五十一歳、森の中で家族を作る ~異世界で始める職人ライフ~

よっしぃ

文字の大きさ
68 / 387

第68話:妻たちの密議、夫への愛と未来の形

しおりを挟む
 中央館の奥、女性たち専用の談話室となりつつあるその部屋には、シルヴィア、アヤネ、キナ、セレスティーナ、レオノーラという、アキオの妻たちが顔を揃えていた。窓から差し込む柔らかな午後の光が、彼女たちの真剣な、しかしどこか温かな表情を照らし出している。議題は、先日シルヴィアが提起した「アキオとの関係を次の段階へ進める」ことについて、そしてアキオ自身の最近の驚くほどの活力についてだった。

「…というわけで、アキオのあの活力の源が、私との交わりによるエルフの伝承にあるものなのか、それとも彼自身の生命力の賜物なのかは定かではないのだけれど…いずれにしても、私たち妻が、彼をしっかりと支え、そして彼に心からの安らぎと喜びを与えたいと、私は考えているわ」
 シルヴィアが、アキオの最近の様子と、彼女なりの考察を語り終えると、皆、深く頷いた。

「それでね、奥方様。あたしたち、だんなと、その…夜を共にするっていうのは、具体的にどうするんだい?順番とか、そういうの、決めちゃう感じ?」
 キナが、期待に目を輝かせながら、しかし少しだけ遠慮がちに尋ねる。彼女のストレートな物言いに、セレスティーナとレオノーラは頬を染めたが、アヤネは真剣な面持ちでシルヴィアを見つめていた。

 シルヴィアは穏やかに微笑み、まずアヤネに視線を向けた。
「アヤネ。あなたのことは、アキオも私も、そしてここにいる皆も、特別な想いで見守っています。あなたはアキオの第一夫人だけれど、まだ若く、心身ともに大切な成長の時期ですわ。だから…」
 シルヴィアはそこで一度言葉を切り、アキオから事前に伝えられていた彼の強い想いを、丁寧に、そして優しく皆に語り始めた。
「アキオはね、あなたとの夫婦としての深い結びつきは、あなたが二十歳を迎えるまで、もう少し待ってあげたい、と…そう考えているの。それは、彼があなたの故郷の風習を重んじているからではなく、彼自身の倫理観…彼が生きてきた世界の常識と、そして何よりも、あなたという一人の女性を心から大切に想い、あなたの未来を深く慮ってのことなのよ」
 その言葉に、アヤネの瞳が潤んだ。アキオが、自分のことをそれほどまでに深く考え、守ろうとしてくれている。その事実に、胸が熱くなるのを感じた。
「アキオ様が……私のことを……」
「ええ。だから、アヤネ。焦ることはないのよ。それまでの間、あなたはアキオの一番近くで、彼を支え、彼から多くのことを学び、そして素晴らしい女性へと成長していけばいい。もちろん、第一夫人として、アキオと共に寝室で過ごし、彼の温もりを感じ、心を寄せ合うことは、何ら妨げられるものではないわ。ただ、本当の意味で男女として結ばれるのは、あなたが心からそれを望み、そして準備ができたと、アキオもあなたも感じられるその時まで、大切に取っておきましょう」
 シルヴィアの温かい言葉に、アヤネは深く頷き、涙をそっと拭った。「…はい。シルヴィア様、アキオ様の…お気持ち、よく分かりました。私、それまで、もっともっと素敵な女性になれるように頑張ります!」その表情は、迷いが晴れたように清々しかった。

「そういうわけだから、キナ、セレスティーナ、レオノーラ」シルヴィアは他の三人に向き直る。「私たち三人が、まずはアキオの夜の相手を務め、彼を支えていくことになります。順番については…そうね、皆の意向を聞きながら、アキオとも相談して、公平に、そして無理のないように決めていきましょう。大切なのは、彼が心から安らげることよ」
 キナは「よっしゃあ! 任せといて、奥方様! だんなを骨抜きにしちゃうぜ!」と拳を握り、レオノーラは「わ、私が…アキオ殿と…そ、そのような…! も、もちろん、妻として、お役目は果たしますが…!」と顔を真っ赤にしつつもどこか嬉しそうに俯き、セレスティーナは「アキオ様がお望みとあらば…私も、喜んで…」と、穏やかながらも決意を秘めた微笑みを見せた。

