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胸を張って言える
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313 胸を張って言える
大晦日。ゼランドさんの家には午後に行くことになっていた。
ガンツたちは何もいらんとか言っていたけれど、貴族街に寄って去年と同じお酒を買ってきた。
屋敷に着くなりフェルはエリママのところに行き、僕はひとり取り残されて食堂……これはリビング?
大きなテーブルの隅っこに座り、メイドさんに出されたお茶をひっそりと飲んでいる。
ガチャっと音がして後ろの方の扉が開く。
「ケイくーん。お待たせー。今日は仕事を早く切り上げたんだよー。兄たちも父さんも今は忙しいからさー。ケイくん屋敷でひとりぼっちになっちゃうって思ってさー」
そうなのだ3男。僕の肩幅はもうすっかり狭くなってしまっている。
大きなテーブルの隅っこで、僕と3男は仲良くおしゃべりしながら過ごした。
そうは言っても、だいたい3男が話すことに僕が相づちを打っているような感じだったけど。
3男の話は主に領都のことだった。
3男もこの先のことをいろいろ考えてる。
僕は……。
友達がキラキラしながら将来のことを話していると、つい自分と比べて考えてしまう。
だけど悔しくはなかった。
今、小熊亭で働くことに特に不満もないし、毎日が充実してる。3男と比べて自分は、とか落ち込んだりすることはない。素直に3男のことを応援したい気持ちになった。
だけど年明けから日曜日も出勤しなくちゃいけなくなったんだよなー。
サンドラ姉さんの代わりに日曜日は師匠と2人で店をやることになってしまった。
ロイは実家の仕事があるから平日、店を休む日は実家の店の手伝いをしている。ロイにとって休日と言えるような日は日曜日しかない。そして他の人では絶対上手くやれない。
だけど炊き出しは?
スラムの顔役のバルドさんとサンドラ姉さんは昔からの知り合いだ。
外堀とか、すでに埋められていたとか、何だかよくわからないまま、炊き出しの日は変更されて。
「ケイ。わかるわよね?あなたにとってこれはいい機会よ。中途半端なことなんかしてたら意味がないわ。真剣にやりなさい」
サンドラ姉さん。急にそんなこと言われても。
2人きりで、しかもとなり合って師匠と営業なんて。怖い。
「あ、火曜日はあたしのとこを手伝ってもらうから、そのつもりでいて。あと新しいお店のメニューもしっかり考えるのよ」
サンドラ姉さん。
少し、理不尽です。
だけどそうなると小熊亭は?
店は回せるの?
僕の心配をよそに、しっかりと確実にシフトが組まれていた。
サンドラ姉さん……。絶対初めから仕組んでたでしょ。
3男の案内で厨房に行き、アントンさんに挨拶をする。
何か手伝いたいと言えば、アントンさんがもちろんそのつもりだったと笑って答えてくれた。
「蕎麦?麺?それは西の辺境伯領でよく食べられているパスタみたいなものかい?」
「パスタは小麦粉で作るのですが、これは違う粉を使ってます。東の国ではこの粉を捏ねた生地を細く切って茹でて食べてるみたいで」
王国で蕎麦粉のことはもちろん違う名前で呼ばれている。家畜にの飼料にしているお米と同じで、痩せた土地でも育ち、かなり栄養価が高いから田舎の村ではクレープのように薄く焼いて野菜などを巻いて食べたりしている。王都ではあまり食べられていないみたいだけど焼き固めてクッキーのような保存食にして売っているのを見たことがあった。
「薄く焼いた生地でいろいろ巻いたりすることはあるが……まあその顔を見ると自信があるみたいだね。では夕食で出す料理は少し分量を少なくして軽めにしてみよう。どうせ皆お酒を飲むんだ、そのケイ君の料理で最後は締めればいい」
「すみません。予定を変えさせてしまって」
「良いさ、これくらい大したことじゃない。あまった分は屋敷で働く人たちに出せばいいんだ。皆も喜ぶと思うぞ」
