落ちこぼれ公爵令息の真実

三木谷夜宵

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第二話

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 治療を終えたセシルは、焚火に当たりながらホッと息を吐いていた。

「お疲れ様でした」
 アリスティアがお茶の入ったカップを持ってやってくる。
「本当に助かりました」
「お役に立てて良かったです」
 非常に疲れていたが、死者を出すことなく危機を出することができたので、セシルは心の底から安堵していた。

「けど、まさか私に神聖力があったなんて……」
 これまで魔力のない落ちこぼれの公爵令息と言われ続けていたので、どうしても実感が湧かなかった。
「これまで大変な苦労を重ねてきた貴方のことを、精霊王が認めてくださったのかもしれませんね」
「そうでしょうか」
 アリスティアの言葉に、セシルは頭を掻いた。照れるような、嬉しいような。これまで感じたことのない感情だった。



 ふと、森が静まった。

 魔物が去り、野営地周辺には野生の動物たちが戻ってきた。しかし、その気配が一斉になくなったのである。
 何かおかしい。
 そう感じた兵士たちが構える。

 すると、野営地の中心。セシルが焚火に当たっていた、まさにその場所に、とてつもないプレッシャーを放つ何者かが現れた。
 それは空からやって来た。流星のように駆けてきたかと思えば、野営地を目掛けてドンと落ちてきたのである。
 押しつぶされそうな衝撃に、セシルは尻餅をつく。アリスティアも突然のことで動作が遅れる。

 降り立ったのは女性だった。白金プラチナの長い髪、白い肌、赤みがかった紫の瞳。夜の闇に溶けてしまいそうな黒いドレスをまとっている。美しくも、蠱惑的な雰囲気を漂わせる妖しい女だった。

「この膨大な魔力……まさか、魔王?!」

 アリスティアが目を見開きながら、声を上げる。
 兵士たちは戦慄する。魔物に襲われたばかりだというのに、その魔物をはじめとする魔族たちを統べる強大な存在が目の前に現れるなんて──。

 魔王と呼ばれた女は、ゆっくりとした動作で周囲を見渡す。
 そして、セシルと目があった。

「──見つけた」



 次の瞬間、セシルの視界が覆われてしまった。

「セシルーーーーーーー!!!」
「ぐえっ?!」
 正面から衝撃が来たかと思うと、強く身体が締めつけられる。圧迫されて、思わずつぶれた蛙のような声が出た。
 一体何が起きているのか、まるで判らない。
 セシルは目を回してしまった。

「セシル! 大丈夫ですか!?」
 アリスティアの声が聞こえる。焦点の合わない目線を何とか抑えて、彼女のほうを見ると、剣を構えるアリスティアの姿があった。他にも動ける兵士たちが武器を構えている。
「セシルを離しなさい!」
 魔王に向かって、アリスティアが叫ぶ。
 しかし、魔王はセシルを抱きしめたまま、こてんと首をかしげた。

「どうして? やっと見つけ出したっていうのに」
 その声色は、まるで少女のようだった。見た目とのギャップに、兵士たちは口をぽかんとさせる。
「見つけたって……どういうことですか?」
 ぎゅうぎゅうと抱きしめられながら、セシルは訊いた。
「だって、十六年もの間、ずーっと探していたのよ? 私の可愛い弟!」



「お、おとうと?!」



 その場にいる全員が声を揃えて叫んだ。

「ど、どういうことですか? 私が魔王の弟?」
「そうよね。あなたはまだ赤ちゃんだったから、覚えてないわよね」
 魔王と思われる女性は、うっとりと目を細めてセシルの頭を撫でた。抱きしめられることも、頭を撫でられることも初めてだったセシルは、顔を真っ赤にして魚のように口をぱくぱくと動かして声にならない声をあげた。

