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第八十三話
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「この女を牢屋に入れておけ!!」
イスト伯爵邸の居間に複数の兵士が入ってきます。
や、やっぱりこうなるの⁉
ジリジリと距離を詰めて来る兵士を相手に、私は窓際に移動します。
どうしよう、一応準備はしてきましたが、上手く逃げ切れるでしょうか。
「逃げられると思っているのか! すでに門は閉じてある、どこにも逃げ場はないぞ!」
そう、ですよね。
しかし一つだけ逃げ道に心当たりがあるのです。
私はニッコリと微笑んだのち、窓を開けて飛び出しました。
「はーっはっはっはっは! 浅はかな娘だ!」
ここは一階なので特に問題はありませんが、この先で兵士に捕まっては意味がありません。
なので私は一直線に外壁へと向かいます。
壁に向かう途中で私はベルトを外し、金具の向きを変えてS字型にします。
そしてベルトを引っ張ると長い長い革のベルトが出てきました。
数メートルもある革のベルトの先を壁の上に放り投げ、引っ張っても戻って来ない事を確認すると、私は壁に足をかけ、両腕と足を使って壁を登ります。
「まさか……外壁修理と……道具屋さんで働いた経験が……こんな所で役に立つなんて……っ!」
壁を登りきると、追いかけてきた兵士が口をあんぐりと開けて大声を出し、正門へ回ります。
その鎧では登れないでしょうしね。
私は金具の取り付け位置を変え、今度は反対側に降りました。
その後は急いでお城に逃げ帰るだけです。
「ただいま戻りました」
「……なんでお前がここにいるんだ?」
お茶をしていたのか、ミストラル様は私を呆然と見て驚いています。
「なぜ、とおっしゃられても、イスト伯爵邸から逃げて参りました」
「逃げ……た? というか逃げられたのか?」
「捕まるなとのお達しでしたので」
「まさか本当に捕まらないとは思っていなかった」
どっちなんですか。
これでも大変な目に合ったのですが。
「まあいい、戻ってきたのなら救出部隊は解散だ」
「私が捕まったのをいいことに、イスト伯爵邸へ乗り込むおつもりだったんですか?」
「それがメインだった。ダメなら次の手に移るからかまわない」
「あの、私の命の危険などは……」
「それはあり得んな。今すぐに王族と全面戦争をするつもりが無いのなら、お前の命を奪う事はしない。救出に行かなくとも、夜前には解放されただろう」
ああ、論理的な考え方ならそうでしょう。
しかし相手はそんなこと考えていないのではないでしょうか。
ああでもそうか、殿下の代理という立場が私を守るのか。
あの場にいた兵のほとんどは私が代理で来たことを知ってるはずだもの。
ミストラル様は……見た目と違って大胆で大味で、でも妙に計算高い。
リーフ様と違ってそれを隠す事もしない。
「わかりました。次の手はいつになりますか?」
「今からだ。お前も付いてこい」
馬車に放り込まれ、書簡を見たイスト伯爵の反応をお伝えすると「予想通り過ぎてつまらん」とおっしゃいました。
書簡には何が書いてあったのでしょうか。
単純な想像で言うなら、貴族連合を認めず解散の指示、場合によっては反逆罪に問うとかかしら。
相手を怒らせて不手際を誘い、そこに付け入るのが簡単ですもの。
でも他の貴族達はどうするのかしら。
今イスト伯爵を捕えてしまうと隠ぺい工作や、場合によってはより強固なつながりになったりしないかしら。
「はっはっはっは! やるではないかイスト卿! 卿《けい》は面白い奴だな!」
イスト伯爵邸に乗り込んだかと思うとミストラル様は居間で酒を飲み、イスト伯爵と談笑しています。
……すみません、思考が追いついていません。
次の作戦って何!? 貴族連合をどうにかするのではないの⁉
ほら、イスト伯爵も顔が引きつってるわ!
もう滅茶苦茶……破天荒を通り越して滅茶苦茶だわ。
私はてっきりミストラル様の領分は「対貴族」だと思ってたけど、こんなの対貴族どころの行動じゃないわ。
ああ、頭が痛くなってきた。
ミストラル様が大声で笑い、イスト伯爵は終始引きつり笑顔、周囲のメイドや執事たちは目の前の事実が理解できていない。
それはそうよね、てっきり私、メイドの件で問い詰めに来たかと思ったらこれだもの。
「今日はこんなものだろう。今週中に全て終わらせるから、お前はしばらく何もするな」
イスト伯爵邸を出た馬車の中で、ミストラル様は私に命令した。
動きたくても動けませんけどね!
