フェル 森で助けた女性騎士に一目惚れして、その後イチャイチャしながらずっと一緒に暮らす話

カトウ

文字の大きさ
252 / 318

漁村

しおりを挟む
 253 漁村

「この近くにうちの商会みたいな手広く商品を揃えてるところもあるんだけど、こういう小さなお店に意外と掘り出し物みたいな物があったりするんだー」

 僕たちは生地を売っていた隣の店に入った。中央広場に面したその店は開店準備の時に立て看板を買った店だ。文字を消してまた書き直すことができる立て看板はとても重宝している。
 いろいろバタバタしていたからお店の中をじっくり見ていなかった。

 お店の中は雑貨屋と言うだけ本当にいろいろな種類の商品がある。庶民の生活に根付いた雑貨。道具屋、と言うよりは金物屋に近いだろうか。

「ケイ。串焼きに使う串と言ってもけっこう種類があるものなのだな」

「そうだね。僕もこんなに種類があるなんて知らなかった」

 串焼き用の串は100本単位で売っていた。竹串を少し太くしたものから平べったいものなど、いくつか種類があった。

「あの長めのものは魚を丸ごと焼けるのではないか?」

「本当だ。けっこう丈夫だし、きっと焚き火とかで丸焼きにできるかも。野営とかで肉を焼いても良いかもね」

 長めの串は50本で銅貨5枚。試しに100本買ってみることにした。
 自分で作れそうだとは思ったけど、その手間を考えるとこの値段はお得だと思った。

 調理器具は王都の方が充実していると思った。泡立て器はあったけどピーラーは無かった。売れ切れちゃったのかな。
 
 あ、あった。

 見ると魚の骨を抜くのにちょうど良い大きさのトゲ抜きがある。さっそく買っておこう。探せば王都にもありそうだけどこういうのは見つけた時に買ってしまった方がいい。
 
 フェルと一緒に店内を見て回る。フェルが小物入れが並ぶ棚で足を止めた。

「釣り銭のな、銅貨を入れる箱のようなものが欲しいのだ。ただきちんとした箱ではいろいろゴミも入ってしまいそうだ。ザルでも良いのだがあれは丸いだろう?もっと安定して置いておけるこのくらいの大きさの物が欲しいのだ」

 フェルが両手で欲しい大きさを伝えてくる。僕も一緒に探すことにした。銀貨は袋に入れておくとしてもお釣りを手早く用意したいんだそうだ。料理用のザルはちょっと使いにくそうだ。だけどわざわざこのために作ってもらうほどのものでもない。
 いろいろ見ていると隅っこの方に竹細工の籠がいっぱい入った樽があった。ひとつ銅貨3枚。形は不揃いで大きさも様々。だけどフタがちゃんとついてある。

「フェル。これなんてどう?フタは使わないかもしれないけど大きさもちょうど良いんじゃない?」

「竹籠か。確かに良さそうだ。この辺りでも竹が生えているのだな」

 フェルの故郷にも竹が生えているところがあったみたい。農作業用の入れ物など農閑期に村人が作っている様子を見たという。
 僕の村には竹は無かった。代わりに細く割いた木で籠を編んでいたような気がする。

 フェルはちょうど良い大きさをゴソゴソと探している。候補から外れた籠を持ってあげた。
 その中におにぎりを入れるのにちょうど良い大きさのものを見つける。編み方は不揃いだったり、ちょっと間違ったようなところもある素朴な感じの容器だけど、おにぎりがちょうど2個入る大きさの物を見つけたので似たような大きさの物を僕も探した。小さめに握ればギリギリ3個は入りそう。蓋が付いてるっていうのが良いな。

 竹籠はフェルの分も合わせて5個買う。蓋が開かないようにゴムバンド、みたいな謎素材の髪を縛るための紐も一緒に買う。フェルは紐で縛るからいらないそうだ。紐は生地の切れ端を使うからいいと言う。

