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60(完)
しおりを挟む「ん・・・・・・、」
ブルーシルバーの睫が細かく震え徐々に瞼が上がっていき、リリーは完全に目を覚ました。
「ギムリィ兄さんとハレム兄さん・・・・・・?ゼノも・・・・・・、それに、クォード兄さんにジル兄さんも、どうして・・・・・・?って、あれ?」
目覚めて良かった!と皆が思った次の瞬間、リリーが零した疑問に皆は耳を疑った。リリーが“普通に”喋ったのだ。周りで自分を囲む者たちの名前を全て口に出した後、リリー自身もするすると普通に喋れることに疑問を持つ。
そして何度か『あれ、えっ、普通に話せてる!?僕、普通に喋れてるの!!?』などと口から言葉を出しては自分で驚き、それを聞いている彼らにも確認を取っていた。
********
リリーはあれから、普通に話せるようになった。赤ん坊の姿になる魔法が解けたとき、昔リリアナにかけられた呪いも一緒に解けたらしく、目覚めた後からは年齢に見合った声と口調で言葉を口に出せるようになったという。
最初は信じられなくて、また赤ん坊言葉になってしまうのではないかと怖々としながら言葉を口に出していたが、徐々にその戸惑いはなくなり、今では笑顔で兄たちや王子たちと会話を楽しんでいる。ギムリィを含め、リリーを取り巻く皆はほんの少しだけ残念な気持ちを抱いていたが、どんな宝石よりも太陽よりも眩しい笑顔で嬉しそうに言葉を紡ぐリリーの様子を見ると、その気持ちを封じ込める以外はなかった。何より外でも周りを気にせず話せることに、リリーは喜びを感じていた。
リリーは嬉しくて嬉しくて、今までの冷たいイメージはどこへ行ったというほどの笑顔を振りまき、会う人会う人と挨拶を交わす。その幸せそうな顔と、少しだけ幼げな笑顔に、リリー=ホワイトローズは“氷のプリンセス”から“陽だまりの天使”などと呼ばれるようになった。
リリーが明るくなったことに伴い、その兄であるギムリィやハレムの雰囲気も優しげになり、リリーへと向ける柔らかい笑顔は社交界でも非常に人気で、彼らはホワイトローズ家麗しの三兄弟と言われるようになったのだという。
一方ブロッサム家だが、なんとフラウリーゼは聖女であることが判明し、稀少さと貴重さを認められ彼らは王国にとって重要な存在となった。
リリアナの呪いや魔法を解いたのは、聖女の放つ、聖なる力だという。このことから、魔女は人に災いをもたらす悪しき者、聖女はそれを打ち破る尊い存在、ということが世間へ広まっていった。
そしてフラウはブロッサム家を継ぎセイは彼を支え、フラウリーゼはアランと結ばれ幸せな夫婦となった。
ギムリィとハレムもそれぞれクォードライトとジルナイトと結ばれ、国家の安寧のために日々奮闘している。
リリーはと言うと、彼は愛でたく第三王子と結ばれたという。
相手は誰かって?
――何をおっしゃっているのです、第三王子は“一人”しかいらっしゃらないではございませんか。
FIN.
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