7 / 20
7. side ロザリア
しおりを挟む
『私の騎士が帰ってきた』
剣を佩き自分の足元に跪く彼を見たロザリアはそう思った。
彼女の前に突然現れた彼は、近衛騎士時代とは比べ物にならないような質素な服を纏っていた。
その姿はまるで、俗世との交流を絶った禁欲的な修道士を思わせるような佇まいすら感じさせた。
未だ前回の再会による失望感を引きずっていたロザリアは、この数か月で彼に一体何があったというのだろうか、と驚いた。
だが、彼女を真っ直ぐに見つめた彼のその瞳は、微かな陰を感じさせるようなところはありながらも、初めて出会ったときと同じように強い意志を秘めているようだった。
ロザリアは、自分のもとに戻ってきてくれた彼を見た途端、先ほどまでの鬱々とした気持ちが全て吹き飛んで、心の中が晴れ渡るように感じられた。
今まで悩んでいたことの何もかもが、ひどく些細な事だったように思えた。
こんな気持ちは、今から死ぬために出掛けるというのにおかしいかもしれない。
生贄に選ばれてしまったときは、神を恨んだ。
けれど、ロザリアはそのお陰でまたアーロンに会えたことを神に感謝した。
彼女は自分の知っている彼が戻ってきてくれたことが、ただ何よりも嬉しかった。
それが、これから残っている僅かな生の間だけだったとしても。
自分が生贄になったから、またアーロンに会えたのだとしたら、寧ろ生贄に選ばれて良かったとすらロザリアは思った。
それほどまでに、彼女は彼の存在を渇望していた。
幼いころから、全てが王太子である兄中心にまわっていた彼女を取り巻く世界。
そこで彼女を心から気に掛けてくれる存在は、アーロンただ一人だけだった。
彼がそこにいるだけで、ロザリアには救いだった。
彼女は何もなくても彼さえいれば良かった。
彼はもう自分は騎士ではないと言ったが、身分の事など彼女にとっては些末なことだった。
ロザリアにとって、彼はいつでも、いつまでも身分にかかわらず自分だけの騎士だったから。
剣を佩き自分の足元に跪く彼を見たロザリアはそう思った。
彼女の前に突然現れた彼は、近衛騎士時代とは比べ物にならないような質素な服を纏っていた。
その姿はまるで、俗世との交流を絶った禁欲的な修道士を思わせるような佇まいすら感じさせた。
未だ前回の再会による失望感を引きずっていたロザリアは、この数か月で彼に一体何があったというのだろうか、と驚いた。
だが、彼女を真っ直ぐに見つめた彼のその瞳は、微かな陰を感じさせるようなところはありながらも、初めて出会ったときと同じように強い意志を秘めているようだった。
ロザリアは、自分のもとに戻ってきてくれた彼を見た途端、先ほどまでの鬱々とした気持ちが全て吹き飛んで、心の中が晴れ渡るように感じられた。
今まで悩んでいたことの何もかもが、ひどく些細な事だったように思えた。
こんな気持ちは、今から死ぬために出掛けるというのにおかしいかもしれない。
生贄に選ばれてしまったときは、神を恨んだ。
けれど、ロザリアはそのお陰でまたアーロンに会えたことを神に感謝した。
彼女は自分の知っている彼が戻ってきてくれたことが、ただ何よりも嬉しかった。
それが、これから残っている僅かな生の間だけだったとしても。
自分が生贄になったから、またアーロンに会えたのだとしたら、寧ろ生贄に選ばれて良かったとすらロザリアは思った。
それほどまでに、彼女は彼の存在を渇望していた。
幼いころから、全てが王太子である兄中心にまわっていた彼女を取り巻く世界。
そこで彼女を心から気に掛けてくれる存在は、アーロンただ一人だけだった。
彼がそこにいるだけで、ロザリアには救いだった。
彼女は何もなくても彼さえいれば良かった。
彼はもう自分は騎士ではないと言ったが、身分の事など彼女にとっては些末なことだった。
ロザリアにとって、彼はいつでも、いつまでも身分にかかわらず自分だけの騎士だったから。
18
あなたにおすすめの小説
あなたのためなら
天海月
恋愛
エルランド国の王であるセルヴィスは、禁忌魔術を使って偽の番を騙った女レクシアと婚約したが、嘘は露見し婚約破棄後に彼女は処刑となった。
その後、セルヴィスの真の番だという侯爵令嬢アメリアが現れ、二人は婚姻を結んだ。
アメリアは心からセルヴィスを愛し、彼からの愛を求めた。
しかし、今のセルヴィスは彼女に愛を返すことが出来なくなっていた。
理由も分からないアメリアは、セルヴィスが愛してくれないのは自分の行いが悪いからに違いないと自らを責めはじめ、次第に歯車が狂っていく。
全ては偽の番に過度のショックを受けたセルヴィスが、衝動的に行ってしまった或ることが原因だった・・・。
リアンの白い雪
ちくわぶ(まるどらむぎ)
恋愛
その日の朝、リアンは婚約者のフィンリーと言い合いをした。
いつもの日常の、些細な出来事。
仲直りしていつもの二人に戻れるはずだった。
だがその後、二人の関係は一変してしまう。
辺境の地の砦に立ち魔物の棲む森を見張り、魔物から人を守る兵士リアン。
記憶を失くし一人でいたところをリアンに助けられたフィンリー。
二人の未来は?