今日が特別というわけではなく、ゼランドさんの屋敷では使用人たちもいつも主人と同じ料理を食べているみたい。
王都の近郊に家族がいる人たちは休みをとってそれぞれの家に帰ったりするのだけど、実家が遠かったり一人暮らしの人たちは屋敷に残って仕事をする。
仕事を休めなかったアントンさんは夕食に家族を呼んでここで一緒に食事して、そのあと皆で家に帰るのだそうだ。
今日はいつもより豪華な料理が並ぶので中には家族のところに帰らずそれ目当てに居残る人もいるみたい。
「どうせならその年越し蕎麦というものを食べてから帰りたいな。ちょっとうちの奥さんと相談してくる」
厨房にはアントンさんのほか2人だけ。
その人たちに今日の献立を聞きながら仕込みの作業を始めた。
いつもより豪華だというその献立の中で僕は前菜を任される。自由に食材を使っていいと言われたので、普段は作らないようなサラダを作ってみようと思った。
醤油ベースの酸味の効いたドレッシングを作り、切った野菜に生ハムを添えて出すつもり。茹でた野菜は氷水にとり、生野菜と合わせて食感の面白いものにした。
「今日は、というか屋敷ではいつものことなんだが、あまり気取って料理を順番に出したりはしないんだ。前菜にしてもテーブルの上に大皿で出して各々自由に食べたい量を取り分けて食べるんだよ」
意外にもうちと一緒だった。
お客様がいればまた別らしいけど、商家だし、時には急いで食べて、残ってる仕事を片付けなければならない時もある。何よりエリママがそういう気取った食事の仕方を好まないのだそうだ。
「形式なんてどうでも良いわ。忙しいのだからみんな好きなものを好きなだけ、自由に食べたら良いのよ。料理の順番なんてどうだって良いじゃない」
そんなエリママの声が聞こえて来そうだった。
メインの肉料理だけは頃合いを見計らって出すということで、仕込みが済んだらさっきの広間に戻る。
僕が出す予定の年越し蕎麦もしっかり準備を済ませておいた。
「ケイくんお疲れさま。厨房を手伝ってくれてありがとう。さあそこの席に座ってくれ」
ゼランドさんと2番目のお兄さん、ダグラスさんはもう席についていた。
長男のドナルドさんは仕事を終えて向かっているところみたい。
そのドナルドさんが遅れてやって来て席に着くとそれを合図に料理が運ばれて来る。
メインの料理以外、大皿でテーブルの真ん中に次々に置かれた。
ゼランドさんはエリママに大皿からサラダを取り分けてあげて、受け取ったエリママが少し照れながら微笑む。
僕が作ったサラダはみんなが美味しいと言ってくれてあっという間に大皿から無くなってしまった。いつもより丁寧に作れたからな。実際僕も美味しく作れたと思う。
気がつけばみんながお箸で食べていて、3男はずっと前に僕があげた箸を相変わらず使い続けてる。
なんだか家族みたいだな。
「みたいだな、じゃないわ。遠慮することなんて一切ないんだから。調理場のアントンだって来たらいろいろ教えてあげられるのにっていつも言ってるのよ。もっと気軽に遊びに来たらいいの」
エリママは僕の心が読めるのか。
とは言えアントンさん、ごめんなさい。めんどくさがって打ち合わせに来るのを避けてた。普通に厨房に遊びに来ればよかったんだ。
メインの肉料理が出る前にガンツたちに買って来たお酒を渡した。前に買ったお酒と同じ物が欲しかったのだけれど在庫がなくて困っていたらお店の人が倉庫の中から探し出してくれた。少し古いけれど構わないかと聞かれて、別に構わないと言って買って来た物だ。だけどそのお酒の瓶を渡した途端、3人の目の色が変わる。
「ケイ、これは……だいぶ高かったのではないか?」
「え?去年買った値段とだいたい一緒だと思うよ?新しいのが売り切れてて倉庫に残ってたのを出してもらったんだ。きちんと保管されてるから大丈夫だけど、だいぶ古い奴だから値引きしてもいいってお店の人は言ってたんだけど、一生懸命探してくれたからおんなじ値段で良いって言ったんだ。……なんかまずかった?」
