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第五章
モテすぎるということ
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応援の甲斐があってというよりは、加賀くんたちの頑張りで僕らのクラスは勝つことが出来た。二回戦進出決定だ。
「おめでとー」
「応援、サンキュー」
戻って来たみんなを労っていると、パタパタと加山さんが走って来た。
「勝ったんだね! おめでとー」
「おう。加山は?」
「もちろん、勝ったよ!」
「そっか、お疲れさん」
「おめでとう」
午後一の試合が組み込まれているサッカー以外は幸先よくまずは一勝だ。
喜んでいる横で、桐ケ谷先輩たちが僕に軽く合図をして離れて行った。どうやら、礼人さんたちの試合を見るために移動するようだ。
「鹿倉君、そろそろ行こう」
「うん、そうだね。じゃあ、みんなお疲れ様。ちょっと他の試合見に行ってくるね」
「ああ。……どこ行くんだ」
「紫藤先輩の試合よ! 鹿倉君と一緒に見に行くんだ」
そう言いながら、加山さんが僕の腕をグイッと引っ張った。
その様子を見た加賀くんは、どうやら僕が読書同好会に入っていることを知られたせいで加山さんのイケメン好きに付き合わされていると思ったようだ。
『気の毒に』というような表情で、ひらひらと手を振って僕らを見送った。
「ありがとう、加山さん」
「ええっ? お礼を言うのはこっちなんだけどな」
「そうかな?」
「うん。まあ、試合が始まればすぐにわかるよ」
「?」
「さ、いい場所取らなきゃ、急ごう」
焦り始めた加山さんの言葉に視線を上げると、加山さんが危惧する通り沢山の女子がそこを目指して大移動している。
凄い……。
「紫藤先輩と黒田先輩が一緒に出るからね。2人のファンが一気に押し寄せてるんだよ」
「ああ……」
そういえば黒田先輩も、キャーキャー騒がれてたっけ。
2人とも相手になんてしてなかったけど。
「ちょっとすいませーん」
群がる女子の中を、僕の手を引いた加山さんがいい具合に隙間を見つけて人波を掻き分けていく。おかげでかなり前の方まで出てこれた。ここなら試合も何とか見れそうだ。
「……ったく、るせーな。なんだこの女子」
「しょーがねーだろ。紫藤と黒田が一緒に出るらしいから」
「紫藤!? げぇっ! あいつ嫌いなんだよな、俺。派手な格好してさ、なにやっても目立ちます~って感じがマジムカつく」
なんだと~!?
こっちこそマジムカつく!!
礼人さんの本心も分からず勝手なこと言って!
言い返したい!
礼人さんは好きで目立ってるんじゃないって、自然にカッコいいし優しいから女子の人気も高いんだって!
そう大きな声で言ってやりたいけど!
怒りでプルプル震える僕の肩を、加山さんがポンポンと宥めるように叩いた。
そして、
「紫藤先輩、そんなんじゃないけどな~」と明るい口調で前方の上級生にも聞こえるような声で言った。
「なに?」
そんなあからさまな物言いの加山さんに、どう考えても自分が言われたと感じたその上級生が不機嫌そうに振り返った。
「私には、騒がれるのを喜んでるようには見えないってこと」
「はあ? だったら何でお前らはこうやって紫藤を追いかけてるんだよ」
「だって! あんなにかっこいいんだもん、見ずにはいられないっしょ」
「……なにがいいんだか、あんなすかした奴」
「れい……、紫藤先輩はそんなんじゃないですよ! すごく優しくて繊細で……」
「はあっ!? ばっかじゃねーの? ないない、ソレあり得ないから」
バカにするように爆笑して、話はおしまいと言うように上級生らは前を向いた。
すごく悔しくて頭に来た。だけどさらに蒸し返して文句を言うのは、却って礼人さんの迷惑になってしまいそうで出来なかった。
だってこういう人たちって、些細な理由を付けてどんどん礼人さんのことを勝手に毛嫌いしていきそうなんだもの。
やりきれない思いでため息を吐いていると、隣で加山さんがムッとした顔で『イ~!!』と凄い顔をしていた。
「……加山さん」
「なによ?」
「……ありがとう」
「やーねー、もう! 乙女の可愛い顔が台無しだよ」
