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息抜き
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294 息抜き
「なあ、昨日オイゲンと何の話をしていたのだ?いい加減話してくれても良いでは無いか」
貸切にするのは夕方から、師匠はどうせ客なんてこねーから昼の営業は休んでいいと言われている。
だけど落ち着かなくって今日もいつもの時間に出勤してしまった。フェルは流石に早すぎると言ったけど、不安というよりも任せてくれた嬉しさでつい張り切ってしまった。
野菜などの皮剥きは済ませて、僕はフェルと2人で並びながら串カツ用の具材の串打ちをしている。
向かい側ではロイが少し緊張した顔つきでアラカルトメニューの準備を進めていた。
昨日の夜からずっとだけど、フェルの追求が止まらない。
どうしてこういう時って女の子って勘が鋭くなるのだろう。
結局折れて僕は素直にオイゲンに南の森の調査に行かないかと誘われたことを話す。
「そうか。いつぐらいになりそうだ?私も予定を空けておかなくては」
そうなっちゃうよね。当然私も行くってそういう話になるのはわかってた。
「ええとね、今回は3人だけで行こうって話になってるんだ」
「どういうことだ?私が同行することに何の問題があるというのだ」
「問題があるってことじゃなくて、リックさんもきっと疲れが溜まっているだろうから少し息抜きをしてもらおうってオイゲンが言い出して……」
「私がいると息抜きにならないというのか?それはケイも同じ考えなのか?」
「いや、そうじゃなくってそれはリックさんの話で……」
「しかしたまにはのんびりとか言っていたではないか。私といると疲れてしまうのか?」
やっぱり聞いてたんだな。鋭いっていうか何というか。
「そういうことじゃないと思うんだ。リックさんだってリンさんのことが嫌いになったってことじゃないと思うし、ほら、遊びに行った時、リックさんずっとリンさんの世話を焼いて心配してたじゃない。そんなのが続けばきっと疲れちゃうってオイゲンは気にかけてるんだよ。たまにはそういうの忘れて気兼ねなく依頼をこなせば……また新鮮な気持ちでリンさんに向き合えるっていうか……」
フェルはかぼちゃに串を刺す手を止めて僕の方を見た。
「あのね。たぶんなんだけど、この前王都の僕たちの家に帰って来た時、何となくほっとしたじゃない。それに少し似ていて、好きな人のところに帰って来て安心したいって言うか……、たぶん好きな人をもっと好きになりたいからそういう息抜きみたいなことがたまには必要なんだと思うんだよ。僕はもっとフェルのこと好きになりたいから……」
途端にフェルの顔がみるみる赤くなる。
「そ、そうなのか、そ、それなら私だって……。と、とりあえずケイの言いたいことはわかった。だが少し私にも考える時間をくれ、エリママにも……少し……相談してみて……だな」
それから僕たちは無言でひたすらいろんな具材を串に刺した。
ロイが少し冷ややかな目で僕たちを見ている。
お昼ご飯は今日出す料理を試食することにした。アラカルトは前に師匠が作ってくれた時みたいに小さめに作っている。ロイは小さめに作ったロールキャベツを串に刺しておでんのようにしたものを作った。
「このロールキャベツ良いじゃない。食べやすくていいと思うよ」
「もっと味が染みたものに少しケチャップでも付けたらいいと思ってるっす」
「辛子をつけてもいいと思うよ。マスタードなんてどう?」
そう言って冷蔵庫からマスタードを持ってくる。
マスタードに醤油を3滴ほど、うっすらと風味付けのつもりだ。このスープにはその方が合う気がした。
「マスタードに醤油っすか?確かに風味が出ていいかもしれないっす」
問題は料理を出す順番だけれど、フェルがテーブルの並べ替えをしてくれるみたい。配置を聞いて料理をどう出すか考える。結局、3つの島に大皿で料理は置いていくことにしてあとはロイと細かい順番をうちあわせていった。
「ねえ、ロイ、パイ生地って作れる?」