「知らないことが悪いとは思わんが、知ろうとしないのはその店が悪いの。ケイ、お前も知らんかったと思うがこの酒は何年か寝かせるとまた格別に美味くなるのだ。いつだったか20年ものの酒が蔵から出て来たことがあっての」
「あーあれねー。あれは、ほんと美味しかったな。ライツは仕事でいなかったんだっけ。でも少しだけ残しておいた気がするけど」
「何言ってんだアル。残しておいたって、あれコップ一杯もなかったじゃねーか。あん時俺は……」
「あーその時ほどじゃないけどさ、その久しぶりに?その美味しいお酒が飲めるんだったら良いんじゃない?探し出してくれたお店の人に感謝だね。3本あるからゆっくり飲んで欲しいな」
熟成。そういう文化が王都にはない。
新しいもの、新鮮なもの。
そういう物が求められる。だからこそ発展していく力があるってことかも知れないけれど。
東の国から来ていた船団の代表のコウさんが「発酵」という技術を王国に伝えたいって言っていた。
「発酵」と「熟成」は違うものかも知れないけれど、常に新しいもの、斬新なものを作り続ける必要はないんだ。
コウさんがあの時言ってたように、少しずつ時間をかけて本当に伝えたいことが伝わって行って欲しい。そうして少しずつお互いの国が友人のような関係になって行きたい。そう思う気持ちがわかった気がする。
侵略するより時間はかかるだろうけれど、友達になりたいんだったらその時間を積み上げることは大切なことだと思う。
エリママが上機嫌で今日の料理が美味しいと言う。
ゼランドさんがそれに同意して、ダグラスさんは食材の産地について教えてくれる。長男のドナルドさんは仕入れの裏話をこっそり教えてくれて、3男はずっとニコニコしていた。
そして飲んだくれの3人は僕が買って来たお酒をチビチビと、お互いにお互いが飲み過ぎだと、たわいない言い合いを繰り返して、仲良くお酒を飲んでいる。
不意にじいちゃんのことを思い出した。
いつかじいちゃんをみんなに会わせたい。そんなことを思った。
僕自身はちゃんとやれてるかはよくわからない。
だけどじいちゃん。こんなに大切な人たちと巡り会えたよ。
きっとそのことだけは胸を張って言える。
大晦日。ゼランドさんの家には午後に行くことになっていた。
ガンツたちは何もいらんとか言っていたけれど、貴族街に寄って去年と同じお酒を買ってきた。
屋敷に着くなりフェルはエリママのところに行き、僕はひとり取り残されて食堂……これはリビング?
大きなテーブルの隅っこに座り、メイドさんに出されたお茶をひっそりと飲んでいる。
ガチャっと音がして後ろの方の扉が開く。
「ケイくーん。お待たせー。今日は仕事を早く切り上げたんだよー。兄たちも父さんも今は忙しいからさー。ケイくん屋敷でひとりぼっちになっちゃうって思ってさー」
そうなのだ3男。僕の肩幅はもうすっかり狭くなってしまっている。
大きなテーブルの隅っこで、僕と3男は仲良くおしゃべりしながら過ごした。
そうは言っても、だいたい3男が話すことに僕が相づちを打っているような感じだったけど。
3男の話は主に領都のことだった。
3男もこの先のことをいろいろ考えてる。
僕は……。
友達がキラキラしながら将来のことを話していると、つい自分と比べて考えてしまう。
だけど悔しくはなかった。
今、小熊亭で働くことに特に不満もないし、毎日が充実してる。3男と比べて自分は、とか落ち込んだりすることはない。素直に3男のことを応援したい気持ちになった。
だけど年明けから日曜日も出勤しなくちゃいけなくなったんだよなー。
サンドラ姉さんの代わりに日曜日は師匠と2人で店をやることになってしまった。
ロイは実家の仕事があるから平日、店を休む日は実家の店の手伝いをしている。ロイにとって休日と言えるような日は日曜日しかない。そして他の人では絶対上手くやれない。
だけど炊き出しは?
