無能だとクビになったメイドですが、今は王宮で筆頭メイドをしています

如月ぐるぐる

文字の大きさ
85 / 139

第八十五話

しおりを挟む
「おいセドリック! まずは兄である俺を助けるのが先じゃないのか!」

「怪我はない? シルビア」

「はい。ありがとうございます、助けに来てくださって」

「うぉい!」

「ば、バカな! 騎士団がこんなに揃うはずがない! 一体何があったんだ!」

「イスト伯爵……君の仲間は全て捕らえた。後は主犯である君だけ……だ」

 よく見るとリック様を始め、騎士団が、恐らくは第六騎士団が勢ぞろいしています。
 お城を出た時は普通の兵士だったけど、どうして騎士団が?

「ふははははは! さあイスト! ここが年貢の納め時だ!」

 俄然元気が出てきたミストラル様。
 騎士団に囲まれては流石のイスト伯爵も観念した様で、力なく地面に崩れ落ちる。
 
「くっ……まさかミストラル殿下でんかにやられるとは思わなかった」

「どうだ! 俺は凄かろう!」

 胸を張って高笑いをするミストラル様ですが、イスト伯爵や他の人達の表情は悔しさよりも驚いた顔が多い。
 そう、本当にミストラル様に捕らえられるとは夢にも思ってもいなかった様に。
 騎士達により反逆者達が捕らえられ、屋敷にいた多くの人達が連れられて行く。

「シルビア……本当に無茶ばかりして……」

「申し訳ありませんリック様。でも私一人だけなら逃げる事は大丈夫です」

「おう! 俺を見捨てて逃げるつもりだったのかお前は!」

「逃げるって……そんな簡単じゃ……」

「あ、一つ面白い方法があるんですよ」

 私は外壁沿いに立つと、壁と似た色の大きな布を取り出します。
 それで自分の姿を隠す様に壁にくっつくと、カメラのフラッシュだけを上から出して発光させます。

「……シルビア? それでどうやって逃げるの……?」

 リック様が壁を見たままで呆れています。
 それは他の騎士達も同じで失笑している人もいますね。

「中々面白いでしょ?」

 私はリック様の背後から声をかけると、騎士共々後ずさりしていきます。

「えー! え!? あれ⁉ あそこにある膨らみは⁉」

 騎士の一人が壁に付いた布を取り払うと、そこには枕付きの布があるだけでした。
 皆さんが目をまん丸にして私と布を交互に見ます。
 ふふふふ、作戦大成功です。

「このように、手品を使えば逃げるだけなら結構簡単に――」

「もう一度だ!」

「え?」

「シルビア、今のをもう一度やってみろ」

 ミストラル様が妙に食いつきました。
 手品自体は奇術とかなんちゃって魔術とかいわれていますが、知ってる人は知っている、という程度なので知名度は低いです。
 とはいえ私の大事な逃亡手段なので、何度も見せる訳にも行きません。

「申し訳ありませんミストラル様、これは何度もお見せする物ではありませんので……」

「なんだとぅ! 絶対に解き明かしてやる!」

 フラッシュを焚く前から準備は終わっているので、一回見ただけでは解き明かせることはないでしょう。
 えーっと、何をしていたんでしたっけ、そうそう、イスト伯爵。

「これで今回の騒動は決着でしょうか」

「そう……だね。ミストラル兄様のお陰で……最小限の行動で最小限の成果を出せた。今回も……見事な手際だった」

 そう……よね、やっぱりリック様からの評価は高い。
 でもどうして? なぜギリギリのラインを攻めるのでしょうか。
 もっとはっきりとした成果を出せば、他の貴族や民衆からの評価も違うはずです。

「お前の顔を見ているとあの技を思い出してイライラする。しばらく顔を見せるな!」

 貴族連合の一斉摘発から数日後、私は相変わらずミストラル様のお世話をしていますが、その扱いはとてもぞんざいになっています。
 お陰で自分の時間が多く取れるので構いませんが……やっぱり気になります。
 なので午前中で一日分の仕事を終わらせ、私は資料室へと向かいます。

