29 / 60
忘れるとこだった!
しおりを挟む
「こっち」
「アロマライト?」
「うん、香りがいい物とか好きなんじゃないかな」
そう言って意味ありげに見たら、絢香さんはしばらく考えたあとで「確かに!」と同意した。何か思い当たるエピソードでもあったんだろう。
「すげーな、お前! ありがと、助かった!」
花のような笑顔を浮かべる絢香さんは素直に可愛い。しかし別に私はすごくないんだよね、だって攻略本に書いてあったんだもん。
サポートキャラであるさおりちゃんの好感度をあげると、貰える情報の精度があがったり、よりたくさんの情報が貰えたりするから、私もしっかりチェックしていた。
むしろ、なぜお前は覚えていないのか、と絢香さんを軽く問い詰めたい気分なんだけど。
それでも嬉しげにレジに走る絢香さんの後ろ姿を見れば、可愛らしくてなんだかなんでも許してしまいたくなる。絢香さんの後ろを大股でゆっくりとついて行く鬼寺様は、僅かに振り向いて「助かった、恩に着る」と小さく頭を下げてくれた。
鬼寺様、本当に絢香さんの事好きなんだな……と思ったら、少し切ない。妹さんが戻ってきたら絢香さんと入れ替わる事になるんだろうし、今の絢香さんを気に入っている方達は、いくら姿が同じでも性格が違う妹さんにきっと戸惑うに違いない。
絢香さんのためにも勿論頑張るけれど、鬼寺様みたいにまっすぐな気持ちを見ると、ちょとだけ……ちょとだけ、胸が傷んだ。
その考えを振り払うように、私はゆっくりと首を振る。だって絢香さんはそもそも替え玉なのだ。いつかはこの不自然な状況を変えなきゃいけないという事だけは間違いない。
難しい事は考えず、まずはやるべき事をやらなくちゃ。
そう、今私が注視すべきは雅様だったよ。
危ない、危ない。ついつい絢香さんの恋バナ?に気持ちを持ってかれちゃってたけど、その間に雅様、帰っちゃったりしてないでしょうね。そうなったら目も当てられない。
慌てて窓の外を必死に見つめる。
校門から出てくる生徒達の数は既にまばらになっていた。
うわ……マジで、帰っちゃってるかも。ああもう、絢香さんが気を逸らすような事するから! ちょっとだけ八つ当たりしつつ、窓の外の生徒の姿を一生懸命に観察した。
雅様、雅様……。
いないなあ、雅様……。
「何をしている」
「だから、蒲田がダメだったからこっちを当たるんだってば。見逃したら困るから、集中させて」
「手伝おう」
「大丈夫。目立ちたくないの」
「何か不味いのか?」
「うるさいな、もう!」
千尋様や、ターゲットの雅様に見つかったら面倒じゃないの!
