フェル 森で助けた女性騎士に一目惚れして、その後イチャイチャしながらずっと一緒に暮らす話

カトウ

文字の大きさ
270 / 318

とりあえず

しおりを挟む
 271 とりあえず

「なんだいこりゃ?油で焼くのかい?」

「揚げるって言うんです。熱した油の中に食べ物を入れて火を通すって調理方法になります。今から作るのはフライというパン屑をまぶした物を油で揚げたものと、唐揚げという味付けした液体に漬け込んでその後油で揚げるという2種類のものを作ってみます」

 お手伝いに集まってくれたのは近所の漁師の奥さんたちだった。今日はアイナさんも入れて6人来てくれている。

 ささっと何匹かの小振りのサバを3枚におろして塩で下味をつけたら、パン粉をまぶして熱した油に優しく落とす。
 浮き上がってきたサバを丁寧に何度かひっくり返して火が均等に入るようにする。
 フェルは僕の横でマヨネーズを作ってくれている。この前覚えたばかりの新しい浄化の魔法を使って玉子を殺菌してくれた。

 少し強めに下味をつけたフライにギュッとレモンを絞って食べてもらう。

「これ、良いじゃないか。この食感がたまんないよ」

「何だいこりゃ。あの小さなサバがこんなに美味しくなるのかい」

「少し油が気になりますが、絞ったレモンが良いですね。とても爽やかです」

 サバのフライはかなり高評価だ。
 マヨネーズにつけて食べてもらうとみんながその味に驚いて押し黙る。

「……ケイ。こんなのあたしたちに作れるもんか。こんなの領都の高級な店で出してるような料理じゃないか」

 そう恐る恐る口を開いたのはアイナさんだ。この町から高値で仕入れた魚をこんなに美味しい料理にする店なんてびっくりするくらい高級な店に決まってるとアイナさんが言って、集まったお手伝いの奥さんたちもその言葉にうなづく。
 フライにするという料理方法は特別なことではないと説明して、油を除いた原価を簡単にみんなに伝える。
 揚げ物なんて慣れればそんなに難しい料理じゃない。

 信じられないくらい安く譲ってもらった小魚は大きく分けて4種類。
 小さめのサバ。イワシ。小さなアジ、たぶん豆アジとか呼んでた気がする。あとは……たぶんイワシの仲間だと思うんだけどワカサギくらいの小さな魚。前世の記憶では煮干しとか佃煮とかに加工されていたから魚の名前まではよくわからない。それは集まった奥様たちも同じだった。

 比較的料理のしやすいサバとイワシをまずは全部捌いてみることにした。

 僕は包丁でやろうとしたけれど、奥さんたちは素手で頭を落とし内臓を取り出している。

「こんなのに手間なんてかけてらんないよ。うちには育ち盛りの男の子が3人もいるんだからね」

 他の人も似たような感じみたいだ。しかもみんな早い。やり方を教えてもらって僕も手開きで内臓を取り出す。

 サバは見た目も大事だから3枚にするのは包丁でやったけれどそれ以外は手開きだ。奥さんたちすごい。見た目も僕がやったのより綺麗だ。

 小さいイワシのような魚と豆アジはそのまま揚げることにした。普段はここまで小さな魚は使わないらしい。スープに入れて出汁を取るくらいにしか使わないそうだ。

 捌いたサバとイワシはよく洗って氷で冷やした塩水に浸しておく。
 豆アジは素揚げしてみたものの、そのまんまでは少し生臭くて食べにくい。これは唐揚げかな。
 内臓を取り出した小さい魚たちはフライでも唐揚げでもいけそうだ。下味をつけるなら少し……生姜かな、辛い味付けも合いそう。あとは……フライにしたものをお酢であえてマリネみたいにしても良いかも。だけどそうなると手数が多くて忙しくなっちゃうかな。それにちょっと高級な感じがしてしまう。