「パイ生地は意外と簡単っすよ。折り返しの手間がかかるだけで発酵もいらないから。だけどそんなのどうするんすか?」
「せっかくなら皆さんにうちのビーフシチューを食べてもらいたいなって用意してるんだけど、立食だから大きめのお皿は邪魔になっちゃうと思うんだ。スープのカップに入れて出そうと思うんだけど……なんか味気ない感じがして」
「確かに立食だと少し食べにくいかもっすね」
「普段はパンと一緒に食べてもらってるじゃない。パイ生地で器に蓋をしてオーブンで焼けばパンの代わりになるかもって思ってさ」
「なるほどっす。スプーンで崩しながら食べるんすね。パイの生地の味もシチューに合わせて工夫できそうっすね。面白いかもしれないっす」
ロイは僕のやりたいことをすぐに理解してくれて、さらにそこからどうしたら美味しく作れるか考えてくれる。すごく頼もしい。細かく小麦の配合とか考えて、パイ生地を捏ね始めた。
割と珍しくもないようなシチューのパイ包みだけど、なかなか料理とパンを結びつけてレシピを考える人はいないから珍しがられるかもしれない。
いろんな状況に柔軟に対応できる技術を持ったロイは素晴らしい料理人だと思う。
さっきまで不安な表情で仕込みをしていた僕の頼もしい友人は、先ほどとは全くうって変わって自信たっぷりにパイ生地を練っている。
薄力粉を少し少なめにして少しもっちりとした食感を出すのだそうだ。
「しっかりやれてるの?何か困ってるなら手伝うわよ」
サンドラ姉さんが出勤して来た。程なくして師匠も店に入ってくる。
だけどもうほとんど作業は終わってしまった。
「朝からやったからもうほとんど終わっちゃいました。あ、でも、お酒の準備はこれからです」
「ケイ、あんたいったい何時から店に来てるの?どうせいつもと同じ時間でしょう。夕方の営業に間に合いさえすればいいんだから。作業に必要な時間がどのくらいなんてもうわかっているでしょう。もう少し考えて休める時には体を休めなさい。そういうことも含めて自分で自分を管理するの。そうじゃないとお店を開いても無理をしてすぐ体を壊してしまうわ」
サンドラ姉さんにこんなに厳しく言われたのは初めてかもしれない。フェルも少ししょんぼりとしながら聞いている。
「張り切って頑張ってるのはわかるの。だけど自分のことを大事にすることも大切なことよ」
「何でもがむしゃらにやりゃぁいいってもんじゃねえ。別に上手くサボれってことじゃねえが、そろそろそういうことも考えて仕事しろってことだ。これからはお前たち2人に頼むことも増えてくる。働きすぎて体が動かねーとか言ったらわかってんだろうな」
「はい!」「はいっす!」
何をされるかはわからないけれど、恐ろしいことになるのはよくわかった。
あれ?僕たち2人に頼むことも増えてくるってもしかして。
「サンドラ姉さん。もしかして物件決まったんですか?」
「そうよ。今日契約して来たわ。南地区に引っ越す店があってその後をそのまま引き継ぐの。今借りてる人が引っ越すのは来年になるみたいだけど」
「そういうことだ。いつまでもサンドラに甘えて仕事してるんじゃねえぞ。特にロイ。お前はもう少し気合い入れて仕事しろ」
思い当たることがあるのか、ロイは少しバツが悪そうな顔をする。
「あなたたちはそこでしばらく休んでなさい。多分夜は遅くなると思うわ。ある程度料理を出したらロイは先に帰っていいわ。明日も朝、実家を手伝ってくるんでしょう?」
ロイの場合、平日は実家のパン屋を手伝いながらこの店で働いているから、完全な休日となると日曜日しかない。その休みを返上して来ているのだ。僕もその方がいいと思った。
サンドラ姉さんが2階からテーブルクロスを出して来てフェルが並べたテーブルにかけていく。
師匠はどこにしまってあったのか大量の酒瓶をカウンターに並べていく。その中には僕が渡したワインのボトルもあった。
「フェル、悪いが水割りはお前が作れ。日曜に来る奴らがいつも羨ましがってんだ。もちろん変な真似をする奴がいたらボコボコにしていい。死なねー程度なら何をしてもかまわん」
かまわないの?
