フェル 森で助けた女性騎士に一目惚れして、その後イチャイチャしながらずっと一緒に暮らす話

カトウ

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お導き

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 265 お導き

「ラッセルさん。何してるの?」

 バーベキューの準備を終わらせて、僕はふとラッセルさんが舗装した道の脇で何かしているのに気づいた。その姿は誰かに祈りを捧げているようでその不思議な様子に惹きつけられて僕はラッセルさんに声をかけた。

「祖に、願いを聞いてもらっていた。ここに森は必要。けれどその恵みない。せめてわずかな助けになればと祖に願いを立てた」

 この時はそうなんだーとか適当に話を合わせて、よくわからないままラッセルさんと浜に戻ったのだけど、ずいぶん後になってラッセルさんが何をやっていたか僕は理解することになる。
 それに気付いた時、僕はラッセルさんに頭を下げてお礼を言った。
 その時のラッセルさんは笑ってそんな僕を追い払ったのだけれど。

 ラッセルさんっていくつなんだろう?僕より年上なのは間違いないんだけど、他の冒険者たちとは少し違う。落ち着いてる?いやそれは性格もあるのだけれど、ガンツやライツに似た雰囲気を時々感じることがある。

「ラッセルさん。今日は海鮮の浜焼きだよ。バターをたくさん使ってそこに醤油を少しだけかけて食べるんだ。お刺身も出すよ。生のお魚。新鮮じゃなきゃ食べられないんだけど、なんかザックが大物釣ったって。あ、ラッセルさんも一緒だったんだっけ。すごく大きなやつだからきっと刺身も美味しいよ」

 何も言葉は返さないけれどなんとなくラッセルさんの気持ちは僕にも伝わっていた。

 その大物の鯛はラッセルさんが釣ったらしい。丸ごと頭もつけて刺身にして振る舞ったらザックがその時のことを面白可笑しくみんなに説明していた。

 ザックってすごいと思う。領都には半年前に来たみたいだけど、いろんな細かい依頼を受けて、この街の冒険者の中にグイグイと入り込んで行ったらしい。
 今の相棒のジークさんに声をかけられて入った黄昏の道化は今、期待度急上昇のパーティーになっている。
 髭がないから少しチャラい感じがするけれど年下の冒険者を引き連れて指導をしたり、思えば僕があの門番にお金を騙し取られそうになっていた時もそうだけど、面倒見のいいその性格ですっかり領都に馴染んでしまってる。

 ザックは彼女が欲しいんだと酔っ払うたびに僕に絡んでくる。
 いい人が見つかればいいね。いや、ザック。あんまり僕に絡まないでよ。僕の話はあまり参考にならないと思うけど。
 今から山に行く?山に行ったって都合よく女の人が倒れてるってことはないと思うぞ。
 だいたいこの辺に森はあっても山はないんだが。

 王都に行けば出会いがあるんじゃねーかと誰かが言ったら王都の女は最低だと言う。なんか嫌なことあったのかな。
 釣りをしながら酒を飲み、すっかりと酔っ払ってしまったザックは鯛めしを食べた後眠ってしまいラッセルさんに運ばれてどこかに置いてこられた。

「これは一体なんでしょうか?こんなの食べたことがありません」

 村長が鯛めしを食べて僕にそう言ってくる。そのお茶碗に出汁を注ぎささっと具材を足してお茶漬けにするとまた驚いた顔をする。

「そのうち街で食べられるようになりますよ。新しい領都の名物なんです」

「お兄さーん。これすごく美味しいよ。私街の屋台の料理は全部食べたつもりだったけどこんなのなかったよ?」

 スプーンを咥えたまま話すチコに、鯛めしの出来上がった経緯を簡単に話す。
 村長には鯛がこの先高値で引き取ってもらえるかもしれないことを話しておいた。

 ちょっともったいない気もしたけど、一羽丸ごともらって来たチェスターさんの鶏肉を串に刺し、バーベキューの網で焼き鳥にする。
 焼くのに忙しい僕にフェルが食べさせてくれた。
 やばい。この鶏肉すごく美味しい。

 スープで使った残りの肉を削ぎ落としてペースト状にしてパテを作る。
 マジックバッグに入っていたパンに塗って炙ったら気絶しそうなくらい美味しいパテができた。
 味見をして、あ、これ美味しいわ。
 そう呟いたらあっという間になくなった。

 そんなことをしていたらチコのお父さんの船が戻ってくる。
 なんだかものすごく大漁だったみたい。村の人が大慌てでチコのお父さんの船に向かう。

「船を出したらカモメが船を先導するように目の前を飛ぶんだ。騙されたつもりでついて行ってみれば目の前に鳥山が出来ててな。あわてて網を入れればずっしりと重たい。あげるのに苦労したぜ。女神さまのお導きってやつだな。話には聞いてたが初めて見たぜ」
 
 興奮気味にチコのお父さんが仲間の漁師に話している。そんな良いことがあったのか。大漁だなんてついてるな。
 
「それにしてもこんなに獲って来てどうすんだ?アジとかサバならそれなりに美味いから良いが、メルみてーな雑魚なんてみんな嫌がるだろ。俺たちで食うにしても……ずいぶん余っちまうな」

