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その手の感触は
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314 その手の感触は
「なんだか少し食べ足りないわ。アントンに言ったらもう少し何か作ってもらえるかしら」
「あの、皆さんに一品、僕からお出ししたい料理があります。僕からの新年の贈り物見たいなものです。じいちゃん……、祖父の故郷の料理で、年越しに食べる習慣があるんです。今日は領都からエビも届いたのでそれを油で揚げて一緒にお出しします」
それは楽しみだと言ってみんなが嬉しそうな顔になり、僕は急いで厨房に行く。
捌いておいた具材を保冷庫から取り出し、天ぷらを揚げる。
厨房の料理人たちにやり方を見せるとすぐに覚えてくれて作業を代わってもらう。先にゼランドさんのところに持って行く分を仕上げて、あとは厨房にいる人たちにお任せした。
氷水で締めたお蕎麦をお皿に盛り、麺つゆの入った水差しを持って皆のところに戻る。天ぷらなど細かい盛り付けはみんなの前でやることにした。
なぜか拍手で迎えられて少し照れながら、僕は用意してもらったテーブルの上で料理の仕上げをする。お皿に紙を敷いて天ぷらを積み上げるように見栄え良く盛り付ける。
師匠がここにいたら「そんな余計なことしてんじゃねー」とか怒られるだろうか?僕としては贈り物に精一杯の気持ちを込めたつもり。
天ぷらには天つゆ、それとお塩をつけた。
僕はお蕎麦のつゆに浸して食べるのが好きだけど……。その辺りは自由にやって欲しい。好みを押し付けるのも違うような気がするから。
「冷たいのも美味いな!酒で熱くなった喉をキンと冷やす感じが良いじゃねえか」
真っ先に蕎麦をすすりそう言ったのはライツだ。
ギャップ萌え?違うか。
味覚で熱いと冷たい、甘いと塩辛い、この差が気持ち良くて食が止まらなくなる。こういう感じはどう言葉で表現したら良いんだろう。
ライツに蕎麦はよく似合ってるから見た目にギャップは感じないんだけど。
「天ぷらって言ったかしら。この料理はいいわね。アントンたちにも教えて帰ってちょうだい」
僕より上手に天ぷらを揚げていたからきっと大丈夫だろう。厨房には天ぷらにすると美味しい食材をあとで教えておこう。
今日は作らなかったけど、鶏肉を天ぷらにするだけでもすごく美味しいし。
薬味はネギとショウガのすりおろししか用意していない。ワサビに似た風味の香草は葉っぱを刻んで作るんだけど……麺つゆに混ぜてみたらあまり美味しくなかった。
「ケイくん。こんなに気を使わなくたっていいんだ。貴重なものだろう?このエビなんかびっくりするくらい王都では高級な食材だよ。王家でも食卓に登ることなんて滅多にないんだ。あの簡易スープのことにしてもね、うちのアントンとか、もちろん私でも良いよ。もっと遠慮なく相談しにくれば良いんだよ」
遠慮をしていた。と言うよりは少し意地になっていたかも知れない。
だけど誰かに甘えるとか頼るとか、よくわからなかったりする。
フェルになら素直に自分のことをなんでも相談できるんだけど。
誰にも頼らず自分の力で、とか少し意固地になっていた。すでに肉屋のロバートさんにはかなりお世話になってしまっているのに。
「ゼランドさん、ドナルドさん。ダグラスさん。この前はなんだか偉そうなこと言ってしまったけど、いろいろ教えて欲しいです。何よりもまずお金が儲からない方法を教えて欲しいんです。売る人たちにお金が入ってこないってことじゃなくって、僕の取り分をなるべく減らして、僕の思いつきをできる限り広く伝えたい。そしてゆくゆくは関わるみんなが幸せになれるような商売にしたいんです」
ゼランドさんとダグラスさんは呆気にとられたような顔をしていたけれど、長男のドナルドさんは違った。
