無能だとクビになったメイドですが、今は王宮で筆頭メイドをしています

如月ぐるぐる

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第七十四話

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 私とローレル様の帰還パーティーのさなか、陛下へいかが私に言った一言。

「明日から王宮のメイドとして働け」

 この事自体は特に驚いていません。
 むしろやっぱりなと思います。
 しかしなぜこの場でおっしゃったのでしょうか。
 メイド一人を城で働かせることに、陛下へいかが一々口出しする事はありません。
 いくら私がリック様の願いで王宮メイドになるとしてもです。
 このタイミングで言う事に意味がある……?

 もちろん私に拒否権なんてありませんが、他国とはいえ勲章を持っている私をメイドとして働かせることを言葉にする……ああ、そういう事ですか。
 それにしても明日からですか、荷物は少ないので問題はありませんが、泊まる場所はあるのでしょうか。

 パーティーが終わり、近くにいたメイドさんに泊まる場所を聞きました。
 このメイドさんは知らないようなので、メイド長に聞いてくれとの事です。
 メイド長……誰だろう。
 と考えていると向こうから来てくれました。

「あなたがシルビアね、私はフィガロ。陛下へいかから話を聞いています、こっちよ」

 細いメガネをかけた四十前後の女性は目つきが鋭く、茶色の髪を頭の後ろでまとめられており、白いフリルの付いた髪飾りを着けています。
 黒い長袖ワンピースでスカートも長く、小さな白いエプロンを腰に巻いている。

 フィガロさんの後を付いていくと、お城の地下に案内されました。
 どうやら地下が住み込みメイドの寮になっているようです。

「貴族の令嬢が多いから、ほとんどの部屋は個室になっています。あなたにも個室が用意されていますが、丁寧に使うように」

 地下といってもあまりじめじめしていない。
 それもそうか、お城の中なんだから清潔さが保たれているんだわ。
 それに廊下もランタンがいくつもあって意外に明るい。
 フィガロさんが一つの部屋の扉を開けると、部屋の中は暗いけど月明かりで照らされていた。
 完全な地下ではなく半地下なのかしら。

「ここが今日から使う部屋。明日の朝から仕事が入っているから、今日はもう休みなさい」

「ありがとうございます。明日からよろしくお願いします」

 軽く会釈するとフィガロさんも会釈して去っていきました。
 部屋は思ったよりも広いしベッドもしっかりしている。
 これは……フーガ侯爵の贅沢なメイド寮位に広いわ。
 これが個室だなんて、貴族令嬢基準は凄いわね。

 翌朝、私はクローゼットに入っていたメイド服に着替えた。
 フィガロさんの服と同じだけど、エプロンがとても大きく胸元からスカートの裾まである。
 っと、待たせたらいけないわね。

 メイド達が集まる地下の大広場に入ると、そこには凄い数のメイドさんがいました。
 百……二百……三百……四百はいそうね。
 それにここにいるのが全員とも限らない。

 今日一日の大雑把な予定、訪問客の確認などなど、大まかな打ち合わせが行われたのち、各部署ごとに分かれて詳細の確認のようです。
 私もフィガロさんに呼ばれてある部署に配属されました。

「シルビアには今日からリーフ様の身の回りのお世話をしてもらいます」

「リーフ様ですか?」

「そうです。いきなり王族というのは異例ですが、そういう命令です」

「かしこまりました」

 リーフ様、第十子の五女。
 何かにつけて私に文句を言ってくる御方だ。
 私が王宮メイドになる事に一番反対していたはずだけど。
 今は考えても仕方がありません、与えられた仕事を全うしましょう。
 リーフ様付きのメイドは十人。
 今日のリーフ様は午前は他国の王子との面会、午後からは孤児施設の慰問となっている。

「私はスパシオ! 今日からよろしくね!」

 とても元気なスパシオさんは同じリーフ様付きのメイドで、歳は十九だそうです。
 目がクリクリしており、短めの赤い癖っ毛だ。
 スパシオさんと共に行動して仕事を教えてもらいましょう。

 他国の王子との面会はスパシオさんに教えてもらいながら振る舞い、問題なくこなせたと思います。
 スパシオさんの教え方は上手ですね、面倒くさがらずにきちんと説明してくれます。

 さあ午後からは孤児施設の慰問ね。
 スパシオさんによるとリーフ様の昼食当番は別の人なので、私はゆっくりと昼食を取り、昼から馬車の準備をしたらいいそうです。
 えーっと、確かここの馬車で出かけられるはずだけど、おかしい、見当たらない。
 誰かに聞いてみましょう。

「え? リーフ様の馬車はとっくに出ちまったぞ? 孤児施設で一緒に昼食をとるはずだからな」

「え? ……ええっ!?」

 そんな! スパシオさんに言われた事と違う!!
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