「多分過去の事件や騒動の資料があれば、ミストラル様の詳しい情報が書いてあると思うのですが……」

 山の様にある本棚にしまわれた資料を探し、ミストラル様関連の物をピックアップしていきます。
 少ない……他の王子王女は成果が誇張された資料も多いのに、ミストラル様関連の物はとても質素な書かれ方をしている。

 十一人兄弟でも特殊過ぎるわ。
 王族の成果は基本的に賛美されるのに、ミストラル様は事実のみが書かれている。
 
「あら? これはどういう事かしら」

 王子王女達の役割はある程度決まっている。
 リーフ様がおっしゃったように、ご自分の領分という物がある。
 リーフ様なら貴族や平民たちとの橋渡し役、ローレル様は外交がメインとなる。
 でもミストラル様は違う、他の王族とはまるで違う役割を持っていた。

「これならあの成果も納得だわ。むしろ大成功してはいけなかったのね」
しおりを挟む
感想 21

あなたにおすすめの小説

実は家事万能な伯爵令嬢、婚約破棄されても全く問題ありません ~追放された先で洗濯した男は、伝説の天使様でした~

空色蜻蛉
恋愛
「令嬢であるお前は、身の周りのことは従者なしに何もできまい」 氷薔薇姫の異名で知られるネーヴェは、王子に婚約破棄され、辺境の地モンタルチーノに追放された。 「私が何も出来ない箱入り娘だと、勘違いしているのね。私から見れば、聖女様の方がよっぽど箱入りだけど」 ネーヴェは自分で屋敷を掃除したり美味しい料理を作ったり、自由な生活を満喫する。 成り行きで、葡萄畑作りで泥だらけになっている男と仲良くなるが、実は彼の正体は伝説の・・であった。

キズモノ転生令嬢は趣味を活かして幸せともふもふを手に入れる

藤 ゆみ子
恋愛
セレーナ・カーソンは前世、心臓が弱く手術と入退院を繰り返していた。 将来は好きな人と結婚して幸せな家庭を築きたい。そんな夢を持っていたが、胸元に大きな手術痕のある自分には無理だと諦めていた。 入院中、暇潰しのために始めた刺繍が唯一の楽しみだったが、その後十八歳で亡くなってしまう。 セレーナが八歳で前世の記憶を思い出したのは、前世と同じように胸元に大きな傷ができたときだった。 家族から虐げられ、キズモノになり、全てを諦めかけていたが、十八歳を過ぎた時家を出ることを決意する。 得意な裁縫を活かし、仕事をみつけるが、そこは秘密を抱えたもふもふたちの住みかだった。

公爵令息様を治療したらいつの間にか溺愛されていました

Karamimi
恋愛
マーケッヒ王国は魔法大国。そんなマーケッヒ王国の伯爵令嬢セリーナは、14歳という若さで、治癒師として働いている。それもこれも莫大な借金を返済し、幼い弟妹に十分な教育を受けさせるためだ。 そんなセリーナの元を訪ねて来たのはなんと、貴族界でも3本の指に入る程の大貴族、ファーレソン公爵だ。話を聞けば、15歳になる息子、ルークがずっと難病に苦しんでおり、どんなに優秀な治癒師に診てもらっても、一向に良くならないらしい。 それどころか、どんどん悪化していくとの事。そんな中、セリーナの評判を聞きつけ、藁をもすがる思いでセリーナの元にやって来たとの事。 必死に頼み込む公爵を見て、出来る事はやってみよう、そう思ったセリーナは、早速公爵家で治療を始めるのだが… 正義感が強く努力家のセリーナと、病気のせいで心が歪んでしまった公爵令息ルークの恋のお話です。

