誰にも言えないあなたへ

天海月

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ある日、クリスティーナは、マリオンから真剣な顔をして話があると呼び出された。

彼女は、自分の考えに何の根拠もなかったが、マリオンから離縁を言い渡されるのではないかと思い、急に不安になった。


だが、マリオンが切り出した話は意外なものだった。

自分には子を儲ける能力が欠如しているから、別の男の子供を産んでほしいというものだった。

マリオンが不能だったなんて、クリスティーナには思いもよらないことだった。

けれど、不可解に思えた彼の毎晩の行動は、その理由を聞いてみれば違和感のないものだった。

だが、自分からそんなことを妻に対して打ち明けるなんて、マリオンはどれだけ勇気がいったのだろうかとも彼女は思った。

マリオンは子供さえ生んでくれれば、後は自分がその子の面倒を見るから、クリスティーナは自分とは離縁して、好きな男のところへ行けばいいと言った。

そして、クリスティーナの人生を狂わせた償いとして、子爵家への援助は生涯続けるとも言った。

クリスティーナは彼の突然の申し出に困惑し、彼に質問をぶつけたくなったが、ともかく最後まで話を聞かなくてはなるまいと思って、押し黙ったのだった。

「相手の男は、マクレーン家のオスカーだ。彼は私と遠縁だし、同じ色を持っているから、君が不貞を働いただの何だのと罵られるような事は無いだろう。
ただ、君の好みを聞いてやることが出来なくて申し訳ない・・・」

オスカーには自分の方から話を通しておくから、君は身一つで彼に会ってもらえれば良い、とマリオンは続けた。

クリスティーナは婚礼の宴で会った、オスカーの記憶を手繰り起こした。


きっぱり思い人の事は諦めて、マリオンただ一人だけに尽くそうと決めたあの自分の決意は、なんと意味のないものだったのだろうと、彼女は自分の存在そのものを否定されたような気がした。

こんなに好きにさせておいてから、そんなことを言うなんて、なんて彼は狡いのだろう。

きっと優しい人だから、なかなか言い出せなかったのだろう、とも思った。

けれど、せめて、マリオンのことをまだ何とも思っていない時に言ってほしかった、とクリスティーナは思った。

そうすれば、こんなに苦しい気持ちにはならなかっただろうに・・・。

そして、優しいと思っていたマリオンは、なんて酷なことを口にする人なのだろうと彼女は目の前が真っ暗になったような気がしたのだった。

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