スラムの顔役のバルドさんとサンドラ姉さんは昔からの知り合いだ。
外堀とか、すでに埋められていたとか、何だかよくわからないまま、炊き出しの日は変更されて。
「ケイ。わかるわよね?あなたにとってこれはいい機会よ。中途半端なことなんかしてたら意味がないわ。真剣にやりなさい」
サンドラ姉さん。急にそんなこと言われても。
2人きりで、しかもとなり合って師匠と営業なんて。怖い。
「あ、火曜日はあたしのとこを手伝ってもらうから、そのつもりでいて。あと新しいお店のメニューもしっかり考えるのよ」
サンドラ姉さん。
少し、理不尽です。
だけどそうなると小熊亭は?
店は回せるの?
僕の心配をよそに、しっかりと確実にシフトが組まれていた。
サンドラ姉さん……。絶対初めから仕組んでたでしょ。
3男の案内で厨房に行き、アントンさんに挨拶をする。
何か手伝いたいと言えば、アントンさんがもちろんそのつもりだったと笑って答えてくれた。
「蕎麦?麺?それは西の辺境伯領でよく食べられているパスタみたいなものかい?」
「パスタは小麦粉で作るのですが、これは違う粉を使ってます。東の国ではこの粉を捏ねた生地を細く切って茹でて食べてるみたいで」
王国で蕎麦粉のことはもちろん違う名前で呼ばれている。家畜にの飼料にしているお米と同じで、痩せた土地でも育ち、かなり栄養価が高いから田舎の村ではクレープのように薄く焼いて野菜などを巻いて食べたりしている。王都ではあまり食べられていないみたいだけど焼き固めてクッキーのような保存食にして売っているのを見たことがあった。
「薄く焼いた生地でいろいろ巻いたりすることはあるが……まあその顔を見ると自信があるみたいだね。では夕食で出す料理は少し分量を少なくして軽めにしてみよう。どうせ皆お酒を飲むんだ、そのケイ君の料理で最後は締めればいい」
「すみません。予定を変えさせてしまって」
「良いさ、これくらい大したことじゃない。あまった分は屋敷で働く人たちに出せばいいんだ。皆も喜ぶと思うぞ」
今日が特別というわけではなく、ゼランドさんの屋敷では使用人たちもいつも主人と同じ料理を食べているみたい。
王都の近郊に家族がいる人たちは休みをとってそれぞれの家に帰ったりするのだけど、実家が遠かったり一人暮らしの人たちは屋敷に残って仕事をする。
仕事を休めなかったアントンさんは夕食に家族を呼んでここで一緒に食事して、そのあと皆で家に帰るのだそうだ。
今日はいつもより豪華な料理が並ぶので中には家族のところに帰らずそれ目当てに居残る人もいるみたい。
「どうせならその年越し蕎麦というものを食べてから帰りたいな。ちょっとうちの奥さんと相談してくる」
厨房にはアントンさんのほか2人だけ。
その人たちに今日の献立を聞きながら仕込みの作業を始めた。
いつもより豪華だというその献立の中で僕は前菜を任される。自由に食材を使っていいと言われたので、普段は作らないようなサラダを作ってみようと思った。
醤油ベースの酸味の効いたドレッシングを作り、切った野菜に生ハムを添えて出すつもり。茹でた野菜は氷水にとり、生野菜と合わせて食感の面白いものにした。
「今日は、というか屋敷ではいつものことなんだが、あまり気取って料理を順番に出したりはしないんだ。前菜にしてもテーブルの上に大皿で出して各々自由に食べたい量を取り分けて食べるんだよ」
意外にもうちと一緒だった。
お客様がいればまた別らしいけど、商家だし、時には急いで食べて、残ってる仕事を片付けなければならない時もある。何よりエリママがそういう気取った食事の仕方を好まないのだそうだ。
「形式なんてどうでも良いわ。忙しいのだからみんな好きなものを好きなだけ、自由に食べたら良いのよ。料理の順番なんてどうだって良いじゃない」
そんなエリママの声が聞こえて来そうだった。
メインの肉料理だけは頃合いを見計らって出すということで、仕込みが済んだらさっきの広間に戻る。
僕が出す予定の年越し蕎麦もしっかり準備を済ませておいた。
「ケイくんお疲れさま。厨房を手伝ってくれてありがとう。さあそこの席に座ってくれ」
ゼランドさんと2番目のお兄さん、ダグラスさんはもう席についていた。