「かしこまりました。しかし今日の行動にはどのような意味……」
ミストラル様は私の話など聞かず、ぼーっと馬車の外を眺めています。
どうしましょうリーフ様、ミストラル様のお考えがわかりません。
この御方の付き人になった意味があったのでしょうか。
何もするなと言われましたので、メイドとしての通常業務をこなします。
しかもミストラル様の身の回りのお世話から外され、フォローに回されました。
それは構いません、そちらの仕事は覚えたので、空いた時間で勉強でもしておきましょう。
そして週末。
「おい、今から行くぞ。逃げ出す手段を十は用意しておけ」
そんなに沢山逃げ出す手段は持っておりませんが⁉
イスト伯爵邸の居間に複数の兵士が入ってきます。
や、やっぱりこうなるの⁉
ジリジリと距離を詰めて来る兵士を相手に、私は窓際に移動します。
どうしよう、一応準備はしてきましたが、上手く逃げ切れるでしょうか。
「逃げられると思っているのか! すでに門は閉じてある、どこにも逃げ場はないぞ!」
そう、ですよね。
しかし一つだけ逃げ道に心当たりがあるのです。
私はニッコリと微笑んだのち、窓を開けて飛び出しました。
「はーっはっはっはっは! 浅はかな娘だ!」
ここは一階なので特に問題はありませんが、この先で兵士に捕まっては意味がありません。
なので私は一直線に外壁へと向かいます。
壁に向かう途中で私はベルトを外し、金具の向きを変えてS字型にします。
そしてベルトを引っ張ると長い長い革のベルトが出てきました。
数メートルもある革のベルトの先を壁の上に放り投げ、引っ張っても戻って来ない事を確認すると、私は壁に足をかけ、両腕と足を使って壁を登ります。
「まさか……外壁修理と……道具屋さんで働いた経験が……こんな所で役に立つなんて……っ!」
壁を登りきると、追いかけてきた兵士が口をあんぐりと開けて大声を出し、正門へ回ります。
その鎧では登れないでしょうしね。
私は金具の取り付け位置を変え、今度は反対側に降りました。
その後は急いでお城に逃げ帰るだけです。
「ただいま戻りました」
「……なんでお前がここにいるんだ?」
お茶をしていたのか、ミストラル様は私を呆然と見て驚いています。
「なぜ、とおっしゃられても、イスト伯爵邸から逃げて参りました」
「逃げ……た? というか逃げられたのか?」
「捕まるなとのお達しでしたので」
「まさか本当に捕まらないとは思っていなかった」
どっちなんですか。
これでも大変な目に合ったのですが。
「まあいい、戻ってきたのなら救出部隊は解散だ」
「私が捕まったのをいいことに、イスト伯爵邸へ乗り込むおつもりだったんですか?」
「それがメインだった。ダメなら次の手に移るからかまわない」
「あの、私の命の危険などは……」
「それはあり得んな。今すぐに王族と全面戦争をするつもりが無いのなら、お前の命を奪う事はしない。救出に行かなくとも、夜前には解放されただろう」
ああ、論理的な考え方ならそうでしょう。
しかし相手はそんなこと考えていないのではないでしょうか。
ああでもそうか、殿下の代理という立場が私を守るのか。
あの場にいた兵のほとんどは私が代理で来たことを知ってるはずだもの。
ミストラル様は……見た目と違って大胆で大味で、でも妙に計算高い。
リーフ様と違ってそれを隠す事もしない。
「わかりました。次の手はいつになりますか?」
「今からだ。お前も付いてこい」
馬車に放り込まれ、書簡を見たイスト伯爵の反応をお伝えすると「予想通り過ぎてつまらん」とおっしゃいました。
書簡には何が書いてあったのでしょうか。
単純な想像で言うなら、貴族連合を認めず解散の指示、場合によっては反逆罪に問うとかかしら。
相手を怒らせて不手際を誘い、そこに付け入るのが簡単ですもの。
でも他の貴族達はどうするのかしら。
今イスト伯爵を捕えてしまうと隠ぺい工作や、場合によってはより強固なつながりになったりしないかしら。
「はっはっはっは! やるではないかイスト卿! 卿《けい》は面白い奴だな!」
イスト伯爵邸に乗り込んだかと思うとミストラル様は居間で酒を飲み、イスト伯爵と談笑しています。
……すみません、思考が追いついていません。
次の作戦って何!? 貴族連合をどうにかするのではないの⁉
ほら、イスト伯爵も顔が引きつってるわ!
もう滅茶苦茶……破天荒を通り越して滅茶苦茶だわ。
私はてっきりミストラル様の領分は「対貴族」だと思ってたけど、こんなの対貴族どころの行動じゃないわ。
ああ、頭が痛くなってきた。
ミストラル様が大声で笑い、イスト伯爵は終始引きつり笑顔、周囲のメイドや執事たちは目の前の事実が理解できていない。
それはそうよね、てっきり私、メイドの件で問い詰めに来たかと思ったらこれだもの。
「今日はこんなものだろう。今週中に全て終わらせるから、お前はしばらく何もするな」
イスト伯爵邸を出た馬車の中で、ミストラル様は私に命令した。
動きたくても動けませんけどね!
「かしこまりました。しかし今日の行動にはどのような意味……」
ミストラル様は私の話など聞かず、ぼーっと馬車の外を眺めています。
どうしましょうリーフ様、ミストラル様のお考えがわかりません。
この御方の付き人になった意味があったのでしょうか。
何もするなと言われましたので、メイドとしての通常業務をこなします。
しかもミストラル様の身の回りのお世話から外され、フォローに回されました。
それは構いません、そちらの仕事は覚えたので、空いた時間で勉強でもしておきましょう。
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