「ケイくん、なにそれ。竹の籠?あーこれもしかして孤児院の子供が作ったやつじゃない?前にこれ面白そうだなって製造元を探したことがあったんだー。そう、その孤児院にも見学に行ったよ。手先の器用な子供がお小遣いを稼ぐために作ってるんだ。ここの縫ってる部分はシスターがまとめてみんなの分をやってたよ」

 3男は仕入れたいと思ったらしいけど、大量生産が出来ないので諦めたそうだ。それに子供が作るから大きさが不揃いだったり、網目が揃って無かったりするから商品にするには難しいと思ったらしい。

「シスターには注文してくれたら頑張って同じ大きさの物を作らせるとまで言ってくれたんだけどねー。すごくいい人だったよ」

 フェルがだいたい欲しいものが買えたと言うので店を出る。
 ちょっと中途半端な時間になっちゃったな。

「んー。どうしようかな。他に行くお店とか……、強いて言うならデイビットの店だけど……もう行ったんだよね。倉庫を見せてもらったらそれなりに面白いとは思うけど、ケイくんは?他にどこか行ってみたいところはある?」

 強いて言うなら領都の周りを見てみたいかな。海とかみてみたいけどちょっと時間が遅すぎる。
 そう3男に話すと、海はまた今度港町に連れて行くから、馬車で領都の周りを少し回ってみようということになった。
 そして3男の馬車を出してもらってまだ見ていない領都の東側に行ってみることにした。

 北門から出て道なりに東側へ周る。この街道をそのまま進めばやがて港町に出るそうだ。途中の分岐で少し細い道に入る。

「こっちの方ではあんまり農地としては使ってないらしいんだ。開拓しようとしたみたいなんだけど、海の近くは土に塩が混じってるんだって。この辺は大麦の畑だね。なんか小麦より塩に強いみたいだよ」

 収穫の時期はもう終わったのだろう。荒地のような、畑には見えない景色がずっと続く。

「もう少し行けば海が見えるかも。でも馬車で行けるかな?この馬車少し重たいんだよね」

 慣れた手付きで手綱を捌く3男。僕とフェルは荷台から乗り出すように前にピョコっと顔を出して景色を眺めている。

「海、見てみたいな。ねー、3男。僕が土を固めるから行けるところまで行ってみない?フェルもいいかな?」

 2人が快く了承してくれたので行けるところまで行ってみることにする。

「確か……この先に東の漁村に通じてる道があったような……。でも道って言うほど整備されてないからね。ケイくん。車輪が沈まないように頼むよ」

 少し進むとあぜ道のような分岐を見つける。ある程度幅もあるから途中で引き返すこともできそうだ。いざとなったらフェルと一緒に馬車を持ち上げてUターンしよう。荷物がないから頑張れなくはないと思う。

 馬車を降りてあぜ道に入る。土を柔らかくして、足でなんとなくなだらかにしたら固めていく。多少デコボコは残るけど細かいことは気にせずどんどん道を固めていく。

 大麦は育ててもそんなに需要が無いみたいだ。土を慣らすのを手伝ってくれながら3男が教えてくれる。土地を余らせておくのも勿体無いということで適当に大麦を育てているらしい。家畜の飼料とかになるそうだ。だから銀の鈴の支配人も麦茶を絶賛していたのか。なんとなくその理由がわかった気がする。

 3男が馬車を少しずつ進めてくれて、ゆっくりではあるけれどある程度の距離まで来た。辺りは荒地が広がって少し潮の香りがする。

「ケイくん。見えてきたよ。馬車の上からならよく見えるかも」

 そう言われて馬車の屋根にフェルと一緒に登ってみる。屋根の上に登ってみたら奥の方に海が見えた。
 頑張ってもう少し進める。少し高台になっている所まで馬車を進めると遠くの方に海が見えた。