その言葉をぐっと飲み込んで振り返ったら、そこには細身ながらも良く鍛えられた胸板が。
「アロマライト?」
「うん、香りがいい物とか好きなんじゃないかな」
そう言って意味ありげに見たら、絢香さんはしばらく考えたあとで「確かに!」と同意した。何か思い当たるエピソードでもあったんだろう。
「すげーな、お前! ありがと、助かった!」
花のような笑顔を浮かべる絢香さんは素直に可愛い。しかし別に私はすごくないんだよね、だって攻略本に書いてあったんだもん。
サポートキャラであるさおりちゃんの好感度をあげると、貰える情報の精度があがったり、よりたくさんの情報が貰えたりするから、私もしっかりチェックしていた。
むしろ、なぜお前は覚えていないのか、と絢香さんを軽く問い詰めたい気分なんだけど。
それでも嬉しげにレジに走る絢香さんの後ろ姿を見れば、可愛らしくてなんだかなんでも許してしまいたくなる。絢香さんの後ろを大股でゆっくりとついて行く鬼寺様は、僅かに振り向いて「助かった、恩に着る」と小さく頭を下げてくれた。
鬼寺様、本当に絢香さんの事好きなんだな……と思ったら、少し切ない。妹さんが戻ってきたら絢香さんと入れ替わる事になるんだろうし、今の絢香さんを気に入っている方達は、いくら姿が同じでも性格が違う妹さんにきっと戸惑うに違いない。
絢香さんのためにも勿論頑張るけれど、鬼寺様みたいにまっすぐな気持ちを見ると、ちょとだけ……ちょとだけ、胸が傷んだ。
その考えを振り払うように、私はゆっくりと首を振る。だって絢香さんはそもそも替え玉なのだ。いつかはこの不自然な状況を変えなきゃいけないという事だけは間違いない。
難しい事は考えず、まずはやるべき事をやらなくちゃ。
そう、今私が注視すべきは雅様だったよ。
危ない、危ない。ついつい絢香さんの恋バナ?に気持ちを持ってかれちゃってたけど、その間に雅様、帰っちゃったりしてないでしょうね。そうなったら目も当てられない。
慌てて窓の外を必死に見つめる。
校門から出てくる生徒達の数は既にまばらになっていた。
うわ……マジで、帰っちゃってるかも。ああもう、絢香さんが気を逸らすような事するから! ちょっとだけ八つ当たりしつつ、窓の外の生徒の姿を一生懸命に観察した。
雅様、雅様……。
いないなあ、雅様……。
「何をしている」
「だから、蒲田がダメだったからこっちを当たるんだってば。見逃したら困るから、集中させて」
「手伝おう」
「大丈夫。目立ちたくないの」
「何か不味いのか?」
「うるさいな、もう!」
千尋様や、ターゲットの雅様に見つかったら面倒じゃないの!
その言葉をぐっと飲み込んで振り返ったら、そこには細身ながらも良く鍛えられた胸板が。
2
あなたにおすすめの小説
遡ったのは君だけじゃない。離縁状を置いて出ていった妻ーー始まりは、そこからだった。
沼野 花
恋愛
夫と子供たちに、選ばれなかったイネス。
すべてを愛人に奪われ、彼女は限界を迎え、屋敷を去る。
だが、その先に待っていたのは、救いではなかった。
イネスを襲った、取り返しのつかない出来事。
変わり果てた現実を前に、
夫はようやく、自分が何を失ったのかを思い知る。
深い後悔と悲しみに苛まれながら、
失ったイネスの心を取り戻そうとする夫。
しかし、彼女の心はすでに、外の世界へと向かっていた。
贖罪を背負いながらもイネスを求め続ける夫。
そして、母の心を知っていく子供たち。
イネスが求める愛とは、
そして、幸せとは――。
じゃない方の私が何故かヤンデレ騎士団長に囚われたのですが
カレイ
恋愛
天使な妹。それに纏わりつく金魚のフンがこの私。
両親も妹にしか関心がなく兄からも無視される毎日だけれど、私は別に自分を慕ってくれる妹がいればそれで良かった。
でもある時、私に嫉妬する兄や婚約者に嵌められて、婚約破棄された上、実家を追い出されてしまう。しかしそのことを聞きつけた騎士団長が何故か私の前に現れた。
「ずっと好きでした、もう我慢しません!あぁ、貴方の匂いだけで私は……」
そうして、何故か最強騎士団長に囚われました。
美人同僚のおまけとして異世界召喚された私、無能扱いされ王城から追い出される。私の才能を見出してくれた辺境伯様と一緒に田舎でのんびりスローライ
さら
恋愛
美人な同僚の“おまけ”として異世界に召喚された私。けれど、無能だと笑われ王城から追い出されてしまう――。
絶望していた私を拾ってくれたのは、冷徹と噂される辺境伯様でした。
荒れ果てた村で彼の隣に立ちながら、料理を作り、子供たちに針仕事を教え、少しずつ居場所を見つけていく私。
優しい言葉をかけてくれる領民たち、そして、時折見せる辺境伯様の微笑みに、胸がときめいていく……。
華やかな王都で「無能」と追放された女が、辺境で自分の価値を見つけ、誰よりも大切に愛される――。
ストーカー婚約者でしたが、転生者だったので経歴を身綺麗にしておく
犬野きらり
恋愛
リディア・ガルドニ(14)、本日誕生日で転生者として気付きました。私がつい先程までやっていた行動…それは、自分の婚約者に対して重い愛ではなく、ストーカー行為。
「絶対駄目ーー」
と前世の私が気づかせてくれ、そもそも何故こんな男にこだわっていたのかと目が覚めました。
何の物語かも乙女ゲームの中の人になったのかもわかりませんが、私の黒歴史は証拠隠滅、慰謝料ガッポリ、新たな出会い新たな人生に進みます。
募集 婿入り希望者
対象外は、嫡男、後継者、王族
目指せハッピーエンド(?)!!
