フェル 森で助けた女性騎士に一目惚れして、その後イチャイチャしながらずっと一緒に暮らす話

カトウ

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そんなこと言われても

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 257 そんなこと言われても

 セルジュさんが戻ってきた。

「すまなかった。ワシが勝手に誤解していたようだ」

 トビーの奢りのスペシャル果実水、これは単純に中身の果物が2種類入ってるってだけの特別裏メニューなんだけど、フェルと2人でそれを飲んでイチャイチャしていたところにセルジュさんが落ち込んだ顔をして僕たちに謝りに来た。
 慌てて姿勢を正してセルジュさんに向き合う。

 誤解は解けたのかな。何から話せば良いのだろう。
 領都に来てからの話?屋台に冒険者が集まる理由?ポーションは偶然出来たものだから出来れば気にしないで欲しい。だってあのポーションかなりやばい仕上がりだったし。

「あの……セルジュ……さん。僕たち、何か企んでるって、そんなこと絶対ないですからね。上手く言えないけど、いろんなことが偶然?……そういうのとちょっと違うかも……。だけど、たまたますごく良い薬草が手に入って、それでポーションを作ったらなんかすごいの出来ちゃったんですよ。せっかくだから腰を痛めて養生してるセルジュさんに飲んでほしいなって思って。本当に何かやましいことを考えてたわけじゃないんです。ただの思いつきで……」

「その話はさっき耳が痛くなるくらい聞かされた。ラッセルが張り切って上質の薬草を届けたんだそうだな。それで出来上がったポーションがとんでもなく質が良いからワシにも飲んでみてほしいと、その辺りはマリアからさんざん聞かされた」

 マリアさん……。わざわざ呼び出されたの?忙しいのにすみません。

「言い訳をするつもりではないが、お前たち領都に来てまだひと月も経っていないのだろう?それなのに気味が悪いほどこの街に、いつの間にか馴染んでしまっている。お前たちは……お前たちは一体なんなんだ?」

 そんなこと言われても。
 
 答えがしにくいような質問をされるのは少し困る。
 なんとなく始めたことが、なんとなく良い風が吹いて上手くいっただけ。だけどそれじゃあセルジュさんには納得してはもらえないだろう。

「師匠が!そうだ、師匠がこの街で、戦争が終わっても炊き出ししてたらしくて、それでみんなが優しくしてくれて、冒険者の皆さんもクライブの弟子だからって……なんとなくその……」

「まあ良い。ワシが勘違いをしたのが悪かった。クライブの弟子だそうだな。どのくらい料理は作れるようになったんだ?店では何か料理を任されているのか?」

「一応……ひと通り店のメニューは作れますけど……。今は担当する料理をみんなで交代しながら店を回してます。何の係とか今はあまり決まってませんね」

 そうなのだ。全部やるか、やらないか。僕に対しての師匠の教えははっきりしている。ハンバーグ焼く夢でよくうなされたものな。大変だった。

「この街で店を出すのか?」

「いつかはそうしたいと思ってますけど、それはまだまだ先のことです。この屋台はいつかお店を出すための練習みたいなもので、2、3週間くらいって期間の話を商業ギルドの受付で話したらたまたまここを勧められたんです。良い場所でとても助かりました」

「ふむ。そうだろう。この場所はこの領都で一番良い場所だからな。お前の店の売上が良いのもこの場所のおかげだ。ワシに感謝するといい。お前の作った未熟な料理でも商売になっているのだからな」
 
 この人はどうしてこんなに偉そうなんだろう。でも悪い人ではないと思った。そうじゃなきゃわざわざ謝りになんて来ないよ。
 フェルは僕の料理が未熟だと言われたことが気に入らないのがムスッとしている。

「セルジュさん。良かったらこの後いろいろ料理を出しますから食べて行きませんか?」

「そうだ。だいたい食べてもないくせにケイの料理が未熟だと言うのはやめてもらおう。公平さに欠けている」

 どうせ大したものでは無いのだろうなどと言いながらしぶしぶセルジュさんは屋台の裏に置いてある椅子に腰掛けた。

 デミグラスソースはトビーにホットドッグの作り方を教えながらコツコツと煮込んでおいたものだ。
 師匠の作る店のデミグラスソースと比べると少しコクが足りない気もするけれど、味は悪くない。けっこう良い材料使わせてもらったしな。スティーブさんと厨房の皆さんに感謝だ。

 パンは余分に買って来ていないからご飯と一緒に出すことにする。ちゃんといつもお店で出しているように付け合わせの野菜も綺麗に盛り込む。お皿は今日は銀の鈴の厨房から借りてきた。
 今日の帰りに少し食器を買おうかな。使い終わったら洗ってサンドラ姉さんのお土産にしてしまうか。

「お待たせしました、セルジュさん。小熊亭の看板料理です。ハンバーグって言います」

「ハンバーグくらい知っておる。クライブがよく作っていたからな」

「パンが無いからお米と一緒に食べてください。美味しいですよ」

 家畜のエサだろう!とか怒られるかと思ったけどお米に関しては何の文句を言われなかった。

「ケイ!今日もうめえぞー。タマネギが入ったやつも良かったが、このソースもいい」

「本当?良かった。ソースはまだ熟成が足りて無いんだけど喜んでくれて嬉しいよ」

「本当に銅貨3枚で良いのか?ツマミって言うより、もうちゃんとした料理じゃねーか」

「原価はそれくらいだよ。もっと安いかな?今はオークの肉が安く買えるからね」

 お米を使っているし、付け合わせの野菜も余ったものでささっと作った。原価は王都で作っている時よりさらに安くできていると思う。

「小熊亭はそんな高級なお店じゃ無いんだよ。お腹いっぱい食べても銅貨15枚は滅多に超えない。お酒を飲んだら別だけどね」

 セルジュさんが静かだ。口に合わなかったかな?どうしよう。話しかけて良いのだろうか?

「誰かと思えば串焼き屋の親父じゃねーか。腰はもう良いのか?もう良い歳なんだから気をつけろよ」

 シドが不意にセルジュさんにそう言った。

「あんたの串焼きいつも買ってたぞ。娘が美味しいっていつも言っててな。買って帰ると喜ぶんだ。再開するの待ってるからな」

 律儀に食器を返しにきてくれたジャックさんがセルジュさんに話しかける。娘が反抗期だって言ってるけど、けっこう上手くやっているような気がしてる。実際のところジャックさんは良いお父さんだと思う。ちょっと娘さんの反応を気にし過ぎなだけだ。

 気づけばセルジュさんを囲んで冒険者たちがいつの間にか楽しそうに騒いでいた。
 実はちょっと対応に困ってたから助かる。
 僕が困ってたのなんとなく察してくれたのかな。どうだろう。見た感じみんな気持ちがいいくらい酔っ払っているような……。大丈夫かな?

 ハンバーグで予算をだいぶ使っちゃったから今日のおつまみはマジックバッグの在庫整理だ。余り物をできるだけ美味しく。
 そういうのはけっこう得意だ。残ってるタラコで何か和物でも作ってみようかな。
 
 カバンの中身を空っぽにして明日また新しいものを仕入れよう。

 王都よりも一足早い秋の空気の中、すっと吹き抜ける風。
 その心地いい感じはきっとみんなのおかげだろう。

 優しい風が吹く。
 フェルが肩まで伸びた髪を手で抑える。
 なんとなく目があって僕は自分の口元が緩むのを感じる。
 
 
 
 
 

 







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