そう言って、加山さんは僕らのモヤモヤとした気持ちを明るく笑い飛ばしてくれた。
「あ、ホラ。始まるみたいだよ」
ピッチに目を向けると、選手らが並び始めていた。
「おめでとー」
「応援、サンキュー」
戻って来たみんなを労っていると、パタパタと加山さんが走って来た。
「勝ったんだね! おめでとー」
「おう。加山は?」
「もちろん、勝ったよ!」
「そっか、お疲れさん」
「おめでとう」
午後一の試合が組み込まれているサッカー以外は幸先よくまずは一勝だ。
喜んでいる横で、桐ケ谷先輩たちが僕に軽く合図をして離れて行った。どうやら、礼人さんたちの試合を見るために移動するようだ。
「鹿倉君、そろそろ行こう」
「うん、そうだね。じゃあ、みんなお疲れ様。ちょっと他の試合見に行ってくるね」
「ああ。……どこ行くんだ」
「紫藤先輩の試合よ! 鹿倉君と一緒に見に行くんだ」
そう言いながら、加山さんが僕の腕をグイッと引っ張った。
その様子を見た加賀くんは、どうやら僕が読書同好会に入っていることを知られたせいで加山さんのイケメン好きに付き合わされていると思ったようだ。
『気の毒に』というような表情で、ひらひらと手を振って僕らを見送った。
「ありがとう、加山さん」
「ええっ? お礼を言うのはこっちなんだけどな」
「そうかな?」
「うん。まあ、試合が始まればすぐにわかるよ」
「?」
「さ、いい場所取らなきゃ、急ごう」
焦り始めた加山さんの言葉に視線を上げると、加山さんが危惧する通り沢山の女子がそこを目指して大移動している。
凄い……。
「紫藤先輩と黒田先輩が一緒に出るからね。2人のファンが一気に押し寄せてるんだよ」
「ああ……」
そういえば黒田先輩も、キャーキャー騒がれてたっけ。
2人とも相手になんてしてなかったけど。
「ちょっとすいませーん」
群がる女子の中を、僕の手を引いた加山さんがいい具合に隙間を見つけて人波を掻き分けていく。おかげでかなり前の方まで出てこれた。ここなら試合も何とか見れそうだ。
「……ったく、るせーな。なんだこの女子」
「しょーがねーだろ。紫藤と黒田が一緒に出るらしいから」
「紫藤!? げぇっ! あいつ嫌いなんだよな、俺。派手な格好してさ、なにやっても目立ちます~って感じがマジムカつく」
なんだと~!?
こっちこそマジムカつく!!
礼人さんの本心も分からず勝手なこと言って!
言い返したい!
礼人さんは好きで目立ってるんじゃないって、自然にカッコいいし優しいから女子の人気も高いんだって!
そう大きな声で言ってやりたいけど!
怒りでプルプル震える僕の肩を、加山さんがポンポンと宥めるように叩いた。
そして、
「紫藤先輩、そんなんじゃないけどな~」と明るい口調で前方の上級生にも聞こえるような声で言った。
「なに?」
そんなあからさまな物言いの加山さんに、どう考えても自分が言われたと感じたその上級生が不機嫌そうに振り返った。
「私には、騒がれるのを喜んでるようには見えないってこと」
「はあ? だったら何でお前らはこうやって紫藤を追いかけてるんだよ」
「だって! あんなにかっこいいんだもん、見ずにはいられないっしょ」
「……なにがいいんだか、あんなすかした奴」
「れい……、紫藤先輩はそんなんじゃないですよ! すごく優しくて繊細で……」
「はあっ!? ばっかじゃねーの? ないない、ソレあり得ないから」
バカにするように爆笑して、話はおしまいと言うように上級生らは前を向いた。
すごく悔しくて頭に来た。だけどさらに蒸し返して文句を言うのは、却って礼人さんの迷惑になってしまいそうで出来なかった。
だってこういう人たちって、些細な理由を付けてどんどん礼人さんのことを勝手に毛嫌いしていきそうなんだもの。
やりきれない思いでため息を吐いていると、隣で加山さんがムッとした顔で『イ~!!』と凄い顔をしていた。
「……加山さん」
「なによ?」
「……ありがとう」
「やーねー、もう! 乙女の可愛い顔が台無しだよ」
そう言って、加山さんは僕らのモヤモヤとした気持ちを明るく笑い飛ばしてくれた。
「あ、ホラ。始まるみたいだよ」
ピッチに目を向けると、選手らが並び始めていた。
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