フェルは師匠に任せろと言って自分のやりやすいように道具をカウンターの上に並べる。
サンドラ姉さんが鏡を見ながら自分の服装を軽く直すと、入り口の扉が開いた。
「ちょっと早いがいいか?とりあえずなんか酒をくれ」
「オーリー、昔の仇名通りまだ早めにくる癖が抜けてないの?本当はみんな揃ってから乾杯するつもりだったけど、良いわ。もともと決められた時間に集まるような人たちじゃないもの。最初はビールでいいかしら」
椅子は隅に置いていたけれど、サンドラ姉さんが椅子を持って来て座ってもらう。
オーリーさんは足をひきづってた。
早起きオーリー。それが二つ名みたい。いつも集合時間より早めに来るからそう呼ばれていたそうだ。
「あの……確か開拓村で狩りを手伝ってくれた人ですよね?」
「久しぶりだな。あんたらのおかげで楽に狩りができるようになった。みんな肉が食えるようになったからお前たちには感謝してるぜ。世話役と一緒に村から何人か来るからな。今日はよろしく頼む」
師匠が3つビールを持ってくる。
グラスを合わせてサンドラ姉さんと3人で乾杯した。
もう飲み始めるのか。
自分の作業に集中しよう。
ロイのピクルスをもらって、小皿に盛ってそれを出す。料理はまだだからそれまで軽くつまんでもらう。
やがて時間になりお客さんがどんどん店に入ってくる。人混みでいっぱいで誰が来たのかよくわからなくなって来た。
「ロイ、ケイ。料理は焦らなくて良いからな。どうせ酒ばかり飲む連中ばかりだ。料理なんて暇つぶし程度にしか食わねーような奴らにそんな気遣いする必要はない」
師匠がそんなことを言い出す。その師匠の横から僕に挨拶をしてくる人がいた。
「やあ、ケイくん。久しぶりだね。君たちがスラムにいた頃が懐かしいね。炊き出しのことはすまない。まだ彼らがどうして王都に来たのかわからないんだ」
スラムの顔役のお爺さんだ。
この人も日曜日の常連だったのかな。
いつの間にかガンツとライツ、ライアンさんやアランさんもいる。
他にもどこかで見たことあるような……。お店のお客さんで来てたのかな?
「言い出した奴が仕切れ。酒を持ってない奴はいるか?無いなら今のうちに注文しろ」
師匠がそう言って、アランさんがみんなの中心に出てくる。
今回はどうやらアランさんがみんなを集めたみたいだ。
アランさんはみんなに囲まれてその中心で乾杯の音頭をとる。
「なあ、昨日オイゲンと何の話をしていたのだ?いい加減話してくれても良いでは無いか」
貸切にするのは夕方から、師匠はどうせ客なんてこねーから昼の営業は休んでいいと言われている。
だけど落ち着かなくって今日もいつもの時間に出勤してしまった。フェルは流石に早すぎると言ったけど、不安というよりも任せてくれた嬉しさでつい張り切ってしまった。
野菜などの皮剥きは済ませて、僕はフェルと2人で並びながら串カツ用の具材の串打ちをしている。
向かい側ではロイが少し緊張した顔つきでアラカルトメニューの準備を進めていた。
昨日の夜からずっとだけど、フェルの追求が止まらない。
どうしてこういう時って女の子って勘が鋭くなるのだろう。
結局折れて僕は素直にオイゲンに南の森の調査に行かないかと誘われたことを話す。
「そうか。いつぐらいになりそうだ?私も予定を空けておかなくては」
そうなっちゃうよね。当然私も行くってそういう話になるのはわかってた。
「ええとね、今回は3人だけで行こうって話になってるんだ」
「どういうことだ?私が同行することに何の問題があるというのだ」
「問題があるってことじゃなくて、リックさんもきっと疲れが溜まっているだろうから少し息抜きをしてもらおうってオイゲンが言い出して……」
「私がいると息抜きにならないというのか?それはケイも同じ考えなのか?」
「いや、そうじゃなくってそれはリックさんの話で……」
「しかしたまにはのんびりとか言っていたではないか。私といると疲れてしまうのか?」
やっぱり聞いてたんだな。鋭いっていうか何というか。
「そういうことじゃないと思うんだ。リックさんだってリンさんのことが嫌いになったってことじゃないと思うし、ほら、遊びに行った時、リックさんずっとリンさんの世話を焼いて心配してたじゃない。そんなのが続けばきっと疲れちゃうってオイゲンは気にかけてるんだよ。たまにはそういうの忘れて気兼ねなく依頼をこなせば……また新鮮な気持ちでリンさんに向き合えるっていうか……」
