フェル 森で助けた女性騎士に一目惚れして、その後イチャイチャしながらずっと一緒に暮らす話

カトウ

文字の大きさ
136 / 318

脅迫

しおりを挟む
 137 脅迫

 木曜日。店が休みの今日、ゼランドさんの商会に行く。
 
 今日の朝はフェルと些細なことで喧嘩になった。卵焼きの焼き方で意見の相違があったのだ。

「卵焼きはふわトロが良いのだ。こんなにしっかり焼いてしまえば卵焼きの良さがなくなるではないか」

「これはオムレツじゃなくてだし巻き卵だよ。しっかり焼かないと崩れて来ちゃうじゃん。オムレツとは別のものなんだよ」

「だからと言ってふわトロを諦める必要はなかろう。要はふわトロのだしまきたまごを作れば良いだけの話だ」

 2人の主張は平行線のまま。
 結局、次に作る時にもっと工夫することを約束させられた。

 ゼランドさんは僕たちが店に行くと馬車に僕たちを乗せて物件の場所に連れて行ってくれた。

 フェルはまだ機嫌が悪かった。
 怒っているフェルのことも好きだ。嫌われたくはないけれど。少し僕はおかしいのかな。
 むくれてツンとしてるフェルもかわいいと思う。

 案内された物件。と言うよりも、もはや倉庫なんだけど、その倉庫の一角に小屋が建っている。

 中央から西門まで歩けば1時間弱。
 連れてこられた倉庫はそのちょうど真ん中くらいの位置になる。
 路地を少し北側に入ったところにその物件はあった。

 ゼランドさんが小屋の鍵を開けて、僕たちは中に案内される。
 広めの土間で靴を脱いで中に入った。

 ツンとした木材の匂いがする。小屋はできたばかりの新築の匂いがした。

 入ってすぐのスペースは広くて、壁際に流し台と魔道コンロが置いてある。魔道コンロは3口の最新式のものだ。
 商会の魔道具コーナーに展示してあったものと同じだった。すごい。ピカピカだ。
 
 換気扇もついてある。
 テーブルを置けばここで食事ができそうだ。それでも余裕があるくらい。10畳?もう少し広いかな?面積の単位はよくわからない。

 左側に廊下があって、部屋は3つ。奥がトイレと小さな洗い場になっている。

 6畳くらいの部屋が2つ、もうひとつの部屋は少し広めだった。

 予想してたよりも豪華な部屋に、僕は少し、いや、けっこう驚いている。

「家賃は倉庫の夜間の警備もお願いしたいから、ひと月銀貨3枚でどうだろうか?夜間の警備、と言っても、この辺りは治安がしっかりしているからそこまで気にすることもないと思うんだが、それも含めてこの金額で住んでもらえれば、こちらとしても警備の人数を減らせるので助かるんだ」

 ゼランドさんが僕にそう言ってきた。

 家賃の相場って大体銀貨7、8枚じゃなかったっけ?破格すぎない?

「夜間の警備のためにひと月銀貨30枚払っているからね。ここはもともと警備の人のために休憩所として作った小屋なんだ。ちょっと住みやすくするために増築したけどね。ここに住んでくれるなら夜間の警備の人間を雇う必要がなくなるんだ。だから家賃はこの値段でいい」

「そんな。せめて銀貨で5枚、毎月払います」

「いいや。ケイくん。ここの家賃は銀貨で3枚だ。どうする?君が納得いかないならどんどん安くしていくよ?それでもいいのかい?」

 脅迫だ。まずい。すぐに決断しないとどんどん家賃が安くなってしまう。

「私たちが家に帰れない、またはどこか外泊する場合はどうなのだ?」

「そういった場合でも問題ない。ガンツの魔道具があるからね。何かあったらすぐ警備の係の者が駆けつけるようになっている」

 え?そこまでちゃんとしているなら夜間の警備とか要らなくない?

「さて、ケイくん。どうする?迷っているなら銀貨2枚にしようか?」

 ゼランドさんが楽しそうに僕を脅迫してくる。

 結局銀貨3枚でこの部屋を借りることにした。

 契約書にサインをして、ゼランドさんが外に出て行った。残された僕たちは家の中を見て回る。

 なんだかフェルの様子が変だな。

 買わなければならない家具を2人で相談しているのに、なんだかうわの空だ。

 玄関の方がなんだか騒がしい。
 ライツの声かな?なんだろう。

 玄関に行くとライツとそのお弟子さん。え?ガンツもいる。

「ケイ。住む場所が決まってよかったな。これは俺からの引っ越し祝いってやつだ。フェル?言ってた通りそこの広い部屋に置けばいいんだろ?」

「そうだ。こちらの壁にくっつけて置いて欲しい」

 フェル?前もって相談してたの?

「ワシからはこれじゃの。ケイ、どこに置けば良いかの?」

 保冷庫だ。お弟子さんが2人で家の中に運んでいる。

「ガンツ!そんなに大きい保冷庫もらえないよ」

「そう言われてもの。もう作ってしまったから仕方ないのだ。さてどこに置く?ライツが場所を開けておるからこの角で良いか?」

 保冷庫は測ったようにぴたりと台所の隙間に収まった。

 なんだこれ。みんなしてグルになってるのか?