 さらにシルヴィアは、重要な提案を付け加えた。
「そして、夜の営みだけが夫婦の絆ではないわ。アキオは、私たち一人一人と、心からの繋がりを求めている。だから、定期的に、それぞれがアキオと二人きりで過ごす『デートの日』を設けましょう。それは、村の散策でも、森での語らいでも、あるいは二人で何かを一緒に作る時間でもいい。お互いをより深く知り、愛情を育むための、かけがえのない時間となるはずよ」
 この提案には、皆、心から賛同した。ただ身体を重ねるだけでなく、心と心で深く結びつきたいというシルヴィアの願いは、アキオを愛する妻たち共通の想いでもあったのだ。

 こうして、アキオの知らないところで開かれた「第一回妻会」は、それぞれの妻の想いと、アキオへの深い愛情を確認し合い、そして未来の家族の形についての具体的なルールと約束を、温かく、そして真摯に話し合う場となった。
 アキオの倫理観への尊重、アヤネの成長への配慮、そして全ての妻がアキオと心身共に満たされた関係を築けるようにという、シルヴィアの深い気遣いとリーダーシップが、そこに集った女性たちの心を一つにした。
 彼女たちのこの決定が、アキオに伝えられるのは、また別のお話。だが、アキオたちの家族は、この日を境に、また新たな、そしてより豊かな愛の形を育んでいくことになるだろう。
しおりを挟む
感想 9

あなたにおすすめの小説

異世界に転移したら、孤児院でごはん係になりました

雪月夜狐
ファンタジー
ある日突然、異世界に転移してしまったユウ。 気がつけば、そこは辺境にある小さな孤児院だった。 剣も魔法も使えないユウにできるのは、 子供たちのごはんを作り、洗濯をして、寝かしつけをすることだけ。 ……のはずが、なぜか料理や家事といった 日常のことだけが、やたらとうまくいく。 無口な男の子、甘えん坊の女の子、元気いっぱいな年長組。 個性豊かな子供たちに囲まれて、 ユウは孤児院の「ごはん係」として、毎日を過ごしていく。 やがて、かつてこの孤児院で育った冒険者や商人たちも顔を出し、 孤児院は少しずつ、人が集まる場所になっていく。 戦わない、争わない。 ただ、ごはんを作って、今日をちゃんと暮らすだけ。 ほんわか天然な世話係と子供たちの日常を描く、 やさしい異世界孤児院ファンタジー。

異世界に転移したらぼっちでした〜観察者ぼっちーの日常〜

キノア9g
ファンタジー
※本作はフィクションです。 「異世界に転移したら、ぼっちでした!?」 20歳の普通の会社員、ぼっちーが目を覚ましたら、そこは見知らぬ異世界の草原。手元には謎のスマホと簡単な日用品だけ。サバイバル知識ゼロでお金もないけど、せっかくの異世界生活、ブログで記録を残していくことに。 一風変わったブログ形式で、異世界の日常や驚き、見知らぬ土地での発見を綴る異世界サバイバル記録です!地道に生き抜くぼっちーの冒険を、どうぞご覧ください。 毎日19時更新予定。

スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜

かの
ファンタジー
 世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。  スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。  偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。  スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!  冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!

