今宵、薔薇の園で

天海月

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2.シャーロットの憂鬱

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今朝は長く降り続いた雨が止み、久方ぶりに太陽が姿を見せ、屋敷の外は清々しい爽やかな空気に満ちていた。

だが、そんな天気とは裏腹に、今のシャーロットは憂鬱でしかなかった。

先月決まったばかりの婚約を解消したいという旨の連絡が、先方から朝一番に届いたのだ。

その理由は記載されておらず、謝罪の言葉と共に、とにかく今すぐ婚約を無かったことにしてほしいという事のみが切実に綴られていた。

何も言及されていない以上、なぜ破談になったのか事情が全く分からない。


だが、シャーロットとしては自分が何一つ不味いことをしたという心当たりがなかった。

もし、一つだけあげるとするならば、年増という点が大きな問題だろうが、それに関しては向こうも承知の上で申し込んできたはずなので、理由には該当しないだろう。


相手を好ましいとは思わなかったが、こちらに不備は無いように振る舞ったつもりだった。

結婚生活に不安はあったが、自分さえ我慢すれば良いだろうと高を括っていた。

しかし、そもそもそこまで辿りつく事すらできなかった。

自分はあんな人にさえ不要だと思われる程に魅力が無いのか・・・。

それとも、あまり乗り気では無いというこちらの気持ちが、言外に伝わってしまったのだろうか・・・。

これからどうすれば良いのだろう・・・。

シャーロットはため息をつくしかなかった。





生真面目で他人に頼るのが苦手なシャーロットは、己の伝手を使う事に躊躇いがあった。

彼女にとって伝手を頼るというのは、自分の実力ではないのに、他人の力を利用して不正に報酬を得るような事と同等に思えて、どこか疚しいような気がしたからだった。


しかし、ここまでくれば形振りにかまってなどいられなかった。

彼女は幼馴染で、唯一の伝手ともいえる公爵のアルバート・グレアムに手紙を書くことに決めたのだった。

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