義妹に苛められているらしいのですが・・・

天海月

文字の大きさ
8 / 29

7

しおりを挟む
舞踏会から数日が過ぎ、夜が深まった頃、王宮の中にあるバートンの私室に人影が現れた。

その影に向かってバートンは問いかける。

「やっとお出ましになったのですか?こんな事になってしまっている事情について、詳しくお話を聞かせていただきましょうか?」

音もなくバートンの前まで進み出た長身の銀の髪の男は答えた。

「良いだろう・・・私もその為に来たのだ」



防音の結界を部屋に張りめぐらせるのを終えたバートンは開口した。

「どうして、先日は女装なんてなさっていたのです?!暫く会わない間に、新しいご趣味が出来たのですか?・・・まぁ、あれはあれで美しいですけれども・・・」

少し照れるように、バートンは口ごもった。

「気色が悪い顔をするな。あれは私の趣味では無い。エレーヌの為にしていることだ。お前も暫く見ない間に変わったな。魔族の宰相が人の国の宮廷魔術師になぞ納まっているとはな・・・」

「私のことは一先ず置いておいて・・・ということは、あのエレーヌという令嬢が、あなたの花嫁になるはずだった聖女様なのですか?全く以前の面影は無いように思えますが・・・」

「魂の色を見ればすぐに判る。昔のような容貌では、要らぬ縁ばかり引き寄せて煩わしい故に、敢えて面影を残さず、力も捨てたのだろう。
それにしても、お前は外側ばかりで、内側まで見ようとしない。
数日前にしても、あれ以上お前が軽々しく彼女に近づこうとしていたら、私が焼き殺していたところだ・・・命拾いしたな」





「それで、もうエレーヌ様にはご自分の事はお話されたのですか?」

「いや・・・まだ何も言っていない。彼女からはただの義妹だと思われている」

「はぁ?」

「彼女は前世の記憶を思い出してはいない。わざわざ苦しい事を無理に思い出させるような真似はしたくないのだ」

「だからといって、何も伝えなければ進展も何もあったものではありませんよ?!
ご自分が婚約者に成り代わるという力業でエレーヌ様のご婚約を阻止したからといっても、ぐずぐずしているとまた横から掻っ攫われますよ?
真面目にやる気はあるのですか?!そもそもやり方が滅茶苦茶なんですよ。
この後だってどうするんです?その場しのぎしか考えていないのでしょう?
それとも、カノン様が女装したまま、あのロベルトとやらと本当に結婚してやるつもりなんですか?全くこれだから脳筋は・・・」

捲し立てるように話すバートン。

「あの男は、物事の価値がわからないただ阿呆でしかないし、陰では奴を何度鼻で笑ったか知れない。それに、そんなことは後からどうとでもできる。
ただ、エレーヌとの婚約が取りやめになった後も、彼女に会えると図々しく考えていようだったから、エレーヌと会えないように少しばかり彼女の部屋の扉に魔術で細工をしてやったがな」

「聖女様のことになると、カノン様がそこまで陰湿だとは思いませんでした・・・」

「だが、問題は別のところだ。とにかく気を遣えば遣うほど、彼女から遠ざかってしまうのだ。
折角、周囲の人間に認知を歪める魔術まで使って、屋敷に潜り込んだにも関わらず、エレーヌになかなか近づく事ができない・・・。
それに、どういう訳か、侍女から酷い誤解を受けているようで、彼女は私がエレーヌを害そうとしているのだと思い込み、絶対に二人きりにはしてくれないのだ・・・」

カノンはバートンに事情を説明することにした。
しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

元婚約者が修道院送りになった令嬢を呼び戻すとき

岡暁舟
恋愛
「もう一度やり直そう」 そんなに上手くいくのでしょうか???

