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第六十四話
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ローレル様と一緒にソルテラ宮殿に戻ってきました。
エクシーガ大司教は居ませんでしたが、修道女からサブ厨房を使って良いと連絡を受けます。
「では早速お借りしましょう」
サブ厨房と言っても並の飲食店より大きく、十人ほどで作業できる大きさです。
道具や調味料も一通りそろっているので、食材があれば大丈夫でしょう。
「シルビアしゃん、サポートしますので指示してくだしゃい」
私はローレル様に指示すると、料理自体は出来ないそうですが手順などを伝えればテキパキと動いてくれます。
王族なのに料理の経験があるように見えるけど……?
料理が完成しましたが、悪くはない、という程度でした。
これではいけませんね。
結局完成したのは十六回目の事でした。
「これは良い感じではないでしょうか」
「そうでしゅね。ただ……もうお腹がいっぱいだし、感覚がマヒしているのかもしれましぇんね」
「それはあり得ます。では修道女に味見をお願いしましょう」
サブ厨房の外で待機している修道女に入ってもらい試食をお願いした所、中々好評でした。
では早速明日にでもエクシーガ大司教にお知らせしましょう。
「ほう? これが完成した料理か?」
「ええ、市場には観光客用のお店があったのですが、どうにもお客さんの反応が良くなかったので、プレアデス料理をこちらでアレンジしてみました」
エクシール大司教の前には試食いただく料理は『ハムリ』という肉や麦を煮込んだシチューです。
中に入れる物は特に決まっていないようなので、こちらで数種類を選びました。
「ん? 見た目は普通のハムリだが、何か違いがあるのか?」
「調味料を変更し、風味を残したまま辛さを抑えました」
エクシール大司教は椅子に座り、ハムリをスプーンですくい口に入れます。
ゆっくりと噛みしめて飲み込むと、もう一度スプーンですくいました。
そして気が付くと皿は空に。
「不思議な味だ。知っているハムリなのにまろやかで、しかも辛みも残っている」
「プレアデス教国の味付けは辛い物が多いでしゅが、それが苦手という人も多いでしゅ。でしゅが辛みはこの国の食べ物の特徴なので、少しだけ辛みを残してみましゅた」
「ああ、この辛みは私には物足りないが、他国の人間ならば丁度いいかもしれないな」
よかった、エクシーガ大司教にハムリじゃないと言われたら、また一からやり直さないといけませんでした。
方向性としては間違っていなかったって事ね。
「確かにこのハムリは美味い。しかし……」
「はい。私達がやる事ではありません」
私とローレル様が来たのはエルグランド王国の文化を伝える事。
プレアデス教国の料理をアレンジする事じゃない。
「しかしエクシーガ大司教しゃま、コレが成功しないとエルグランドの料理を紹介出来ないのでしゅよ」
「ん? なぜだ。エルグランド王国の料理を振る舞えばよいだけではないのか?」
「それはもうしばらく時間をください。私達がプレアデス教国の人達にも満足していただける、美味しいエルグランド料理を作って見せます」
それからひと月ほどが過ぎました。
料理は難航し、エルグランド料理を再現するだけでも一苦労しています。
似たような食材・調味料がある物は良いのですが、メインとなる食材が無い物もあります。
その料理を省こうかと思いもしましたが、エルグランドを代表する料理なので何とかしないといけません。
「上手くいきませんね」
「次の方法を考えないとダメでしゅね」
ソルテラ宮殿のサブ厨房で試行錯誤していますが、今日も失敗しました。
さて次はどうしましょうか。
そんな事をローレル様と考えていると、廊下から大きな声が聞こえてきました。
「一体どういう事ですか! 私が指示した内容とは全然違っています!」
女性の声がサブ厨房内まで響いてきましたが、一体何があったのでしょうか。
他にも何人かの声が聞こえてきますが、言い争いというよりも女性が一方的に大声を出している感じです。
気になったのでちょっと扉を開けて廊下を見ます。
「ですから何度も説明している通り……」
「そんな事は聞いていません! なぜ私の言う通りにしないのですか!」
「この国では無理なんです」
女性は二十歳前後でしょうか、銀髪を後ろでまとめ上げ、白い料理人のような衣装を着ています。
その人が片手に皿を持って怒鳴っていました。
エクシーガ大司教は居ませんでしたが、修道女からサブ厨房を使って良いと連絡を受けます。
「では早速お借りしましょう」
サブ厨房と言っても並の飲食店より大きく、十人ほどで作業できる大きさです。
道具や調味料も一通りそろっているので、食材があれば大丈夫でしょう。
「シルビアしゃん、サポートしますので指示してくだしゃい」
私はローレル様に指示すると、料理自体は出来ないそうですが手順などを伝えればテキパキと動いてくれます。
王族なのに料理の経験があるように見えるけど……?
