フェル 森で助けた女性騎士に一目惚れして、その後イチャイチャしながらずっと一緒に暮らす話

カトウ

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うちの店に

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 295 うちの店に

「あー、本日は……」

「アラン!何をきどってやがる!」

「こういうのは苦手なんだよ。お前らが1番よくわかってんじゃねーか」

「グラスが重てえぞ。その話長くなんのか?」

「くそっ、うるせーな。あー、とにかく久しぶりに俺が皆に会いたくなって、つい手紙を出しちまった。こんなに集まってくれて嬉しく思う。昔を懐かしむ気持ちと、今こうして集まった皆とそれぞれの近況を話せることがとにかく嬉しい。今夜は無礼講と行こう。まぁいつもと同じだ。大事なことだからもう一回言うぞ。もし今日何か失礼な事があったとしても、そのことで。その代わり誰かに迷惑かけるような奴がいたら袋叩きだ。これもいつも通りだな。この場所を貸してくれたクライブに感謝。それから今日、料理を用意してくれた店の従業員にも感謝する。みんなありがとう。では」

「「「乾杯!」」」

「なっ、俺より先に言うか?乾杯!」

 みんなの息のあった乾杯の様子に少し笑ってしまった。
 
 楽しそうだ。

 そして気付いてしまった。

 この人たちはきっとあの時、領都を救った英雄たちだということに。
 
 かつて王国に大勢いたと言う高ランクの冒険者たち。皆、引退してどこかで暮らしていると聞いていたその彼らが今日は小熊亭に集まって楽しくお酒を飲んでいる。

 だけどそんな楽しそうな英雄たちを眺めている暇などない。僕たちは続々と料理を仕上げていく。

「忙しそうだの。いろいろ押し付けられて困っているのではないか?」

「ガンツ!何だか久しぶりな気がするよ。こないだまでずっと一緒に居たから」

「アランの奴がまたいろいろめんどくさい注文を入れてきおっての、ワシもかなり迷惑しておる。オヌシは大丈夫か?」

「大丈夫だよ。何だか今日の仕入れからいろいろと任されちゃったけど、実は少し嬉しいんだ。いろいろロイと相談しながらやらせてもらってる。そのうち工房に行くよ。肉屋のロバートさんが燻製用の魔道具を頼みたいんだって。時間ができたら遊びに行くね。いくら何でもご飯を食べる時間くらいあるでしょう?昼ごはんでも作りに行くよ」

「そうか。弟子たちにけっこう無理をさせてしまっておるからな。皆に飯でも作ってもらえたらワシも助かる」

「わかった。そのうち連絡するよ。楽しみにしてて」

 そしてガンツは見知らぬおじさんたちに連れ去られた。そのまま楽しそうにお酒を飲んでいる。

「ロイ、行ける?」

「こっちはもう仕上がるっすよ」

 こんな感じで厨房を預かるロイともうまく連携が取れている。
 フェルの方を見ると少し忙しそうだ。お酒のペースが早いから、大人気の水割りを作るので少し大変そうだ。

 サンドラ姉さんも手伝ってくれて、配膳は何とか出来ている。だけどサンドラ姉さんもホスト役になっているみたいだからなかなかこっちを手伝ってとも言いにくい。

「ロイ、少しペースを落とそう。だいぶ料理も出せたからそろそろ少し落ち着いてくると思う。ロイがいるうちにある程度お皿とかも洗っておきたいし、師匠も無理しなくていいって言ってた。できる範囲でできることをしっかりやればいいんだと思う。料理が多少遅れたってたぶん怒られないよ。いいところ見せようって張り切ってたけどなんか違う気がしてきた」

「ケイくんなんか領都に行って少し変わった気がするっす。でも言いたいことはなんかわかるっす。僕もちょっとおかしいって思ってたから」

 ロイも何となく同じようなことを考えてたみたい。
 美味しい料理をたくさん食べてほしいっていろいろ考えてたけど、今はこの集まりがが楽しいものになるにはどうしたらいいから考えはじめている自分がいる。

 お店を回すって、ただ黙々と料理を出すだけではダメなんだ。たぶんそうじゃない。

「あんたは結局何をしたいのさ」

 ドーラさんの声が心の中に響いてくる。
 
 ドーラさんがあの時僕に伝えたかったのはただ料理を作るだけじゃなくて、どんなお店にしたいか考えろってことだったのかもしれない。あの時ドーラさんに言われた言葉が改めて少しずつ自分の中に入ってくる感じがした。
 何をどこまでやって、どこまではやらないのか、決めるのは自分だ。

 そういう判断とか、サンドラ姉さんにすっかり頼ってばかりだったかも。

 オーブンに入れていたビーフシチューのパイ包が出来上がる。

 作業の手を止めてロイと手分けして配って回る。一気に全員分は焼けないから声をかけて欲しい人から先に配って回った。

「私にもひとつくれないか?」

 ……え?

 そう声をかけられてその人の方に振り返る。
 一瞬、心臓が止まるかと思った。

 ……レオ……さん?……庭師の…………。

 僕が驚いた顔をするとレオさんは僕に向かってにっこりと微笑んだ。

「熱いのでお気をつけください。小熊亭自慢のビーフシチューです」

 その時の僕はどんな顔をしていたんだろう。きっとおかしな表情になっていたはずだ。

 まじか。うちの店に王様が来てるよ。

 

 
 
 

 






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