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しおりを挟むしばらくしてシンと静まり返り、収まってきた光に各々目を開ける。するとそこにはさっきまであったリリアナの姿はなく、その代わりになんと小さいリリーを腕に抱いたフラウリーゼが立っていた。彼女の身体の周りには淡く、だが神々しい光が纏っていて、抱かれているリリーはまん丸な目を驚きに見開き泣くのも忘れていた。
「フラウリーゼ・・・・・・」
「兄さん・・・・・・」
「「「リリーっ!!!」」」
呆気にとられていたフラウがぼんやりと妹の名を呼び歩み寄ると同時に、ハレムたちは小さくなった弟に向かって駆け寄る。
一体何が起きたのかはわからないが、リリアナの姿はないことからハレムは一先ず安堵の息を小さく吐いた。
「リリーっ、リリーっ、無事か?どこか、痛いところはないか?」
「にちゃっ、にちゃぁあ~~」
ギムリィが抱き寄せると、リリーはその小さな身体全体で必死に兄へと抱きつく。そしてひっしとギムリィの肩を手で掴むと、怖かった!というように顔を兄の胸へと埋めた。
「よし、よし・・・・・・。怖かったな」
「兄さん・・・何が起きたかはわかりませんが、リリーは、元の姿に戻るでしょうか・・・・・・」
苦い顔でハレムが吐き出すように問うと、ギムリィも眉を歪ませ苦しそうな顔をした。
「私なら、できるかもしれません」
「フラウリーゼ・・・・・・?」
クォードやジル、そしてゼノがリリーを囲み、涙の膜を張ったうりゅうりゅの目をし不安そうな表情のリリーに可愛らしさを感じつつも、この状態が戻るのか不安で仕方がなかった。だがそのとき、フラウやアラン、セイにその身を心配されていたフラウリーゼが彼らの前に歩み出て、そう言い放ったのだ。何やらその表情は自身に満ちており、フラウやアランは彼女のその様子に戸惑っていた。
「ど、どうやっ、て・・・・・・?」
ハレムが、彼女は一体何を言い出すのかと思っていると、フラウリーゼはスッと自分の胸の前で手を合わせその細い指を組み、先ほどのリリアナのように静かに目を閉じた。
何をするつもりなのか、じれったく思い声をかけようとしたハレムを、ギムリィが手で押さえて制する。すると、目の前のフラウリーゼの身体に再び黄金の色が混ざったような光が纏い始めた。その光は点から尊い者に注がれるような色であり、近くにいるハレムたちにも温かさが伝わってくる。まるで何かに優しく包まれているようで、絶対的な安心を抱かせる。ハレムはしばらくその光景にほぅっと見とれていると、その光が一つの束となって、赤ん坊であるリリーに向かって注がれ始めた。そして驚くことに、リリーの全身が光に包まれ何かに運ばれるようにギムリィの腕からするりと浮き上がり、ふゆふゆと空気中に漂った。クォードたちもギョッとしてその様子を見ていたが、リリーは心地が良いのか目を閉じており、ふわふわと光に包まれている。するとその身体は徐々に大きくなり始め、元の姿にまで戻るとゆっくりと地面に横たわった。それと同時にリリーの身体を包んでいた光も空気に霧散していく。
「リ、リ-・・・・・・」
「リリー!!」
信じられない光景に一同が唾を飲み込んだが、いち早く我に戻ったギムリィとゼノがすぐさまリリーに駆け寄り静かに横たわったまま瞼を開けないリリーに声をかける。
目を開き元に戻ったリリーの姿にほっと安堵の息をついたフラウリーゼは、その直後ふらりと後ろへ倒れかけたが、後ろから慌てて来たアランに優しく抱き止められ『大丈夫か?』という問いに『ええ・・・・・・』と返した。
「リリー・・・、リリー!!リリー!!」
兄たちがリリーに声をかけるのを目にしてハッと我に戻ったハレムは、未だ目を覚まさないリリーに向かって賢明に彼の名前を呼んだ。
『リリー、リリー』と何度も。
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