「そうだよな。でもせっかくのお導きだぜ。その場で捨てちまったらバチが当たるかもしれねーじゃねーか」

 悩むチコのお父さんに僕は声をかけた。

「その魚はこの辺りでよく獲れるんですか?」

「ん?あぁ、普段、漁って言っても普段は自分たちが食う分しか獲らないんだ。この魚は身があまり味がしなくて、まあ要するにあまり美味くないんだ。村の近くではいっぱい獲れるんだが、そこまでありがたがって食べるようなものじゃ無い。捨ててしまうこともあるくらいだ」

 小さめの……タラかな?タラは確かもっと大きかったと思うけど、これなんだろ。スズキ?いやたぶん違うな。

「白身の魚ってことですよね。焼いても身がパサパサしてあまり美味しく無いって」

「あぁ、この辺りじゃメルって呼んでる。スープに入れたりすればまあ食えないこともないんだが他にも美味い魚があるからな。ほとんど食わない」

 煮込んでしまえば美味しい料理にできると思うんだけど、少し試したいことを思いついてしまった。チコのお父さんに言ってその大量に獲れたメルという魚を預からせてもらった。
 氷をたくさん出してとにかく鮮度を保つ。

「明日これで何か出来ないか試してみます。美味しいものが作れたら皆さんも助かるんですよね」

「そりゃそうだが、あんただってこっちの魚の方が美味いって思うだろ?こういうのが街ではよく売れるんじゃないのか?ジェイクが言ってたぞ」

「確かにそうですけど、せっかくの海の恵みなんですから美味しく食べれたらそれに越したことは無いじゃないですか。それに上手く行けば売り物になるかもしれませんよ」

 村人は半信半疑で僕の話を聞いているけど大量のメルを箱に詰めるのを手伝ってくれた。

「ケイ!そろそろ次の鯛めしが炊き上がるぞ。焼き鳥はどうする?皆が欲しがっているが」

「焼き鳥は村の人に食べて欲しいから、みんなの分はおしまい。代わりに何か作るよ。すぐ行くね」

 炊き上がった鯛めしを急いでおにぎりにする。その鯛めしにチェスターさんの美味しい焼き鳥をつけてまだ食べていない村の人に配った。

 網にかかっていた大きめのハマグリを冒険者たちにはバター焼きで出してあげる。
 みんなお酒を持参してた。あちこちで酒盛りが始まる。ヒャッハーとか言わないで欲しい。世紀末な感じはとりあえず要らない。楽しそうなのはいいんだけどさ。
 
 ラッセルさんとフェルは焼き台のそばにテーブルを置いて、出来上がった料理を真っ先に食べられる特等席で次の料理を待っている。なんだか司会者みたいだ。ナイフとフォークを立てて待つのは行儀が悪いよ2人とも,

 ザックが最後に持って来たすごく大きな鯛はすぐに締めて氷で冷やしておいた。村の人にもそのお刺身を振る舞う。
 
「兄さんあんた料理がとても上手なんだな。普段から食べ慣れてる魚だと思っていたが、あんたが料理すればあっという間にご馳走みたいになっちまう。この米って言うのはどうやって作るんだい?パンよりこの村には向いている気がするんだが」

 村長には米のことを説明して、あとでジェイクさんのところに精米器を預けておくと伝えた。お米はパンより安いからこの村には良いかもしれない。炊き方を教えるのはギルドのウォルターさんにお願いしようかな。この村にいる間に教える時間が作れたら良いのだけど。

 ちょっと余裕ができた僕は料理をしながらつまみ食いを始める。
 ハマグリ美味しいなー。シマシマの貝はこれアサリだよね。酒蒸しにしちゃうか。いっぱい獲って来てくれたからみんなに行き渡るはず。

 フライパン3つに大盛りで作ったアサリの酒蒸しはみんな飛びつくように食べ始めた。
 3男がその貝殻を見て、村長のところに行く。
 戻って来た3男に話を聞いたら3男は村長にこの貝殻が欲しいと言ったそうだ。

「今王都の南側にいろいろ建物を建ててるじゃない。ライツが貝殻を欲しがっててね。なんか家を建てるのにいっぱい使うみたいだよ。貝殻ならまとめて埋めてあるって言うからそれをもらっていこうと思って。高く売れるわけじゃないけどこれから先ライツにはいろいろお願いすることが多くなると思うんだー。うちの家訓の「時には恩を売れ」ってやつだよー」

 貝殻は明日子供達も総出で拾って来てくれるそうだ。その対価として3男は持って来た商品をこの村に売ってあげるそうだ。

「売るって言うかほとんど貝殻と交換だね。一応納品書には僕が貝殻を買ってそのお金で村の人が商品を買ったってことにしておくけど、ああ、これってすごく大事なんだよ。悪い商人はこういうところに漬け込んで貧しい村から品物を巻き上げたりするんだから」

 貝殻が必要って漆喰を作るのかな。作り方は僕もよくわからない。

 アジは丸ごと塩焼きにして、サバはスープで煮込んでおく。サバは明日の朝ごはんにしよう。

 村の人たちもみんな満足そうな顔をしてる。魚が売れるようになってもっと美味しいご飯をみんなが食べられるようになればいいな。

 あんなに酔っ払っていた冒険者たちはさっと後片付けをしてみんな自分の寝床を作り始めた。こういうところは王都の冒険者たちと同じだ。たぶん野営の跡を残さないように普段からちゃんとしてるんだろう。

 僕たちも自分たちのテントで交代で体を拭き、久しぶりのテントでフェルとくっついて眠った。

 
 











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