74 / 139
第七十四話
しおりを挟む
私とローレル様の帰還パーティーのさなか、陛下が私に言った一言。
「明日から王宮のメイドとして働け」
この事自体は特に驚いていません。
むしろやっぱりなと思います。
しかしなぜこの場でおっしゃったのでしょうか。
メイド一人を城で働かせることに、陛下が一々口出しする事はありません。
いくら私がリック様の願いで王宮メイドになるとしてもです。
このタイミングで言う事に意味がある……?
もちろん私に拒否権なんてありませんが、他国とはいえ勲章を持っている私をメイドとして働かせることを言葉にする……ああ、そういう事ですか。
それにしても明日からですか、荷物は少ないので問題はありませんが、泊まる場所はあるのでしょうか。
パーティーが終わり、近くにいたメイドさんに泊まる場所を聞きました。
このメイドさんは知らないようなので、メイド長に聞いてくれとの事です。
メイド長……誰だろう。
と考えていると向こうから来てくれました。
「あなたがシルビアね、私はフィガロ。陛下から話を聞いています、こっちよ」
細いメガネをかけた四十前後の女性は目つきが鋭く、茶色の髪を頭の後ろでまとめられており、白いフリルの付いた髪飾りを着けています。
黒い長袖ワンピースでスカートも長く、小さな白いエプロンを腰に巻いている。
フィガロさんの後を付いていくと、お城の地下に案内されました。
どうやら地下が住み込みメイドの寮になっているようです。
「貴族の令嬢が多いから、ほとんどの部屋は個室になっています。あなたにも個室が用意されていますが、丁寧に使うように」
地下といってもあまりじめじめしていない。
それもそうか、お城の中なんだから清潔さが保たれているんだわ。
それに廊下もランタンがいくつもあって意外に明るい。
フィガロさんが一つの部屋の扉を開けると、部屋の中は暗いけど月明かりで照らされていた。
完全な地下ではなく半地下なのかしら。
「ここが今日から使う部屋。明日の朝から仕事が入っているから、今日はもう休みなさい」
「ありがとうございます。明日からよろしくお願いします」
軽く会釈するとフィガロさんも会釈して去っていきました。
部屋は思ったよりも広いしベッドもしっかりしている。
これは……フーガ侯爵の贅沢なメイド寮位に広いわ。
これが個室だなんて、貴族令嬢基準は凄いわね。
翌朝、私はクローゼットに入っていたメイド服に着替えた。
フィガロさんの服と同じだけど、エプロンがとても大きく胸元からスカートの裾まである。
っと、待たせたらいけないわね。
メイド達が集まる地下の大広場に入ると、そこには凄い数のメイドさんがいました。
百……二百……三百……四百はいそうね。
それにここにいるのが全員とも限らない。
今日一日の大雑把な予定、訪問客の確認などなど、大まかな打ち合わせが行われたのち、各部署ごとに分かれて詳細の確認のようです。
私もフィガロさんに呼ばれてある部署に配属されました。
「シルビアには今日からリーフ様の身の回りのお世話をしてもらいます」
「リーフ様ですか?」
「そうです。いきなり王族というのは異例ですが、そういう命令です」
「かしこまりました」
リーフ様、第十子の五女。
何かにつけて私に文句を言ってくる御方だ。
私が王宮メイドになる事に一番反対していたはずだけど。
今は考えても仕方がありません、与えられた仕事を全うしましょう。
リーフ様付きのメイドは十人。
今日のリーフ様は午前は他国の王子との面会、午後からは孤児施設の慰問となっている。
「私はスパシオ! 今日からよろしくね!」
とても元気なスパシオさんは同じリーフ様付きのメイドで、歳は十九だそうです。
目がクリクリしており、短めの赤い癖っ毛だ。
スパシオさんと共に行動して仕事を教えてもらいましょう。
他国の王子との面会はスパシオさんに教えてもらいながら振る舞い、問題なくこなせたと思います。
スパシオさんの教え方は上手ですね、面倒くさがらずにきちんと説明してくれます。
さあ午後からは孤児施設の慰問ね。
スパシオさんによるとリーフ様の昼食当番は別の人なので、私はゆっくりと昼食を取り、昼から馬車の準備をしたらいいそうです。
えーっと、確かここの馬車で出かけられるはずだけど、おかしい、見当たらない。
誰かに聞いてみましょう。
「え? リーフ様の馬車はとっくに出ちまったぞ? 孤児施設で一緒に昼食をとるはずだからな」
「え? ……ええっ!?」
そんな! スパシオさんに言われた事と違う!!
