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第九十八話
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「シルビア……お前はなんちゅう事をしてくれたんや」
ステージア様のお店の代表室に香水を届けた私は、なぜかステージア様を困らせていました。
私何か勘違いをしていたかしら? 確かに香水百本を仕入れて来いと言われたはずだけれども。
「あの、ステージア様、私は何か間違いをしましたでしょうか?」
「いや! まだや、まだ判断はできへん! これが香水かどうかを確認してからや」
そうしてステージア様は小瓶を一本手に取り、ふたを開けて人差し指を小瓶の口に当てて一振りしました。
人差し指を鼻に近づけ、もう片方の手で指を扇いで匂いを運びます。
するといきなり力尽きたのかガクリと崩れ落ち、ローテーブルに手をかけてプルプル震えています。
「す、ステージア様お気をしっかり! 体調が悪いのでしたらすぐにお医者様を――」
「嗅いだことのない香りの香水やんけーー!!」
体を支えようと近づいた私の耳元で、いきなり大声を出したステージア様。
うう……み、耳が痛いです。
「あ、あのステージア様?」
「シルビア! なんやこれ! 香水や! ホンマに香水を作ったんか!?」
「そういうご命令だったのですよね? 苦労しましたが何とか作り上げました」
するとステージア様の表情は嬉しそうに……いえニヤケた顔になりました。
うひ、うひひ、とかおっしゃっていますが、どうされたのでしょうか。
「し、シルビアはん? 香水の作り方は誰かに教えた?」
「えっと、修繕科のクリッパーさんにはお話ししました」
「クリッパーはんやな、あの人なら大丈夫や問題あらへん。他にはおらんな?」
「直接香水を作るとは言っていませんが、料理長に材料の相談をしました」
「料理長はんか、あの人も問題あらへんやろ。他には?」
「他には……作る前にどこで買えるかリック……セドリック様に相談しました」
「それは知っとる、問題なしや。そんだけやな?」
「それだけです」
「よーっしゃー! これで勝てる! 目にもの見せたるであの強欲商人め!!」
両手の拳を天に突き上げ飛び跳ね、今にも踊りだしそうに……踊りだしました。
何といいますか、ステージア様はとても面白い方ですね。
「よーやったシルビア! おおっとその前に確認や」
少し悪い顔になり私の耳元に顔と手を近づけ小声で語り掛けます。
「取り分は一割でええか?」
「取り分? これらは全て献上するつもりでいました」
「な、なんやてシルビア! お前は神……いや待て! それは商人としてはあかん事や! 働きにはきちんとした対価を払わなあかんのや! 商人はケチであってもいつもニコニコ現金払いや!」
今度は両手で頭を掻きむしりながら上半身を前後左右に揺さぶります。
見ていて飽きません。……お姫様、ですよね?
「よし決めたで! やっぱシルビアには売り上げの一割を払う! 特別手当やと思って持っとき!」
「わかりました、ではありがたく頂戴します」
「もろとけもろとけ! 更に開発費としてボーナスも弾むでぇ!」
「いえ、流石にそれは……」
「もろとけ!」
「頂戴します」
押しが強いです!
しかし貴族向けの香水として販売するとして、その一割でも凄い金額になります。
下手したら数本売れたら私の月のお給金を超えてしまうのではないでしょうか。
「あ、ちなみに作り方は極秘やから、ぜっっっったいに誰にも言うたらあかんで」
「秘密は厳守します」
「よっしゃ! ほなら量産体制に入るで!」
それからはとても素早く指示を出して店員を動かし、私の部屋から道具一式をお店の秘密の部屋に運び込み、厳選された店員にのみ作り方を伝授しました。
意外や意外、皆さんも香水作りに挑戦していたようですが、やはり直接お湯につける蒸留しかしていなかった様です。
蒸す方法やエタノールに漬ける方法は思い付かなかったとか。
とはいえ流石専門家、やり方を教えたらあっという間にマスターしました。
そしてあれよあれよという間に体制が整い、修繕科のクリッパーさんに器具の注文が行き、設備も充実してしまいました。
流石はお姫様です。
「よっしゃ! これで新香水の量産体制は整った! カーッカッカッカ! 見とれよ腐れ商人め、これからはウチの時代や!」
店頭に並んだ新香水を見てステージア様はご満悦です。
中々評判が良いようで次から次へと売れていきます。
……高価な香水をそんな簡単に手に取るなんて、やっぱり貴族は凄いですね。
「さてさて~、よしシルビア! 次に作るモンは――」
「そこまでだステージア」
「ゲッ!! サファリ!」
「サファリ『お兄様』だぜ」
「なにがお兄様や。同い年やろが!」
店頭に三男のサファリ様がいらっしゃいました。
堀りの深い均整の取れた顔立ちで、髪はおでこにかからないようにふわりと左右に分けています。
黒い瞳、若干茶色っぽい黒髪、もみあげからアゴへ、そして鼻の下には切りそろえられた短い髭。
王子王女は皆さんとても美しいのですが、サファリ様は少しワイルド系でしょうか、少し危険な香りが魅力的です。
「お前の用事は終わったはずだ。次は俺が持っていくぜ」
「なんやそれ! 横暴や!」
「無理難題を言いつけるお前の方が横暴だろう?」
「やんやと⁉ 屁理屈ばかりいいくさりおって!」
「何とでも言うがいいぜ。さあシルビア、付いて来てくれ」
突然現れたサファリ様ですが、ステージア様は腕を組んでそっぽを向いています。
これは「嫌だけど仕方がない」というポーズでしょうか。
私はサファリ様に付いてお店を出ました。
「シルビア、これからは俺の命令に従ってもらうぜ」
「かしこまりました。何なりとお申し付けください」
「では夜の勤めについて説明をするから、今晩は俺の部屋に来い」
……なんですって??