「ここの先の漁村が一番領都から近いんだけどねー。こんな感じで道が無いんだよ。整備するって言っても今の領都の財政では難しかったりするんだー。あ、でもケイくんの魔法なら簡単な道くらい作れちゃうかもね。領都に来る時、ちょっと驚いたんだ。僕も街道を遠回りして来たからね。本当はもっと時間がかかるかもって思ってたけど、ところどころ修繕されてたからね。あれやったのケイくんでしょ」

 さすがに3男にはわかっちゃうか。僕はガンツと一緒にところどころ道を直しながら領都に向かったことを話した。
 それを聞いて3男は笑っていた。普通そんな簡単に道なんて直せないって言って。

 だけどその漁村まで道を作るとなると今日みたいに足で慣らして進むのはけっこうしんどいな。名前は知らないけどグランドの整備に使うやつ?ああいうのがあればもっと楽に道をなだらかに慣らしていけるかも。
 ガンツに作ってもらう?だけどこの人数でそれをやるのもけっこう大変だと思うけどな。

「ケイ。あのずっと奥まで広がる湖のようなのが海なのか。近くまで行ってみないとわからないだろうが、さぞ広大な景色が見られそうだな。いつか見てみたいものだ」

 そう言われるとフェルにその景色を見せてあげたくなる。馬に引かせてサザーってやれば行けるかな?馬が歩きやすいようにちょっと整えて、僕が土を柔らかくしながら馬と一緒に歩いていけば。
 確か歩けば1日かかるとか魚屋のおっちゃんが言ってたっけ。そんなことを考えていたら声をかけられた。

「お兄さんたちー。そこでなにやってんのー?この先馬車は入れないよ。荷車も使えないくらい足元が柔らかいから引き返した方が良いよー」

 声のする方を見ると小さな女の子が籠を担いで僕たちを見ている。
 この先の漁村の子かな。ゆっくりと僕たちがいる高台の方に近づいてくる。

「お兄さんたち領都の方から来たの?わざわざこんな所まで。道に迷ったとしたらお兄さんたち相当な方向音痴だよ」

 その子に海を見に来たんだと伝えると大丈夫?みたいな変な目で見られてしまった。

「あたしはこれから領都に行くんだ。早くしないと暗くなっちゃうからもう行くね」

 そう言って先に進もうとする女の子を呼び止めてせっかくなら門まで乗って行かないかと声をかけた。
 女の子は不審な目で僕たちを見る。
 そりゃそうだよね。確かに僕たち、すごく怪しい。

 フェルがなんとか事情を説明するとまだ警戒している様子だけど馬車に乗り込んで僕たちは領都に向かって馬車を進めた。

 女の子はチコという名前で、これからおっちゃんの魚屋に海産物を売りに行く所らしい。村を出るのが少し遅くなったから急いでいたらしく、いろいろ話して警戒心が解けたチコは馬車に乗せてくれてありがとうと僕たちに言った。
 話してみるとなんだか素直な感じの女の子だった。

「変だね。この道もっとデコボコしてたと思うんだけど、お兄さんたちなんかした?」

「ちょっと馬車が入れるように少し慣らしたんだ。車輪がはまっちゃいそうだったから」

「そうなんだよ。すぐ車輪が動かなくなっちゃうんだ。せめて荷車が使えたらもっといっぱい売り物持ってこれるんだけど、道が悪いからね。お兄さんたちのいたところから先はもっとひどいよ。アタシの足も埋まっちゃうくらいの砂地もあって馬車なんて絶対無理だから」

 そう言えばまだ名乗って無かったことに気づいて慌てて自己紹介をする。
 チコは3男?なにそれ、と不思議そうな顔をする。
 
 そりゃそうだ。3男は名前じゃなくて続柄、その人の家族との関係性を示す言葉だ。

 来た道を戻り北門から入って市場の近くでチコを下ろす。日が暮れる前に着けてチコも喜んでいた。
 チコと別れた僕は少し本気であの道を整備しようかと考えるようになっていた。
 チコから聞いた海産物がとても気になっていたからだ。特に昆布は邪魔になるくらい採れるらしい。網がダメになるから困るんだと言っていた。

