転化オメガの優等生はアルファの頂点に組み敷かれる

さち喜

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1 四年目の片想い

第二話

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 太古から存在したバース性が明文化され、社会的に保障されるようになってからまだ百年と少ししか経っていない。
 三つの性のうち、聖利は数パーセントしかいないアルファであると第二次性徴の時に診断された。
 明晰な頭脳や飛びぬけた身体能力を持つエリート。この世界を動かす存在。それがアルファだ。
 自分でもそうではないかとは幼い頃から思ってきた。少し努力すれば大抵のことは叶ったし、自分の能力が他者より高いことはすぐに自覚できた。外務省勤務の両親はどちらもアルファ。聖利もまた自分がアルファと診断されたときは納得しかなかった。

 国内でも名門の修豊真船学園を進学先に選んだのも、両親と同じ官僚を目指してのことだった。
 修豊真船はバース性にとらわれず広く学生を集め、文武両道をモットーとする進学校と言われているが、蓋を開ければ現在オメガはただのひとりもいない。三割のアルファと七割の優秀なベータで成る学校だ。
 この世界の大多数を占めるベータと、アルファよりさらに稀少なオメガ。オメガの社会進出が遅れていることを人権団体は叫ぶが、致し方ない部分があるだろうと聖利は思っていた。オメガにはヒートと呼ばれる発情期発作が起こる。この発作は周囲、とりわけアルファを惑わせ、社会的秩序の乱れの原因にもなり得る。
 一方で、オメガは男女問わず子を孕み産むことができる。
 この稀少であり神秘的なバース性を、神聖視したり選民化したりする団体もいるせいで、オメガはいまだ社会的に成功しづらい状況だ。能力が高く、ヒート発作を薬で完全に抑えられていたとしてもだ。

 エリート意識の高い修豊真船は、バース性に囚われないなどと言っておいて、しっかり差別をしている。エリートたちをオメガのフェロモンで惑わせたくないというのが本音だろう。
 ゆえに、聖利はいまだオメガに会ったことはない。アルファに生まれた自分は、この先も出会う機会はないかもしれない。

 アルファとオメガには、出会えば必ず惹かれ合う“運命の番”というものが存在しているらしい。しかし、そんなものは都市伝説と同じ。聖利には現実的ではない。
 おそらく自分は両親と同じように大学を出て省庁勤務をし、アルファかベータの妻を迎えるのだろう。家庭を持ち、その頃にはきっと海瀬來の存在は遠い記憶の一ページになっているはずだ。
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