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第210話:才媛たちの設計図と、未来を築く槌音
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新・中央館の建設計画が始動してから、アキオの町は、まるで一つの巨大な生き物のように、力強く、そして活気に満ちた鼓動を続けていた。町の中心部では、カイとアルトが率いる建設部隊が、ドルガン親方の指導のもと、大規模な基礎工事に汗を流している。元「荒くれ共」の男たちも、今や町の立派な労働力として、その逞しい腕力を存分に発揮していた。彼らの目には、もはや以前のような荒んだ光はなく、共に未来を築く仲間としての一体感が宿っている。
その全ての計画の起点となる中央館の一室——さながら「設計司令室」と化したその部屋では、アキオ、凛、そして新たに計画に加わったクラウディアが、巨大な羊皮紙に広げられた設計図を前に、連日熱い議論を交わしていた。
「アキオ様のこの『トラス構造』という発想、素晴らしいですわ。これならば、少ない柱で広大な空間を確保できます。学び舎の大講堂にも応用できそうですね」
クラウディアが、その青い瞳を知的な好奇心で輝かせながら言う。彼女は、王都で培った高度な建築知識を元に、アキオの常識外れなアイデアを、この世界の技術で実現可能な形へと見事に翻訳していく。
「いえ、クラウディア様のこの『採光窓』の配置案こそ、見事です。計算された角度によって、冬は暖かな陽光を奥まで取り込み、夏は涼しい風の通り道となる…」
凛もまた、旧友であり好敵手でもあるクラウディアの才能に刺激を受け、その頭脳をフル回転させていた。アキオの独創的な発想、凛の精密な理論、そしてクラウディアの応用力。三つの異なる才能がぶつかり合い、共鳴することで、新・中央館の設計は、当初の計画を遥かに超える、機能的で、そして美しいものへと昇華されつつあった。
そんな中、クラウディアは、アキオと凛の息の合ったやり取りを、悪戯っぽい笑みを浮かべて見つめていた。
「それにしても、凛。貴女がアキオ様と、これほど楽しそうに仕事をするなんて。王都にいた頃の、誰にも心を開かなかった貴女からは想像もつかないわ。何か、特別な『魔法』でもかけられたのかしら?」
「ク、クラウディア…! 余計なことを…!」
凛は、親友からのからかいに、顔を真っ赤にして俯いた。アキオは、そんな二人の様子に気づかず、「ははは、凛殿の知識は本当に素晴らしい。彼女がいなければ、この計画は始まってもいなかったからな」と、心からの称賛を口にする。その、あまりにも純粋な夫の言葉に、凛の心臓は、嬉しいような、もどかしいような、複雑な音を立てていた。
そこへ、シルヴィアが、薬草茶を淹れた盆を手に、穏やかな笑みを浮かべて部屋に入ってきた。
「皆様、少し休憩になさってはいかが? 根を詰めすぎては、良い考えも浮かびませんわよ」
彼女は、三人の熱心な仕事ぶりと、特に凛の僅かな変化を見逃さなかった。そして、設計図の一角を指差しながら、何気ない様子でアキオに尋ねる。
「アキオ、こちらの『来賓用の棟』の設計、順調かしら? ヴァルト子爵領や、いずれはエルドリアから大切なお客様がいらした時に、手狭では失礼にあたりますものね。少し…いえ、かなり広めに、そして快適に過ごせるよう、設計しておいた方がよろしいのではなくて?」
「おお、そうだな、シルヴィア! 君の言う通りだ。ここは、将来を見越して、考えられる限りの最高のもてなしができるようにしておこう!」
アキオは、妻の深慮遠謀に気づくことなく、快活に頷いた。シルヴィアは、満足げに微笑み、凛と、そしてクラウディアと、一瞬だけ意味ありげな視線を交わした。三人の才媛の間には、言葉にしなくとも通じる、確かな共犯関係(?)が生まれつつあった。
アキオの町では、今日もまた、未来を築く力強い槌音が響き渡る。その音は、様々な人々の想いと、才能と、そして少しばかりの秘密を乗せて、聖域の空へと高く、高く、響いていくのだった。
その全ての計画の起点となる中央館の一室——さながら「設計司令室」と化したその部屋では、アキオ、凛、そして新たに計画に加わったクラウディアが、巨大な羊皮紙に広げられた設計図を前に、連日熱い議論を交わしていた。
「アキオ様のこの『トラス構造』という発想、素晴らしいですわ。これならば、少ない柱で広大な空間を確保できます。学び舎の大講堂にも応用できそうですね」
クラウディアが、その青い瞳を知的な好奇心で輝かせながら言う。彼女は、王都で培った高度な建築知識を元に、アキオの常識外れなアイデアを、この世界の技術で実現可能な形へと見事に翻訳していく。
「いえ、クラウディア様のこの『採光窓』の配置案こそ、見事です。計算された角度によって、冬は暖かな陽光を奥まで取り込み、夏は涼しい風の通り道となる…」
凛もまた、旧友であり好敵手でもあるクラウディアの才能に刺激を受け、その頭脳をフル回転させていた。アキオの独創的な発想、凛の精密な理論、そしてクラウディアの応用力。三つの異なる才能がぶつかり合い、共鳴することで、新・中央館の設計は、当初の計画を遥かに超える、機能的で、そして美しいものへと昇華されつつあった。
そんな中、クラウディアは、アキオと凛の息の合ったやり取りを、悪戯っぽい笑みを浮かべて見つめていた。
「それにしても、凛。貴女がアキオ様と、これほど楽しそうに仕事をするなんて。王都にいた頃の、誰にも心を開かなかった貴女からは想像もつかないわ。何か、特別な『魔法』でもかけられたのかしら?」
「ク、クラウディア…! 余計なことを…!」
凛は、親友からのからかいに、顔を真っ赤にして俯いた。アキオは、そんな二人の様子に気づかず、「ははは、凛殿の知識は本当に素晴らしい。彼女がいなければ、この計画は始まってもいなかったからな」と、心からの称賛を口にする。その、あまりにも純粋な夫の言葉に、凛の心臓は、嬉しいような、もどかしいような、複雑な音を立てていた。
そこへ、シルヴィアが、薬草茶を淹れた盆を手に、穏やかな笑みを浮かべて部屋に入ってきた。
「皆様、少し休憩になさってはいかが? 根を詰めすぎては、良い考えも浮かびませんわよ」
彼女は、三人の熱心な仕事ぶりと、特に凛の僅かな変化を見逃さなかった。そして、設計図の一角を指差しながら、何気ない様子でアキオに尋ねる。
「アキオ、こちらの『来賓用の棟』の設計、順調かしら? ヴァルト子爵領や、いずれはエルドリアから大切なお客様がいらした時に、手狭では失礼にあたりますものね。少し…いえ、かなり広めに、そして快適に過ごせるよう、設計しておいた方がよろしいのではなくて?」
「おお、そうだな、シルヴィア! 君の言う通りだ。ここは、将来を見越して、考えられる限りの最高のもてなしができるようにしておこう!」
アキオは、妻の深慮遠謀に気づくことなく、快活に頷いた。シルヴィアは、満足げに微笑み、凛と、そしてクラウディアと、一瞬だけ意味ありげな視線を交わした。三人の才媛の間には、言葉にしなくとも通じる、確かな共犯関係(?)が生まれつつあった。
アキオの町では、今日もまた、未来を築く力強い槌音が響き渡る。その音は、様々な人々の想いと、才能と、そして少しばかりの秘密を乗せて、聖域の空へと高く、高く、響いていくのだった。
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