「私はレミリア。レミリア・フォン・ハインベルクよ。一応、当代の魔王をやらせてもらってるわ。そして、あなたは私の弟のセシルよ」

 ハインベルクは代々の魔王が継いできた名前であると言われている。

「ま、待ってください! セシルが貴女の弟だというのなら、なぜ魔力でなく神聖力を持っているのですか?」
 今度はアリスティアが訊ねる。魔王に対する恐怖を抱きながらも、セシルがレミリアの腕の中にいるという現状に焦りを覚えていた。
「そ、そうです。まったく魔力がないというのはおかしいのでは?」
 セシルも疑問を投げかける。騙そうとしているようには見えないし、そもそもセシルを騙したところで意味はないだろう。だが、レミリアの言っていることを手放しで信じるほどセシルもお人好しではなかった。
 けれども、レミリアは平然と答えた。
「いいえ。全くおかしいくなんかないわ。だって、私たちは先代の魔王であるお父様と、精霊王であるお母様の子どもなのだから」



「──……はあ?!」


 再び野営地に大勢の驚嘆が響く。

「え? 魔王と精霊王の子ども……?」
「伝承では確か、二人は互いを認め合って友になったのでは?」
「夫婦? え、夫婦なの?」

 兵士たちは混乱した。
 まさか自分たちが信仰している精霊王が、魔王との間に子をもうけていたなんて。しかも、その子どもたちが、目の前にいる当代の魔王と落ちこぼれと言われていた公爵令息だったなんて。そんなこと、誰が考えつくだろうか。

「セシルの神聖力は、お母様である精霊王から受け継いだもの。これまでは何かしらの縛りがあったのか感じることができなかった。けど、今夜セシルがその力を使ったことで、ようやく見つけることができたの!」
 嬉々として語るレミリアは無邪気な子どものようで、とても嘘を吐いているようには見えなかった。

「それが本当なら、どうして私は、両親や貴女のもとを離れなければならなかったのですか?」
 セシルは両眉を寄せた。
 なぜ自分は公爵家の次男として育てられてきたのか。
 どうして、本当の家族と一緒にいることができなかったのか。
 判らないことが多すぎる。

「ああ、セシル。今までどんな酷い扱いを受けてきたのか、手に取るように判るわ。けど、お願い。そんな顔しないで。お父様もお母様も、セシルが攫われてずっと世界中を捜し続けていたのよ」
「攫われた?」
「そう。生まれてすぐのことだった。私が生まれてから二百年ぶりの子どもだったから、二人とも大層喜んでいたのに、ある日セシルを寝かせていたベッドが空になっていて……。それが十六年前のことよ。お父様は怒って、お母様との約束を破って魔物を他の種族に仕向けたりするし、そんなお父様にお母様が怒って家出するものだから大地が荒れてしまったり……」

 レミリアの語る内容は、近年起きている天災と一致していた。
「つまり、私のせいで魔物が暴れたり、作物が育たなくなったりしているということですか……?」
 レミリアとは二百歳も齢の離れた姉弟であったり、先代魔王と精霊王が現在別居中であったりという事実も気になるところではあるが、セシルは人々を苦しめている元凶が自分にあったことにショックを隠せなかった。

「セシルのせいじゃない。悪いのはセシルを攫ったやつよ!」
 俯くセシルへ言い聞かせるように、レミリアは彼の肩に手を置く。
「ところで、セシルはこれまでどこの誰に囲われていたいたのかしら?」

「ファレンハート公爵家です。そこの次男でした」
 話を聞いていたアリスティアが口を挟む。
「貴女はとてもいい人そうね。信頼できそう」
 いきなりレミリアがにっこりと邪気のない笑みを向けるものだから、しどろもどろになりながらアリスティアは礼を言う。
「あ、ありがとうございます」

「セシルが公爵家で育てられたことは判ったけど、どうしてこんな辺境にいるの? 次男だった……って言ったかしら?」
「そうです。先日、この国の王女に婚約を破棄されて、横領の罪でこの地に送られてきたんです」
 セシルが答えると、レミリアが声を上げた。
「なんですって?!」

