フェル 森で助けた女性騎士に一目惚れして、その後イチャイチャしながらずっと一緒に暮らす話

カトウ

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気分が大事

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 297 気分が大事

 貸切の営業の日から3日経った。フェルは家の中の掃除をすると言っていたので先に店に向かう。
 明日はゼランドさん一家が家に遊びに来る。

 昨日は忙しかった。最近は火曜日が混むみたい。僕が作ったスープのせいだと言われると迷惑をかけてるような気持ちもしたけれど、それはそれで嬉しかった。

 あれから開拓村の人たちが改めてお昼にご飯を食べに来てくれて、貸切の日の料理のお礼を言われた。村の代表には何か困ったことがあったら相談してくれと言われた。そんな困ったことが起きては困るのだけど、その言葉は嬉しかった。

 水曜日の営業を始めてしばらくしたらアランさんが来た。

「Aランチな。ライスは普通盛りでいい」

「お酒はいいの?」

「これでも勤務中だ、馬鹿」

 護衛の人とかどうなってるんだろう。だけど今の王都に元Sランクの冒険者に勝てる人なんて想像がつかないのだけど。

「なあ、あの話覚えてるか?囮にならねーかって俺が言い出した話だ」

「あの話?フェルにはまだ話してないよ」

「さっきお前の家に行ってフェルを説得してきた。フェルが納得すればいいんだよな。お前も」

「そうだけど……?なんでアランさん僕たちの家の場所知ってんの?」

「あのなぁ。その気になれば俺にでも簡単に調べられるんだぞ?情報なんてそれこそ金でも積めばどうにでもなっちまうんだからな」

 実際その通りだ。だからこそ僕は目立つようなことを出来るだけしないようにしてきた。もちろん甘いところもあったのは自覚している。
 だけどあの時、みんなの役に立ちたいんだって行動したことに後悔なんてしていない。

「お前の気持ちはわかってる。なるべく目立たないように今までやってこようとしたことも含めてな。だからここから先は大人の役目だ。心配するな。これから先、王都でお前たちが不自由なく暮らしていくためにこの件は俺たちに任せてくれ」
 
 あの時アランさんに着いて行った大勢の冒険者たちの気持ちがよくわかる。
 領都であんな経験をしなかったらこんな風に思うこともなかったかもしれない。
 アランさんの表情には人を酔わせてしまうような不思議な魅力がある。そしてその瞳には信頼に応えてくれそうな強い意志が感じられた。
 結局、僕はそんなアランさんを信じてしまうのだけれど。

 フェルはどう感じたんだろう。
 振り返るとサンドラ姉さんが僕に優しく頷いた。

「なあ、お土産って、出来るか?城にずっといる連中にも食わせてやりてーんだ」

「お土産?持ち帰って食べたいってこと?出来なくないけど……サンドラ姉さん。どうしたらいい?お皿って貸し出していいの?」

「そうね……。お皿買い取ってくれるならって言いたいけど、店のお皿が足りなくなるのも困るわね……。なんか持ち帰りできる入れ物があればいいんだけど……」

 ゼランドさんの商会に走ればお弁当箱を買えるはずだ。
 お金もらって買いに行こうかな?その後は勝手に使って貰えばいいし。

「全部で何人だっけ?ゼランドさんのところで入れ物買って来るよ。今日はそんな混んでないし、僕が行けば安く買えるからそんなに負担にはならないと思うけど。サンドラ姉さん。ここ任せてもいい?どうするアランさん」

 サンドラ姉さんとアランさんに見送られてゼランド商会に走る。
 店員さんに苦笑されつつ、人数分のお弁当箱を買った。

 アランさんに好きに作っていいか聞いて、騎士団のみんなにお弁当を作る。できれば温めて食べてと、一言添えた。

「いいと思うわよ、そういうの。前のあなたならそんなこと絶対にしなかったと思うわ」

 帰ってきて落ち着いた頃、サンドラ姉さんが僕にそう言った。

「私たちが心配してたことも、あなたは少しずつ自分で解決しようとしてる。時々もどかしいって思ったりもするけれど大丈夫よ。帰ってきたら話そうと思ってたことがすっかり無駄になっちゃったみたい。あなたはそのまま真っ直ぐ進んでいきなさい」

 そう言うサンドラさんの顔をまともに見ることができなかった。

 僕を見ていてくれている人は王都にも大勢いる。
 泣きそうになっちゃうからなんだか悔しくって、サンドラ姉さんの顔が見れなくてただ下を向いていることしかできなかった。