「明日から王宮のメイドとして働け」
この事自体は特に驚いていません。
むしろやっぱりなと思います。
しかしなぜこの場でおっしゃったのでしょうか。
メイド一人を城で働かせることに、陛下が一々口出しする事はありません。
いくら私がリック様の願いで王宮メイドになるとしてもです。
このタイミングで言う事に意味がある……?
もちろん私に拒否権なんてありませんが、他国とはいえ勲章を持っている私をメイドとして働かせることを言葉にする……ああ、そういう事ですか。
それにしても明日からですか、荷物は少ないので問題はありませんが、泊まる場所はあるのでしょうか。
パーティーが終わり、近くにいたメイドさんに泊まる場所を聞きました。
このメイドさんは知らないようなので、メイド長に聞いてくれとの事です。
メイド長……誰だろう。
と考えていると向こうから来てくれました。
「あなたがシルビアね、私はフィガロ。陛下から話を聞いています、こっちよ」
細いメガネをかけた四十前後の女性は目つきが鋭く、茶色の髪を頭の後ろでまとめられており、白いフリルの付いた髪飾りを着けています。
黒い長袖ワンピースでスカートも長く、小さな白いエプロンを腰に巻いている。
フィガロさんの後を付いていくと、お城の地下に案内されました。
どうやら地下が住み込みメイドの寮になっているようです。
「貴族の令嬢が多いから、ほとんどの部屋は個室になっています。あなたにも個室が用意されていますが、丁寧に使うように」
地下といってもあまりじめじめしていない。
それもそうか、お城の中なんだから清潔さが保たれているんだわ。
それに廊下もランタンがいくつもあって意外に明るい。
フィガロさんが一つの部屋の扉を開けると、部屋の中は暗いけど月明かりで照らされていた。
完全な地下ではなく半地下なのかしら。
「ここが今日から使う部屋。明日の朝から仕事が入っているから、今日はもう休みなさい」
「ありがとうございます。明日からよろしくお願いします」
軽く会釈するとフィガロさんも会釈して去っていきました。
部屋は思ったよりも広いしベッドもしっかりしている。
これは……フーガ侯爵の贅沢なメイド寮位に広いわ。
これが個室だなんて、貴族令嬢基準は凄いわね。
翌朝、私はクローゼットに入っていたメイド服に着替えた。
フィガロさんの服と同じだけど、エプロンがとても大きく胸元からスカートの裾まである。
っと、待たせたらいけないわね。
メイド達が集まる地下の大広場に入ると、そこには凄い数のメイドさんがいました。
百……二百……三百……四百はいそうね。
それにここにいるのが全員とも限らない。
今日一日の大雑把な予定、訪問客の確認などなど、大まかな打ち合わせが行われたのち、各部署ごとに分かれて詳細の確認のようです。
私もフィガロさんに呼ばれてある部署に配属されました。
「シルビアには今日からリーフ様の身の回りのお世話をしてもらいます」
「リーフ様ですか?」
「そうです。いきなり王族というのは異例ですが、そういう命令です」
「かしこまりました」
リーフ様、第十子の五女。
何かにつけて私に文句を言ってくる御方だ。
私が王宮メイドになる事に一番反対していたはずだけど。
今は考えても仕方がありません、与えられた仕事を全うしましょう。
リーフ様付きのメイドは十人。
今日のリーフ様は午前は他国の王子との面会、午後からは孤児施設の慰問となっている。
「私はスパシオ! 今日からよろしくね!」
とても元気なスパシオさんは同じリーフ様付きのメイドで、歳は十九だそうです。
目がクリクリしており、短めの赤い癖っ毛だ。
スパシオさんと共に行動して仕事を教えてもらいましょう。
他国の王子との面会はスパシオさんに教えてもらいながら振る舞い、問題なくこなせたと思います。
スパシオさんの教え方は上手ですね、面倒くさがらずにきちんと説明してくれます。
さあ午後からは孤児施設の慰問ね。
スパシオさんによるとリーフ様の昼食当番は別の人なので、私はゆっくりと昼食を取り、昼から馬車の準備をしたらいいそうです。
えーっと、確かここの馬車で出かけられるはずだけど、おかしい、見当たらない。
誰かに聞いてみましょう。
「え? リーフ様の馬車はとっくに出ちまったぞ? 孤児施設で一緒に昼食をとるはずだからな」
「え? ……ええっ!?」
そんな! スパシオさんに言われた事と違う!!