 途端に空気中を魔力が奔り、ビリビリと肌が痛む。
 その場にいる者たちは、思わず身構えた。

「も、もちろん私は横領なんて、そんなことしてません」
「そんなことはどうでもいい! いや、私の弟がそんなことするはずないわ! 問題は私の弟を攫ったうえに、罪人として扱ったということよ!」
 今にも爆発しそうなレミリアを静めるためにどうしたら良いのかと、セシルはおろおろする。

「レ、レミリア様! いや、お姉様!」
 セシルがそう呼ぶと、レミリアから放出されていた魔力がピタッと止まる。
「あ、あの……私は、父と母に会ってみたいです。私が無事だと判れば、今起きている天災も治まるだろうし」
「そうね……そうよ、きっとそう! そうだわ! どうしてすぐに、その考えが浮かばなかったのかしら!」
 レミリアは飛び跳ねる。張り詰めていた空気から解放され、兵士たちはホッと息を吐いた。アリスティアもファインプレイだと言わんばかりに、セシルに向けてサムズアップしている。
 ああしなきゃ、こうしなきゃとはしゃぐ彼女は、とても魔王の名を冠しているようには見えない。しかし、先ほどまでのプレッシャーは明らかにレミリアから発せられるものだった。



「とにかく、セシルを早く連れて帰りたいわ。お父様とお母様に会わせてあげたい。──そして、セシルをひどい目に遭わせた奴らに報いを与えないとね」


 〇


 外遊から戻った国王は、娘であるジェニエットからの話を聞いて激高した。

「なんということをしてくれたのだ、ジェニエット!」

 王宮の謁見の間に呼び出されていたファレンハート公爵も、息子のブレイデンに厳しい視線を向けていた。
 ジェニエットとブレイデンは、なぜ責められてるのか理解できなかった。

「セシルが社交界でなんと呼ばれているのか、陛下も公爵もご存じのはずです。あんな落ちこぼれよりも、ブレイデンと結婚するほうがこの国にとって有益だと思います」
 ジェニエットはそう主張する。
「そういうことではないのだ。セシルとの婚姻は、我々だけでなく、この国の将来に関わってくることでもあったのだ。……それなのにお前たちは、それを台無しにした」
 国王は額を押さえて、大きな溜め息を吐いた。
 これでは計画が台無しだ──、と。

「魔力も持たないあんなやつに、一体どんな価値があるというのですか? 父上だって、期待外れだったと言っていたではありませんか」
 ブレイデンは、公爵のほうを見る。しかし公爵は、お前とは口を利きたくないと言わんばかりに顔を逸らす。

「しかし、よりによって辺境の危険地帯に送るとは……。すぐ王都に呼び戻すよう手配しなければ」
「彼は横領の罪を犯しているのですよ! 罪人です!」
 ジェニエットは思わず声を上げる。
「そんなことはどうでもいい!!」
 国王も負けじと声を張り、思わず玉座から立ち上がる。いつもは温厚な国王が感情を顕わにするものだから、ジェニエットとブレイデンは目を丸くした。

「その横領の罪も、お前が自ら調べたらしいが、なぜ司法機関に任せなかった。公正かつ正確な調査を行うのは王族として当然のことであろう」
「そんな! わたくしが調査結果を改ざんしたとでも?」
「他の貴族たちの手前、私情が絡む調査は第三者が行うのが望ましい」
「しかし、実際に公爵家の金が消えているのです!」
 ジェニエットは訴えるが、それは結果論だと国王は切り捨てる。

「どうしてですか! どうして陛下も公爵もあの者の肩を持つのですか?!」
 思い通りにならないことに、ジェニエットは腹が立つ。
 あんなパッとしない婚約者を厄介払いして、もっと素敵な相手を得ることができると思ったのに──。