フェルはかぼちゃに串を刺す手を止めて僕の方を見た。
「あのね。たぶんなんだけど、この前王都の僕たちの家に帰って来た時、何となくほっとしたじゃない。それに少し似ていて、好きな人のところに帰って来て安心したいって言うか……、たぶん好きな人をもっと好きになりたいからそういう息抜きみたいなことがたまには必要なんだと思うんだよ。僕はもっとフェルのこと好きになりたいから……」
途端にフェルの顔がみるみる赤くなる。
「そ、そうなのか、そ、それなら私だって……。と、とりあえずケイの言いたいことはわかった。だが少し私にも考える時間をくれ、エリママにも……少し……相談してみて……だな」
それから僕たちは無言でひたすらいろんな具材を串に刺した。
ロイが少し冷ややかな目で僕たちを見ている。
お昼ご飯は今日出す料理を試食することにした。アラカルトは前に師匠が作ってくれた時みたいに小さめに作っている。ロイは小さめに作ったロールキャベツを串に刺しておでんのようにしたものを作った。
「このロールキャベツ良いじゃない。食べやすくていいと思うよ」
「もっと味が染みたものに少しケチャップでも付けたらいいと思ってるっす」
「辛子をつけてもいいと思うよ。マスタードなんてどう?」
そう言って冷蔵庫からマスタードを持ってくる。
マスタードに醤油を3滴ほど、うっすらと風味付けのつもりだ。このスープにはその方が合う気がした。
「マスタードに醤油っすか?確かに風味が出ていいかもしれないっす」
問題は料理を出す順番だけれど、フェルがテーブルの並べ替えをしてくれるみたい。配置を聞いて料理をどう出すか考える。結局、3つの島に大皿で料理は置いていくことにしてあとはロイと細かい順番をうちあわせていった。
「ねえ、ロイ、パイ生地って作れる?」
「パイ生地は意外と簡単っすよ。折り返しの手間がかかるだけで発酵もいらないから。だけどそんなのどうするんすか?」
「せっかくなら皆さんにうちのビーフシチューを食べてもらいたいなって用意してるんだけど、立食だから大きめのお皿は邪魔になっちゃうと思うんだ。スープのカップに入れて出そうと思うんだけど……なんか味気ない感じがして」
「確かに立食だと少し食べにくいかもっすね」
「普段はパンと一緒に食べてもらってるじゃない。パイ生地で器に蓋をしてオーブンで焼けばパンの代わりになるかもって思ってさ」
「なるほどっす。スプーンで崩しながら食べるんすね。パイの生地の味もシチューに合わせて工夫できそうっすね。面白いかもしれないっす」
ロイは僕のやりたいことをすぐに理解してくれて、さらにそこからどうしたら美味しく作れるか考えてくれる。すごく頼もしい。細かく小麦の配合とか考えて、パイ生地を捏ね始めた。
割と珍しくもないようなシチューのパイ包みだけど、なかなか料理とパンを結びつけてレシピを考える人はいないから珍しがられるかもしれない。
いろんな状況に柔軟に対応できる技術を持ったロイは素晴らしい料理人だと思う。
さっきまで不安な表情で仕込みをしていた僕の頼もしい友人は、先ほどとは全くうって変わって自信たっぷりにパイ生地を練っている。
薄力粉を少し少なめにして少しもっちりとした食感を出すのだそうだ。
「しっかりやれてるの?何か困ってるなら手伝うわよ」
サンドラ姉さんが出勤して来た。程なくして師匠も店に入ってくる。
だけどもうほとんど作業は終わってしまった。
「朝からやったからもうほとんど終わっちゃいました。あ、でも、お酒の準備はこれからです」
「ケイ、あんたいったい何時から店に来てるの?どうせいつもと同じ時間でしょう。夕方の営業に間に合いさえすればいいんだから。作業に必要な時間がどのくらいなんてもうわかっているでしょう。もう少し考えて休める時には体を休めなさい。そういうことも含めて自分で自分を管理するの。そうじゃないとお店を開いても無理をしてすぐ体を壊してしまうわ」
サンドラ姉さんにこんなに厳しく言われたのは初めてかもしれない。フェルも少ししょんぼりとしながら聞いている。