526
あなたにおすすめの小説
実は家事万能な伯爵令嬢、婚約破棄されても全く問題ありません ~追放された先で洗濯した男は、伝説の天使様でした~
空色蜻蛉
恋愛
「令嬢であるお前は、身の周りのことは従者なしに何もできまい」
氷薔薇姫の異名で知られるネーヴェは、王子に婚約破棄され、辺境の地モンタルチーノに追放された。
「私が何も出来ない箱入り娘だと、勘違いしているのね。私から見れば、聖女様の方がよっぽど箱入りだけど」
ネーヴェは自分で屋敷を掃除したり美味しい料理を作ったり、自由な生活を満喫する。
成り行きで、葡萄畑作りで泥だらけになっている男と仲良くなるが、実は彼の正体は伝説の・・であった。
キズモノ転生令嬢は趣味を活かして幸せともふもふを手に入れる
藤 ゆみ子
恋愛
セレーナ・カーソンは前世、心臓が弱く手術と入退院を繰り返していた。
将来は好きな人と結婚して幸せな家庭を築きたい。そんな夢を持っていたが、胸元に大きな手術痕のある自分には無理だと諦めていた。
入院中、暇潰しのために始めた刺繍が唯一の楽しみだったが、その後十八歳で亡くなってしまう。
セレーナが八歳で前世の記憶を思い出したのは、前世と同じように胸元に大きな傷ができたときだった。
家族から虐げられ、キズモノになり、全てを諦めかけていたが、十八歳を過ぎた時家を出ることを決意する。
得意な裁縫を活かし、仕事をみつけるが、そこは秘密を抱えたもふもふたちの住みかだった。
公爵令息様を治療したらいつの間にか溺愛されていました
Karamimi
恋愛
マーケッヒ王国は魔法大国。そんなマーケッヒ王国の伯爵令嬢セリーナは、14歳という若さで、治癒師として働いている。それもこれも莫大な借金を返済し、幼い弟妹に十分な教育を受けさせるためだ。
そんなセリーナの元を訪ねて来たのはなんと、貴族界でも3本の指に入る程の大貴族、ファーレソン公爵だ。話を聞けば、15歳になる息子、ルークがずっと難病に苦しんでおり、どんなに優秀な治癒師に診てもらっても、一向に良くならないらしい。
それどころか、どんどん悪化していくとの事。そんな中、セリーナの評判を聞きつけ、藁をもすがる思いでセリーナの元にやって来たとの事。
必死に頼み込む公爵を見て、出来る事はやってみよう、そう思ったセリーナは、早速公爵家で治療を始めるのだが…
正義感が強く努力家のセリーナと、病気のせいで心が歪んでしまった公爵令息ルークの恋のお話です。
追放された無能才女の私、敵国最強と謳われた冷徹公爵に「お飾りの婚約者になれ」と命じられました ~彼の呪いを癒せるのは、世界で私だけみたい~
放浪人
恋愛
伯爵令嬢エリアーナは、治癒魔法が使えない『無能才女』として、家族からも婚約者の王子からも虐げられる日々を送っていた。
信じていたはずの妹の裏切りにより、謂れのない罪で婚約破棄され、雨の降る夜に家を追放されてしまう。
絶望の淵で倒れた彼女を拾ったのは、戦場で受けた呪いに蝕まれ、血も涙もないと噂される『冷徹公爵』クロード・フォン・ヴァレンシュタインだった。
「俺の“お飾り”の婚約者になれ。お前には拒否権はない」
――それは、互いの利益のための、心のない契約のはずだった。
しかし、エリアーナには誰にも言えない秘密があった。彼女の持つ力は、ただの治癒魔法ではない。あらゆる呪いを浄化する、伝説の*『聖癒の力』*。
その力が、公爵の抱える深い闇を癒やし始めた時、偽りの関係は、甘く切ない本物の愛へと変わっていく。
これは、全てを失った令嬢が自らの真の価値に目覚め、唯一無二の愛を手に入れるまでの、奇跡の物語。
【完結】転生したらラスボスの毒継母でした!