「うちの末っ子はまた大変なことを言い出すものだね。3男も手がかかる子だったけど、君のその発想はさらに飛び抜けているよ。商売するのにお金を儲けたくないだなんて。だけどその気持ちもわからなくはないんだ、私は幼い頃から父に連れられて一緒に行商に出ていたからね。行った先々の町や村で笑顔で買い物をする人たちの姿を忘れる日はない」
ゼランドさんは真剣だけど優しい眼差しでドナルドさんのことを見て、ダグラスさんは少し罰の悪そうな表情をする。なんでこんな大儲けできる機会を逃すのかと、さっきまでは少し怒っていたのに。
「ここまで商会が大きくなるまで、うちは行商が商いの中心だったんだよ。今はうちで昔から働いていた人が立ち上げた別の商会に委託していたりするのだけどね。誰かのために商売をしたい、お客さんを笑顔にさせたい。行商をしていたあの頃は不足している品物を届けたり、珍しいもの、新しいものを小さな町や村に届けることを生業にしていた。ここまで店が大きくなるなんてあの頃は思いもしなかったんだけどね」
ドナルドさんが実際に行商に出たのは数回しかないのだそうだ。
二十歳になる頃には王都に大きめの店を構えていて、誰かが店のことをやらなくてはならなかった。仕入れは実際、ゼランドさんの方がいろんな場所に顔が効くし、下の弟のダグラスさんはまだ成人したばかりだった。
ダグラスさんはゼランドさんに付いて行商のやり方、仕入れ先とかいろんなことを学び、ドナルドさんは王都の店舗のことを全て任せられて商会はやがてどんどん大きくなって行った。
長年勤めていた人が独立して乗り合い馬車から郵便、行商など物流専門の商会を立ち上げるとゼランドさんは行商に出るのをやめて王都のお店にいるようになったのだそうだ。
「昔は父の仕事を見て自分もこういう人を笑顔にさせる商売がしたいって思っていたのだけれどね。実際そんなにうまくはいかないものだよ」
そう言ってドナルドさんが笑うとゼランドさんも照れくさそうに笑った。
「ドナルド、ケイくんのあのスープを商品にする手伝いをやってみないか?たまには帳簿の仕事も私が手伝おう。ケイくんはそのスープの素を作ってからその先どうしたらいいかわからないんだろう?この際ドナルドになんでも相談するといい」
正直なところ、助かる。事業計画書みたいなものを書きたいと思っていたけれどざっくり自分の中にアイデアがあるだけで実現するにはどうしたら良いかなんて全くわからない。
スラムの男性には防壁工事や南地区の拡張の仕事が斡旋されてる。
だけど女性たちには?
成人前の子供たちだってカインやセラみたいに仕事を探している子はいるんだ。頑張ったら頑張った分、良い暮らしができるような仕組み。
その収益で体が不自由な人でもちゃんとした生活が最低限できるような援助が出来る仕組み。
特別大きなことを考えているわけじゃない。僕はレシピで商売したくないんだ。僕の尊敬する先輩たちは皆そうしていた。そして僕もそれにならうだけだ。
目標はコンソメスープの素を作る。そして僕の好きなあの小熊亭のスープをお湯を注ぐだけで飲めるようにするってことだ。
肝心のスープはあとちょっとって感じなんだけど、決め手にかけると言うのか、実は少し行き詰まってる。なかなか店の営業をこなしながらスープの研究は進められない。
試したレシピは全部ノートに書いてるし、試作したスープの味もきちんと記録してる。そういう積み重ねが大切だとミナミのホランドさんも言っていたし。
ふと目線を上げるとゼランドさんが優しく僕を見ている。
「ケイくーん。僕にも何かやらせてよー。兄さんだけずるいと思うんだー」
「3男はいつも美味しいってそれだけしか言わないじゃないか、試食をお願いしてもいつもおんなじ答えなら頼めないじゃない」
「美味しいものを美味しいって言って何が悪いんだよー。じゃあさー、出来上がった試食品をいろんなところに配ってあげるよー。だけどさー賭けてもいいよ。絶対みんな美味しいってしか言わないから。ケイくんの作る料理っていつもそうなんだから」
違うぞ3男。美味しいってしか言わない人じゃないところにその試食品を配るのが君の仕事だ。その辺りちゃんとわかってるの?
