今宵、薔薇の園で

天海月

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25.夜会Ⅱ

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フロアで踊る二人は、周囲の視線を独占していた。

佳麗な青年と、知的で落ち着いた雰囲気を纏いながらもどこか瑞々しさを感じさせる淑女。

見つめあう二人が、緩急のついた優雅なステップを踏む度に、彼女が身につけた鮮やかな青いドレスのドレープが美しく軌跡を描く。

そして、その後を追うように、裾に縫いつけられた沢山の小さな風信子石が、シャンデリアの光を受け、眩く細かな煌めきを見せる。





この日の為に、俄か仕込みで特訓したとはいえ、シャーロットはうまく踊る自信がなかった。

けれど、キースのリードは的確で心地よく、彼女は自分がダンスが上手くなったような気がしたのだった。

踊っている最中、彼の深い群青色の瞳は、ずっと彼女だけを映していたのも嬉しかった。

二人は一曲といわず、何曲も踊り続けた。





ダンスを切り上げたキースとシャーロットは談笑していた。

ふと彼女から視線を外したキースは、視線の端に大柄な一人の男を捉えた。

アリステア・モリス・・・。

その男は、キースにとってはレオナルドよりも上の上司で、直接関わることは殆ど無かったが、ろくでもない噂の絶えない人物だった。

人懐こそうな甘く整った顔立ちで、仕事の能力にも長けており、一見すると好印象だが、実態は人妻や婚約者のいる女性にも平気で手を出そうとする、油断のならない下衆な男だという。

本人曰く、本来なら相手が居る女性がこちらに振り向くことなどありえないのに、簡単に靡くというのは、その女性がそんな風になるまで放って置いたり、無碍に扱ってた相手の男の方が悪いのだから、自分が責められる理由など無いというらしい。

そして、自分は寂しく悲しい女性をただ救っているだけなのだとも。

そんなアリステアの理屈は、キースには全く理解できないものだった。


とにかく、シャーロットを彼に引き合わせるわけにはいかない、とキースは思った。

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