 マリネしたからって高級なわけないんだけど仕上がったものにさらに2次的な味付けして仕上げるのはきっとお店の料理だ。これは屋台とか食堂とかでもっと気軽に食べて欲しい。作り方はできるだけ簡単に、誰でも作れるようにしなくちゃ。

 サバとイワシのフライはいくつかの試作を繰り返してみんなが納得するものに仕上がった。
 だけどその他の小魚が難しい。
 いくつかの試作を繰り返して残ったものは、小魚のフライ。そしてそれを唐揚げにしたもの。唐揚げの味付けを変えてピリ辛に仕上げた唐辛子入りのもの。

 豆アジは難しかった。大きさがまちまちでうまくまとまらない。マリネも作ってみたけど……。手順が少し複雑だ。誰でも真似できるようにしなくちゃいけない。
 新鮮な豆アジは臭みもほとんどなかったので醤油にザブっとつけて片栗粉で揚げたもの。カリカリになるくらいに揚げた衣の薄いフライ。そのフライには胡椒と唐辛子の粉を少しかけた。あとは豆アジの天ぷら。ただしこれには天つゆをつける必要がある。

「ケイ。ずるいぞ。どれも美味しいではないか。これでは選ぶことなんてできない。どれも毎日食べたいくらいだ。これでは意見がまとまるわけがない」

 フェルに怒られてしまった。全部美味しく作れたのになんでだ。

 作った試作品でみんながお腹いっぱいになった頃、3男とアルさん。そしてこの町の代表だというモルテンさんと商業ギルドの職員のキャロさんがやって来た。

 キャロさんは女性でマリアさんよりは少し年上な感じがするけれど。実際のところよくわからない。やめよう。妙齢の女性の年齢は聞いてはいけない。

「これ美味しいけどさー。どうやって売るの?パンに挟むならもう少し工夫しなきゃいけないんじゃないかなー」

 そうだった、3男。夢中になって忘れていた。売り方を全く考えていなかった。

 パンに挟むとしたら?
 この小魚の唐揚げをパンに挟む?
 どうしよう。小魚の唐揚げサンド?
 それ絶対食べにくい。

「待って待って。そういうことじゃないんだよー。この一番美味しいサバのフライはパンに挟めて売ればいいし、イワシ?だっけそのフライだっていけると思う。他の料理は………………正直悩んじゃうね。これ全部美味しいよ」

 3男は僕らと同じ顔で悩み始める。

「えーとね。これから東の国の主だった人たちが来るからその人にも意見を聞いてみようよ。たぶん美味しいだけじゃなくってさ、その……よくわからないけどとにかく別の視点が必要だと僕は思うんだー」

 ん?3男。その別の視点の意見を言うのが3男の仕事ではないのか?

「えーとね。僕には自分の信条ってものがあるんだよ。『3分考えてわからないようなら人に尋ねる』ねえ、これって良いと思わない?要は疑問に思ったことを聞ける人が何人も周りにいれば良いんだよ。そしてその人たちの信頼を裏切らないように生きていくだけ。ね?簡単でしょう?」

 それが簡単かどうかはともかく、それって結局人任せってことじゃない?言ってることはすごく真っ当なことだけどこの場合、3男は僕にもわからないから他の人に聞いてみようってことをただ正当化したいだけな気がする。
 
 でも3男の座右の銘としては相応しいものなのかも。3男ならその頼る人がいる限りずっと生きていけそうな気がする。
 そうなるとその頼れる最後の人が死ぬまで3男は生きていられるってこと?

 世界の終わりに最後に生き残るのは3男みたいな人物なのかもしれない。
 
 違うな。他にもっと相応しい人物がいるはず。だって世界は広いんだから。

「何考えてるの?ケイくん。なんだか目が失礼なんだけど」

 ジトっとした目で3男が僕を見る。違うんだ3男、ちょっと世界平和について考えていただけなんだ。

 そんなバカなことを考えていたら東の国の人たちが食堂にやって来た。全部で6人。
 昨日お会いしたコウさんと料理長のコウジさん。それと見習いのリトくん。
 あとの3人は知らない人だった。