 翌朝はフェルに起こされた。寝る前に明日の朝は走りに行くのはやめようって決めたら思い切り油断した。言い訳だけど寝坊する時ってそんな時だと思う。
 
 もう少し寝てたくて目覚まし時計を止めた後の記憶がない。スヌーズ機能付きの目覚まし……。ゼランドさんのお店で見たら結構高かったんだよな。

 着替えてきちんと髪まで整えたフェルに優しく起こされてしまった。

「良いのだ。休日とはそういうものだ。大体ケイは普段から気を張り過ぎなのだ。良いから先に顔を洗ってこい。よだれの跡がまだ乾いていないぞ」

 そう言われて慌てて口を拭う。洗い場に行って急いで顔を洗った。
 部屋に戻るとフェルはベッドに横になっている。口元がふにふにとにやけている感じ。
 パンツまでは脱がなかったけど、ベッドに横になって僕を眺めるフェルの前で急いで着替えて身支度をする。

「こういう日もあっても良いだろう。ケイが悪いのだぞ。目覚ましの音で起きないのだから。だが私もケイにゆっくり休んでもらいたいと思ってしまったのだ。目覚ましを止めた後の寝顔がとても可愛かったからな。すまない」

 フェルも起きてたんだったら二度寝する前にそこで起こしてよ。
 少しむっとした気持ちのままリビングに向かう。

「お茶でも先に入れようと思ったのだが、お湯が沸くのを待てなかった。もう少し寝ていたかったか?お湯が沸くまでの間がもどかしくて、つい寝ているケイを起こしたくなってしまった」

 急にしゅんとなるフェル。ずるいよ。そんな顔されたら怒れなくなる。

 せっかくの休みだから仲良くしたい。

 分担を決めてゼランドさんたちを向い入れる準備をする。
 フェルが頼んだ物干しに布団を干して、洗濯物はまとめてマジックバッグに。
 最後は2人で玄関の掃除をしてお出迎えの用意を済ませる。
 ネコの絵が描かれたマグカップに朝に淹れた紅茶の残りを注いで、テーブルに向かい合い2人でお茶を飲んだ。
 ゼランドさんたちは夕方やって来る。

 朝の時間は日当たりが良くって、冬の柔らかな日差しが心地よくリビングに差し込んでいる。
 今朝のことなんてこうしていたらもうどうでも良かった。フェルと楽しくおしゃべりしながら美味しい紅茶を飲んだ。

 遅めの朝ごはん。たぶん昼食も兼ねている。一緒にオムライスを作って食べた。
 
 仕上げの卵焼きはフェルがやりたいと言ったから少し穴が空いてしまっていたけどケチャップで飾りを作って見た目を面白くしてみた。

「味は変わらないから大丈夫だよ。お客さんに出すわけじゃないから、出来上がりがきれいかどうかなんて、そんなのどうでも良いって思うんだ。これはこれでかわいいじゃん」

 ケチャップで細工したその仕上がりを見て、パッとフェルが嬉しそうな顔をする。
 美味しさとか、見た目の派手さとかよりも、きっと料理って気分が大事。
 
 美味しいオムライスを仕上げるコツってたぶん愛情だと思う。タマゴなんて、形なんて、そんなことが大事なわけじゃない。
 包み込む作業にどれだけ愛情を注げるか。きっとまず最初はそこからなんだ。

 フェルが仕上げたオムライス。
 僕には今まで食べたことがないくらい美味しく感じられた。

 食器を洗うフェルの後ろで今日の夕食の準備を始める。屋台で出してた照り焼きバーガーや、フェルにもまだ出したことのない料理にも挑戦してみた。
 保冷庫から昨日漬けておいたピクルスを出す。ひと切れつまんで味見してみた。
 悔しいけどロイが作った方が美味しい。ここ半年くらいずっと研究してたもんな。ロイはピクルスを作る液を一晩保冷庫で寝かせているらしい。それかな。ロイのはもっと味がぎゅっと詰まってたような気がする。
 だけどそれをそのままマネをするのも少し違う気がする。
 ピクルスを漬けている瓶に試作中のコンソメスープの素を少し振りかけた。

 領都でいっぱい買ってきたチェスターさんのチーズを使ってチーズフォンデュを作ってみようと思っている。
 ベーコンや腸詰の他、ジャガイモやカボチャ、ニンジンなども下茹でして串に刺していく。
 そしてチェスターさんのところから昨日買ってきたミニトマト。
 
 新しい品種として小さなトマトを作り始めたと言う話は聞いていた。ようやく増えたので少し出荷できるようになったのだそう。鉢植えにもできるみたいだから春になったら分けてもらう約束をしてる。

 チーズフォンデュの作り方はそこまで難しくない。
 ニンニクの香りを付けた鍋に白ワインと水を入れ、そこにチーズを溶かしていく。
 いくつか香草は入れるけどあくまで控えめ。主役はチーズだ。

 フェルが不思議そうに鍋をのぞきこむ。
 切ったばかりのバゲットを串に刺して、フェルがチーズをすくって食べた。
 
 口を押さえながら目を輝かしている大好きな人の笑顔がとても可愛らしかった。

  
 

 

 





 
 
 

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

 
 
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