義妹に苛められているらしいのですが・・・

天海月

文字の大きさ
9 / 29

8

しおりを挟む
カノンは振り返るように話しはじめた。

「まぁ、色々あるのだが、掻い摘んで話すとしよう。
まずは、舞踏会の衣装選びをしているエレーヌを見かけた時のことだ。
初めは黙っていようと思ったのだが、あまりにも露出が酷く、装飾も無駄に多くて下品な服だったから、思わず口を出さずには居られなかった。
清楚な彼女にはとても似合わないし、何より他の男の前であんな服を着てほしくなかった・・・」

「それで、何と言ったんです?」

バートンは間髪入れず問いかけた。

「ちょうど彼女と再会したら、贈りたいと思って特別に仕立てておいた魔蚕のドレスがあったので、それと交換しようと持ち掛けたのだ。『お義姉さまには、こちらの方がお似合いになります』と言って」

カノンの言葉を聞いたバートンは、思わず顔を引き攣らせた。

「あぁ・・・そういう・・・」

「何が可笑しい?」

カノンは怪訝そうに返す。

「あなたの気配りは、恐らく何一つ伝わっていませんよ?魔蚕の糸で織られた服は見る者が見れば、国宝級ですが、普通の人間から見ればただの服です、しかも酷く汚らしい色の・・・それを人間の若いお嬢さんに贈るだなんて・・・。
そもそも、エレーヌ様の元の衣装というのは、当日カノン様がお召しになっていたあのドレスですのことですよね?」

「ああ」

「カノン様は下品だの何だの酷評なさっていましたが、今時の若い令嬢はあの程度の露出は普通ですし、寧ろあれが最近の流行なのです・・・もっと近頃の世情を勉強なさらないと。
はぁ・・・まったく、カノン様の感性が化石並みの古さのせいで、エレーヌ様が不憫です」

「そうか・・・エレーヌには悪いことをしてしまったかもしれないな」

カノンは申し訳なさそうに首を垂れた。

「そういう事情ですから、カノン様が交換と称して渡したあの渾身の特別誂えの魔蚕のドレスだって、着古した不用品を押し付けられた位にしか思われていないと思いますよ。
しかも、『こちらの方がお似合いに』なんて、価値が解らない以上そんなの嫌味にしか聞こえませんし・・・」

「何だと!そんな風に思われていただなんて、心外だ・・・魔術的な防御力が強く、着用者を守ってくれる極上の品だというのに・・・」

「まぁあれは、どんな染料でも色が染まらないのが難点ですからね。せめて、視覚干渉の補整を付与して、人間の感覚でもう少し美しく見えるように整えてからお渡しすれば良かったのでは?
そうすれば、心証もずいぶん違ったでしょうに・・・」

「さすがに、そこまで気が回らなかった・・・私にとっては、そもそもあれの色が醜いという感覚も無かったしな」

「これだから、ご自分が美しすぎる人は嫌ですよ。周囲の美というものに無頓着すぎる。常に美しいものに触れすぎて、どこか基準が狂ってしまっているんでしょうね?」
しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

元婚約者が修道院送りになった令嬢を呼び戻すとき

岡暁舟
恋愛
「もう一度やり直そう」 そんなに上手くいくのでしょうか???

愛する人は、貴方だけ

月(ユエ)/久瀬まりか
恋愛
下町で暮らすケイトは母と二人暮らし。ところが母は病に倒れ、ついに亡くなってしまう。亡くなる直前に母はケイトの父親がアークライト公爵だと告白した。 天涯孤独になったケイトの元にアークライト公爵家から使者がやって来て、ケイトは公爵家に引き取られた。 公爵家には三歳年上のブライアンがいた。跡継ぎがいないため遠縁から引き取られたというブライアン。彼はケイトに冷たい態度を取る。 平民上がりゆえに令嬢たちからは無視されているがケイトは気にしない。最初は冷たかったブライアン、第二王子アーサー、公爵令嬢ミレーヌ、幼馴染カイルとの交友を深めていく。 やがて戦争の足音が聞こえ、若者の青春を奪っていく。ケイトも無関係ではいられなかった……。

転生者と忘れられた約束

悠十
恋愛
 シュゼットは前世の記憶を持って生まれた転生者である。  シュゼットは前世の最後の瞬間に、幼馴染の少年と約束した。 「もし来世があるのなら、お嫁さんにしてね……」  そして、その記憶を持ってシュゼットは転生した。  しかし、約束した筈の少年には、既に恋人が居て……。

断罪される令嬢は、悪魔の顔を持った天使だった

Blue
恋愛
 王立学園で行われる学園舞踏会。そこで意気揚々と舞台に上がり、この国の王子が声を張り上げた。 「私はここで宣言する!アリアンナ・ヴォルテーラ公爵令嬢との婚約を、この場を持って破棄する!!」 シンと静まる会場。しかし次の瞬間、予期せぬ反応が返ってきた。 アリアンナの周辺の目線で話しは進みます。

【完結】お飾り妃〜寵愛は聖女様のモノ〜

恋愛
今日、私はお飾りの妃となります。 ※実際の慣習等とは異なる場合があり、あくまでこの世界観での要素もございますので御了承ください。

(自称)我儘令嬢の奮闘、後、それは誤算です!

みん
恋愛
双子の姉として生まれたエヴィ。双子の妹のリンディは稀な光の魔力を持って生まれた為、体が病弱だった。両親からは愛されているとは思うものの、両親の関心はいつも妹に向いていた。 妹は、病弱だから─と思う日々が、5歳のとある日から日常が変わっていく事になる。 今迄関わる事のなかった異母姉。 「私が、お姉様を幸せにするわ!」 その思いで、エヴィが斜め上?な我儘令嬢として奮闘しているうちに、思惑とは違う流れに─そんなお話です。 最初の方はシリアスで、恋愛は後程になります。 ❋主人公以外の他視点の話もあります。 ❋独自の設定や、相変わらずのゆるふわ設定なので、ゆるーく読んでいただけると嬉しいです。ゆるーく読んで下さい(笑)。

【完結】聖女の私を処刑できると思いました?ふふ、残念でした♪

鈴菜
恋愛
あらゆる傷と病を癒やし、呪いを祓う能力を持つリュミエラは聖女として崇められ、来年の春には第一王子と結婚する筈だった。 「偽聖女リュミエラ、お前を処刑する!」 だが、そんな未来は突然崩壊する。王子が真実の愛に目覚め、リュミエラは聖女の力を失い、代わりに妹が真の聖女として現れたのだ。 濡れ衣を着せられ、あれよあれよと処刑台に立たされたリュミエラは絶対絶命かに思われたが… 「残念でした♪処刑なんてされてあげません。」

運命に勝てない当て馬令嬢の幕引き。

ぽんぽこ狸
恋愛
 気高き公爵家令嬢オリヴィアの護衛騎士であるテオは、ある日、主に天啓を受けたと打ち明けられた。  その内容は運命の女神の聖女として召喚されたマイという少女と、オリヴィアの婚約者であるカルステンをめぐって死闘を繰り広げ命を失うというものだったらしい。  だからこそ、オリヴィアはもう何も望まない。テオは立場を失うオリヴィアの事は忘れて、自らの道を歩むようにと言われてしまう。  しかし、そんなことは出来るはずもなく、テオも将来の王妃をめぐる運命の争いの中に巻き込まれていくのだった。  五万文字いかない程度のお話です。さくっと終わりますので読者様の暇つぶしになればと思います。

処理中です...