「だって、セシルは先代魔王の息子なのだもの。そりゃ、手放したくないわよね」

 謁見の間に声が響いた。
 知らない女性の声である。
 声の主を探すと、蠱惑的で妖しい雰囲気の女性が、玉座に凭れかかって足を組んでいた。

「美しい……」
 ブレイデンが声を漏らした。
 それを聞いて、ジェニエットがキッと彼に鋭い視線を向ける。

「何者だ! どうやってここに入ってきた!」
 公爵が声をあげた。謁見の間の入り口には護衛の騎士がいたはずである。
「そんなの、簡単よ。ひゅーっとやって来て、ポンと現れただけ」
 女性はくすくすと笑った。

「誰かって聞いているの。そこは陛下の場所よ。貴女のような不躾で卑俗な者が座っていいところではないわ」
 ジェニエットが言うと、今度はカラカラと笑い声をあげた。
「ふっ、ははははは! 私が何者か気づけない低俗で低能な者がよく言う」

 響き渡る笑い声に、ジェニエットは顔を真っ赤にさせる。一方で、ブレイデンは彼女に目が釘付けだった。国王と公爵は、女性が何者なのか判らなかったが、それでも何やら嫌な予感がしていた。

「私はレミリア・フォン・ハインベルク。当代の魔王よ」

 レミリアが高らかに名を告げた途端、国王と公爵の顔が一気に青ざめた。

「魔王……? なんで魔王が……」
 ジェニエットは、眉をひそめる。
「なぜ? 私の可愛くて、大切な弟を酷い目に遭わせたというのに、判らないっていうの?」
「一体何を言っているの?」

 何も知らないジェニエットは助けを求めるように父親である国王やブレイデンに目をやるが、国王は震えて歯をガチガチと言わせている。優れていて愛おしいと思っていたブレイデンは、ジェニエットが隣にいることすら忘れているようだった。

「貴女が婚約を破棄して、辺境に送ったセシルのことよ」
 レミリアの言葉に、ジェニエットはぎょっとする。
「彼が魔王の弟ですって? そんな、まさか!」
「黙れ、ジェニエット!」
 国王が怒鳴る。頭ごなしに怒られるとは思ってなかったジェニエットは、流石に口を閉じた。

「どうやら、そこの二人は判っていたようね」
 レミリアは国王と公爵のほうを見る。
「この度は、我が愚女が弟君に大変申し訳ないことを……」
「この度は?」
 頭を下げる国王を、レミリアはギロリと睨みつける。謁見の間の温度が一気に氷点下にまで下がったような冷気を感じた。

「あの子を誘拐しておいて、何を言っているのかしら?」
「ゆ、誘拐だなんて……。我々は幼い弟君を保護していたまでのこと」
 そう言ったのは公爵だった。
「保護! どの口がそんなことを言っているのかしら?」
 レミリアは口元に手を広げて、まあまあ! と声を上げる。

「辺境の親切なお嬢さんから聞いたんだけど、ファレンハートというのはもともと軍人から成り上がった家らしいわね。公爵家と言っても序列はあまり高くはない。けど、ここ数年で一気に力をつけた。その理由のひとつが、セシルとそこの無能な王女との婚約だった」
 ファレンハート公爵は魔王に対して頭を下げて敬意を払った姿勢をとっていたが、視線は合わせまいとしていた。その姿を目にしてしまえば、命を取られると言わんばかりに怯えているのだ。

「十六年ほど前に、近隣の国と争っていたらしいじゃない。大規模な戦争に発展することはなかったけど、ファレンハートはそのとき前線で兵を率いていたそうね。そのときに我が領域の入り口でも見つけたのでしょう。迷い込んだ貴方は、眠っていたセシルを見つけて連れ帰った」
「何のためにそんなことを……」
 黙って話を聞いていたジェニエットが、つい口を挟む。
「簡単よ。魔王の血を引く子どもを王族に引き入れることで、この国の安寧を保とうとしたの。魔王の子どもなら強い魔力を有している。他国に攻め入られても、返り討ちにすることができるし、上手いこといけば、魔王を味方に付けることができるかもしれないと考えたのでしょうね。その誘いに乗った国王は、公爵と取引した。──なんとも浅はかな」

