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4 優しくしなくていい
第三話
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自室に入ると、來が戻ってきていた。今日は出かけないのだろうか。ベッドにごろりと横になって、スマホを操作している。最近、自室にいることも多いので、心を入れ替えつつあるのだろうか。それはそれで、恋心を助長させてしまうのでつらいのだが。
「來、もう少しで夕食だ。行かないか?」
一応誘ってみる。普段は連れ立って行かないが、先日朝食をご馳走してくれた恩と、巣作り行為をなだめられた件がある。気まずくても、恥ずかしくても友情を示しておいた方がいい。
しかし、來は返事の代わりに言った。
「おまえ、生徒会に入んの?」
「……來も知ってるのか。噂が早いね」
「さっき、サロンでやりとりしてんのが聞こえたんだよ」
來も近くにいたとは思わなかった。一般の生徒まで話が聞こえているとも思わなかった。
來は身体を起こし、スマホをベッドに放り投げた。聖利をじっと見つめてくる。
「俺は賛成しない」
「な、なんで來の賛成が要るんだ?」
「前も言ったと思うが、鼻の利くアルファはいる。おまえが目立つところに出れば出るほど、そういう輩も寄ってきやすくなる」
そうかもしれない。しかし、そんなことを言っていたら何もできない。『オメガの分際で』生徒会室でのささやくような侮蔑が蘇る。
「來、おまえも僕に息をひそめて生きろと言うのか?」
「そんなこと言ってねぇだろ。ただ、優秀なヤツらが集まる空間に進んで飛び込む必要はないって言ってんの。おまえに番ができて、フェロモンが落ち着けば危険は少なくなるかもしれないけど、今のおまえじゃ危ない。性欲の塊みたいな高校生男子にとっちゃ、目の前に好物が落っこちてるようなもんなんだぞ」
「僕はオメガであっても、抑制剤で一般的な生活はできている」
「この前、巣を作って丸まってたのは誰だよ」
カッと頬に熱がのぼった。羞恥に唇を噛みしめ、それでも來を見つめ返す。
「本能の部分はコントロールできるよう努力する。少なくとも、もう來に迷惑をかける気はない。それに、來のように鼻の利くアルファに出会う確率はどれくらいだ? 不安に思って、消極的に生きるなんて御免だ」
來の言葉は気遣いなのかもしれない。自分でも言っていた。お節介だと。
しかし、今ほどの高坂と三井寺のやりとりを聞いたあとでは、差別的に聞こえてしまう。他ならぬ來には言われたくない。同等だと力を認めてくれる存在であってほしい。
「関係ないだろ。いちいち、僕の学園生活に構わないでくれ」
聖利は苛立ちを隠さずに、強い口調で言いきった。
來が立ち上がり、ずんずんと歩み寄ってくる。聖利の顎を指でくいっと持ち上げ、顔を近づけた。不覚にも聖利は一瞬期待してしまった。キスされるのではないかと。
しかし、來は低い声で言っただけだった。
「ああ、わかった。おまえには関わらない。代わりにおまえも俺の生活に口出しするな」
吐き捨てるような言葉とともに、來は聖を解放し、部屋を出た。
「なんだよ……」
來の行ってしまったドアを見つめ、聖利は悔しく呟く。
こんなやりとりをしたいわけじゃなかったのに。うつむいて必死に唇を噛みしめた。
「來、もう少しで夕食だ。行かないか?」
一応誘ってみる。普段は連れ立って行かないが、先日朝食をご馳走してくれた恩と、巣作り行為をなだめられた件がある。気まずくても、恥ずかしくても友情を示しておいた方がいい。
しかし、來は返事の代わりに言った。
「おまえ、生徒会に入んの?」
「……來も知ってるのか。噂が早いね」
「さっき、サロンでやりとりしてんのが聞こえたんだよ」
來も近くにいたとは思わなかった。一般の生徒まで話が聞こえているとも思わなかった。
來は身体を起こし、スマホをベッドに放り投げた。聖利をじっと見つめてくる。
「俺は賛成しない」
「な、なんで來の賛成が要るんだ?」
「前も言ったと思うが、鼻の利くアルファはいる。おまえが目立つところに出れば出るほど、そういう輩も寄ってきやすくなる」
そうかもしれない。しかし、そんなことを言っていたら何もできない。『オメガの分際で』生徒会室でのささやくような侮蔑が蘇る。
「來、おまえも僕に息をひそめて生きろと言うのか?」
「そんなこと言ってねぇだろ。ただ、優秀なヤツらが集まる空間に進んで飛び込む必要はないって言ってんの。おまえに番ができて、フェロモンが落ち着けば危険は少なくなるかもしれないけど、今のおまえじゃ危ない。性欲の塊みたいな高校生男子にとっちゃ、目の前に好物が落っこちてるようなもんなんだぞ」
「僕はオメガであっても、抑制剤で一般的な生活はできている」
「この前、巣を作って丸まってたのは誰だよ」
カッと頬に熱がのぼった。羞恥に唇を噛みしめ、それでも來を見つめ返す。
「本能の部分はコントロールできるよう努力する。少なくとも、もう來に迷惑をかける気はない。それに、來のように鼻の利くアルファに出会う確率はどれくらいだ? 不安に思って、消極的に生きるなんて御免だ」
來の言葉は気遣いなのかもしれない。自分でも言っていた。お節介だと。
しかし、今ほどの高坂と三井寺のやりとりを聞いたあとでは、差別的に聞こえてしまう。他ならぬ來には言われたくない。同等だと力を認めてくれる存在であってほしい。
「関係ないだろ。いちいち、僕の学園生活に構わないでくれ」
聖利は苛立ちを隠さずに、強い口調で言いきった。
來が立ち上がり、ずんずんと歩み寄ってくる。聖利の顎を指でくいっと持ち上げ、顔を近づけた。不覚にも聖利は一瞬期待してしまった。キスされるのではないかと。
しかし、來は低い声で言っただけだった。
「ああ、わかった。おまえには関わらない。代わりにおまえも俺の生活に口出しするな」
吐き捨てるような言葉とともに、來は聖を解放し、部屋を出た。
「なんだよ……」
來の行ってしまったドアを見つめ、聖利は悔しく呟く。
こんなやりとりをしたいわけじゃなかったのに。うつむいて必死に唇を噛みしめた。
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