「もちろんそんなことわかってるよー。だけどさー、舌が肥えてる身分が高いような人に配っても逆にケイくんは困るでしょー?いろいろ意見をもらえるちょうどいい人って実は難しいんだよー」
ちゃんとわかってた。
すぐ3男には謝っておいた。
エビの天ぷらから話は始まり、3男がチコの村のことを話す。その話が面白くてあっという間に時間が過ぎた。
シドにチコの村まで道を作りたいって僕が思ってるってことを話したら、あっという間に冒険者に囲まれててしまったらしい。
生きて帰れないようなプレッシャーを感じつつ恐る恐る3男が説明すると、遠くに座っていた人たちも呼び出されてあっという間に人が集まったらしい。
そして次の日領都のギルマスのローガンさんが慌てて降りてきて階段を踏み外した話とか、急に優しい口調で話しかけるローガンさんと、いつも通り面倒くさそうに答える冒険者と。
僕の知らないところではいろんなことがあったみたいだ。
みんな元気にしてるかな。まあ心配しなくても、きっと元気で仕事が終わったら楽しくお酒飲んでるんだろうな。
エリママからの新年の贈り物はエプロンだった。腰に巻く、サロンみたいなやつ?聞いたらサンドラさんの新しいお店で使えるようにエリママが作ってくれたみたい。
ドナルドさんとゼランドさんからはちょっといいお皿を2組。僕とフェルで使って欲しいと言って、ダグラスさんからはなんとこの辺りの詳細な地図の写しをもらってしまう。
それを見たゼランドさんが慌てる。
「ケ……イ、くん。わかってると思うけどその地図をいろんな人に気軽に見せてはいけないよ。それはうちが秘密にしてる大事な情報とかも書いてあるんだからね」
もちろんその意味とこの地図の価値は一目見てわかった。行商をする上で危険な道、遠回りだけど安全な道。そして各地の特産品。
フェルの生まれた街のことも書いてあった。それを見てフェルが今まで見せなかったような切ない表情になる。
そんなフェルを見て心がギュッと苦しくなった。
年が明けて改めてお祝いしたら、それぞれみんな部屋に戻る。
酔っ払った3人はどこかの部屋に押し込められた。時々遠くから乾杯する音が聞こえる。
そしてエリママが部屋に戻る前に僕の頭を撫でる。
「今日は来てくれてありがとう。楽しかった?楽しんでくれたなら嬉しいわ。ゆっくり休んでちょうだい。今日は美味しい料理をありがとう」
僕の頭を撫でてくれるその手の感触は、僕に亡くなった母のことを思い出させた。
「なんだか少し食べ足りないわ。アントンに言ったらもう少し何か作ってもらえるかしら」
「あの、皆さんに一品、僕からお出ししたい料理があります。僕からの新年の贈り物見たいなものです。じいちゃん……、祖父の故郷の料理で、年越しに食べる習慣があるんです。今日は領都からエビも届いたのでそれを油で揚げて一緒にお出しします」
それは楽しみだと言ってみんなが嬉しそうな顔になり、僕は急いで厨房に行く。
捌いておいた具材を保冷庫から取り出し、天ぷらを揚げる。
厨房の料理人たちにやり方を見せるとすぐに覚えてくれて作業を代わってもらう。先にゼランドさんのところに持って行く分を仕上げて、あとは厨房にいる人たちにお任せした。
氷水で締めたお蕎麦をお皿に盛り、麺つゆの入った水差しを持って皆のところに戻る。天ぷらなど細かい盛り付けはみんなの前でやることにした。
なぜか拍手で迎えられて少し照れながら、僕は用意してもらったテーブルの上で料理の仕上げをする。お皿に紙を敷いて天ぷらを積み上げるように見栄え良く盛り付ける。
師匠がここにいたら「そんな余計なことしてんじゃねー」とか怒られるだろうか?僕としては贈り物に精一杯の気持ちを込めたつもり。
天ぷらには天つゆ、それとお塩をつけた。
僕はお蕎麦のつゆに浸して食べるのが好きだけど……。その辺りは自由にやって欲しい。好みを押し付けるのも違うような気がするから。
「冷たいのも美味いな!酒で熱くなった喉をキンと冷やす感じが良いじゃねえか」
真っ先に蕎麦をすすりそう言ったのはライツだ。
ギャップ萌え?違うか。
味覚で熱いと冷たい、甘いと塩辛い、この差が気持ち良くて食が止まらなくなる。こういう感じはどう言葉で表現したら良いんだろう。
ライツに蕎麦はよく似合ってるから見た目にギャップは感じないんだけど。
