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41.エピローグ
しおりを挟む翌朝、キースは朝一番にシャーロットとの婚姻届けを提出した。
後から報告を聞かされたアルバートとアドリアーナは、我が事のように二人を祝福した。
◇
王宮の廊下を歩くキースを、向かい側からやってきた元上司のレオナルドが呼び止める。
「あれから随分色々あったみたいだけど、結局、王太子付きに納まったんだな。まぁ、俺は元々お前にはそういう仕事が一番相応しいと思っていたよ」
「全く、あなたという人は・・・こちらも忙しいので、下らない無駄話のためにいちいち呼び止めないでください。それと、もう招待状が届いているかと思いますが、結婚式には必ず来てくださいよ?」
「当たり前だ。いつも格好つけているお前が、どれだけ締まりのない顔をするのかと思うと、今から楽しみで仕方がないよ。それにしても、お前のお姫様がシャーロットだったとはな・・・」
◇
レティシアは姉であるシャーロットの結婚式の為に、短い休暇をとった。
これから式を控え、既に身支度を済ませたキースは、レティシアと雑談をしてシャーロットの準備を待っていた。
「この間まで、全部お忘れになっていたと聞きましたのに・・・。かと思えば、順番を飛ばして、瞬く間にお姉様を手に入れてしまうなんて。薄情な意気地無しだと思っていたら、案外大胆なところもあったのですね?」
「耳が痛いな。色々、申し開きが出来ないことも多過ぎるけれど・・・。あんまりのんびりして、またシャーロットが僕から逃げ出してしまうと困るからね」
キースは悪戯っぽく笑った。
「いくらキース様でも、これ以上お姉様を泣かせたら私が許しませんから・・・。大切にすると約束してくださいませ」
「約束する」
レティシアの真剣な言葉に、キースも茶化さずに答えた。
そうこうしている間に、キースが見立てた純白に青い刺繍のアクセントが入った、煌びやかな婚礼衣装に身を包んだシャーロットが姿を見せた。
キースは息を飲んだ。
彼はまた無言になりかけたが、どうにかこらえて言葉を口にした。
「・・・美しいです。あなたにとても良く似合っています」
彼は耳まで熱くしながらも、彼女の目を見て、最後まではっきりと言い切った。
キースはいくら恥ずかしいと思ったとしても、もう自分の気持ちを表すのを躊躇う事はやめたのだった。
幸せは、それを保つ努力もせずに、ただ享受するばかりでは、すぐに消えてしまう儚いものだと知ったから。
そうならない為には、いつでも悔いのないように思いを伝えるべきだと感じたから。
「行きましょうか」
「はい」
キースは、優しくシャーロットの手を取った。
微笑みを交し合った二人は、皆が待っている扉の方へゆっくりと歩き出した。
fin.
=============================
<あとがき>
これにて、完結となります。
最後までお付き合いいただきありがとうございました。
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towaka様
誤字のご指摘とご感想ありがとうございました!
今の時点では、少し残念なことになってしまっているのですが、これからまたお話が動きますので、最後までお付き合いいただけましたら幸いです。
ババナ様
こんばんは。
いつもありがとうございます。
個人的には「いざない」という読み方のほうが好みですが、今回のタイトルに関しては、まだそこまで二人の関係が深まっていないので、単純に「さそい」というイメージの方が近いかもしれません。
作者的にはそんな感じですが、どちらでもお好きな方で読んでいただければと思います。
フムフム……。 あっ
天海月さま こんにちは。
入手困難な茶葉、これは
抹茶に竹の花を混ぜたイメージでしょうか…
希少ですねぇ
ババナ様
こんばんは、いつもありがとうございます。
抹茶に竹の花、エキゾチックで素敵ですね!
作中の茶葉や花は特定のものを意図してはいないのですが、敢えていうと北欧紅茶のセーデルブレンドのような風味のイメージで書いています。