25 / 29
24
しおりを挟む
エレーヌに余計な気を張らせず、出来るだけ彼女の本音が聞きたいと考えた国王は、正式な謁見の形式を敢えて避け、奥まった部屋に茶会のようなテーブルをセッティングさせ、彼女をそこへ座らせた。
「待ち遠しかったぞ、エレーヌ。息災であったか?」
「はい」
どこか諦めたような表情のエレーヌは、微笑みつつもどこか力なく返事をした。
「先日の返事を聞かせてくれるだろうか?」
「つつしんで、お話をお受けしようと思いま・・・」
エレーヌが俯き加減で、そう口にした瞬間、扉が大きな音を立てて開き、銀髪の小柄な令嬢が勢い良く入って来て、言い放った。
「異議ありっ!!」
「そなたは誰だ?!近衛はどうしている・・・!」
突然の出来事に、国王は思わず立ち上がり、人を呼ぶが、どこからも返事が返ってくる事は無かった。
外に待機していたはずの近衛騎士達は皆、魔術を掛けられ眠ってしまっていた。
ここにいるはずの無い義妹を見たエレーヌは驚いた。
「カノン・・・!あなたがどうしてここに?!」
「カノン?というと、そなたは・・・先日エレーヌが口にしていた義妹か?」
状況が呑み込めない国王とエレーヌ。
カノンは、きょとんとしているエレーヌの瞳を優しく見つめて言う。
「もう思い出されたのでしょう?・・・随分お待たせしてしまいましたが、あなたを迎えに来たのです、エレーヌ」
そう春に咲く花の様にふわりと微笑むと、次の瞬間、娘の姿だったカノンは真の姿を現した。
それはエレーヌの記憶の中にある銀色の髪をした美しい青年の姿そのままだった。
エレーヌは、ある日突然屋敷にやってきたはずの義妹を、何故か以前から知っていたように何度も思ったその違和感の正体を、驚きとともにようやく悟った。
そして、メリダが『彼はいつも近くで見守っている』と告げた意味を理解したエレーヌは、胸の奥が熱くなるのを感じた。
本当にずっと傍に居てくれたのね・・・嬉しい!
「・・・カノンが西の王子殿下だったなんて!だから、あの舞踏会の夜、私に触れたあなたの手を懐かしいと感じたのね」
カノンは自然な動作でエレーヌの手を取り、口づけを落とした。
エレーヌは頬を染めた。
喜びは感じるものの、まだどこか混乱しているエレーヌをよそに、満面の笑みを浮かべるカノン。
「ずっと、この時を待ちわびていたのです。例え相手が一国の王でも、神でも、もうあなたを誰にも渡したりなどしません。この者の事は捨て置いて、私と二人で逃げましょう?」
◇
わざとらしく息を切らせたバートンは、問題の部屋に入室するなり、ちらりとカノンに目配せした後、一呼吸置くと棒読みで叫んだ。
「大変だー!化物だー!化物が出たー!令嬢が攫われてしまうぞーー!!」
「・・・」
唖然としている国王に、バートンは言う。
「さぁ、危険ですから!あれは恐ろしい化物に違いありませんから!すぐに陛下もここから避難致しましょう!!」
「いや、待て・・・待ってくれ、西の王子でカノンだと?」
「何か気がかりな事でも?」
(何か嫌な予感が・・・)
バートンは国王が、これからどんな面倒なことを言い出すのだろうかと想像すると、眩暈がしそうだった。
「俄には信じがたいが、銀髪に宝石の様な赤い瞳・・・その名、そして、離れていても伝わってくるこの凄まじいまでの魔力量・・・まさかあれが本当に、あの『西の国の王子』だというのか?!」
興奮した様子で、誰に聞かせるでもなく独り言のようにぶつぶつと呟き始める国王。
(そういえば、この方が常識外に熱烈な魔術史研究家だというのを忘れていた・・・!)