料理が完成しましたが、悪くはない、という程度でした。
これではいけませんね。
結局完成したのは十六回目の事でした。
「これは良い感じではないでしょうか」
「そうでしゅね。ただ……もうお腹がいっぱいだし、感覚がマヒしているのかもしれましぇんね」
「それはあり得ます。では修道女に味見をお願いしましょう」
サブ厨房の外で待機している修道女に入ってもらい試食をお願いした所、中々好評でした。
では早速明日にでもエクシーガ大司教にお知らせしましょう。
「ほう? これが完成した料理か?」
「ええ、市場には観光客用のお店があったのですが、どうにもお客さんの反応が良くなかったので、プレアデス料理をこちらでアレンジしてみました」
エクシール大司教の前には試食いただく料理は『ハムリ』という肉や麦を煮込んだシチューです。
中に入れる物は特に決まっていないようなので、こちらで数種類を選びました。
「ん? 見た目は普通のハムリだが、何か違いがあるのか?」
「調味料を変更し、風味を残したまま辛さを抑えました」
エクシール大司教は椅子に座り、ハムリをスプーンですくい口に入れます。
ゆっくりと噛みしめて飲み込むと、もう一度スプーンですくいました。
そして気が付くと皿は空に。
「不思議な味だ。知っているハムリなのにまろやかで、しかも辛みも残っている」
「プレアデス教国の味付けは辛い物が多いでしゅが、それが苦手という人も多いでしゅ。でしゅが辛みはこの国の食べ物の特徴なので、少しだけ辛みを残してみましゅた」
「ああ、この辛みは私には物足りないが、他国の人間ならば丁度いいかもしれないな」
よかった、エクシーガ大司教にハムリじゃないと言われたら、また一からやり直さないといけませんでした。
方向性としては間違っていなかったって事ね。
「確かにこのハムリは美味い。しかし……」
「はい。私達がやる事ではありません」
私とローレル様が来たのはエルグランド王国の文化を伝える事。
プレアデス教国の料理をアレンジする事じゃない。
「しかしエクシーガ大司教しゃま、コレが成功しないとエルグランドの料理を紹介出来ないのでしゅよ」
「ん? なぜだ。エルグランド王国の料理を振る舞えばよいだけではないのか?」
「それはもうしばらく時間をください。私達がプレアデス教国の人達にも満足していただける、美味しいエルグランド料理を作って見せます」
それからひと月ほどが過ぎました。
料理は難航し、エルグランド料理を再現するだけでも一苦労しています。
似たような食材・調味料がある物は良いのですが、メインとなる食材が無い物もあります。
その料理を省こうかと思いもしましたが、エルグランドを代表する料理なので何とかしないといけません。
「上手くいきませんね」
「次の方法を考えないとダメでしゅね」
ソルテラ宮殿のサブ厨房で試行錯誤していますが、今日も失敗しました。
さて次はどうしましょうか。
そんな事をローレル様と考えていると、廊下から大きな声が聞こえてきました。
「一体どういう事ですか! 私が指示した内容とは全然違っています!」
女性の声がサブ厨房内まで響いてきましたが、一体何があったのでしょうか。
他にも何人かの声が聞こえてきますが、言い争いというよりも女性が一方的に大声を出している感じです。
気になったのでちょっと扉を開けて廊下を見ます。
「ですから何度も説明している通り……」
「そんな事は聞いていません! なぜ私の言う通りにしないのですか!」
「この国では無理なんです」
女性は二十歳前後でしょうか、銀髪を後ろでまとめ上げ、白い料理人のような衣装を着ています。
その人が片手に皿を持って怒鳴っていました。
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