※全15話
※本作は私の頭のストレッチ第二弾のため感想欄は開けておりません。
(全話投稿完了後、開ける予定です)
※1/29 完結しました。
感想欄を開けさせていただきます。
様々なご意見、真摯に受け止めさせていただきたいと思います。
ただ、皆様に楽しんでいただける場であって欲しいと思いますので、
いただいた感想をを非承認とさせていただく場合がございます。
申し訳ありませんが、どうかご了承くださいませ。
もちろん、私は全て読ませていただきます。
※この作品は小説家になろうさんでも公開しています。
お飾りな妻は何を思う
湖月もか
恋愛
リーリアには二歳歳上の婚約者がいる。
彼は突然父が連れてきた少年で、幼い頃から美しい人だったが歳を重ねるにつれてより美しさが際立つ顔つきに。
次第に婚約者へ惹かれていくリーリア。しかし彼にとっては世間体のための結婚だった。
そんなお飾り妻リーリアとその夫の話。
あなたの側にいられたら、それだけで
椎名さえら
恋愛
目を覚ましたとき、すべての記憶が失われていた。
私の名前は、どうやらアデルと言うらしい。
傍らにいた男性はエリオットと名乗り、甲斐甲斐しく面倒をみてくれる。
彼は一体誰?
そして私は……?
アデルの記憶が戻るとき、すべての真実がわかる。
_____________________________
私らしい作品になっているかと思います。
ご都合主義ですが、雰囲気を楽しんでいただければ嬉しいです。
※私の商業2周年記念にネップリで配布した短編小説になります
※表紙イラストは 由乃嶋 眞亊先生に有償依頼いたしました(投稿の許可を得ています)
旦那さまは私のために嘘をつく
小蔦あおい
恋愛
声と記憶をなくしたシェリルには魔法使いの旦那さまがいる。霧が深い渓谷の間に浮かぶ小さな島でシェリルは旦那さまに愛されて幸せに暮らしていた。しかし、とある新聞記事をきっかけに旦那さまの様子がおかしくなっていっていく。彼の書斎から怪しい手紙を見つけたシェリルは、旦那さまが自分を利用していることを知ってしまって……。
記憶も声もなくした少女と、彼女を幸せにするために嘘で包み込もうとする魔法使いのお話。
【完結】婚約者なんて眼中にありません
らんか
恋愛
あー、気が抜ける。
婚約者とのお茶会なのにときめかない……
私は若いお子様には興味ないんだってば。
やだ、あの騎士団長様、素敵! 確か、お子さんはもう成人してるし、奥様が亡くなってからずっと、独り身だったような?
大人の哀愁が滲み出ているわぁ。
それに強くて守ってもらえそう。
男はやっぱり包容力よね!
私も守ってもらいたいわぁ!
これは、そんな事を考えているおじ様好きの婚約者と、その婚約者を何とか振り向かせたい王子が奮闘する物語……
短めのお話です。
サクッと、読み終えてしまえます。
蔑ろにされた王妃と見限られた国王
奏千歌
恋愛
※最初に公開したプロット版はカクヨムで公開しています
国王陛下には愛する女性がいた。
彼女は陛下の初恋の相手で、陛下はずっと彼女を想い続けて、そして大切にしていた。
私は、そんな陛下と結婚した。
国と王家のために、私達は結婚しなければならなかったから、結婚すれば陛下も少しは変わるのではと期待していた。
でも結果は……私の理想を打ち砕くものだった。
そしてもう一つ。
私も陛下も知らないことがあった。
彼女のことを。彼女の正体を。
【完結】彼を幸せにする十の方法
玉響なつめ
恋愛
貴族令嬢のフィリアには婚約者がいる。
フィリアが望んで結ばれた婚約、その相手であるキリアンはいつだって冷静だ。
婚約者としての義務は果たしてくれるし常に彼女を尊重してくれる。
しかし、フィリアが望まなければキリアンは動かない。
婚約したのだからいつかは心を開いてくれて、距離も縮まる――そう信じていたフィリアの心は、とある夜会での事件でぽっきり折れてしまった。
婚約を解消することは難しいが、少なくともこれ以上迷惑をかけずに夫婦としてどうあるべきか……フィリアは悩みながらも、キリアンが一番幸せになれる方法を探すために行動を起こすのだった。
※小説家になろう・カクヨムにも掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる