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第四章
仮装担当 3
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新入生歓迎スポーツ大会の出る種目が決まったことで、僕らのクラスも自然とその準備態勢に入り、各々がチームごとに練習を始めていた。
そんな中、僕と高橋君は仮装担当にする演目を考えていた。
「聞いたところによると、アニメやアイドルの曲を流しながら同じように踊ったりするのが今までの主流らしいぞ」
「うん……。一から考えるよりもその方が簡単だよね」
「だよな。で、どうしようか? なんかおススメとか無いか?」
「opzとかは? キャンディクラッシックとか今流行ってるよね」
「……いいけど、それだと2人とも女装だぞ?」
「あー……、だね。それはヤだな」
「うーん」
「…………」
2人で必死で頭を働かせた。
イタい企画だから、せめてみんなが楽しんでくれないと恥ずかし過ぎて凹むに違いないし。
それだけは出来れば避けたいんだ。
「あっ!」
「な、なに?」
「もふもふワンダー!!」
「あぁーっ! うん! それいいよ!」
もふもふワンダーとは、今大流行のアニメだ。
主人公圭一が飼っている子猫が、魔法で可愛い女の子になって繰り広げる不思議なラブコメで、子供たちどころか大人までがハマるという一種の社会現象を引き起こしている。
「それなら、子猫の着ぐるみと圭一の学生服だけでオッケーだよね! エンディングのダンスもみんなでノレそうだし!」
「衣装の値段、ちょっと見てみようぜ。一応女子がなんとかするとは言ってくれたけど、そんなに高くなければどうせみんなで折半するってことになってるから買ってもいいよな」
そう言って、高橋君が値段を調べ始めた。
「2人分の衣装で2万くらいかあ。……1人頭、600円もかからないな。これならOKでそうだな」
「うん、そうだね。向坂さんたちに報告しておこうか。彼女たち、衣装は作ってあげるって言ってくれてたから」
「そうだな。……あ、いた。おーい、向坂ー」
高橋君に呼ばれて向坂さんがやって来た。
「なに、仮装何にするか決まったの?」
「ああ。でさ、調べたら買ってもいいんじゃないかなーと思ってさ」
「へえ? 演目は?」
「もふもふワンダーだよ。コスチュームは圭一と子猫ので」
「圭一と……、子猫ねぇ」
向坂さんは小首を傾げて自分でもスマホを取り出した。
そして何やら考えた挙句、「じゃあ、こっちで手配してあげるから。後は任せてダンスをしっかり覚えてよ」と言った。
「……分かった」
渋々答える僕らに向坂さんもお気の毒、と言ったように苦笑した。
「あ、そうそう念のため。圭一担当は、どっち?」
「俺。鹿倉より俺の方が背、高いだろ?」
「…………」
背が低いってホント損だよね。
その理由を言われたら、全力で否定できなくなるもん。
あ~あ。
僕のゲンナリした表情を見たはずなのに、向坂さんまで笑って頷いている。
「あはは。だよね。じゃあ2人ともサイズ一応教えて。高橋はMでいいかな? 鹿倉君は……」
僕は高橋君の学生服と違って子猫の着ぐるみだからそんなにきっちり測る必要は無いと思うんだけど、せっかく買って無駄になると困るからと言われて、簡単にだけどメジャーで測られた。
でもまあ、女装でないだけましだよね。
スポーツ大会は来週の金曜日だから、それまでには何とかダンスも覚えられるだろうし。
とりあえず高橋君と話し合って、エンディングのダンスはそれぞれでチェックして練習しておくことに決まった。
そして日曜日までにはある程度ものにしておいて、後は適当に放課後に合わせるなら合わせようという事になったんだ。
そんな中、僕と高橋君は仮装担当にする演目を考えていた。
「聞いたところによると、アニメやアイドルの曲を流しながら同じように踊ったりするのが今までの主流らしいぞ」
「うん……。一から考えるよりもその方が簡単だよね」
「だよな。で、どうしようか? なんかおススメとか無いか?」
「opzとかは? キャンディクラッシックとか今流行ってるよね」
「……いいけど、それだと2人とも女装だぞ?」
「あー……、だね。それはヤだな」
「うーん」
「…………」
2人で必死で頭を働かせた。
イタい企画だから、せめてみんなが楽しんでくれないと恥ずかし過ぎて凹むに違いないし。
それだけは出来れば避けたいんだ。
「あっ!」
「な、なに?」
「もふもふワンダー!!」
「あぁーっ! うん! それいいよ!」
もふもふワンダーとは、今大流行のアニメだ。
主人公圭一が飼っている子猫が、魔法で可愛い女の子になって繰り広げる不思議なラブコメで、子供たちどころか大人までがハマるという一種の社会現象を引き起こしている。
「それなら、子猫の着ぐるみと圭一の学生服だけでオッケーだよね! エンディングのダンスもみんなでノレそうだし!」
「衣装の値段、ちょっと見てみようぜ。一応女子がなんとかするとは言ってくれたけど、そんなに高くなければどうせみんなで折半するってことになってるから買ってもいいよな」
そう言って、高橋君が値段を調べ始めた。
「2人分の衣装で2万くらいかあ。……1人頭、600円もかからないな。これならOKでそうだな」
「うん、そうだね。向坂さんたちに報告しておこうか。彼女たち、衣装は作ってあげるって言ってくれてたから」
「そうだな。……あ、いた。おーい、向坂ー」
高橋君に呼ばれて向坂さんがやって来た。
「なに、仮装何にするか決まったの?」
「ああ。でさ、調べたら買ってもいいんじゃないかなーと思ってさ」
「へえ? 演目は?」
「もふもふワンダーだよ。コスチュームは圭一と子猫ので」
「圭一と……、子猫ねぇ」
向坂さんは小首を傾げて自分でもスマホを取り出した。
そして何やら考えた挙句、「じゃあ、こっちで手配してあげるから。後は任せてダンスをしっかり覚えてよ」と言った。
「……分かった」
渋々答える僕らに向坂さんもお気の毒、と言ったように苦笑した。
「あ、そうそう念のため。圭一担当は、どっち?」
「俺。鹿倉より俺の方が背、高いだろ?」
「…………」
背が低いってホント損だよね。
その理由を言われたら、全力で否定できなくなるもん。
あ~あ。
僕のゲンナリした表情を見たはずなのに、向坂さんまで笑って頷いている。
「あはは。だよね。じゃあ2人ともサイズ一応教えて。高橋はMでいいかな? 鹿倉君は……」
僕は高橋君の学生服と違って子猫の着ぐるみだからそんなにきっちり測る必要は無いと思うんだけど、せっかく買って無駄になると困るからと言われて、簡単にだけどメジャーで測られた。
でもまあ、女装でないだけましだよね。
スポーツ大会は来週の金曜日だから、それまでには何とかダンスも覚えられるだろうし。
とりあえず高橋君と話し合って、エンディングのダンスはそれぞれでチェックして練習しておくことに決まった。
そして日曜日までにはある程度ものにしておいて、後は適当に放課後に合わせるなら合わせようという事になったんだ。
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