このことをうっかり計算に入れ忘れていたバートンはどこか遠い目をした。
どうやら、西の王子というキーワードは、国王の研究家としての探求心に火を付けてしまったらしい。
「待ち遠しかったぞ、エレーヌ。息災であったか?」
「はい」
どこか諦めたような表情のエレーヌは、微笑みつつもどこか力なく返事をした。
「先日の返事を聞かせてくれるだろうか?」
「つつしんで、お話をお受けしようと思いま・・・」
エレーヌが俯き加減で、そう口にした瞬間、扉が大きな音を立てて開き、銀髪の小柄な令嬢が勢い良く入って来て、言い放った。
「異議ありっ!!」
「そなたは誰だ?!近衛はどうしている・・・!」
突然の出来事に、国王は思わず立ち上がり、人を呼ぶが、どこからも返事が返ってくる事は無かった。
外に待機していたはずの近衛騎士達は皆、魔術を掛けられ眠ってしまっていた。
ここにいるはずの無い義妹を見たエレーヌは驚いた。
「カノン・・・!あなたがどうしてここに?!」
「カノン?というと、そなたは・・・先日エレーヌが口にしていた義妹か?」
状況が呑み込めない国王とエレーヌ。
カノンは、きょとんとしているエレーヌの瞳を優しく見つめて言う。
「もう思い出されたのでしょう?・・・随分お待たせしてしまいましたが、あなたを迎えに来たのです、エレーヌ」
そう春に咲く花の様にふわりと微笑むと、次の瞬間、娘の姿だったカノンは真の姿を現した。
それはエレーヌの記憶の中にある銀色の髪をした美しい青年の姿そのままだった。
エレーヌは、ある日突然屋敷にやってきたはずの義妹を、何故か以前から知っていたように何度も思ったその違和感の正体を、驚きとともにようやく悟った。
そして、メリダが『彼はいつも近くで見守っている』と告げた意味を理解したエレーヌは、胸の奥が熱くなるのを感じた。
本当にずっと傍に居てくれたのね・・・嬉しい!
「・・・カノンが西の王子殿下だったなんて!だから、あの舞踏会の夜、私に触れたあなたの手を懐かしいと感じたのね」
カノンは自然な動作でエレーヌの手を取り、口づけを落とした。
エレーヌは頬を染めた。
喜びは感じるものの、まだどこか混乱しているエレーヌをよそに、満面の笑みを浮かべるカノン。
「ずっと、この時を待ちわびていたのです。例え相手が一国の王でも、神でも、もうあなたを誰にも渡したりなどしません。この者の事は捨て置いて、私と二人で逃げましょう?」
◇
わざとらしく息を切らせたバートンは、問題の部屋に入室するなり、ちらりとカノンに目配せした後、一呼吸置くと棒読みで叫んだ。
「大変だー!化物だー!化物が出たー!令嬢が攫われてしまうぞーー!!」
「・・・」
唖然としている国王に、バートンは言う。
「さぁ、危険ですから!あれは恐ろしい化物に違いありませんから!すぐに陛下もここから避難致しましょう!!」
「いや、待て・・・待ってくれ、西の王子でカノンだと?」
「何か気がかりな事でも?」
(何か嫌な予感が・・・)
バートンは国王が、これからどんな面倒なことを言い出すのだろうかと想像すると、眩暈がしそうだった。
「俄には信じがたいが、銀髪に宝石の様な赤い瞳・・・その名、そして、離れていても伝わってくるこの凄まじいまでの魔力量・・・まさかあれが本当に、あの『西の国の王子』だというのか?!」
興奮した様子で、誰に聞かせるでもなく独り言のようにぶつぶつと呟き始める国王。
(そういえば、この方が常識外に熱烈な魔術史研究家だというのを忘れていた・・・!)
