未完成な僕たちの鼓動の色

水飴さらさ

文字の大きさ
35 / 36
第二章(改正版)

そして夜…… ※

しおりを挟む
 
「グ~~、キュルル~」
 盛大に腹が鳴った音で由人は、ぱっと目が覚める。
 瞼を開ければ、ドーム型テント内は照明がしっかりついていて明るい。
 起きようとすれば、体がずしりと重い……主に下半身が鉛を詰め込まれたように重い感じがする。
 由人は眠ってしまった前の記憶を一瞬で思い出し、咄嗟に布団を掴み頭から被った。
『え? えっと、えっと……あ、……僕……久場と……どうしよう……わー、わー、どうしたらいい? どんな顔すればいい?』

「グ~~」由人の腹がまた鳴る。

「おはよう」久場の声がする。
「……お腹減ったんだよね、由人が寝てる間にバーベキュー焼いといたんだ、ちょっと待ってて温めてくるね」
 そういえば、テントの横のデッキスペースでバーベキューが焼けると、久場に聞かされていたことを由人は思い出す。
 二人でバーベキューをしたいとも、久場は言っていた。
「ごめんなさい、寝ちゃった……」
 由人の喉から出た謝罪の声は、掠れていた。
 なぜこんなに掠れ声になってしまったのか。前後不覚、天と地も分からなくなるほど甘やかされたからだ。
 寝てしまったのではない。散々翻弄され泣かされ、挙句に気絶をしてしまったのだ。
 居た堪れない気持ちになり布団を握りしめ体を隠そうとするけれど下半身がズキリと痛む。
 より一層恥ずかしくなる。
「ここ、レンジがないからセンターハウスで温めてくるね、少し待たせるけど急いで戻ってくるから、あと、バスローブ置いとくね」
「……うん」
 小さな声で返事をすると、久場が由人の頭をポンポンとしてテントを出て行く。

 とにかく久場が居ないうちにしゃんとしようと、布団をめくり身を起こせば、明るいライトに平べったい胸の赤い跡が点々と照らされた。
「うわ……」
 声にならない声を出して、布団をめくり全身を出すと、赤い跡が数えきれないほどついている。
「ああ……」
 肉厚の舌の感触、感じ過ぎる首筋、体の中の感じる場所、甘ったるい痺れ、苦しいのに気持ちよくて幸福感に満たされる事を教え込まれた記憶と感覚が鮮やかに蘇ってくる。
 枕元に置いてあるバスローブに手を伸ばして羽織り、ため息をつきながらテント内を見渡す。
 脱がされた服は畳まれてソファの上に置かれていた。
 そういえば、体は綺麗に拭かれているようだ。
 由人の脳裏に、甲斐甲斐しく体を拭いてくれている久場がすぐに浮かんだ。
 羞恥より、じんわりと幸せに包まれる。
 
 去年の五月、久場におんぶをされ、弟のように可愛いと保健室で言われた。
 自分なんかとは違って誰とでも仲良く話せ、何でも器用にこなしてしまう久場。
 そんな久場に激しく求められた。
 痩せぽっちの体を可愛いと言い、体の中も外も開かれてたくさん愛された。
 大きな体を擦り付けて、キスマークを体中につけて……甘く噛まれもした。
 
 なんだか可愛くて、愛おしいと思ってしまう。

 気絶までさせられて、こんな風に思うのはおかしいのかもしれないけれど、いつも爽やかな久場の切羽詰まった表情も、僕ことが好きだと言う顔も、獰猛な顔も、全部僕だけに見せるのだから可愛いに決まっている。
 
 由人はベッドの上でぼんやりと久場を待った。

「ただいま、お持たせー」
 久場がバーベキューの美味しそうな匂いとともに帰ってきた。
 途端に由人の腹がまた盛大になる。
 ローテーブルに温めたものを置き、久場が由人を見る。
 ベッドで大人しくじっとしている由人は白いバスローブを羽織っている。
 細い首筋に自分がつけた赤い跡がいくつも見える。
「……立てる?」
 久場が聞けば、由人はふるふると首を振りじっと見上げてくる。
 
