『王都の神童』と呼ばれた俺、職業選定でまさかの【遊び人】三連発で追放される。……が、実は「全職業のスキル」を合算して重ねがけできる唯一のバグ

よっしぃ

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第5話 え、一緒に寝るんですか? 聖騎士の防御力(メンタル)、限界突破しています

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 Sランク霜降り肉のステーキを完食した後。

 満腹になったアリシアは、ふと我に返り、真っ赤な顔でソファの隅に縮こまっていた。

「……あの、ディラン様」

「ん?」

「こ、ここには、ベッドがお一つしかないようですが……」

 アリシアが上目遣いで、部屋の奥にあるダブルサイズのベッドを見つめる。

 俺が【建築】で作ったログハウスは、あくまで「仮宿」仕様だ。寝室は一つしかない。

「ああ。俺はそこのソファで寝るから、お前はベッドを使え。レディを床で寝かせる趣味はない」

「そ、そんなわけには! 命の恩人であるディラン様を差し置いて……それに、同じ部屋で夜を明かすなんて、神聖騎士の規律(コード)に反します!」

「規律だのなんだの、堅苦しい奴だな」

 俺は安物の果実水を飲み干し、肩をすくめた。

「ここはダンジョンだぞ? いつ魔物が入ってくるかも分からない状況で、別々の部屋で寝る方が危険だろ」

「うっ……そ、それは正論ですが……」

「安心しろ。俺もお前みたいな『お子様』に手を出すほど飢えてない。……ほら、明日に備えてさっさと寝ろ」

 俺は明かりを落とし、毛布を被ってソファに横になった。

「……うぅ。お、おやすみなさいませ……」

 アリシアはモジモジしていたが、やがて諦めたのか、ベッドへと潜り込んだ。

 ◇

 深夜。

 ふと、背中に感じる「重み」と「温もり」で目が覚めた。

(……なんだ? 魔襲撃(エンカウント)か?)

 俺は反射的に身構え――そして、背後を見て脱力した。

「……すぅ……すぅ……」

 そこには、俺の背中にしがみつき、幸せそうな寝息を立てている銀髪の少女がいた。

 アリシアだ。

 いつの間にかベッドから這い出し、ソファで寝ていた俺の布団に潜り込んできたらしい。

「……おい、起きろ。ここはお前の巣じゃないぞ」

 小声で呼びかけるが、起きる気配はない。むしろ、さらに強くしがみついてくる。

「……んぅ……軽すぎるんです……」

 寝言が漏れた。

「……鎧がないと……スースーして……落ち着かない……」

(……なるほど。そういうことか)

 俺は天井を仰ぎ、深いため息をついた。

 彼女は『神聖騎士』だ。

 起きている時も、寝ている時も、常にあの重たいフルプレートメイルを着込んでいたのだろう。

 それが急にシャツ一枚の軽装になったことで、無意識に「守られていない不安」を感じ、近くにあった「熱源(おれ)」を鎧代わりに抱き枕にしているわけだ。

「……まったく。戦場では鉄壁の盾役(タンク)でも、中身は寂しがり屋のウサギってわけか」

 俺は彼女を引き剥がすのを諦めた。

 無理に剥がして、また不安で泣きつかれても面倒だ。

「……今回だけだぞ。勘違いするなよ」

 俺は誰にともなく言い訳を呟き、再び目を閉じた。

 背中に感じる柔らかい感触と、甘い匂い。

 ……健全な男子高校生の肉体には毒すぎる夜だった。

 ◇

 翌朝。

「きゃあああああああああっ!?」

 ログハウスに、鼓膜が破れそうな悲鳴が響き渡った。

 目を覚ましたアリシアが、俺と同じ布団に入っている自分に気づき、顔を沸騰させてパニックに陥ったのだ。

「ち、ちちち、違います! これは不可抗力で! 決してディラン様に破廉恥なことをしようとしたわけでは!」

「分かってるよ。お前が『鎧がなくて寂しい』って泣きついてきたんだろ」

「うぅ……穴があったら入りたいです……」

 アリシアは顔を両手で覆い、うずくまっている。

 俺は苦笑しながら、朝食の準備(またステーキだ)を整えつつ、彼女の装備一式をテーブルに並べた。

「さて。飯の前に、その『重すぎる鎧』をなんとかするか」

「え?」

「お前の成長を阻害していたのは『維持コスト』だけじゃない。その物理的な重量もだ。……少し、いじらせてもらうぞ」

 俺は白銀の鎧に手をかざす。

 管理者権限(Free-Hander)、発動。

【対象:ミスリルのフルプレートメイル】 【付与(エンチャント):『重力軽減LvMax』『自動修復』『サイズ自動調整』】

 カッ! と鎧が光を放つ。

「……よし。着てみろ」

 アリシアは半信半疑で、鎧に袖を通した。

 その瞬間。

「えっ……!?」

 彼女が驚きの声を上げた。

 ガチャリ、と重厚な金属音がするのに、動きはまるで羽毛のように軽い。

「か、軽いです! 着ていないみたい!」

 試しに背中の大剣を振ってみる。

 ブォン!!

 凄まじい風切り音と共に、ダンジョンの岩壁が豆腐のように両断された。

「……あ」

 アリシアが口をポカンと開ける。

 レベルアップによるステータス上昇と、装備の軽量化。

 二つの相乗効果(シナジー)で、彼女の攻撃力は昨日までの比ではなくなっていた。

「……私、強くなりすぎてませんか?」

「いいことだろ。これで心置きなく『前衛』ができるな」

 俺はニヤリと笑った。

 最強の矛と、最強の盾。そして規格外の支援(バフ)。

 俺たちの攻略は、ここから加速する。

 ◇

 一方その頃。王都の冒険者ギルド。

 活気に満ちたホールに、二人の人物が足を踏み入れた。

 一人は、鋭い眼光を持つ金髪の剣士。

 もう一人は、知的な眼鏡をかけた赤髪の女性魔術師。

 Sランクパーティ『暁の剣』の双璧、剣聖レオンと、大賢者ソフィアだった。

 長期遠征から帰還した彼らは、笑顔で受付に向かった。

「よう。戻ったぞ。……ディランはいるか? あいつにいい土産話があるんだ」

 レオンが快活に声をかける。

 だが。

 受付嬢は気まずそうに視線を逸らし、周囲の冒険者たちはヒソヒソと囁き合った。

「……あ、あの、レオン様……その、ディラン様は……」

「ん? どうした? またあいつ、変な魔道具の研究で徹夜でもしてるのか?」

「い、いえ……ディラン様は……三日前の選定の儀で『遊び人』になり……その……追放されました」

「……あ?」

 レオンの笑顔が凍りついた。

 横にいたソフィアの眼鏡が、キラリと冷たく光る。

「……おい。今、なんて言った?」

 ギルド内の空気が、一瞬で氷点下まで下がった。

 かつての友人が消えた。

 その事実を知った二人の『本物』の天才たちが、静かに、しかし確実に激怒しようとしていた。

(第5話 終わり)
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