僕の王子様

くるむ

文字の大きさ
33 / 62
第四章

仮装担当 3

しおりを挟む
新入生歓迎スポーツ大会の出る種目が決まったことで、僕らのクラスも自然とその準備態勢に入り、各々がチームごとに練習を始めていた。

そんな中、僕と高橋君は仮装担当にする演目を考えていた。

「聞いたところによると、アニメやアイドルの曲を流しながら同じように踊ったりするのが今までの主流らしいぞ」
「うん……。一から考えるよりもその方が簡単だよね」
「だよな。で、どうしようか? なんかおススメとか無いか?」
「opzとかは? キャンディクラッシックとか今流行ってるよね」
「……いいけど、それだと2人とも女装だぞ?」
「あー……、だね。それはヤだな」

「うーん」
「…………」

2人で必死で頭を働かせた。
イタい企画だから、せめてみんなが楽しんでくれないと恥ずかし過ぎて凹むに違いないし。
それだけは出来れば避けたいんだ。


「あっ!」
「な、なに?」
「もふもふワンダー!!」
「あぁーっ! うん! それいいよ!」

もふもふワンダーとは、今大流行のアニメだ。
主人公圭一が飼っている子猫が、魔法で可愛い女の子になって繰り広げる不思議なラブコメで、子供たちどころか大人までがハマるという一種の社会現象を引き起こしている。

「それなら、子猫の着ぐるみと圭一の学生服だけでオッケーだよね! エンディングのダンスもみんなでノレそうだし!」

「衣装の値段、ちょっと見てみようぜ。一応女子がなんとかするとは言ってくれたけど、そんなに高くなければどうせみんなで折半するってことになってるから買ってもいいよな」

そう言って、高橋君が値段を調べ始めた。

「2人分の衣装で2万くらいかあ。……1人頭、600円もかからないな。これならOKでそうだな」
「うん、そうだね。向坂さんたちに報告しておこうか。彼女たち、衣装は作ってあげるって言ってくれてたから」

「そうだな。……あ、いた。おーい、向坂ー」

高橋君に呼ばれて向坂さんがやって来た。

「なに、仮装何にするか決まったの?」
「ああ。でさ、調べたら買ってもいいんじゃないかなーと思ってさ」
「へえ? 演目は?」
「もふもふワンダーだよ。コスチュームは圭一と子猫ので」

「圭一と……、子猫ねぇ」

向坂さんは小首を傾げて自分でもスマホを取り出した。
そして何やら考えた挙句、「じゃあ、こっちで手配してあげるから。後は任せてダンスをしっかり覚えてよ」と言った。

「……分かった」

渋々答える僕らに向坂さんもお気の毒、と言ったように苦笑した。

「あ、そうそう念のため。圭一担当は、どっち?」
「俺。鹿倉より俺の方が背、高いだろ?」
「…………」

背が低いってホント損だよね。
その理由を言われたら、全力で否定できなくなるもん。
あ~あ。

僕のゲンナリした表情を見たはずなのに、向坂さんまで笑って頷いている。

「あはは。だよね。じゃあ2人ともサイズ一応教えて。高橋はMでいいかな? 鹿倉君は……」

僕は高橋君の学生服と違って子猫の着ぐるみだからそんなにきっちり測る必要は無いと思うんだけど、せっかく買って無駄になると困るからと言われて、簡単にだけどメジャーで測られた。



でもまあ、女装でないだけましだよね。
スポーツ大会は来週の金曜日だから、それまでには何とかダンスも覚えられるだろうし。


とりあえず高橋君と話し合って、エンディングのダンスはそれぞれでチェックして練習しておくことに決まった。
そして日曜日までにはある程度ものにしておいて、後は適当に放課後に合わせるなら合わせようという事になったんだ。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

フードコートの天使

美浪
BL
西山暁には本気の片思いをして告白をする事も出来ずに音信不通になってしまった相手がいる。 あれから5年。 大手ファストフードチェーン店SSSバーガーに就職した。今は店長でブルーローズショッピングモール店に勤務中。 そんなある日・・・。あの日の君がフードコートに居た。 それは間違いなく俺の大好きで忘れられないジュンだった。 ・・・・・・・・・・・・ 大濠純、食品会社勤務。 5年前に犯した過ちから自ら疎遠にしてしまった片思いの相手。 ずっと忘れない人。アキラさん。 左遷先はブルーローズショッピングモール。そこに彼は居た。 まだ怒っているかもしれない彼に俺は意を決して挨拶をした・・・。 ・・・・・・・・・・・・ 両片思いを2人の視点でそれぞれ展開して行こうと思っています。

