義妹に苛められているらしいのですが・・・

天海月

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エレーヌから、この数日間の出来事と、帰ってきてからのカノンの不可解な行動を聞いたメリダ。

「そんなもの、また演技に決まっています。差し詰め、本当は自分が王妃様になりたかったのに、お嬢様が選ばれたことが気に食わないのでしょう。自分に都合が悪いから、止めようとしているだけです。いいですか、お嬢様、あんな小娘の言葉に耳をかしてはなりませんよ。
それにしても、私は嬉しいです。お嬢様の価値をやっと理解してくださる方が現れて、しかもそれが国王陛下だなんて・・・!」

ロベルトという婚約者を、あのいけ好かない義妹に取られてからというもの、メリダはエレーヌの方が彼女よりも素晴らしいのだと証明する機会はないだろうかと、いつも考えていた。
その矢先の、この輿入れ話ということもあってか、メリダは非常に高揚していた。

「私にはとても演技には思えなかったのだけれど・・・。そうは言ってもね、あなたは喜んでくれているみたいだけれど、実のところ私は王妃様になんてなりたくないの・・・」

「そう、なのですか?」

メリダは自分が思いもしなかったエレーヌの言葉に、驚いたような顔をした。

「ええ、陛下はとても誠実だし素晴らしい方だとは思う・・・間違いなく、これ以上ないような良いお話だわ・・・だけど、何か違う気がして・・・本当は逃げ出したいと思っているの・・・どうせなら西の王子様のような方が迎えに来てくださったら良いのに・・・」

ぽつりぽつりと、先を続けるエレーヌの話を聞いたメリダは小さな溜息の後、穏やかな表情になった。

「私はお嬢様のことを何も理解していなかったようですね。・・・先ほどは、つい喜んでしまいましたが、そんな風にお考えだったとは。
それにしても、本当にあの話がお好きなのですね。流石に、物語の王子が現れるというのは難しいでしょうが・・・お嬢様がこのお話をお受けせずに、どこかにお逃げになるつもりがあるのでしたら、私もお供致します!」

自分の立場が危うくなる事も厭わず、主の為に行動してくれようとするメリダの優しさに、絆されそうになったエレーヌだったが、どうにか気持ちを立て直し覚悟を決めた。

「メリダ・・・ありがとう。その気持ちだけで十分だわ。もし、断ったり、逃げたりすれば、きっとお父様にも迷惑が掛かってしまうだろうし・・・。文句ばかり言っていないで、そろそろ覚悟を決めないとね。
私は陛下からのお話を受けることにするわ!」





その日の晩、男爵邸にあるカノンの私室に、バートンが現れた。

彼は落ち込んでいるカノンの顔を見るなり、矢継ぎ早に捲し立てはじめた。

「この年になって泣き落としだなんて、みっともない!!子供ですか?!
だから、私は言ったのに!あなたが早く言い出さないから、またこんなおかしな事になってしまったじゃないですか・・・。
まぁ、あの方はあのロベルトとかいう男とは違って、多少変人ではあるけれど良識はありますから、エレーヌ様を無下に扱うような事はしないでしょうが・・・。
この期に及んであなたが黙っているつもりだとしたら、何もかも全て無駄になってしまうのですよ。本当にこのままで良いのですか?」

バートンは、一言「もう無関係なのだ」と口にすれば済むはずの、かつて仕えていたこの亡国の王子を、なぜか放っておくことができなかった。

普段は美しさと落ち着きを兼ね備え、戦となれば武神のような強さと老練さで相手を一蹴するにも関わらず、愛しい人の事になったとたんに思いを拗らせ、年端もいかぬ子供のような考えなしの行動に出てしまう彼のことを馬鹿馬鹿しいとも思う。

だが、自分は決して持ち合わせていない、その純粋さを彼がいつまでも持っていることを、どこか羨ましくも感じた。
そして、愛を前にして無力なこの哀れな男を、何とか手助けしてやりたいと思ったのだった。

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