白雨 音
恋愛
妹シャルリーヌに裕福な辺境伯から結婚の打診があったと知り、アマンディーヌはシャルリーヌと入れ替わろうと画策する。
辺境伯からは「息子の為の白い結婚、いずれ解消する」と宣言されるが、アマンディーヌにとっても都合が良かった。「辺境伯の財で派手に遊び暮らせるなんて最高!」義理の息子など放置して遊び歩く気満々だったが、義理の息子に会った瞬間、卒倒した。
夢の中、前世で読んだ小説を思い出し、義理の息子は将来世界を破滅させようとするラスボスで、自分はその一因を作った毒継母だと知った。破滅もだが、何より自分の死の回避の為に、義理の息子を真っ当な人間に育てようと誓ったアマンディーヌの奮闘☆
異世界転生、家族愛、恋愛☆ 短めの長編(全二十一話です)
《完結しました》 お読み下さり、お気に入り、エール、いいね、ありがとうございます☆
【完結】転生白豚令嬢☆前世を思い出したので、ブラコンではいられません!
白雨 音
恋愛
エリザ=デュランド伯爵令嬢は、学院入学時に転倒し、頭を打った事で前世を思い出し、
《ここ》が嘗て好きだった小説の世界と似ている事に気付いた。
しかも自分は、義兄への恋を拗らせ、ヒロインを貶める為に悪役令嬢に加担した挙句、
義兄と無理心中バッドエンドを迎えるモブ令嬢だった!
バッドエンドを回避する為、義兄への恋心は捨て去る事にし、
前世の推しである悪役令嬢の弟エミリアンに狙いを定めるも、義兄は気に入らない様で…??
異世界転生:恋愛 ※魔法無し
《完結しました》 お読み下さり、お気に入り、エール、ありがとうございます☆
虚弱体質?の脇役令嬢に転生したので、食事療法を始めました
たくわん
恋愛
「跡継ぎを産めない貴女とは結婚できない」婚約者である公爵嫡男アレクシスから、冷酷に告げられた婚約破棄。その場で新しい婚約者まで紹介される屈辱。病弱な侯爵令嬢セラフィーナは、社交界の哀れみと嘲笑の的となった。
有能女官の赴任先は辺境伯領
たぬきち25番
恋愛
お気に入り1000ありがとうございます!!
お礼SS追加決定のため終了取下げいたします。
皆様、お気に入り登録ありがとうございました。
現在、お礼SSの準備中です。少々お待ちください。
辺境伯領の当主が他界。代わりに領主になったのは元騎士団の隊長ギルベルト(26)
ずっと騎士団に在籍して領のことなど右も左もわからない。
そのため新しい辺境伯様は帳簿も書類も不備ばかり。しかも辺境伯領は王国の端なので修正も大変。
そこで仕事を終わらせるために、腕っぷしに定評のあるギリギリ貴族の男爵出身の女官ライラ(18)が辺境伯領に出向くことになった。
だがそこでライラを待っていたのは、元騎士とは思えないほどつかみどころのない辺境伯様と、前辺境伯夫妻の忘れ形見の3人のこどもたち(14歳男子、9歳男子、6歳女子)だった。
仕事のわからない辺境伯を助けながら、こどもたちの生活を助けたり、魔物を倒したり!?
そしていつしか、ライラと辺境伯やこどもたちとの関係が変わっていく……
※お待たせしました。
※他サイト様にも掲載中
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる