天使の声と魔女の呪い

狼蝶

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「おやおや・・・。やっと揃ったのに話す相手が気絶するとは」


 背もたれに凭れきって気絶しているアランの様子を覗き、ギムリィは目を丸くした。だがもう興味をなくしたのか、すぐに視線をリリーの方に向け、『今日の挨拶、兄さん格好よかったか!?』などとはしゃいだ子どものようにリリーに詰め寄った。

「ハレム兄さんも格好よかっただろ?あぁ僕たちの挨拶を聞いているリリーも可愛かったなぁ!!ちゃんと上からも見えてたぞ。もう僕は皆がリリーに目を奪われていつ襲われてしまうか不安でいっぱいだったんだぞ!」

「ギムリィ兄さんもだ!リリーはほんっとうに可愛いからな」

『あーそうですか-』とリリーは心の中で言い、口は開かず愛想笑いを返した。

「リリーが可愛らしいのは認めますよ。ああ・・・私もその様子を見たかったなぁ」
「ほんとだぜ!ゼノは良いよなぁ」
「ふふふっ!良いでしょ?」

「ああ口を開いてその可愛い声を兄さんたちに聞かせてくれ!」

「そうだ、兄さんはリリーの声で癒やされたい」


 リリーは恥ずかしそうに頬を染め、イヤイヤと首を横に振った。その仕草にもきゅんっ!となってはぅっと声を漏らし後ろに仰け反る兄たちと王子たち。リリーはその様子を白い目でじと~と見つめていた。
 リリーは『絶っ対口を開くもんか!!』と唇にぎゅっと力を入れた。口を開けばとんだ恥さらし者である。だが、目の前の彼らはそれを望んでるのだ。


「もう、おにいちゃんたち・・・・・・いじわるしないれ!」

「あはっ!リリー可愛い!!」

 いくら喋らないようにしようと我慢していたところで、言葉は自然に出てしまうものだ。一度ノックアウトしたというのに諦め悪く兄たちが声を聞かせろとうるさく、思わず制止の声をかけてしまった。
 すると兄二人は先のアランの如く背もたれにもたれ掛かって手で目を覆いもう何回聞いたかわからない『天使・・・』とか言ってるし、王子たちもまるで愛玩動物を見つめるかのような目でリリーを見てくる。口を開いた後に向けられる視線・・・・・・やはりこれが嫌いだった。




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