全23話で完結です。
この作品を気に留めて下さりありがとうございます。感謝を込めて、その後(直後)2話追加しました。25話になりました。
女避けの為の婚約なので卒業したら穏やかに婚約破棄される予定です
くじら
恋愛
「俺の…婚約者のフリをしてくれないか」
身分や肩書きだけで何人もの男性に声を掛ける留学生から逃れる為、彼は私に恋人のふりをしてほしいと言う。
期間は卒業まで。
彼のことが気になっていたので快諾したものの、別れの時は近づいて…。
転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました
桜あずみ
恋愛
異世界に転移して2年。
言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。
しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。
──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。
その一行が、彼の目に留まった。
「この文字を書いたのは、あなたですか?」
美しく、完璧で、どこか現実離れした男。
日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。
最初はただの好奇心だと思っていた。
けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。
彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。
毎日19時に更新予定です。
愛する殿下の為に身を引いたのに…なぜかヤンデレ化した殿下に囚われてしまいました
Karamimi
恋愛
公爵令嬢のレティシアは、愛する婚約者で王太子のリアムとの結婚を約1年後に控え、毎日幸せな生活を送っていた。
そんな幸せ絶頂の中、両親が馬車の事故で命を落としてしまう。大好きな両親を失い、悲しみに暮れるレティシアを心配したリアムによって、王宮で生活する事になる。
相変わらず自分を大切にしてくれるリアムによって、少しずつ元気を取り戻していくレティシア。そんな中、たまたま王宮で貴族たちが話をしているのを聞いてしまう。その内容と言うのが、そもそもリアムはレティシアの父からの結婚の申し出を断る事が出来ず、仕方なくレティシアと婚約したという事。
トンプソン公爵がいなくなった今、本来婚約する予定だったガルシア侯爵家の、ミランダとの婚約を考えていると言う事。でも心優しいリアムは、その事をレティシアに言い出せずに悩んでいると言う、レティシアにとって衝撃的な内容だった。
あまりのショックに、フラフラと歩くレティシアの目に飛び込んできたのは、楽しそうにお茶をする、リアムとミランダの姿だった。ミランダの髪を優しく撫でるリアムを見た瞬間、先ほど貴族が話していた事が本当だったと理解する。
ずっと自分を支えてくれたリアム。大好きなリアムの為、身を引く事を決意。それと同時に、国を出る準備を始めるレティシア。
そして1ヶ月後、大好きなリアムの為、自ら王宮を後にしたレティシアだったが…
追記:ヒーローが物凄く気持ち悪いです。
今更ですが、閲覧の際はご注意ください。
公女様は愛されたいと願うのやめました。~態度を変えた途端、家族が溺愛してくるのはなぜですか?~
谷 優
恋愛
公爵家の末娘として生まれた幼いティアナ。
お屋敷で働いている使用人に虐げられ『公爵家の汚点』と呼ばれる始末。
お父様やお兄様は私に関心がないみたい。
ただ、愛されたいと願った。
そんな中、夢の中の本を読むと自分の正体が明らかに。
◆恋愛要素は前半はありませんが、後半になるにつれて発展していきますのでご了承ください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる