有栖と奉日本『カクれんぼ』

ぴえ

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第五章:もういいよ

反保_5-4

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 ユースティティア側の推測は、イジメの部分は楓の発言により、日下部の部分は百井の発言により真実となって答えた合わせが行われた。
 唯一、少しの差異があったとすれば時任も故意的に日下部を傷つけたのだと考えていたが、百井の発言を聞いたときの反応からそれは違うことが推察された。しかし、違うからこそタチが悪かった。
 拳を降ろしたものの、反保の感情は昂ぶったままだった。そんな彼がうつむきながら、言葉を零す。
「俺は、学校に行ったことがない」
 時任の胸ぐらを掴んだまま、怒りを歯でかみ砕くように食い縛る。
「けど、お前らみたいなクソみたいな教師から教わることはないし、学校以外でも教師以外でも、尊敬できる人はいるし、色々と学ぶことができる……だから、お前らみたいな奴らが自分の人生に関わってくるなら、学校なんて行くだけ無駄だし、行かなくて良かったと思うよ」
 ぽつり、ぽつり、とそこまで言い終えた反保は顔を上げて、時任を睨んだ。
「だけど、日下部葵のように、こんなにも素晴らしい友人ができるのなら、学校に行けば良かった、とも思うんだよ」
 時任に日下部の恋愛関係を尋ねた日――反保達は日下部と同じクラスの生徒達に囲まれた。そこで生徒達はこれまでのヒアリングから反保達を信頼して、日下部葵について知っていることや自殺の詳細を隠した教師を信用していないこと、そして、第三者へ聞いてもらう為に記者会見を開くように仕向け、乗り込む策を練ってきたことを打ち明けたのだった。
「みんな怖かったはずだ」
 反保の声が記者会見の場に響く。生徒達は彼を見つめ、周囲の大人達も彼の必死の訴えに飲み込まれるように黙っていた。
「お前達からすれば、ガキが面白半分でやった無責任な行動に見えたかもしれない。でも、彼等だって怖かったんだ! こんなことして無事で済むなんて、そんな楽観的に考えてない!」
 生徒達が反保達に打ち明けたのは、日下部葵について必死で調べてくれた二人に止められたのならば、信頼した大人に間違っている、と言われたならこれまでの行動を全て諦めても良い――不安を抱え恐怖に怯えた子供から大人へのSOSだったのだ。
 そして、反保と飛田は彼等の行動を黙認した。
「逃げ出したくて、怖くて、不安でも――それでも、たった一人の友達の為に、ここにはもういない友達の為に、ここまで頑張ったんだ!」
 反保は両腕で時任の胸ぐらをつかみ直した。
「お前みたいな大人を好きになった日下部葵を、俺は哀れに思わずにいられない」
 反保の視界が自然と滲んだ。
「だけど、こんなにも素晴らしい友達をもった日下部葵を、僕は羨ましく思うよ」
 反保は時任の胸ぐらから手を離し、一歩下がると頭を下げた。
「頼むよ、先生。大人だったら、先生だったら……子供達を、生徒達を――見捨てないでください」
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