あなたのためなら

天海月

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アメリアは、結論に至った。

そんな事はありえないと一瞬思ったが、当時の彼の精神状態を察すれば無いとは言い切れなかった。


アメリアは本能的に理解した。

『おそらくセルヴィスは、あの薬を一度に全て摂取したのだ』と。


彼女が以前推測した通り、彼は確かに病にかかってなど居なかったのだ。

彼は別の目的の為に、それを摂取したのだ。

病の治療のためではなく、その薬の副作用だけを狙って、それを確実にするために・・・。


アメリアは医療書の但し書きを思い出す。
最後に禁忌として書かれていた一文の項目を。

『一度に大量摂取した場合、不可逆的な副作用をもたらす』

だから、彼の痣は死んだように黒化して、自分を顧みることもなかったのだと、悟った。

そして、はっきりと解ってしまった。

彼はもう二度と戻らないのだ、と。

彼はこれからも今のままで、ずっと変わることは無いのだ、ということも・・・。

他人はもちろん、アメリアも、彼自身でさえも、もう彼を変えることは出来ないのだということも。


薬の発注時期がすべてを物語っているような気がした。

愛する人を自分で死に追いやった自分に絶望した彼は、番を感じることなどもうこりごりだと、自暴自棄にも似た思いで一気に薬をあおったに違いない。

彼はどんな思いでそれを飲んだのだろう。

アメリアはセルヴィスの心境を思うと胸が詰まったが、想像を絶するような彼のその失意の深さを量りきることは、到底出来そうになかった。

謎を解き明かしたことに対する僅かな喜びは、感じる間もなく闇のような黒い失望に塗りつぶされた。


アメリアは真実に辿り着いてしまった。

番としての彼はアメリアと出会うよりも先に、すでに死んでいたのだ。

やはり、行き着くべきではなかった終着点だったのかもしれない。


そこには、ただ空虚で救いようのない事実が横たわっていただけだった。

アメリアが望んでいた場所には、今更何をしようとも辿り着けないのだということ。

自分は初めから不必要な存在だったという事が、ただ何よりも明らかになっただけだった。


彼女は、もう本当に、彼が自分のものになることは永遠に無いのだという、一方的な最後通告を言い渡されたような気がした。

アメリアは、目の前が真っ暗になったようだった。

考えがうまく纏まらない。

悲しくて、虚しくて、惨めでどうしようも無いはずなのに、彼女が涙を見せることはなかった。

その慟哭に揺れる心境とは裏腹に、長く続いた苦悩は、彼女の泉を既にに涸れ果てさせてしまっていた為だった。
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