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カノンは振り返るように話しはじめた。
「まぁ、色々あるのだが、掻い摘んで話すとしよう。
まずは、舞踏会の衣装選びをしているエレーヌを見かけた時のことだ。
初めは黙っていようと思ったのだが、あまりにも露出が酷く、装飾も無駄に多くて下品な服だったから、思わず口を出さずには居られなかった。
清楚な彼女にはとても似合わないし、何より他の男の前であんな服を着てほしくなかった・・・」
「それで、何と言ったんです?」
バートンは間髪入れず問いかけた。
「ちょうど彼女と再会したら、贈りたいと思って特別に仕立てておいた魔蚕のドレスがあったので、それと交換しようと持ち掛けたのだ。『お義姉さまには、こちらの方がお似合いになります』と言って」
カノンの言葉を聞いたバートンは、思わず顔を引き攣らせた。
「あぁ・・・そういう・・・」
「何が可笑しい?」
カノンは怪訝そうに返す。
「あなたの気配りは、恐らく何一つ伝わっていませんよ?魔蚕の糸で織られた服は見る者が見れば、国宝級ですが、普通の人間から見ればただの服です、しかも酷く汚らしい色の・・・それを人間の若いお嬢さんに贈るだなんて・・・。
そもそも、エレーヌ様の元の衣装というのは、当日カノン様がお召しになっていたあのドレスですのことですよね?」
「ああ」
「カノン様は下品だの何だの酷評なさっていましたが、今時の若い令嬢はあの程度の露出は普通ですし、寧ろあれが最近の流行なのです・・・もっと近頃の世情を勉強なさらないと。
はぁ・・・まったく、カノン様の感性が化石並みの古さのせいで、エレーヌ様が不憫です」
「そうか・・・エレーヌには悪いことをしてしまったかもしれないな」
カノンは申し訳なさそうに首を垂れた。
「そういう事情ですから、カノン様が交換と称して渡したあの渾身の特別誂えの魔蚕のドレスだって、着古した不用品を押し付けられた位にしか思われていないと思いますよ。
しかも、『こちらの方がお似合いに』なんて、価値が解らない以上そんなの嫌味にしか聞こえませんし・・・」
「何だと!そんな風に思われていただなんて、心外だ・・・魔術的な防御力が強く、着用者を守ってくれる極上の品だというのに・・・」
「まぁあれは、どんな染料でも色が染まらないのが難点ですからね。せめて、視覚干渉の補整を付与して、人間の感覚でもう少し美しく見えるように整えてからお渡しすれば良かったのでは?
そうすれば、心証もずいぶん違ったでしょうに・・・」
「さすがに、そこまで気が回らなかった・・・私にとっては、そもそもあれの色が醜いという感覚も無かったしな」
「これだから、ご自分が美しすぎる人は嫌ですよ。周囲の美というものに無頓着すぎる。常に美しいものに触れすぎて、どこか基準が狂ってしまっているんでしょうね?」
「まぁ、色々あるのだが、掻い摘んで話すとしよう。
まずは、舞踏会の衣装選びをしているエレーヌを見かけた時のことだ。
初めは黙っていようと思ったのだが、あまりにも露出が酷く、装飾も無駄に多くて下品な服だったから、思わず口を出さずには居られなかった。
清楚な彼女にはとても似合わないし、何より他の男の前であんな服を着てほしくなかった・・・」
「それで、何と言ったんです?」
バートンは間髪入れず問いかけた。
「ちょうど彼女と再会したら、贈りたいと思って特別に仕立てておいた魔蚕のドレスがあったので、それと交換しようと持ち掛けたのだ。『お義姉さまには、こちらの方がお似合いになります』と言って」
カノンの言葉を聞いたバートンは、思わず顔を引き攣らせた。
「あぁ・・・そういう・・・」
「何が可笑しい?」
カノンは怪訝そうに返す。
「あなたの気配りは、恐らく何一つ伝わっていませんよ?魔蚕の糸で織られた服は見る者が見れば、国宝級ですが、普通の人間から見ればただの服です、しかも酷く汚らしい色の・・・それを人間の若いお嬢さんに贈るだなんて・・・。
そもそも、エレーヌ様の元の衣装というのは、当日カノン様がお召しになっていたあのドレスですのことですよね?」
「ああ」
「カノン様は下品だの何だの酷評なさっていましたが、今時の若い令嬢はあの程度の露出は普通ですし、寧ろあれが最近の流行なのです・・・もっと近頃の世情を勉強なさらないと。
はぁ・・・まったく、カノン様の感性が化石並みの古さのせいで、エレーヌ様が不憫です」
「そうか・・・エレーヌには悪いことをしてしまったかもしれないな」
カノンは申し訳なさそうに首を垂れた。
「そういう事情ですから、カノン様が交換と称して渡したあの渾身の特別誂えの魔蚕のドレスだって、着古した不用品を押し付けられた位にしか思われていないと思いますよ。
しかも、『こちらの方がお似合いに』なんて、価値が解らない以上そんなの嫌味にしか聞こえませんし・・・」
「何だと!そんな風に思われていただなんて、心外だ・・・魔術的な防御力が強く、着用者を守ってくれる極上の品だというのに・・・」
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そうすれば、心証もずいぶん違ったでしょうに・・・」
「さすがに、そこまで気が回らなかった・・・私にとっては、そもそもあれの色が醜いという感覚も無かったしな」
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