愛する人は、貴方だけ

月(ユエ)/久瀬まりか
恋愛
下町で暮らすケイトは母と二人暮らし。ところが母は病に倒れ、ついに亡くなってしまう。亡くなる直前に母はケイトの父親がアークライト公爵だと告白した。 天涯孤独になったケイトの元にアークライト公爵家から使者がやって来て、ケイトは公爵家に引き取られた。 公爵家には三歳年上のブライアンがいた。跡継ぎがいないため遠縁から引き取られたというブライアン。彼はケイトに冷たい態度を取る。 平民上がりゆえに令嬢たちからは無視されているがケイトは気にしない。最初は冷たかったブライアン、第二王子アーサー、公爵令嬢ミレーヌ、幼馴染カイルとの交友を深めていく。 やがて戦争の足音が聞こえ、若者の青春を奪っていく。ケイトも無関係ではいられなかった……。

転生者と忘れられた約束

悠十
恋愛
 シュゼットは前世の記憶を持って生まれた転生者である。  シュゼットは前世の最後の瞬間に、幼馴染の少年と約束した。 「もし来世があるのなら、お嫁さんにしてね……」  そして、その記憶を持ってシュゼットは転生した。  しかし、約束した筈の少年には、既に恋人が居て……。

やんちゃな公爵令嬢の駆け引き~不倫現場を目撃して~

岡暁舟
恋愛
 名門公爵家の出身トスカーナと婚約することになった令嬢のエリザベート・キンダリーは、ある日トスカーナの不倫現場を目撃してしまう。怒り狂ったキンダリーはトスカーナに復讐をする?

断罪される令嬢は、悪魔の顔を持った天使だった

Blue
恋愛
 王立学園で行われる学園舞踏会。そこで意気揚々と舞台に上がり、この国の王子が声を張り上げた。 「私はここで宣言する!アリアンナ・ヴォルテーラ公爵令嬢との婚約を、この場を持って破棄する!!」 シンと静まる会場。しかし次の瞬間、予期せぬ反応が返ってきた。 アリアンナの周辺の目線で話しは進みます。

学園は悪役令嬢に乗っ取られた!

こもろう
恋愛
王立魔法学園。その学園祭の初日の開会式で、事件は起こった。 第一王子アレクシスとその側近たち、そして彼らにエスコートされた男爵令嬢が壇上に立ち、高々とアレクシス王子と侯爵令嬢ユーフェミアの婚約を破棄すると告げたのだ。ユーフェミアを断罪しはじめる彼ら。しかしユーフェミアの方が上手だった? 悪役にされた令嬢が、王子たちにひたすらざまあ返しをするイベントが、今始まる。 登場人物に真っ当な人間はなし。ご都合主義展開。

(自称)我儘令嬢の奮闘、後、それは誤算です!

みん
恋愛
双子の姉として生まれたエヴィ。双子の妹のリンディは稀な光の魔力を持って生まれた為、体が病弱だった。両親からは愛されているとは思うものの、両親の関心はいつも妹に向いていた。 妹は、病弱だから─と思う日々が、5歳のとある日から日常が変わっていく事になる。 今迄関わる事のなかった異母姉。 「私が、お姉様を幸せにするわ!」 その思いで、エヴィが斜め上?な我儘令嬢として奮闘しているうちに、思惑とは違う流れに─そんなお話です。 最初の方はシリアスで、恋愛は後程になります。 ❋主人公以外の他視点の話もあります。 ❋独自の設定や、相変わらずのゆるふわ設定なので、ゆるーく読んでいただけると嬉しいです。ゆるーく読んで下さい(笑)。

【完結】聖女の私を処刑できると思いました?ふふ、残念でした♪

鈴菜
恋愛
あらゆる傷と病を癒やし、呪いを祓う能力を持つリュミエラは聖女として崇められ、来年の春には第一王子と結婚する筈だった。 「偽聖女リュミエラ、お前を処刑する!」 だが、そんな未来は突然崩壊する。王子が真実の愛に目覚め、リュミエラは聖女の力を失い、代わりに妹が真の聖女として現れたのだ。 濡れ衣を着せられ、あれよあれよと処刑台に立たされたリュミエラは絶対絶命かに思われたが… 「残念でした♪処刑なんてされてあげません。」

処理中です...