「ロンさん!来てくれたんだー。それからユズもケンタも。あ、ケイくんの料理?そうなんだよー今日はなんと食べ放題だよー。だけど食材はあまり用意してないからね。こういうのが食べたいって言っても限界があるから。でもとにかく楽しんでいってよ。よろしくねー」

 3男。それは食べ放題とは言わない。
 そして大事なことを小声で言うのなんか詐欺っぽいからやめてほしい。

 簡単に現状の目的とその作業の進行状況を説明して、とりあえず……とにかく?冷めないうちに作った料理を東の国の人たちに食べてもらうことにした。
 
 

 

 

 
 






 






 
 
しおりを挟む
感想 18

あなたにおすすめの小説

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

転生したら領主の息子だったので快適な暮らしのために知識チートを実践しました

SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
不摂生が祟ったのか浴槽で溺死したブラック企業務めの社畜は、ステップド騎士家の長男エルに転生する。 不便な異世界で生活環境を改善するためにエルは知恵を絞る。 14万文字執筆済み。2025年8月25日~9月30日まで毎日7:10、12:10の一日二回更新。

辺境領主は大貴族に成り上がる! チート知識でのびのび領地経営します

潮ノ海月@2025/11月新刊発売予定!
ファンタジー
旧題:転生貴族の領地経営~チート知識を活用して、辺境領主は成り上がる! トールデント帝国と国境を接していたフレンハイム子爵領の領主バルトハイドは、突如、侵攻を開始した帝国軍から領地を守るためにルッセン砦で迎撃に向かうが、守り切れず戦死してしまう。 領主バルトハイドが戦争で死亡した事で、唯一の後継者であったアクスが跡目を継ぐことになってしまう。 アクスの前世は日本人であり、争いごとが極端に苦手であったが、領民を守るために立ち上がることを決意する。 だが、兵士の証言からしてラッセル砦を陥落させた帝国軍の数は10倍以上であることが明らかになってしまう 完全に手詰まりの中で、アクスは日本人として暮らしてきた知識を活用し、さらには領都から避難してきた獣人や亜人を仲間に引き入れ秘策を練る。 果たしてアクスは帝国軍に勝利できるのか!? これは転生貴族アクスが領地経営に奮闘し、大貴族へ成りあがる物語。 《作者からのお知らせ!》 ※2025/11月中旬、  辺境領主の3巻が刊行となります。 今回は3巻はほぼ全編を書き下ろしとなっています。 【貧乏貴族の領地の話や魔導車オーディションなど、】連載にはないストーリーが盛りだくさん! ※また加筆によって新しい展開になったことに伴い、今まで投稿サイトに連載していた続話は、全て取り下げさせていただきます。何卒よろしくお願いいたします。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

MP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

辺境貴族ののんびり三男は魔道具作って自由に暮らします

雪月夜狐
ファンタジー
書籍化決定しました! (書籍化にあわせて、タイトルが変更になりました。旧題は『辺境伯家ののんびり発明家 ~異世界でマイペースに魔道具開発を楽しむ日々~』です) 壮年まで生きた前世の記憶を持ちながら、気がつくと辺境伯家の三男坊として5歳の姿で異世界に転生していたエルヴィン。彼はもともと物作りが大好きな性格で、前世の知識とこの世界の魔道具技術を組み合わせて、次々とユニークな発明を生み出していく。 辺境の地で、家族や使用人たちに役立つ便利な道具や、妹のための可愛いおもちゃ、さらには人々の生活を豊かにする新しい魔道具を作り上げていくエルヴィン。やがてその才能は周囲の人々にも認められ、彼は王都や商会での取引を通じて新しい人々と出会い、仲間とともに成長していく。 しかし、彼の心にはただの「発明家」以上の夢があった。この世界で、誰も見たことがないような道具を作り、貴族としての責任を果たしながら、人々に笑顔と便利さを届けたい——そんな野望が、彼を新たな冒険へと誘う。

ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?

音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。 役に立たないから出ていけ? わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます! さようなら! 5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!

処理中です...