フェル 森で助けた女性騎士に一目惚れして、その後イチャイチャしながらずっと一緒に暮らす話

カトウ

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みんなのために

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 282 みんなのために

 2日目の移動は順調だったけれど、野営地の直前まで来ると街道が掘り返されていたり、端の方が破壊されていたりと荒らされている部分が目立つようになった。
 とりあえずその修繕は後回しにして、先に野営地の準備をしてから街道の補修に向かう。

「これでは狩りにも出られんな」

 補習用の土を運ぶアランさんがそう言った。

 アランさんはこの辺のオークを少し間引いておきたかったらしい。街道の安全を確保するために当初から予定していたことみたいだった。

「ライアンに頼んでも王都から距離があるからな。やってくれねーだろうと思ってたからな。しかしあのクソジジイもしつこいな。この辺、ケイが来る時に直してくれたんだろ?」

「ガンツとお弟子さんたちと一緒にけっこう念入りにやったんですけどね。来る時も酷かったですから」

 街道は領都に向かう時よりもあからさまに人の手で破壊されていた。
 頑張って作業したのにな。こんな事されるとほんと困るよ。

「犯人を捕まえたりは出来ないんですか?」

「うちが動くわけにもいかんし、仮にうちが動いたとしてもいろいろと問題があるからな。それに王城に願い出たとしても、その情報はどこかから必ず漏れちまうし、今まで上手く行った試しがねーんだ」

 これまで数回王城に訴え出たことはあったらしい。罠を仕掛けて待ち伏せしたけど犯人は現れず結局オークのせいにされたそうだ。

 人数が多いから作業はどんどん進んでいくけれどけっこう重労働だ。何箇所か修繕をしていたらすっかりみんな汗だくになってしまった。

「がんばれよーこの穴を塞いだらとりあえず終わりだ。これが終わったら風呂に入れるからなーとにかくがんばれー」

 そう言うアランさんの目はどんよりと濁っていた。ん?風呂?こんな所に?

「アランさん、お風呂があるの?」

「ああ、近くに湯が湧き出してるところがあってな。衝立も何もないから女たちは嫌がるかもしれんが、穴を掘れば湯船に浸かれるぞ」

 温泉だ。天幕を張れば衝立代わりになるんじゃないかな。そしたらフェルも入れる。

 その後野営地に戻り、急いで夕飯の仕込みを終わらせて、カインさん、ロジャーさん、それからベンと一緒に湯船を作りに行く。
 火の番はフェルにお願いした。

 僕が先頭を歩き、みんなで草むしりをしながらアランさんが言っていた場所に向かう。

 なだらかな坂を登った先に小さな溜池がありそこから湯気が出ている。どうやらこれが温泉らしい。
 お湯に触れてみるとけっこう熱い。僕たちは比較的平坦な部分に穴を掘り3人くらいゆったりと入れるような湯船を作る。念入りに土を固めて排水も出来るように溝を掘って穴も開けた。
 
「石鹸は使えねーけど、まあ体を拭くよりはましだろう。疲れも取れるしな」

 スラムで暮らしていた頃に作ってもらった折りたたみの天幕を建てて、その中で交代で風呂に入る。
 石鹸を使わないのは水が汚れてしまうからだそうだ。スライムを使った浄水設備があればいいけれど川にそのまま石鹸を流すのはあまり良いことでは無いそうだ。

「温泉って初めて入ったけど、これすごくいいねー。疲れがとれるって言うけどなんだか体がほぐされていくかんじー」

 今日の3男がどんな作業をしていたかは謎だけど気持ちよさそうにしているからにはそれなりに疲れたんだろう。
 夕飯の支度があるから僕も先に入らせてもらった。

「これちゃんと作ってここで野営する人たちが自由に入れるようにすれば良いのにねー。こんなところがあればみんな喜ぶよー」
 
「そうそう、みんなのために建物を作ってさ、宿屋とは言わないけれど宿泊所みたいなものを作れば良いんだよ。そしたらきっとみんなこの道を使いたがると思うよ。だいたいさーこの道って何も無さ過ぎるんだよ。休憩所みたいなものでも作って騎士の皆さんに警備して貰えば良いんだ。そしたら道を壊すような奴らもやりにくくなるだろうし、何よりみんなが安心して通れるって大事なことだよ」