長男のドナルドさんは仕事を終えて向かっているところみたい。
そのドナルドさんが遅れてやって来て席に着くとそれを合図に料理が運ばれて来る。
メインの料理以外、大皿でテーブルの真ん中に次々に置かれた。
ゼランドさんはエリママに大皿からサラダを取り分けてあげて、受け取ったエリママが少し照れながら微笑む。
僕が作ったサラダはみんなが美味しいと言ってくれてあっという間に大皿から無くなってしまった。いつもより丁寧に作れたからな。実際僕も美味しく作れたと思う。
気がつけばみんながお箸で食べていて、3男はずっと前に僕があげた箸を相変わらず使い続けてる。
なんだか家族みたいだな。
「みたいだな、じゃないわ。遠慮することなんて一切ないんだから。調理場のアントンだって来たらいろいろ教えてあげられるのにっていつも言ってるのよ。もっと気軽に遊びに来たらいいの」
エリママは僕の心が読めるのか。
とは言えアントンさん、ごめんなさい。めんどくさがって打ち合わせに来るのを避けてた。普通に厨房に遊びに来ればよかったんだ。
メインの肉料理が出る前にガンツたちに買って来たお酒を渡した。前に買ったお酒と同じ物が欲しかったのだけれど在庫がなくて困っていたらお店の人が倉庫の中から探し出してくれた。少し古いけれど構わないかと聞かれて、別に構わないと言って買って来た物だ。だけどそのお酒の瓶を渡した途端、3人の目の色が変わる。
「ケイ、これは……だいぶ高かったのではないか?」
「え?去年買った値段とだいたい一緒だと思うよ?新しいのが売り切れてて倉庫に残ってたのを出してもらったんだ。きちんと保管されてるから大丈夫だけど、だいぶ古い奴だから値引きしてもいいってお店の人は言ってたんだけど、一生懸命探してくれたからおんなじ値段で良いって言ったんだ。……なんかまずかった?」
「知らないことが悪いとは思わんが、知ろうとしないのはその店が悪いの。ケイ、お前も知らんかったと思うがこの酒は何年か寝かせるとまた格別に美味くなるのだ。いつだったか20年ものの酒が蔵から出て来たことがあっての」
「あーあれねー。あれは、ほんと美味しかったな。ライツは仕事でいなかったんだっけ。でも少しだけ残しておいた気がするけど」
「何言ってんだアル。残しておいたって、あれコップ一杯もなかったじゃねーか。あん時俺は……」
「あーその時ほどじゃないけどさ、その久しぶりに?その美味しいお酒が飲めるんだったら良いんじゃない?探し出してくれたお店の人に感謝だね。3本あるからゆっくり飲んで欲しいな」
熟成。そういう文化が王都にはない。
新しいもの、新鮮なもの。
そういう物が求められる。だからこそ発展していく力があるってことかも知れないけれど。
東の国から来ていた船団の代表のコウさんが「発酵」という技術を王国に伝えたいって言っていた。
「発酵」と「熟成」は違うものかも知れないけれど、常に新しいもの、斬新なものを作り続ける必要はないんだ。
コウさんがあの時言ってたように、少しずつ時間をかけて本当に伝えたいことが伝わって行って欲しい。そうして少しずつお互いの国が友人のような関係になって行きたい。そう思う気持ちがわかった気がする。
侵略するより時間はかかるだろうけれど、友達になりたいんだったらその時間を積み上げることは大切なことだと思う。
エリママが上機嫌で今日の料理が美味しいと言う。
ゼランドさんがそれに同意して、ダグラスさんは食材の産地について教えてくれる。長男のドナルドさんは仕入れの裏話をこっそり教えてくれて、3男はずっとニコニコしていた。
そして飲んだくれの3人は僕が買って来たお酒をチビチビと、お互いにお互いが飲み過ぎだと、たわいない言い合いを繰り返して、仲良くお酒を飲んでいる。
不意にじいちゃんのことを思い出した。
いつかじいちゃんをみんなに会わせたい。そんなことを思った。
僕自身はちゃんとやれてるかはよくわからない。
だけどじいちゃん。こんなに大切な人たちと巡り会えたよ。
きっとそのことだけは胸を張って言える。
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