ステージア様のお店の代表室に香水を届けた私は、なぜかステージア様を困らせていました。
私何か勘違いをしていたかしら? 確かに香水百本を仕入れて来いと言われたはずだけれども。
「あの、ステージア様、私は何か間違いをしましたでしょうか?」
「いや! まだや、まだ判断はできへん! これが香水かどうかを確認してからや」
そうしてステージア様は小瓶を一本手に取り、ふたを開けて人差し指を小瓶の口に当てて一振りしました。
人差し指を鼻に近づけ、もう片方の手で指を扇いで匂いを運びます。
するといきなり力尽きたのかガクリと崩れ落ち、ローテーブルに手をかけてプルプル震えています。
「す、ステージア様お気をしっかり! 体調が悪いのでしたらすぐにお医者様を――」
「嗅いだことのない香りの香水やんけーー!!」
体を支えようと近づいた私の耳元で、いきなり大声を出したステージア様。
うう……み、耳が痛いです。
「あ、あのステージア様?」
「シルビア! なんやこれ! 香水や! ホンマに香水を作ったんか!?」
「そういうご命令だったのですよね? 苦労しましたが何とか作り上げました」
するとステージア様の表情は嬉しそうに……いえニヤケた顔になりました。
うひ、うひひ、とかおっしゃっていますが、どうされたのでしょうか。
「し、シルビアはん? 香水の作り方は誰かに教えた?」
「えっと、修繕科のクリッパーさんにはお話ししました」
「クリッパーはんやな、あの人なら大丈夫や問題あらへん。他にはおらんな?」
「直接香水を作るとは言っていませんが、料理長に材料の相談をしました」
「料理長はんか、あの人も問題あらへんやろ。他には?」
「他には……作る前にどこで買えるかリック……セドリック様に相談しました」
「それは知っとる、問題なしや。そんだけやな?」
「それだけです」
「よーっしゃー! これで勝てる! 目にもの見せたるであの強欲商人め!!」
両手の拳を天に突き上げ飛び跳ね、今にも踊りだしそうに……踊りだしました。
何といいますか、ステージア様はとても面白い方ですね。
「よーやったシルビア! おおっとその前に確認や」
少し悪い顔になり私の耳元に顔と手を近づけ小声で語り掛けます。
「取り分は一割でええか?」
「取り分? これらは全て献上するつもりでいました」
「な、なんやてシルビア! お前は神……いや待て! それは商人としてはあかん事や! 働きにはきちんとした対価を払わなあかんのや! 商人はケチであってもいつもニコニコ現金払いや!」
今度は両手で頭を掻きむしりながら上半身を前後左右に揺さぶります。
見ていて飽きません。……お姫様、ですよね?
「よし決めたで! やっぱシルビアには売り上げの一割を払う! 特別手当やと思って持っとき!」
「わかりました、ではありがたく頂戴します」
「もろとけもろとけ! 更に開発費としてボーナスも弾むでぇ!」
「いえ、流石にそれは……」
「もろとけ!」
「頂戴します」
押しが強いです!
しかし貴族向けの香水として販売するとして、その一割でも凄い金額になります。
下手したら数本売れたら私の月のお給金を超えてしまうのではないでしょうか。
「あ、ちなみに作り方は極秘やから、ぜっっっったいに誰にも言うたらあかんで」
「秘密は厳守します」
「よっしゃ! ほなら量産体制に入るで!」
それからはとても素早く指示を出して店員を動かし、私の部屋から道具一式をお店の秘密の部屋に運び込み、厳選された店員にのみ作り方を伝授しました。
意外や意外、皆さんも香水作りに挑戦していたようですが、やはり直接お湯につける蒸留しかしていなかった様です。
蒸す方法やエタノールに漬ける方法は思い付かなかったとか。
とはいえ流石専門家、やり方を教えたらあっという間にマスターしました。
そしてあれよあれよという間に体制が整い、修繕科のクリッパーさんに器具の注文が行き、設備も充実してしまいました。
流石はお姫様です。
「よっしゃ! これで新香水の量産体制は整った! カーッカッカッカ! 見とれよ腐れ商人め、これからはウチの時代や!」
店頭に並んだ新香水を見てステージア様はご満悦です。
中々評判が良いようで次から次へと売れていきます。
……高価な香水をそんな簡単に手に取るなんて、やっぱり貴族は凄いですね。
「さてさて~、よしシルビア! 次に作るモンは――」
「そこまでだステージア」
「ゲッ!! サファリ!」
「サファリ『お兄様』だぜ」
「なにがお兄様や。同い年やろが!」
店頭に三男のサファリ様がいらっしゃいました。
堀りの深い均整の取れた顔立ちで、髪はおでこにかからないようにふわりと左右に分けています。
黒い瞳、若干茶色っぽい黒髪、もみあげからアゴへ、そして鼻の下には切りそろえられた短い髭。
王子王女は皆さんとても美しいのですが、サファリ様は少しワイルド系でしょうか、少し危険な香りが魅力的です。
「お前の用事は終わったはずだ。次は俺が持っていくぜ」
「なんやそれ! 横暴や!」
「無理難題を言いつけるお前の方が横暴だろう?」
「やんやと⁉ 屁理屈ばかりいいくさりおって!」
「何とでも言うがいいぜ。さあシルビア、付いて来てくれ」
突然現れたサファリ様ですが、ステージア様は腕を組んでそっぽを向いています。
これは「嫌だけど仕方がない」というポーズでしょうか。
私はサファリ様に付いてお店を出ました。
「シルビア、これからは俺の命令に従ってもらうぜ」
「かしこまりました。何なりとお申し付けください」
「では夜の勤めについて説明をするから、今晩は俺の部屋に来い」
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