 2人が何も言ってこないので顔を上げると2人とも驚いた顔で僕を見ている。しまった。また余計なことを言ってしまった。

 3男は笑って父に相談してみると言い、アランさんは今後のことを真剣に考えていた。

 あの嫌な街の領主の横暴が止められないのなら、全く別の角度でその領主が損をするような仕組みを作ってしまえばいい。
 真正面から戦う必要なんてないんだ。要はみんなが喜んでこの道を使いたがる仕組みを考えれば良いだけ。
 せっかく直した道を壊されたことにすごく腹が立っていたので、アランさんにそんな説明をしておいた。

 そのあとは順番にまずは男性陣からお風呂に入って、僕はそれまでに夕飯の支度を進める。

 今日はいろいろくたびれたので鍋にする。鍋の中にうどんの生地をちぎって入れたものにしようと思っている。時間があれば山菜とかキノコとかも探しに行けたのだけれど仕方ない。だけどセシル婆さんのところのとびきりの野菜だからな。きっと美味しくできるはず。

 大鍋で2つ、ホーンラビットの骨やガラで出汁をとったスープの中に小さく切ったニンジン、笹がきにしたゴボウ、小さく切ったホーンラビットの肉、セリに似た香味野菜を順番に入れて、お酒、味醂、醤油で味付けする。
 お雑煮に似ているかもなって作りながら思った。
 
 あとはこれに用意した生地をちぎって煮込めば良いんだけど……、リサさんにお風呂の見張りを頼まれてしまった。
 ロジャーは良いけどカインは信用がないそうで、ベンに頼むのは絶対に嫌なのだそうだ。
 
 仕方なく鍋とコンロを持ってお風呂の天幕の側で料理の仕上げをする。
 鍋を温め直す間に気配察知であたりの魔物を……。

「うわっ!」

「どうした?ケイ?魔物か?」

 天幕からフェルの声がする。

「大丈夫!ちょっと鍋が倒れそうになっただけ」

「そうか?火傷はしてないのだな?」

「大丈夫、ごめんね」

 そして僕はひたすら鍋に向き合い、生地をちぎって入れて、ちぎって入れてを繰り返す。
 何も考える必要はない。伸ばした生地をちぎって入れれば良いのだ。
 無心になれ。
 
 ……気配察知でフェルたちの体の線が丸見えになるなんて思わなかった。

 さっき見てしまった映像が頭から離れるまでひたすら鍋を見つめてちぎって入れてを繰り返した。

 僕の怨念、あるいは煩悩のような気持ちが込められた鍋は魔道コンロの火で浄化されたのかとても美味しく仕上がった。
 醤油ベースの味付けは少し珍しがられたけれどみんな美味しいと言って食べてくれた。

 ちなみにベンは5杯お代わりをして、ようやく降参した。
 ギリギリの勝負だったけれど今日は僕の勝利で終わった。よし。

 鍋はベンの最後のおかわりで空になっていたけれど。紙一重だった。

 夕食のあとはリサさんが調べてきたこの先の被害状況を聞いて明日の予定を立てる。
 王都に着くのは夕方近くになってしまうけれど貴族のための門から入れるので問題ないらしい。
 着いたらまずは冒険者ギルドだろうか。状況もわからずに王都の街は歩けない。

「王都に着いたらまずはワシの所に泊まるといいじゃろ。家のことも気になると思うが用心しておいた方が良い」

 ガンツがそう言ってくれた。

 だけど小熊亭には顔を出したいな。ガンツにそう言うと状況次第じゃのと言われる。

 そして僕たちは後片付けを済ませてテントに入った。

「髪がまだ乾いていないのだ」

 そう言ってフェルがテントの中で僕に背を向ける。
 
 だけどなんだかその仕草が可愛くって後ろからそっと優しく抱きしめた。

 











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