今宵、薔薇の園で

天海月

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6.謎の婚約者候補

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先日、シャーロットが出した手紙に対する、アルバートからの返事は思いのほか速かった。

早速、シャーロットに紹介できる婚約者候補の男性が見つかったのだという。

何でも、アルバートが自信を持って薦められる、秘蔵の優良物件らしい。

相手の方はかなり乗り気だから、シャーロットさえ良ければ、是非その場で婚約を結んでほしい、ともあった。

彼の人物評価はなかなか手厳しいのだということを、シャーロットは知っていた。

そんな彼がここまで推すだなんて・・・。

名前は書かれていないが、一体どんな人なんだろう?

その人は、今日この屋敷に顔合わせのためにやってくると聞いている。

シャーロットが朝食を終え、身なりを整えて待機していると、にわかに屋敷の玄関のあたりが騒がしくなった。

少しすると、執事がやってきて、彼女に来客を伝えた。

待ち人が遂に来たかと思い、彼女は好奇心から、はしたないと思いつつも小走りするように応接間へと急いだ。





一旦立ち止まり、呼吸を整えてから応接間の中に入ると、彼女の想像とは異なる人物がソファに腰を下ろしていた。

アルバートの弟、キースだった。

彼女は彼が急に訪ねてくるだなんて何事だろうか、と思った。

「まぁ、キース様。お久しぶりです。今日は急にどうされたのですか?」

「今日は・・・」

「礼服を着ていらっしゃるということは、これからどこかへお出掛けのご予定が?」

「いや・・・あの」

今日のキースは、やけにはっきりしない。

いつも歯切れ良く話す彼らしくない気がした。

シャーロットは何か隠し事でもあるのかと訝しみつつ、話を続けた。

「何か悩み事でもあるのですか?私で良ければご相談に乗りますから、遠慮なさらず仰ってください」

「悩み事では無いのだけれども・・・」

「今日はこれから、アルバート様が紹介してくださった婚約者候補の方がいらっしゃる予定なので、あまり長い時間は難しいですが、話をお聞きしますよ」

シャーロットはにこりと微笑んだ。

キースは思わず赤面し、彼女から視線を逸らした。

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