このことをうっかり計算に入れ忘れていたバートンはどこか遠い目をした。
どうやら、西の王子というキーワードは、国王の研究家としての探求心に火を付けてしまったらしい。
17
あなたにおすすめの小説
転生者と忘れられた約束
悠十
恋愛
シュゼットは前世の記憶を持って生まれた転生者である。
シュゼットは前世の最後の瞬間に、幼馴染の少年と約束した。
「もし来世があるのなら、お嫁さんにしてね……」
そして、その記憶を持ってシュゼットは転生した。
しかし、約束した筈の少年には、既に恋人が居て……。
断罪される令嬢は、悪魔の顔を持った天使だった
Blue
恋愛
王立学園で行われる学園舞踏会。そこで意気揚々と舞台に上がり、この国の王子が声を張り上げた。
「私はここで宣言する!アリアンナ・ヴォルテーラ公爵令嬢との婚約を、この場を持って破棄する!!」
シンと静まる会場。しかし次の瞬間、予期せぬ反応が返ってきた。
アリアンナの周辺の目線で話しは進みます。
愛する人は、貴方だけ
月(ユエ)/久瀬まりか
恋愛
下町で暮らすケイトは母と二人暮らし。ところが母は病に倒れ、ついに亡くなってしまう。亡くなる直前に母はケイトの父親がアークライト公爵だと告白した。
天涯孤独になったケイトの元にアークライト公爵家から使者がやって来て、ケイトは公爵家に引き取られた。
公爵家には三歳年上のブライアンがいた。跡継ぎがいないため遠縁から引き取られたというブライアン。彼はケイトに冷たい態度を取る。
平民上がりゆえに令嬢たちからは無視されているがケイトは気にしない。最初は冷たかったブライアン、第二王子アーサー、公爵令嬢ミレーヌ、幼馴染カイルとの交友を深めていく。
やがて戦争の足音が聞こえ、若者の青春を奪っていく。ケイトも無関係ではいられなかった……。
【完結】聖女の私を処刑できると思いました?ふふ、残念でした♪
鈴菜
恋愛
あらゆる傷と病を癒やし、呪いを祓う能力を持つリュミエラは聖女として崇められ、来年の春には第一王子と結婚する筈だった。
「偽聖女リュミエラ、お前を処刑する!」
だが、そんな未来は突然崩壊する。王子が真実の愛に目覚め、リュミエラは聖女の力を失い、代わりに妹が真の聖女として現れたのだ。
濡れ衣を着せられ、あれよあれよと処刑台に立たされたリュミエラは絶対絶命かに思われたが…
「残念でした♪処刑なんてされてあげません。」
【完結】サポートキャラって勝手に決めないで!
里音
恋愛
私、リリアナ・モントン。伯爵令嬢やってます。で、私はサポートキャラ?らしい。
幼馴染で自称親友でヒロインのアデリーナ・トリカエッティ伯爵令嬢がいうには…
この世界はアデリーナの前世での乙女ゲームとやらの世界と同じで、その世界ではアデリーナはヒロイン。彼女の親友の私リリアナはサポートキャラ。そして悪役令嬢にはこの国の第二王子のサリントン王子の婚約者のマリエッタ・マキナイル侯爵令嬢。
攻略対象は第二王子のサリントン・エンペスト、側近候補のマイケル・ラライバス伯爵家三男、親友のジュード・マキナイル侯爵家嫡男、護衛のカイル・パラサリス伯爵家次男。
ハーレムエンドを目指すと言う自称ヒロインに振り回されるリリアナの日常。
⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎
多人数の視点があり、くどく感じるかもしれません。
文字数もばらつきが多いです。
学園は悪役令嬢に乗っ取られた!
こもろう
恋愛
王立魔法学園。その学園祭の初日の開会式で、事件は起こった。
第一王子アレクシスとその側近たち、そして彼らにエスコートされた男爵令嬢が壇上に立ち、高々とアレクシス王子と侯爵令嬢ユーフェミアの婚約を破棄すると告げたのだ。ユーフェミアを断罪しはじめる彼ら。しかしユーフェミアの方が上手だった?
悪役にされた令嬢が、王子たちにひたすらざまあ返しをするイベントが、今始まる。
登場人物に真っ当な人間はなし。ご都合主義展開。
【完結】土壇場で交代は困ります [おまけ1話更新]
himahima
恋愛
婚約破棄⁈いじめ?いやいや、お子様の茶番劇に付き合ってる暇ないから!まだ決算終わってないし、部下腹ペコで待ってるから会社に戻して〜〜
経理一筋25年、社畜女課長が悪役令嬢と入れ替わり⁈ 主人公は口が悪いです(笑)
はじめての投稿です♪本編13話完結、その後おまけ2話の予定です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる