今宵、薔薇の園で

天海月

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17.あなたを飾りたいⅡ

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机に広げられているデザイン画を熱心に見ているシャーロット。

「これは何だか派手すぎるような気がするし・・・、こっちのシンプルなものにしようかしら」

「それはいつでも着られるではありませんか?これにしましょう」

キースは鮮やかな青いドレスを指差した。

「確かにそれは素敵ですけれども、少し私には高価すぎる気が・・・」

「僕が用意しますから、予算は気にしないでください」

「それは駄目よ、自分で払うわ」

シャーロットは断ろうとした。

彼女は、彼がただ一緒に『選ぶ』のを手伝ってくれるだけなのだと思い込んでいた。

無意識の事ではあったが、そもそも長年弟の様に思っていたキースにドレスを用意してもらうという発想そのものが無かったのだ。

「僕が一緒に来てほしいと言ったのだから、当然のことです。それに、これは公爵家とは無関係に、僕自身の資産から贈らせていただきますから、本当に気にしなくて良いのです」

「でも・・・」

「それにシャーロットには、僕のパートナーとして誰よりも美しい物を身に着けて欲しいのです」

彼は、彼女に優しく微笑んだ。

「・・・キース」


いつも質素な物しか身に付けない彼女。

それでも、彼にとっては十分魅力的だったが、折角の機会なのだから、キースは彼女を自分色に目一杯着飾らせてみたかった。





別室で職人がシャーロットの服のサイズを測っている間、手持ち無沙汰になった店主はキースに話し掛けた。

「髪飾り、お似合いでしたね。随分前に完成品をお渡ししてから、どなたにも贈られた様子がないのでどうされたのかと思っていましたよ」

「・・・渡す機会が無くて、ずっと仕舞ってあったんだ。でも、この間ようやく渡すことが出来て良かった」

キースは少し顔を赤くして言った。

「あれだけ拘って作らせたものを差し上げるという事は、シャーロット様は坊ちゃまにとって、特別に大切な方なのでしょう?そんな方に身に着けられて、あの髪飾りも喜んでいるはずです。
今日注文してくださったドレスも腕によりをかけて仕立てますので、期待していてください」


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