シスターヴレイヴ!~上司に捨て駒にされ会社をクビになり無職ニートになった俺が妹と異世界に飛ばされ妹が勇者になったけど何とか生きてます~

尾山塩之進
ファンタジー
鳴鐘 慧河(なるがね けいが)25歳は上司に捨て駒にされ会社をクビになってしまい世の中に絶望し無職ニートの引き籠りになっていたが、二人の妹、優羽花(ゆうか)と静里菜(せりな)に元気づけられて再起を誓った。 だがその瞬間、妹たち共々『魔力満ちる世界エゾン・レイギス』に異世界召喚されてしまう。 全ての人間を滅ぼそうとうごめく魔族の長、大魔王を倒す星剣の勇者として、セカイを護る精霊に召喚されたのは妹だった。 勇者である妹を討つべく襲い来る魔族たち。 そして慧河より先に異世界召喚されていた慧河の元上司はこの異世界の覇権を狙い暗躍していた。 エゾン・レイギスの人間も一枚岩ではなく、様々な思惑で持って動いている。 これは戦乱渦巻く異世界で、妹たちを護ると一念発起した、勇者ではない只の一人の兄の戦いの物語である。 …その果てに妹ハーレムが作られることになろうとは当人には知るよしも無かった。 妹とは血の繋がりであろうか? 妹とは魂の繋がりである。 兄とは何か? 妹を護る存在である。 かけがいの無い大切な妹たちとのセカイを護る為に戦え!鳴鐘 慧河!戦わなければ護れない!

祝・定年退職!? 10歳からの異世界生活

空の雲
ファンタジー
中田 祐一郎(なかたゆういちろう)60歳。長年勤めた会社を退職。 最後の勤めを終え、通い慣れた電車で帰宅途中、突然の衝撃をうける。 ――気付けば、幼い子供の姿で見覚えのない森の中に…… どうすればいいのか困惑する中、冒険者バルトジャンと出会う。 顔はいかついが気のいいバルトジャンは、行き場のない子供――中田祐一郎(ユーチ)の保護を申し出る。 魔法や魔物の存在する、この世界の知識がないユーチは、迷いながらもその言葉に甘えることにした。 こうして始まったユーチの異世界生活は、愛用の腕時計から、なぜか地球の道具が取り出せたり、彼の使う魔法が他人とちょっと違っていたりと、出会った人たちを驚かせつつ、ゆっくり動き出す―― ※2月25日、書籍部分がレンタルになりました。

平凡冒険者のスローライフ

上田なごむ
ファンタジー
26歳独身、動物好きの主人公大和希は、神様によって魔物や魔法、獣人等が当たり前に存在する異世界に転移させられる。 彼が送るのは、時に命がけの戦いもあり、時に仲間との穏やかな日常もある、そんな『冒険者』ならではのスローライフ。 果たして、彼を待ち受ける出会いや試練とは如何なるものか。 ファンタジー世界に向き合う、平凡な冒険者の物語。

勇者パーティを追放されてしまったおっさん冒険者37歳……実はパーティメンバーにヤバいほど慕われていた

秋月静流
ファンタジー
勇者パーティを追放されたおっさん冒険者ガリウス・ノーザン37歳。 しかし彼を追放した筈のメンバーは実はヤバいほど彼を慕っていて…… テンプレ的な展開を逆手に取ったコメディーファンタジーの連載版です。

神とモフモフ(ドラゴン)と異世界転移

龍央
ファンタジー
高校生紺野陸はある日の登校中、車に轢かれそうな女の子を助ける。 え?助けた女の子が神様? しかもその神様に俺が助けられたの? 助かったのはいいけど、異世界に行く事になったって? これが話に聞く異世界転移ってやつなの? 異世界生活……なんとか、なるのかなあ……? なんとか異世界で生活してたら、今度は犬を助けたと思ったらドラゴン? 契約したらチート能力? 異世界で俺は何かをしたいとは思っていたけど、色々と盛り過ぎじゃないかな? ちょっと待って、このドラゴン凄いモフモフじゃない? 平凡で何となく生きていたモフモフ好きな学生が異世界転移でドラゴンや神様とあれやこれやしていくお話し。 基本シリアス少な目、モフモフ成分有りで書いていこうと思います。 女性キャラが多いため、様々なご指摘があったので念のため、タグに【ハーレム?】を追加致しました。 9/18よりエルフの出るお話になりましたのでタグにエルフを追加致しました。 1話2800文字~3500文字以内で投稿させていただきます。 ※小説家になろう様、カクヨム様にも掲載させて頂いております。

処理中です...