「ケイくん!引っ越しおめでとう!ベッドのマットレスを持ってきたわ。それとお洋服の収納も。これは私と主人からのお祝いよ!」

 エリママもか。いや、それは当然と言えば当然なのだけれども。

 8畳くらいの広めの部屋にどんどん家具が運び込まれていく。
 フェルが場所を指示して、ライツが組み立てたベットの上にマットレスが置かれる。
 部屋の奥にはシンプルな洋服箪笥。

 リビングに戻ると測ったようにちょうど良い大きさのテーブルがあり、ライツがそこに座っている。椅子は6脚。

「ケイ。お茶を淹れてくれ」

 ライツが椅子の座り心地を確かめるようにくつろいで座っている。

 真新しい魔道コンロで麦茶を淹れる。
 お茶菓子でもあればいいのだが、あいにく作り置きが無い。

 みんなで椅子に座ってお茶を飲む。
 お弟子さんや商会の人たちは先に帰った。

「みんないつから計画してたの?」

「いつからと言われてもよくわからねーな。ゼランドにこの小屋を見せられて、図面を書いて。ガンツに渡したら魔道具の寸法が返ってきたからまた図面を修正して」

「保冷庫は先に作ってしまっていたんじゃ。そのうち必要になると思っての。寸法に合わせて図面を書き直してもらった」

「ガンツがあまり豪華な部屋にはするなと言うからね。申し訳ないがお風呂は作らなかったんだ。増築したのはこちら側で、洗い場とトイレは小屋に元からあったものをそのまま生かしてあるんだよ。フェルさんもそれでいいと言っていたからね」

「風呂は公衆浴場に通えば良いのだ。これ以上の贅沢は必要ない」

「いいわねー2人でお風呂。待ち合わせとか、楽しいものねー。でもお家にお風呂があれば2人で入ったりもできるのよ。増築したくなったら言いなさい」
 
 ダメだ。完全に僕だけが出遅れている。

 みんながお茶を飲んで帰ったあと、部屋を見て回る。広めの部屋に大きなダブルベッドか置いてある。布団もちょうど良い大きさのものが敷かれていた。

 ここからフェルとの新しい生活が始まる。

 必要なものはこれから少しづつ揃えればいい。敷地も広いし家庭菜園とか出来そうだな。ゴードンさんにそのうち野菜の苗をもらおう。ミニトマトとか良いかもしれない。

 フェルはもらった洋服箪笥に服をしまっている。僕の分もかけてくれていた。

 フェルと目があってニッコリと微笑む。

「ねえ、ベッドはもう1個あった方がいいんじゃない?僕は奥の部屋で寝るからさ」
 
 フェルは何も答えず。僕の発言は無視された。
















しおりを挟む
感想 18

あなたにおすすめの小説

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

転生したら領主の息子だったので快適な暮らしのために知識チートを実践しました

SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
不摂生が祟ったのか浴槽で溺死したブラック企業務めの社畜は、ステップド騎士家の長男エルに転生する。 不便な異世界で生活環境を改善するためにエルは知恵を絞る。 14万文字執筆済み。2025年8月25日~9月30日まで毎日7:10、12:10の一日二回更新。

辺境領主は大貴族に成り上がる! チート知識でのびのび領地経営します

潮ノ海月@2025/11月新刊発売予定!
ファンタジー
旧題:転生貴族の領地経営~チート知識を活用して、辺境領主は成り上がる! トールデント帝国と国境を接していたフレンハイム子爵領の領主バルトハイドは、突如、侵攻を開始した帝国軍から領地を守るためにルッセン砦で迎撃に向かうが、守り切れず戦死してしまう。 領主バルトハイドが戦争で死亡した事で、唯一の後継者であったアクスが跡目を継ぐことになってしまう。 アクスの前世は日本人であり、争いごとが極端に苦手であったが、領民を守るために立ち上がることを決意する。 だが、兵士の証言からしてラッセル砦を陥落させた帝国軍の数は10倍以上であることが明らかになってしまう 完全に手詰まりの中で、アクスは日本人として暮らしてきた知識を活用し、さらには領都から避難してきた獣人や亜人を仲間に引き入れ秘策を練る。 果たしてアクスは帝国軍に勝利できるのか!? これは転生貴族アクスが領地経営に奮闘し、大貴族へ成りあがる物語。 《作者からのお知らせ!》 ※2025/11月中旬、  辺境領主の3巻が刊行となります。 今回は3巻はほぼ全編を書き下ろしとなっています。 【貧乏貴族の領地の話や魔導車オーディションなど、】連載にはないストーリーが盛りだくさん! ※また加筆によって新しい展開になったことに伴い、今まで投稿サイトに連載していた続話は、全て取り下げさせていただきます。何卒よろしくお願いいたします。

辺境貴族ののんびり三男は魔道具作って自由に暮らします

雪月夜狐
ファンタジー
書籍化決定しました! (書籍化にあわせて、タイトルが変更になりました。旧題は『辺境伯家ののんびり発明家 ~異世界でマイペースに魔道具開発を楽しむ日々~』です) 壮年まで生きた前世の記憶を持ちながら、気がつくと辺境伯家の三男坊として5歳の姿で異世界に転生していたエルヴィン。彼はもともと物作りが大好きな性格で、前世の知識とこの世界の魔道具技術を組み合わせて、次々とユニークな発明を生み出していく。 辺境の地で、家族や使用人たちに役立つ便利な道具や、妹のための可愛いおもちゃ、さらには人々の生活を豊かにする新しい魔道具を作り上げていくエルヴィン。やがてその才能は周囲の人々にも認められ、彼は王都や商会での取引を通じて新しい人々と出会い、仲間とともに成長していく。 しかし、彼の心にはただの「発明家」以上の夢があった。この世界で、誰も見たことがないような道具を作り、貴族としての責任を果たしながら、人々に笑顔と便利さを届けたい——そんな野望が、彼を新たな冒険へと誘う。

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

MP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?

音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。 役に立たないから出ていけ? わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます! さようなら! 5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!

処理中です...