 貧しい村だけど食事はなんとか困らずに食べていけているそうだ。小麦は育たないので大麦でお粥のような物を煮て、海で獲れた魚でご飯を食べているそうだ。魚は美味しいけどチコは街の料理が良いと言ってた。

 チコと別れた僕たちは宿に戻る。
 3男と夕食の時間を決めて僕たちは部屋に戻った。
 

 
 
 









しおりを挟む
感想 18

あなたにおすすめの小説

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

転生したら領主の息子だったので快適な暮らしのために知識チートを実践しました

SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
不摂生が祟ったのか浴槽で溺死したブラック企業務めの社畜は、ステップド騎士家の長男エルに転生する。 不便な異世界で生活環境を改善するためにエルは知恵を絞る。 14万文字執筆済み。2025年8月25日~9月30日まで毎日7:10、12:10の一日二回更新。

辺境領主は大貴族に成り上がる! チート知識でのびのび領地経営します

潮ノ海月@2025/11月新刊発売予定!
ファンタジー
旧題:転生貴族の領地経営~チート知識を活用して、辺境領主は成り上がる! トールデント帝国と国境を接していたフレンハイム子爵領の領主バルトハイドは、突如、侵攻を開始した帝国軍から領地を守るためにルッセン砦で迎撃に向かうが、守り切れず戦死してしまう。 領主バルトハイドが戦争で死亡した事で、唯一の後継者であったアクスが跡目を継ぐことになってしまう。 アクスの前世は日本人であり、争いごとが極端に苦手であったが、領民を守るために立ち上がることを決意する。 だが、兵士の証言からしてラッセル砦を陥落させた帝国軍の数は10倍以上であることが明らかになってしまう 完全に手詰まりの中で、アクスは日本人として暮らしてきた知識を活用し、さらには領都から避難してきた獣人や亜人を仲間に引き入れ秘策を練る。 果たしてアクスは帝国軍に勝利できるのか!? これは転生貴族アクスが領地経営に奮闘し、大貴族へ成りあがる物語。 《作者からのお知らせ!》 ※2025/11月中旬、  辺境領主の3巻が刊行となります。 今回は3巻はほぼ全編を書き下ろしとなっています。 【貧乏貴族の領地の話や魔導車オーディションなど、】連載にはないストーリーが盛りだくさん! ※また加筆によって新しい展開になったことに伴い、今まで投稿サイトに連載していた続話は、全て取り下げさせていただきます。何卒よろしくお願いいたします。

辺境貴族ののんびり三男は魔道具作って自由に暮らします

雪月夜狐
ファンタジー
書籍化決定しました! (書籍化にあわせて、タイトルが変更になりました。旧題は『辺境伯家ののんびり発明家 ~異世界でマイペースに魔道具開発を楽しむ日々~』です) 壮年まで生きた前世の記憶を持ちながら、気がつくと辺境伯家の三男坊として5歳の姿で異世界に転生していたエルヴィン。彼はもともと物作りが大好きな性格で、前世の知識とこの世界の魔道具技術を組み合わせて、次々とユニークな発明を生み出していく。 辺境の地で、家族や使用人たちに役立つ便利な道具や、妹のための可愛いおもちゃ、さらには人々の生活を豊かにする新しい魔道具を作り上げていくエルヴィン。やがてその才能は周囲の人々にも認められ、彼は王都や商会での取引を通じて新しい人々と出会い、仲間とともに成長していく。 しかし、彼の心にはただの「発明家」以上の夢があった。この世界で、誰も見たことがないような道具を作り、貴族としての責任を果たしながら、人々に笑顔と便利さを届けたい——そんな野望が、彼を新たな冒険へと誘う。

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

MP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?

音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。 役に立たないから出ていけ? わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます! さようなら! 5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!

処理中です...