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4 優しくしなくていい
第八話
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すべてが済むと、來はシャワーの湯であらためて聖利の身体を洗ってくれた。來自身もびしょぬれだが厭わずに、新しいバスタオルで聖利の身体を包む。
「來……おまえ、イッてない」
「いいんだよ。聖利の処理を手伝っただけだから」
聖利は下唇を噛みしめた。來の身体は確かに反応していた。しかし、來は性欲を抑え込んだ。ヒート期でないとはいえ、匂いを感じるオメガ相手に。
「僕じゃ、その気にならないか」
「馬鹿言うな。ヒートだったら間違いなく犯してた。……そういう事故を防がなきゃなんねぇだろ」
惨めな気持ちで聖利は首を振った。來は付き合ってくれただけなのだ。
やはりこの気持ちは來には届かないだろう。いいのだ。元より届けるつもりもない恋なのだから。
「聖利」
來が聖利の顎を持ち上げる。そのまま唇を寄せられ、慌てて逸らした。キスを拒否してしまった。
「優しくしなくていい」
聖利は首を振り、目を伏せた。線引きするなら、今のタイミングをおいてほかにはないだろう。
「來は急にオメガになった僕の傍に居合わせたから、責任と優しさで構ってくれているんだろう? 心配や気遣いは無用だ。こんなことももうしなくていい」
「聖利、俺は」
「幸いおまえ以外の生徒にはオメガの匂いを指摘されてはいない。抑制剤は効いているんだろう。もちろん、抑制剤を見直せるか医師に相談するが、当面來の前に姿を現さないようにする」
「同室で同じクラスで無理だろ」
意を決して聖利は顔をあげた。濡れた來の髪を掻き上げてやりたい。頬に触れたい。そんな欲求を押し込み、伝える。
「部屋替えを寮長に相談するよ。以前から提案はされていたんだ。他のアルファやベータはともかく、おまえみたいに鼻のいいアルファと同室じゃお互いのためにならない」
次に同じことが起これば自分はまた來を求めてしまうだろう。來もまたアルファの本能に引きずられ、聖利を組み伏せてしまうのだ。今度こそ、最後までしてしまうかもしれない。
それが嬉しいのは來に恋している自分だけ。彼はきっと後悔するだろう。
來が嘆息し、じっと聖利の目を見つめてくる。それは今まで見た來の表情の中では、一番真剣なものだった。
「聖利、俺と番になることを考えろ」
「何を……」
聖利は動揺を押し隠し、嘲笑する。
「振りだって嫌だと言ったはずだ」
「大事にする。……おまえのことを他のアルファから守れる。俺なら」
來の気持ちは恋じゃない。友情の延長だ。そう思うと胸がチクチク痛い。離れると決めておいて、言葉に揺れるな。自分を必死に鼓舞する。
「僕はおまえと対等の存在でいたいんだ」
ライバルだと認めている來に庇護されるなんて聖利には我慢ならない。
そして、來の一生をこの若さで決めさせてしまうことは、聖利にはできない。
だからこそ、聖利は精一杯虚勢を張り嘘をついた。
「誤解するな。僕はおまえを性欲のはけ口として使っただけだ。おまえに気持ちなんかない。好きでもない男と番になんかなれない」
來がぎゅっと眉をひき絞った。苦しげな表情は一瞬で、すぐに顔をそむけてしまう。
「そうか。よくわかった」
立ち上がった來は、濡れた身体のままシャワールームを出た。
「関わらないと言ったばかりで悪かったな。今度こそ、お節介は終わりにする」
一度も振り返らずに、來は部屋を出ていった。
残された聖利は、後から後から溢れる涙をぬぐいもせず、床に座り込む。
來と離れるのだ。これが一番いいきっかけになる。
自分でくだした決断なのに、聖利の涙はいつまでも止まらなかった。
「來……おまえ、イッてない」
「いいんだよ。聖利の処理を手伝っただけだから」
聖利は下唇を噛みしめた。來の身体は確かに反応していた。しかし、來は性欲を抑え込んだ。ヒート期でないとはいえ、匂いを感じるオメガ相手に。
「僕じゃ、その気にならないか」
「馬鹿言うな。ヒートだったら間違いなく犯してた。……そういう事故を防がなきゃなんねぇだろ」
惨めな気持ちで聖利は首を振った。來は付き合ってくれただけなのだ。
やはりこの気持ちは來には届かないだろう。いいのだ。元より届けるつもりもない恋なのだから。
「聖利」
來が聖利の顎を持ち上げる。そのまま唇を寄せられ、慌てて逸らした。キスを拒否してしまった。
「優しくしなくていい」
聖利は首を振り、目を伏せた。線引きするなら、今のタイミングをおいてほかにはないだろう。
「來は急にオメガになった僕の傍に居合わせたから、責任と優しさで構ってくれているんだろう? 心配や気遣いは無用だ。こんなことももうしなくていい」
「聖利、俺は」
「幸いおまえ以外の生徒にはオメガの匂いを指摘されてはいない。抑制剤は効いているんだろう。もちろん、抑制剤を見直せるか医師に相談するが、当面來の前に姿を現さないようにする」
「同室で同じクラスで無理だろ」
意を決して聖利は顔をあげた。濡れた來の髪を掻き上げてやりたい。頬に触れたい。そんな欲求を押し込み、伝える。
「部屋替えを寮長に相談するよ。以前から提案はされていたんだ。他のアルファやベータはともかく、おまえみたいに鼻のいいアルファと同室じゃお互いのためにならない」
次に同じことが起これば自分はまた來を求めてしまうだろう。來もまたアルファの本能に引きずられ、聖利を組み伏せてしまうのだ。今度こそ、最後までしてしまうかもしれない。
それが嬉しいのは來に恋している自分だけ。彼はきっと後悔するだろう。
來が嘆息し、じっと聖利の目を見つめてくる。それは今まで見た來の表情の中では、一番真剣なものだった。
「聖利、俺と番になることを考えろ」
「何を……」
聖利は動揺を押し隠し、嘲笑する。
「振りだって嫌だと言ったはずだ」
「大事にする。……おまえのことを他のアルファから守れる。俺なら」
來の気持ちは恋じゃない。友情の延長だ。そう思うと胸がチクチク痛い。離れると決めておいて、言葉に揺れるな。自分を必死に鼓舞する。
「僕はおまえと対等の存在でいたいんだ」
ライバルだと認めている來に庇護されるなんて聖利には我慢ならない。
そして、來の一生をこの若さで決めさせてしまうことは、聖利にはできない。
だからこそ、聖利は精一杯虚勢を張り嘘をついた。
「誤解するな。僕はおまえを性欲のはけ口として使っただけだ。おまえに気持ちなんかない。好きでもない男と番になんかなれない」
來がぎゅっと眉をひき絞った。苦しげな表情は一瞬で、すぐに顔をそむけてしまう。
「そうか。よくわかった」
立ち上がった來は、濡れた身体のままシャワールームを出た。
「関わらないと言ったばかりで悪かったな。今度こそ、お節介は終わりにする」
一度も振り返らずに、來は部屋を出ていった。
残された聖利は、後から後から溢れる涙をぬぐいもせず、床に座り込む。
來と離れるのだ。これが一番いいきっかけになる。
自分でくだした決断なのに、聖利の涙はいつまでも止まらなかった。
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