祝福という名の厄介なモノがあるんですけど

野犬 猫兄
BL
魔導研究員のディルカには悩みがあった。 愛し愛される二人の証しとして、同じ場所に同じアザが発現するという『花祝紋』が独り身のディルカの身体にいつの間にか現れていたのだ。 それは女神の祝福とまでいわれるアザで、そんな大層なもの誰にも見せられるわけがない。  ディルカは、そんなアザがあるものだから、誰とも恋愛できずにいた。 イチャイチャ……イチャイチャしたいんですけど?! □■ 少しでも楽しんでいただけたら嬉しいです! 完結しました。 応援していただきありがとうございます! □■ 第11回BL大賞では、ポイントを入れてくださった皆様、またお読みくださった皆様、どうもありがとうございましたm(__)m

刺されて始まる恋もある

神山おが屑
BL
ストーカーに困るイケメン大学生城田雪人に恋人のフリを頼まれた大学生黒川月兎、そんな雪人とデートの振りして食事に行っていたらストーカーに刺されて病院送り罪悪感からか毎日お見舞いに来る雪人、罪悪感からか毎日大学でも心配してくる雪人、罪悪感からかやたら世話をしてくる雪人、まるで本当の恋人のような距離感に戸惑う月兎そんなふたりの刺されて始まる恋の話。

闘乱世界ユルヴィクス -最弱と最強神のまったり世直し旅!?-

mao
BL
 力と才能が絶対的な存在である世界ユルヴィクスに生まれながら、何の力も持たずに生まれた無能者リーヴェ。  無能であるが故に散々な人生を送ってきたリーヴェだったが、ある日、将来を誓い合った婚約者ティラに事故を装い殺されかけてしまう。崖下に落ちたところを不思議な男に拾われたが、その男は「神」を名乗るちょっとヤバそうな男で……?  天才、秀才、凡人、そして無能。  強者が弱者を力でねじ伏せ支配するユルヴィクス。周りをチート化させつつ、世界の在り方を変えるための世直し旅が、今始まる……!?  ※一応はバディモノですがBL寄りなので苦手な方はご注意ください。果たして愛は芽生えるのか。   のんびりまったり更新です。カクヨム、なろうでも連載してます。

初恋ミントラヴァーズ

卯藤ローレン
BL
私立の中高一貫校に通う八坂シオンは、乗り物酔いの激しい体質だ。 飛行機もバスも船も人力車もダメ、時々通学で使う電車でも酔う。 ある朝、学校の最寄り駅でしゃがみこんでいた彼は金髪の男子生徒に助けられる。 眼鏡をぶん投げていたため気がつかなかったし何なら存在自体も知らなかったのだが、それは学校一モテる男子、上森藍央だった(らしい)。 知り合いになれば不思議なもので、それまで面識がなかったことが嘘のように急速に距離を縮めるふたり。 藍央の優しいところに惹かれるシオンだけれど、優しいからこそその本心が掴みきれなくて。 でも想いは勝手に加速して……。 彩り豊かな学校生活と夏休みのイベントを通して、恋心は芽生え、弾んで、時にじれる。 果たしてふたりは、恋人になれるのか――? /金髪顔整い×黒髪元気時々病弱/ じれたり悩んだりもするけれど、王道満載のウキウキハッピハッピハッピーBLです。 集まると『動物園』と称されるハイテンションな友人たちも登場して、基本騒がしい。 ◆毎日2回更新。11時と20時◆

伯爵令息アルロの魔法学園生活

あさざきゆずき
BL
ハーフエルフのアルロは、人間とエルフの両方から嫌われている。だから、アルロは魔法学園へ入学しても孤独だった。そんなとき、口は悪いけれど妙に優しい優等生が現れた。

君さえ笑ってくれれば最高

大根
BL
ダリオ・ジュレの悩みは1つ。「氷の貴公子」の異名を持つ婚約者、ロベルト・トンプソンがただ1度も笑顔を見せてくれないことだ。感情が顔に出やすいダリオとは対照的な彼の態度に不安を覚えたダリオは、どうにかロベルトの笑顔を引き出そうと毎週様々な作戦を仕掛けるが。 (クーデレ?溺愛美形攻め × 顔に出やすい素直平凡受け) 異世界BLです。

完結·氷の宰相の寝かしつけ係に任命されました

BL
幼い頃から心に穴が空いたような虚無感があった亮。 その穴を埋めた子を探しながら、寂しさから逃げるようにボイス配信をする日々。 そんなある日、亮は突然異世界に召喚された。 その目的は―――――― 異世界召喚された青年が美貌の宰相の寝かしつけをする話 ※小説家になろうにも掲載中

処理中です...