?
単純に猫の手も借りたいくらいに人が足りない?
……はっ、また一人で考え込んでしまったわ。
ひとまずは戦場といっても後方支援なので、直接的な危険は無いという事で納得しておきましょう。
今はお屋敷の仕事を優先しなくては。
時間が過ぎて、私がエクストレイル伯爵家へ来てそろそろ一年が過ぎようとしています。
私はしっかりメイドとしての実績を積んでいるのかどうか、そんな事を考えていたある日、待ちに待った連絡が入りました。
『戦争が終わった』
定期的にエルグランド王国が優勢だと聞いてはいましたが、実際にどうなのかはわかりませんでした。
しかし今日になりクラウン帝国は全面撤退し、クラウン帝国に戦争責任を追及する旨が発表されました。
それはもうお屋敷内どころか街中が歓喜でひっくり返りそうです。
「終わったのね。良かった、これで物流も人頭税も元に戻るのね」
「やったぜシルビア! これで元の生活に戻れるな!」
オッティが飛び跳ねて喜んでいます。
実は庭師としても戦争は嫌で、大きな剪定ばさみを取り上げられていたのです。
やはり物資が不足気味だったのでしょうね。
あら? そういえば沢山の鉄を使ったもの以外、特に没収にはならなかったわね。
そして喜びに浸って数日、また商工会から連絡が入りました。
ふぅ、今度はいつ行けばいいのかしら、え? こっちに来る?
なので都合の良い日を連絡しました。
当日になり何故かエクストレイル様も一緒に行動しているんだけど……なんで?
「今日は時間を取らせてしまい申し訳ありません」
「申し訳ありません」
お屋敷に来たアトレーさんとエッサさんの二人は頭を下げます。
あら? もう二人はいないのかしら。
そして予定していた部屋ではなく、エクストレイル様はリビングに通す様におっしゃいました。
「今回はウェイクが来ていないが、あいつは今頃王都で牢屋に入っているはずだ」
「何かあったんですか?」
「ウェイクは……あいつは帝国の回し者だったんだ」
エクストレイル様は何も言わずに腕を組んでいますが、すでにご存じだったんでしょうか。
それにしても回し者……スパイという事よね。
「エルグランド王国の情報を流していた、という事ですか?」
「いや、諜報活動よりも国力を削ぐように動いていた様だ。例えばどこかの都市の働き盛りの男を減らし、税収を減らすといった具合にね」
そんな事をしていたなんて、そんな事をされたら将来的に国力が激減してしまうわね。
長期の計画としては効果的かもしれないわ。
……!?!?
「え! それって今のエクストレイル伯爵領の状態じゃありませんか!」
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