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夕飯は軽く済ませて
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286 夕飯は軽くすませて
「とりあえず子供が生まれたときにはアタシら3人でしっかり育てていくつもりさ。今までと同じようにってわけにはいかないけど何かあった時には協力は惜しまないよ」
3人……おかしいな、1人たりないぞ。
ギルドを出た僕たちはゼランドさんの商会に向かう。
だけど商会の方に行ってみたらゼランドさんも他の人も会議で外に出ているとのことだった。エリママも何故かその会議に参加しているらしい。
こんな日もあると、また後日顔を出すことを伝えてゼランドさんの商会を出た。
領都を発つ前に手紙も出しておいたし大丈夫だろう。
急いで市場に行って買い物して帰るのもいいかと思ったけれど、とりあえずマジックバッグの中にあるもので今日の夕飯くらいなら作れそうだ。
銭湯、王都では共同浴場か、まあいいや。もうすっかり銭湯という言い方に慣れてしまったから銭湯でいいや。
王国の貨幣に銭という単位はない。日本人でしか理解できないこの単語を領都で定着させた人がいる。
フェルにはこういった形の施設のことを銭湯と言うのだとしか説明はしていない。
同じように蔵というものが王国には存在しないから、冷蔵庫と呼ぶのは一般的じゃない。王国の人たちは保冷庫って言う。
そんな細かな単語の表現は今までなんとなく誤魔化して来た。
だけどいつかはきちんと話したいと思ってる。その機会がなかなかなくてどうしたらいいか悩むことも増えた。
好きな人にはできる限り正直でいたい。
たとえそう想う気持ちが幼稚だと誰かから指摘されたとしても。
王都の銭湯はリニューアルした領都の銭湯より実は設備が充実している。
さすが都会だなって思う。王都はやはりいろいろ公共設備が充実している。
改めて領都に行ってそう思った。
だからと言って領都の魅力が減るわけでもない。都会と地方と比べて優劣をつけるなんて出来ないし、領都の良いところは他にもっといろいろあった。
他の土地に行ってみて確実に僕の世界は広がったと思う。
師匠にはたぶん一生頭が上がらないな。
父親とは違う接し方で師匠は僕に世の中のことを教えようとしてくれている。
だけどまともにお礼を言ったとしてもこの気持ちは伝わらないんだろうな。
その辺りが難しいといつも思う。言葉で伝えきれないこういう気持ちはどう表現したらいいんだろう。もどかしいっていうか、うまく説明できない複雑な感情だ。
体を洗って湯船に浸かる。サウナも良いけどとにかく今は足を伸ばしたい。
フェルにどういう言葉をかけたらいいんだろう。
今までフェルから故郷の話や両親の話をちゃんと聞いたことはなかった。
気をつかってそういう話題を避けて来たっていうのはある。騎士団を離れ別の生き方を選んだフェルの覚悟みたいなものを尊重しようと思った結果だ。
湯船のお湯をすくって顔をざぶざぶ洗う。ちょっとマナー違反だな。やってしまってから反省した。
お湯に浸かって体を伸ばすとなんだか自分自身に素直な気持ちで向き合える気がする。考えたことを誰かに話したい。今なら素直に自分の気持ちを伝えられる。そんな気持ちになる。誰かってそれは主にフェルのことだったりするんだけど。
一緒にお風呂に入ってのんびりと話せたらいいのにな。
だけどそんな風になるって……つまり……。
エリママが混浴を勧めてくる気持ちが少しわかった。いやらしい気持ちじゃなくって、1日の終わりに疲れをお湯に流しながら今日あったこととか振り返ってなんでも話ができる。そういう関係っていいなって思った。
そういう関係って………………。
結婚かー。結婚ねー。そうだよねー。
この関係の延長にそういう未来が待っているんだろう。そうなるためには……。
もう少ししっかりしなくちゃね。
一度お湯から上がって少し体を覚ました後、もう一度湯船に入る。最近覚えたお風呂の楽しみ方だ。何度か繰り返すと体の奥から疲れとストレスみたいなものがすっと抜けていく感じがする。
じいちゃんに会いたいな。会っていろいろ相談したい。フェルのこと、今考えていること、これからどうしていったら良いのか。自分の思う生き方が間違っていないかどうか。
今までは目の前のことばかりに全力で頑張って来た。だけどカインとセラみたいな後輩もできて実際手本にされて仕事をしてみたら、ロイやサンドラ姉さんの背中を見ていた僕としては2人の偉大さを思い知る。
2人ともちゃんと自立していて頼り甲斐があった。自分の生活の基盤を作るのにただ必死だったような僕とは全く違っていた。
僕はそんな2人に追いつけているのかな。自身はあまりない。
人生のお手本。その人みたいに生きていきたい。なりたい。そういうのがないのかな。両親が生きていたとしたなら……。
良くわからないな。
忙しかった父はあまり僕の相手をしてくれなかったし、記憶の中の母はいつでも僕に優しくしてくれた。そういえばあまり怒られた記憶がない。
同じようにフェルにも大切に育ててくれたお父さんとお母さんがいるわけで……。
ぐるぐる回る答えのない気持ちは、都合よくお湯に溶けて無くなってはくれなかった。
洗濯の魔道具を3つ、グルングルン回して、仕上がった洗濯物を回収して家に帰る。
久しぶりに家に帰れる。
帰り道フェルの手を取りしっかりと握る。
いつでもそばにいるからねって気持ちを込めるけど、そんなの伝わるわけはない。
だけどフェルの手がしっかりと握り返してくれる。
夕飯は軽くすませて僕たちはベッドに入った。
