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9.反省会
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公爵家に帰ったキースは、さっそく兄のアルバートから質問攻めにされた。
「今日はどうだった? 首尾よく行ったのか?」
「駄目でした・・・」
キースは肩を落として言った。
「駄目って、一体どういうことだ?! あれだけ、推薦してやったというのに・・・」
「婚約者にはしてもらえなかったんです・・・候補にはなれましたけど・・・」
「候補・・・、なかなか彼女は手強そうだな」
「はい・・・」
キースは疲労感一杯の表情だった。
「よし、作戦会議といくか」
アルバートはどこか他人ごとなのか、げっそりとした弟とは対照的に楽しそうだった。
◇
キースは兄に、伯爵家であったシャーロットとのやり取りを説明した。
すると、アルバートは腹を抱えて笑い出した。
「僕は真剣なのに! 何が可笑しいんですか、兄さん」
「せっかく正装で行ったのに、自分から言い出すまで気付かれないなんて! お前もお前だが、彼女らしいと思ってな」
「はぁ・・・」
「だが、今聞いたような感じなら、お前に全く気持ちが無い訳でもないという気はするが・・・。まぁ、お前は初心だから、そういう機微が判らなくても仕方がないか」
「僕ははじめから姉様一筋ですから、姉様の気持ちだけ解れば良いんです。兄さんのような、好色漢とは違います」
「まぁ、そんなことを言うな。色々試してみるのも悪くないし、こういう時の相談相手としては案外役に立つものだぞ」
「阿呆らしい」
「お前は潔癖だな。俺も嫁のアドリアーナを貰ってからは、他の女には目がいかなくなったし、その気持ちは分からなくもないが・・・」
「御託はもう結構ですので、玄人目線の必勝法とやらを、早速ご教授ください。御兄様」
「とにかく、押して押して、押しまくれ」
「そんな単純な?」
「お前は単純だと馬鹿にするが、これが意外に効果的なんだ。それに、馬鹿にする割には、お前は変に気後れして彼女に何もしてこなかっただろう」
「確かにそうですけれど・・・」
「どんなに思っていようと、言わなくては伝わらない、行動しなくては分からない、これが真理だ。
恥ずかしいと思っても、きちんと思ったことは正直に彼女に伝えるんだ。そうすれば、相当嫌われているのでなければ、彼女の心は動くはずだ」
「本当にそんなことで良いんですか?」
「そんなことをするのが案外難しいということに、お前もそのうち気づくだろうが、まぁ、とにかくやってみろ」
キースは兄からのアドバイスに不本意な顔で頷いた。
「今日はどうだった? 首尾よく行ったのか?」
「駄目でした・・・」
キースは肩を落として言った。
「駄目って、一体どういうことだ?! あれだけ、推薦してやったというのに・・・」
「婚約者にはしてもらえなかったんです・・・候補にはなれましたけど・・・」
「候補・・・、なかなか彼女は手強そうだな」
「はい・・・」
キースは疲労感一杯の表情だった。
「よし、作戦会議といくか」
アルバートはどこか他人ごとなのか、げっそりとした弟とは対照的に楽しそうだった。
◇
キースは兄に、伯爵家であったシャーロットとのやり取りを説明した。
すると、アルバートは腹を抱えて笑い出した。
「僕は真剣なのに! 何が可笑しいんですか、兄さん」
「せっかく正装で行ったのに、自分から言い出すまで気付かれないなんて! お前もお前だが、彼女らしいと思ってな」
「はぁ・・・」
「だが、今聞いたような感じなら、お前に全く気持ちが無い訳でもないという気はするが・・・。まぁ、お前は初心だから、そういう機微が判らなくても仕方がないか」
「僕ははじめから姉様一筋ですから、姉様の気持ちだけ解れば良いんです。兄さんのような、好色漢とは違います」
「まぁ、そんなことを言うな。色々試してみるのも悪くないし、こういう時の相談相手としては案外役に立つものだぞ」
「阿呆らしい」
「お前は潔癖だな。俺も嫁のアドリアーナを貰ってからは、他の女には目がいかなくなったし、その気持ちは分からなくもないが・・・」
「御託はもう結構ですので、玄人目線の必勝法とやらを、早速ご教授ください。御兄様」
「とにかく、押して押して、押しまくれ」
「そんな単純な?」
「お前は単純だと馬鹿にするが、これが意外に効果的なんだ。それに、馬鹿にする割には、お前は変に気後れして彼女に何もしてこなかっただろう」
「確かにそうですけれど・・・」
「どんなに思っていようと、言わなくては伝わらない、行動しなくては分からない、これが真理だ。
恥ずかしいと思っても、きちんと思ったことは正直に彼女に伝えるんだ。そうすれば、相当嫌われているのでなければ、彼女の心は動くはずだ」
「本当にそんなことで良いんですか?」
「そんなことをするのが案外難しいということに、お前もそのうち気づくだろうが、まぁ、とにかくやってみろ」
キースは兄からのアドバイスに不本意な顔で頷いた。
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