 我慢していた期間が長かったとはいえ、体格差、体力差もあるのに由人に無理をさせてしまった自覚はある。
 そんな自分を由人はつぶらな瞳でじっと見上げてくる。
 久場は罪悪感と申し訳なさでいっぱいになる。
 居た堪れず、目を逸らして由人を横抱きに抱えてローテーブルまで運んだ。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

ハッピーライフのために地味で根暗な僕がチャラ男会計になるために

ミカン
BL
地味で根暗な北斗が上手く生きていくために王道学園でチャラ男会計になる話 ※主人公へのいじめ描写ありのため苦手な方は閲覧ご注意下さい。

久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…

しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。 高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。 数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。 そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…

【完結・BL】春樹の隣は、この先もずっと俺が良い【幼馴染】

彩華
BL
俺の名前は綾瀬葵。 高校デビューをすることもなく入学したと思えば、あっという間に高校最後の年になった。周囲にはカップル成立していく中、俺は変わらず彼女はいない。いわく、DTのまま。それにも理由がある。俺は、幼馴染の春樹が好きだから。だが同性相手に「好きだ」なんて言えるはずもなく、かといって気持ちを諦めることも出来ずにダラダラと片思いを続けること早数年なわけで……。 (これが最後のチャンスかもしれない) 流石に高校最後の年。進路によっては、もう春樹と一緒にいられる時間が少ないと思うと焦りが出る。だが、かといって長年幼馴染という一番近い距離でいた関係を壊したいかと問われれば、それは……と踏み込めない俺もいるわけで。 (できれば、春樹に彼女が出来ませんように) そんなことを、ずっと思ってしまう俺だが……────。 ********* 久しぶりに始めてみました お気軽にコメント頂けると嬉しいです ■表紙お借りしました

バイト先に元カレがいるんだが、どうすりゃいい?

cheeery
BL
サークルに一人暮らしと、完璧なキャンパスライフが始まった俺……広瀬 陽(ひろせ あき) ひとつ問題があるとすれば金欠であるということだけ。 「そうだ、バイトをしよう!」 一人暮らしをしている近くのカフェでバイトをすることが決まり、初めてのバイトの日。 教育係として現れたのは……なんと高二の冬に俺を振った元カレ、三上 隼人(みかみ はやと)だった! なんで元カレがここにいるんだよ! 俺の気持ちを弄んでフッた最低な元カレだったのに……。 「あんまり隙見せない方がいいよ。遠慮なくつけこむから」 「ねぇ、今どっちにドキドキしてる?」 なんか、俺……ずっと心臓が落ち着かねぇ! もう一度期待したら、また傷つく? あの時、俺たちが別れた本当の理由は──? 「そろそろ我慢の限界かも」

モテる兄貴を持つと……(三人称改訂版)

夏目碧央
BL
 兄、海斗(かいと)と同じ高校に入学した城崎岳斗(きのさきやまと)は、兄がモテるがゆえに様々な苦難に遭う。だが、カッコよくて優しい兄を実は自慢に思っている。兄は弟が大好きで、少々過保護気味。  ある日、岳斗は両親の血液型と自分の血液型がおかしい事に気づく。海斗は「覚えてないのか?」と驚いた様子。岳斗は何を忘れているのか?一体どんな秘密が?

陰キャ系腐男子はキラキラ王子様とイケメン幼馴染に溺愛されています!

はやしかわともえ
BL
閲覧ありがとうございます。 まったり書いていきます。 2024.05.14 閲覧ありがとうございます。 午後4時に更新します。 よろしくお願いします。 栞、お気に入り嬉しいです。 いつもありがとうございます。 2024.05.29 閲覧ありがとうございます。 m(_ _)m 明日のおまけで完結します。 反応ありがとうございます。 とても嬉しいです。 明後日より新作が始まります。 良かったら覗いてみてください。 (^O^)

先生と俺

春夏
BL
【完結しました】 【エールいただきました。ありがとうございます】 ある夏の朝に出会った2人の想いの行方は。 二度と会えないと諦めていた2人が再会して…。 Rには※つけます(7章)。

処理中です...