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愛ですぎではないか?
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モフモフモフモフと撫でまわしていたら、千尋様がわずかに眉を顰める。
「むぅ……愛ですぎではないか?」
確かに妖狐一族の中では、あまり使い魔に甘くし過ぎないという風習があるのは確かだけれど、この子は落ちこぼれの私に尽くしてくれる優しい子だ。私だって最大限、優しくしてあげたい。
ただそれはそれとして、今日は早急にやってもらわねばならないことがある。
「クダちゃん」
真剣な声で名を呼べばクダちゃんもピシッと背筋を伸ばす。
「あのね。あのお屋敷の中にね、この絢香さんにそっくりな女の人がいるはずなの」
そう伝えると、クダちゃんは一生懸命に絢香さんを見つめる。
霊力で人を特定するのは得意なようなのだけれど、姿形で人間を特定するのは、クダちゃんには難しいみたいだから、クダちゃんだって一生懸命なんだろう。
「その人以外には姿を見られてはダメ。気配もちゃんと絶ってね」
コクンと頷くクダちゃんの目は、つぶらにキラキラ光って決意に満ちている。ほんと可愛い。
「私の意識を乗せていってもらうから、できれば会話しようと思ってるけど……もし無理なら、この文を渡してあげて欲しいの」
「きゅーっ」
任せとけ、とばかりに、クダちゃんが力強く鳴く。
「頑張ろうね、クダちゃん」
「きゅ!」
やる気満々のクダちゃんを見ていたら、私もうまくやれる気がしてきた。この子を危ない目にあわせないように、私も頑張らなくっちゃ。
「真白、ほんとうに大丈夫か。なんなら俺が行くというのに」
「千尋様の妖力は強すぎるんですってば。私の妖力を隠す方に集中してください」
ここは私のヘナチョコ妖力の方が目立たなくって都合がいい。妹さんに会えたなら、いったい何を話そうか。幸せに暮らせているならいい。
できることなら、雅様と一戦交えるような、恐ろしいことにはなって欲しくないもの。
「千尋様、絢香さんの妹らしき人を見たのって、どの辺ですか?」
できればお屋敷の中をあれこれ動くのは最低限にしたい。妹さんに会えるまでの距離や時間は、短ければ短いほどいいと思うもの。妹さんがいる可能性が高い部屋を特定できれば、屋敷の中をうろつく時間を短縮できて、危険性はぐっと減ると思うんだよね。
「たしか、屋敷の三階の……あの角の部屋だったと思うが」
千尋様が指差す先には、屋敷の裏手にある目立たない角部屋の窓が見える。その部屋に限らずどの窓もぴっちりと閉じられていて、ガードがかたい印象は否めない。
屋敷はそれだけでひとつの結界だ。
「むぅ……愛ですぎではないか?」
確かに妖狐一族の中では、あまり使い魔に甘くし過ぎないという風習があるのは確かだけれど、この子は落ちこぼれの私に尽くしてくれる優しい子だ。私だって最大限、優しくしてあげたい。
ただそれはそれとして、今日は早急にやってもらわねばならないことがある。
「クダちゃん」
真剣な声で名を呼べばクダちゃんもピシッと背筋を伸ばす。
「あのね。あのお屋敷の中にね、この絢香さんにそっくりな女の人がいるはずなの」
そう伝えると、クダちゃんは一生懸命に絢香さんを見つめる。
霊力で人を特定するのは得意なようなのだけれど、姿形で人間を特定するのは、クダちゃんには難しいみたいだから、クダちゃんだって一生懸命なんだろう。
「その人以外には姿を見られてはダメ。気配もちゃんと絶ってね」
コクンと頷くクダちゃんの目は、つぶらにキラキラ光って決意に満ちている。ほんと可愛い。
「私の意識を乗せていってもらうから、できれば会話しようと思ってるけど……もし無理なら、この文を渡してあげて欲しいの」
「きゅーっ」
任せとけ、とばかりに、クダちゃんが力強く鳴く。
「頑張ろうね、クダちゃん」
「きゅ!」
やる気満々のクダちゃんを見ていたら、私もうまくやれる気がしてきた。この子を危ない目にあわせないように、私も頑張らなくっちゃ。
「真白、ほんとうに大丈夫か。なんなら俺が行くというのに」
「千尋様の妖力は強すぎるんですってば。私の妖力を隠す方に集中してください」
ここは私のヘナチョコ妖力の方が目立たなくって都合がいい。妹さんに会えたなら、いったい何を話そうか。幸せに暮らせているならいい。
できることなら、雅様と一戦交えるような、恐ろしいことにはなって欲しくないもの。
「千尋様、絢香さんの妹らしき人を見たのって、どの辺ですか?」
できればお屋敷の中をあれこれ動くのは最低限にしたい。妹さんに会えるまでの距離や時間は、短ければ短いほどいいと思うもの。妹さんがいる可能性が高い部屋を特定できれば、屋敷の中をうろつく時間を短縮できて、危険性はぐっと減ると思うんだよね。
「たしか、屋敷の三階の……あの角の部屋だったと思うが」
千尋様が指差す先には、屋敷の裏手にある目立たない角部屋の窓が見える。その部屋に限らずどの窓もぴっちりと閉じられていて、ガードがかたい印象は否めない。
屋敷はそれだけでひとつの結界だ。
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