追放された無能才女の私、敵国最強と謳われた冷徹公爵に「お飾りの婚約者になれ」と命じられました ~彼の呪いを癒せるのは、世界で私だけみたい~

放浪人
恋愛
伯爵令嬢エリアーナは、治癒魔法が使えない『無能才女』として、家族からも婚約者の王子からも虐げられる日々を送っていた。 信じていたはずの妹の裏切りにより、謂れのない罪で婚約破棄され、雨の降る夜に家を追放されてしまう。 絶望の淵で倒れた彼女を拾ったのは、戦場で受けた呪いに蝕まれ、血も涙もないと噂される『冷徹公爵』クロード・フォン・ヴァレンシュタインだった。 「俺の“お飾り”の婚約者になれ。お前には拒否権はない」 ――それは、互いの利益のための、心のない契約のはずだった。 しかし、エリアーナには誰にも言えない秘密があった。彼女の持つ力は、ただの治癒魔法ではない。あらゆる呪いを浄化する、伝説の*『聖癒の力』*。 その力が、公爵の抱える深い闇を癒やし始めた時、偽りの関係は、甘く切ない本物の愛へと変わっていく。 これは、全てを失った令嬢が自らの真の価値に目覚め、唯一無二の愛を手に入れるまでの、奇跡の物語。

【完結】転生したらラスボスの毒継母でした!

白雨 音
恋愛
妹シャルリーヌに裕福な辺境伯から結婚の打診があったと知り、アマンディーヌはシャルリーヌと入れ替わろうと画策する。 辺境伯からは「息子の為の白い結婚、いずれ解消する」と宣言されるが、アマンディーヌにとっても都合が良かった。「辺境伯の財で派手に遊び暮らせるなんて最高!」義理の息子など放置して遊び歩く気満々だったが、義理の息子に会った瞬間、卒倒した。 夢の中、前世で読んだ小説を思い出し、義理の息子は将来世界を破滅させようとするラスボスで、自分はその一因を作った毒継母だと知った。破滅もだが、何より自分の死の回避の為に、義理の息子を真っ当な人間に育てようと誓ったアマンディーヌの奮闘☆  異世界転生、家族愛、恋愛☆ 短めの長編(全二十一話です) 《完結しました》 お読み下さり、お気に入り、エール、いいね、ありがとうございます☆ 

【完結】転生白豚令嬢☆前世を思い出したので、ブラコンではいられません!

白雨 音
恋愛
エリザ=デュランド伯爵令嬢は、学院入学時に転倒し、頭を打った事で前世を思い出し、 《ここ》が嘗て好きだった小説の世界と似ている事に気付いた。 しかも自分は、義兄への恋を拗らせ、ヒロインを貶める為に悪役令嬢に加担した挙句、 義兄と無理心中バッドエンドを迎えるモブ令嬢だった! バッドエンドを回避する為、義兄への恋心は捨て去る事にし、 前世の推しである悪役令嬢の弟エミリアンに狙いを定めるも、義兄は気に入らない様で…??  異世界転生:恋愛 ※魔法無し  《完結しました》 お読み下さり、お気に入り、エール、ありがとうございます☆

虚弱体質?の脇役令嬢に転生したので、食事療法を始めました

たくわん
恋愛
「跡継ぎを産めない貴女とは結婚できない」婚約者である公爵嫡男アレクシスから、冷酷に告げられた婚約破棄。その場で新しい婚約者まで紹介される屈辱。病弱な侯爵令嬢セラフィーナは、社交界の哀れみと嘲笑の的となった。

有能女官の赴任先は辺境伯領

たぬきち25番
恋愛
お気に入り1000ありがとうございます!! お礼SS追加決定のため終了取下げいたします。 皆様、お気に入り登録ありがとうございました。 現在、お礼SSの準備中です。少々お待ちください。 辺境伯領の当主が他界。代わりに領主になったのは元騎士団の隊長ギルベルト(26) ずっと騎士団に在籍して領のことなど右も左もわからない。 そのため新しい辺境伯様は帳簿も書類も不備ばかり。しかも辺境伯領は王国の端なので修正も大変。 そこで仕事を終わらせるために、腕っぷしに定評のあるギリギリ貴族の男爵出身の女官ライラ(18)が辺境伯領に出向くことになった。   だがそこでライラを待っていたのは、元騎士とは思えないほどつかみどころのない辺境伯様と、前辺境伯夫妻の忘れ形見の3人のこどもたち(14歳男子、9歳男子、6歳女子)だった。 仕事のわからない辺境伯を助けながら、こどもたちの生活を助けたり、魔物を倒したり!? そしていつしか、ライラと辺境伯やこどもたちとの関係が変わっていく…… ※お待たせしました。 ※他サイト様にも掲載中

処理中です...