すぐにフェルの寝息が聞こえてくる。そのまま追いかけるように僕も眠りに落ちていた。
「とりあえず子供が生まれたときにはアタシら3人でしっかり育てていくつもりさ。今までと同じようにってわけにはいかないけど何かあった時には協力は惜しまないよ」
3人……おかしいな、1人たりないぞ。
ギルドを出た僕たちはゼランドさんの商会に向かう。
だけど商会の方に行ってみたらゼランドさんも他の人も会議で外に出ているとのことだった。エリママも何故かその会議に参加しているらしい。
こんな日もあると、また後日顔を出すことを伝えてゼランドさんの商会を出た。
領都を発つ前に手紙も出しておいたし大丈夫だろう。
急いで市場に行って買い物して帰るのもいいかと思ったけれど、とりあえずマジックバッグの中にあるもので今日の夕飯くらいなら作れそうだ。
銭湯、王都では共同浴場か、まあいいや。もうすっかり銭湯という言い方に慣れてしまったから銭湯でいいや。
王国の貨幣に銭という単位はない。日本人でしか理解できないこの単語を領都で定着させた人がいる。
フェルにはこういった形の施設のことを銭湯と言うのだとしか説明はしていない。
同じように蔵というものが王国には存在しないから、冷蔵庫と呼ぶのは一般的じゃない。王国の人たちは保冷庫って言う。
そんな細かな単語の表現は今までなんとなく誤魔化して来た。
だけどいつかはきちんと話したいと思ってる。その機会がなかなかなくてどうしたらいいか悩むことも増えた。
好きな人にはできる限り正直でいたい。
たとえそう想う気持ちが幼稚だと誰かから指摘されたとしても。
王都の銭湯はリニューアルした領都の銭湯より実は設備が充実している。
さすが都会だなって思う。王都はやはりいろいろ公共設備が充実している。
改めて領都に行ってそう思った。
だからと言って領都の魅力が減るわけでもない。都会と地方と比べて優劣をつけるなんて出来ないし、領都の良いところは他にもっといろいろあった。
他の土地に行ってみて確実に僕の世界は広がったと思う。
師匠にはたぶん一生頭が上がらないな。
父親とは違う接し方で師匠は僕に世の中のことを教えようとしてくれている。
だけどまともにお礼を言ったとしてもこの気持ちは伝わらないんだろうな。
その辺りが難しいといつも思う。言葉で伝えきれないこういう気持ちはどう表現したらいいんだろう。もどかしいっていうか、うまく説明できない複雑な感情だ。
体を洗って湯船に浸かる。サウナも良いけどとにかく今は足を伸ばしたい。
フェルにどういう言葉をかけたらいいんだろう。
今までフェルから故郷の話や両親の話をちゃんと聞いたことはなかった。
気をつかってそういう話題を避けて来たっていうのはある。騎士団を離れ別の生き方を選んだフェルの覚悟みたいなものを尊重しようと思った結果だ。
湯船のお湯をすくって顔をざぶざぶ洗う。ちょっとマナー違反だな。やってしまってから反省した。
お湯に浸かって体を伸ばすとなんだか自分自身に素直な気持ちで向き合える気がする。考えたことを誰かに話したい。今なら素直に自分の気持ちを伝えられる。そんな気持ちになる。誰かってそれは主にフェルのことだったりするんだけど。
一緒にお風呂に入ってのんびりと話せたらいいのにな。
だけどそんな風になるって……つまり……。
エリママが混浴を勧めてくる気持ちが少しわかった。いやらしい気持ちじゃなくって、1日の終わりに疲れをお湯に流しながら今日あったこととか振り返ってなんでも話ができる。そういう関係っていいなって思った。
そういう関係って………………。
結婚かー。結婚ねー。そうだよねー。
この関係の延長にそういう未来が待っているんだろう。そうなるためには……。
もう少ししっかりしなくちゃね。
一度お湯から上がって少し体を覚ました後、もう一度湯船に入る。最近覚えたお風呂の楽しみ方だ。何度か繰り返すと体の奥から疲れとストレスみたいなものがすっと抜けていく感じがする。
じいちゃんに会いたいな。会っていろいろ相談したい。フェルのこと、今考えていること、これからどうしていったら良いのか。自分の思う生き方が間違っていないかどうか。
今までは目の前のことばかりに全力で頑張って来た。だけどカインとセラみたいな後輩もできて実際手本にされて仕事をしてみたら、ロイやサンドラ姉さんの背中を見ていた僕としては2人の偉大さを思い知る。
2人ともちゃんと自立していて頼り甲斐があった。自分の生活の基盤を作るのにただ必死だったような僕とは全く違っていた。
僕はそんな2人に追いつけているのかな。自身はあまりない。
人生のお手本。その人みたいに生きていきたい。なりたい。そういうのがないのかな。両親が生きていたとしたなら……。
良くわからないな。
忙しかった父はあまり僕の相手をしてくれなかったし、記憶の中の母はいつでも僕に優しくしてくれた。そういえばあまり怒られた記憶がない。
同じようにフェルにも大切に育ててくれたお父さんとお母さんがいるわけで……。
ぐるぐる回る答えのない気持ちは、都合よくお湯に溶けて無くなってはくれなかった。
洗濯の魔道具を3つ、グルングルン回して、仕上がった洗濯物を回収して家に帰る。
久しぶりに家に帰れる。
帰り道フェルの手を取りしっかりと握る。
いつでもそばにいるからねって気持ちを込めるけど、そんなの伝わるわけはない。
だけどフェルの手がしっかりと握り返してくれる。
夕飯は軽くすませて僕たちはベッドに入った。
すぐにフェルの寝息が聞こえてくる。そのまま追いかけるように僕も眠りに落ちていた。
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