 再びレミリアは国王と公爵を睨みつける。二人は身体を縮みあがらせる。
「で、でも……彼には魔力がなかった」
 続けてジェニエットは訊ねる。
「ええ、セシルも不思議がっていたわ。けど、全然不思議じゃないのよ。あの子は、お母様である精霊王の神聖力を受け継いでいるのだから」
「精霊王ですって?!」
「国王と公爵も想定外だったはずよ。この国に残る伝承では、魔王と精霊王が夫婦になったことが抜けているみたいだから、知らなかったとしても仕方がないのかもしれないけど」

 ふふっと花も恥じらう可憐な少女のように笑うレミリア。
 しかし、その場にいる者たちは身体を強張らせた。彼女の笑みは、彼らにとって恐怖でしかなかった。ブレイデンを除いて。
「──ああ、レミリア様」
 ブレイデンはうっとりとした表情で、レミリアの前で跪く。突然のことに、恐怖で動けないでいる者たちは唖然とした。
「こんなにも美しい方がいることを知らなかったなんて──。どうか、私の妻になって下さい!」
「ブレイデン?!」
 ジェニエットは声を上げる。

 レミリアは目を細めて、美しく笑ってみせた。
 そして──


「誰があんたみたいなクソ野郎と結婚するもんか!」


 一瞬にして感情のない冷たい表情になったかと思うと、その優雅さからは考えられない暴言が吐かれた。
 ブレイデンは石になったかのように固まる。

「私の弟に罪を着せておいて、よくもそんな口を効けるわね」
「い、一体、何のことですか?」
 ブレイデンの顔色が変わる。
「私が何も知らないとでも? 悪いけど、セシルに掛かっていた縛りはとっくに解けているの。おかげで、お母様がすべてを見通してくれたわ」
 万物の神である精霊王は、この世で起きたすべてを見通すことができた。レミリアは両親のもとにセシルを連れていき、再会を喜んだあとで、彼が辺境へと送られるきっかけとなった横領について母親に視てもらったのだった。

「自分の無駄遣いを隠蔽して、セシルに濡れ衣を着せたでしょう」
 レミリアに指摘され、ブレイデンの表情にはようやく焦りが現れた。
「そうして、セシルからファレンハートの名前を剥奪した。おかげで、あの子を見つけることができたのだから、それについては感謝するわ。けど、あの子に酷い扱いをしただけでなく陥れようとしたのは、愚かで醜悪なことよ」
 レミリアは玉座から立ち上がる。ブレイデンは跪いたままカタカタと震えた。
「ブレイデン、本当なの? わたくしのことも騙したの?」
 ジェニエットは問い詰めるが、彼にはもはや誰の言葉も届かない。

「さて、そろそろ帰ろうかしら。仲直りした両親と可愛い弟が待ってる」
「お……お帰りになられるのですか?」
 国王は思わず訊いた。やっと解放されるのかと、内心ホッとする。
「ええ、やるべきことはやったから」
「やるべきこと?」
「お母様からの神託が下りてきた頃よ。教会を通して、貴方たちがやったことはすべて白日の下に晒される」

「そ、そんな……!」
「悪いことをしたのだから、報いを受けるのは当然のことでしょう。お父様がこの国を、地図から消そうとしたのを止めたのだから、むしろ感謝されたいくらいよ。統治者はダメだけど、民に罪はないのだし」
 国王も公爵も、ジェニエットもブレイデンも、もはや勝ち目はないのだと悟った。目の前にいる人物は、いつでも自分たちを好きにすることができる。それだけではない。彼女の後ろにはさらに強大な相手がいる。
 なんてものを敵に回してしまったのだろうか──、と自分たちがやったことを後悔するのであった。

「それでは、御機嫌よう」
 レミリアは優雅に礼をすると、スッとその場から姿を消した。
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