「天ぷらって言ったかしら。この料理はいいわね。アントンたちにも教えて帰ってちょうだい」
僕より上手に天ぷらを揚げていたからきっと大丈夫だろう。厨房には天ぷらにすると美味しい食材をあとで教えておこう。
今日は作らなかったけど、鶏肉を天ぷらにするだけでもすごく美味しいし。
薬味はネギとショウガのすりおろししか用意していない。ワサビに似た風味の香草は葉っぱを刻んで作るんだけど……麺つゆに混ぜてみたらあまり美味しくなかった。
「ケイくん。こんなに気を使わなくたっていいんだ。貴重なものだろう?このエビなんかびっくりするくらい王都では高級な食材だよ。王家でも食卓に登ることなんて滅多にないんだ。あの簡易スープのことにしてもね、うちのアントンとか、もちろん私でも良いよ。もっと遠慮なく相談しにくれば良いんだよ」
遠慮をしていた。と言うよりは少し意地になっていたかも知れない。
だけど誰かに甘えるとか頼るとか、よくわからなかったりする。
フェルになら素直に自分のことをなんでも相談できるんだけど。
誰にも頼らず自分の力で、とか少し意固地になっていた。すでに肉屋のロバートさんにはかなりお世話になってしまっているのに。
「ゼランドさん、ドナルドさん。ダグラスさん。この前はなんだか偉そうなこと言ってしまったけど、いろいろ教えて欲しいです。何よりもまずお金が儲からない方法を教えて欲しいんです。売る人たちにお金が入ってこないってことじゃなくって、僕の取り分をなるべく減らして、僕の思いつきをできる限り広く伝えたい。そしてゆくゆくは関わるみんなが幸せになれるような商売にしたいんです」
ゼランドさんとダグラスさんは呆気にとられたような顔をしていたけれど、長男のドナルドさんは違った。
「うちの末っ子はまた大変なことを言い出すものだね。3男も手がかかる子だったけど、君のその発想はさらに飛び抜けているよ。商売するのにお金を儲けたくないだなんて。だけどその気持ちもわからなくはないんだ、私は幼い頃から父に連れられて一緒に行商に出ていたからね。行った先々の町や村で笑顔で買い物をする人たちの姿を忘れる日はない」
ゼランドさんは真剣だけど優しい眼差しでドナルドさんのことを見て、ダグラスさんは少し罰の悪そうな表情をする。なんでこんな大儲けできる機会を逃すのかと、さっきまでは少し怒っていたのに。
「ここまで商会が大きくなるまで、うちは行商が商いの中心だったんだよ。今はうちで昔から働いていた人が立ち上げた別の商会に委託していたりするのだけどね。誰かのために商売をしたい、お客さんを笑顔にさせたい。行商をしていたあの頃は不足している品物を届けたり、珍しいもの、新しいものを小さな町や村に届けることを生業にしていた。ここまで店が大きくなるなんてあの頃は思いもしなかったんだけどね」
ドナルドさんが実際に行商に出たのは数回しかないのだそうだ。
二十歳になる頃には王都に大きめの店を構えていて、誰かが店のことをやらなくてはならなかった。仕入れは実際、ゼランドさんの方がいろんな場所に顔が効くし、下の弟のダグラスさんはまだ成人したばかりだった。
ダグラスさんはゼランドさんに付いて行商のやり方、仕入れ先とかいろんなことを学び、ドナルドさんは王都の店舗のことを全て任せられて商会はやがてどんどん大きくなって行った。
長年勤めていた人が独立して乗り合い馬車から郵便、行商など物流専門の商会を立ち上げるとゼランドさんは行商に出るのをやめて王都のお店にいるようになったのだそうだ。
「昔は父の仕事を見て自分もこういう人を笑顔にさせる商売がしたいって思っていたのだけれどね。実際そんなにうまくはいかないものだよ」
そう言ってドナルドさんが笑うとゼランドさんも照れくさそうに笑った。
「ドナルド、ケイくんのあのスープを商品にする手伝いをやってみないか?たまには帳簿の仕事も私が手伝おう。ケイくんはそのスープの素を作ってからその先どうしたらいいかわからないんだろう?この際ドナルドになんでも相談するといい」
正直なところ、助かる。事業計画書みたいなものを書きたいと思っていたけれどざっくり自分の中にアイデアがあるだけで実現するにはどうしたら良いかなんて全くわからない。
スラムの男性には防壁工事や南地区の拡張の仕事が斡旋されてる。
だけど女性たちには?