「張り切って頑張ってるのはわかるの。だけど自分のことを大事にすることも大切なことよ」
「何でもがむしゃらにやりゃぁいいってもんじゃねえ。別に上手くサボれってことじゃねえが、そろそろそういうことも考えて仕事しろってことだ。これからはお前たち2人に頼むことも増えてくる。働きすぎて体が動かねーとか言ったらわかってんだろうな」
「はい!」「はいっす!」
何をされるかはわからないけれど、恐ろしいことになるのはよくわかった。
あれ?僕たち2人に頼むことも増えてくるってもしかして。
「サンドラ姉さん。もしかして物件決まったんですか?」
「そうよ。今日契約して来たわ。南地区に引っ越す店があってその後をそのまま引き継ぐの。今借りてる人が引っ越すのは来年になるみたいだけど」
「そういうことだ。いつまでもサンドラに甘えて仕事してるんじゃねえぞ。特にロイ。お前はもう少し気合い入れて仕事しろ」
思い当たることがあるのか、ロイは少しバツが悪そうな顔をする。
「あなたたちはそこでしばらく休んでなさい。多分夜は遅くなると思うわ。ある程度料理を出したらロイは先に帰っていいわ。明日も朝、実家を手伝ってくるんでしょう?」
ロイの場合、平日は実家のパン屋を手伝いながらこの店で働いているから、完全な休日となると日曜日しかない。その休みを返上して来ているのだ。僕もその方がいいと思った。
サンドラ姉さんが2階からテーブルクロスを出して来てフェルが並べたテーブルにかけていく。
師匠はどこにしまってあったのか大量の酒瓶をカウンターに並べていく。その中には僕が渡したワインのボトルもあった。
「フェル、悪いが水割りはお前が作れ。日曜に来る奴らがいつも羨ましがってんだ。もちろん変な真似をする奴がいたらボコボコにしていい。死なねー程度なら何をしてもかまわん」
かまわないの?
フェルは師匠に任せろと言って自分のやりやすいように道具をカウンターの上に並べる。
サンドラ姉さんが鏡を見ながら自分の服装を軽く直すと、入り口の扉が開いた。
「ちょっと早いがいいか?とりあえずなんか酒をくれ」
「オーリー、昔の仇名通りまだ早めにくる癖が抜けてないの?本当はみんな揃ってから乾杯するつもりだったけど、良いわ。もともと決められた時間に集まるような人たちじゃないもの。最初はビールでいいかしら」
椅子は隅に置いていたけれど、サンドラ姉さんが椅子を持って来て座ってもらう。
オーリーさんは足をひきづってた。
早起きオーリー。それが二つ名みたい。いつも集合時間より早めに来るからそう呼ばれていたそうだ。
「あの……確か開拓村で狩りを手伝ってくれた人ですよね?」
「久しぶりだな。あんたらのおかげで楽に狩りができるようになった。みんな肉が食えるようになったからお前たちには感謝してるぜ。世話役と一緒に村から何人か来るからな。今日はよろしく頼む」
師匠が3つビールを持ってくる。
グラスを合わせてサンドラ姉さんと3人で乾杯した。
もう飲み始めるのか。
自分の作業に集中しよう。
ロイのピクルスをもらって、小皿に盛ってそれを出す。料理はまだだからそれまで軽くつまんでもらう。
やがて時間になりお客さんがどんどん店に入ってくる。人混みでいっぱいで誰が来たのかよくわからなくなって来た。
「ロイ、ケイ。料理は焦らなくて良いからな。どうせ酒ばかり飲む連中ばかりだ。料理なんて暇つぶし程度にしか食わねーような奴らにそんな気遣いする必要はない」
師匠がそんなことを言い出す。その師匠の横から僕に挨拶をしてくる人がいた。
「やあ、ケイくん。久しぶりだね。君たちがスラムにいた頃が懐かしいね。炊き出しのことはすまない。まだ彼らがどうして王都に来たのかわからないんだ」
スラムの顔役のお爺さんだ。
この人も日曜日の常連だったのかな。
いつの間にかガンツとライツ、ライアンさんやアランさんもいる。
他にもどこかで見たことあるような……。お店のお客さんで来てたのかな?
「言い出した奴が仕切れ。酒を持ってない奴はいるか?無いなら今のうちに注文しろ」
師匠がそう言って、アランさんがみんなの中心に出てくる。
今回はどうやらアランさんがみんなを集めたみたいだ。
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