成人前の子供たちだってカインやセラみたいに仕事を探している子はいるんだ。頑張ったら頑張った分、良い暮らしができるような仕組み。
その収益で体が不自由な人でもちゃんとした生活が最低限できるような援助が出来る仕組み。
特別大きなことを考えているわけじゃない。僕はレシピで商売したくないんだ。僕の尊敬する先輩たちは皆そうしていた。そして僕もそれにならうだけだ。
目標はコンソメスープの素を作る。そして僕の好きなあの小熊亭のスープをお湯を注ぐだけで飲めるようにするってことだ。
肝心のスープはあとちょっとって感じなんだけど、決め手にかけると言うのか、実は少し行き詰まってる。なかなか店の営業をこなしながらスープの研究は進められない。
試したレシピは全部ノートに書いてるし、試作したスープの味もきちんと記録してる。そういう積み重ねが大切だとミナミのホランドさんも言っていたし。
ふと目線を上げるとゼランドさんが優しく僕を見ている。
「ケイくーん。僕にも何かやらせてよー。兄さんだけずるいと思うんだー」
「3男はいつも美味しいってそれだけしか言わないじゃないか、試食をお願いしてもいつもおんなじ答えなら頼めないじゃない」
「美味しいものを美味しいって言って何が悪いんだよー。じゃあさー、出来上がった試食品をいろんなところに配ってあげるよー。だけどさー賭けてもいいよ。絶対みんな美味しいってしか言わないから。ケイくんの作る料理っていつもそうなんだから」
違うぞ3男。美味しいってしか言わない人じゃないところにその試食品を配るのが君の仕事だ。その辺りちゃんとわかってるの?
「もちろんそんなことわかってるよー。だけどさー、舌が肥えてる身分が高いような人に配っても逆にケイくんは困るでしょー?いろいろ意見をもらえるちょうどいい人って実は難しいんだよー」
ちゃんとわかってた。
すぐ3男には謝っておいた。
エビの天ぷらから話は始まり、3男がチコの村のことを話す。その話が面白くてあっという間に時間が過ぎた。
シドにチコの村まで道を作りたいって僕が思ってるってことを話したら、あっという間に冒険者に囲まれててしまったらしい。
生きて帰れないようなプレッシャーを感じつつ恐る恐る3男が説明すると、遠くに座っていた人たちも呼び出されてあっという間に人が集まったらしい。
そして次の日領都のギルマスのローガンさんが慌てて降りてきて階段を踏み外した話とか、急に優しい口調で話しかけるローガンさんと、いつも通り面倒くさそうに答える冒険者と。
僕の知らないところではいろんなことがあったみたいだ。
みんな元気にしてるかな。まあ心配しなくても、きっと元気で仕事が終わったら楽しくお酒飲んでるんだろうな。
エリママからの新年の贈り物はエプロンだった。腰に巻く、サロンみたいなやつ?聞いたらサンドラさんの新しいお店で使えるようにエリママが作ってくれたみたい。
ドナルドさんとゼランドさんからはちょっといいお皿を2組。僕とフェルで使って欲しいと言って、ダグラスさんからはなんとこの辺りの詳細な地図の写しをもらってしまう。
それを見たゼランドさんが慌てる。
「ケ……イ、くん。わかってると思うけどその地図をいろんな人に気軽に見せてはいけないよ。それはうちが秘密にしてる大事な情報とかも書いてあるんだからね」
もちろんその意味とこの地図の価値は一目見てわかった。行商をする上で危険な道、遠回りだけど安全な道。そして各地の特産品。
フェルの生まれた街のことも書いてあった。それを見てフェルが今まで見せなかったような切ない表情になる。
そんなフェルを見て心がギュッと苦しくなった。
年が明けて改めてお祝いしたら、それぞれみんな部屋に戻る。
酔っ払った3人はどこかの部屋に押し込められた。時々遠くから乾杯する音が聞こえる。
そしてエリママが部屋に戻る前に僕の頭を撫でる。
「今日は来てくれてありがとう。楽しかった?楽しんでくれたなら嬉しいわ。ゆっくり休んでちょうだい。今日は美味しい料理をありがとう」
僕の頭を撫でてくれるその手の感触は、僕に亡くなった母のことを思い出させた。
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