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第三章:カルーアミルク
奉日本_3-3
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アースが一色の前に姿を現したことに奉日本は少々驚いた。彼に一色が訪れる可能性を示唆したのは紛れもなく彼女ではあったが、それでも対面することはなく自身を介して接触するのだと思っていたからだ。
この時点で、アースが姿を現すのはリスクがあるのに違いない。それは彼女自身も理解しているはずだ。それでもそれを実行したのは、理由がある。しかし、それはきっと奉日本がいくら思考を巡らせても届かないのだろう、と思うと今はこの場を彼女に譲るべきだと思い、静観することにした。
「――生きていたんですね」
「彼に匿ってもらっていたんだ。いきさつは省くが、今はそれよりも天使を止める方法に興味があるんじゃないか?」
「何か策でもあるんですか?」
「あぁ、もちろん。一色、キミの協力が必要不可欠だがね」
アースの口調から何かしたの策があるのは明らかだった。そして、その為には一色、という駒が必要なのだろう。彼女にとって天使が一番のリスクである。そして、一色も天使を止めたい。つまり二人の共通の敵であることには違いない。
「聞かせてもらっても?」
「天使を排除する方法について最も適した策はないかと考えてきた。あいつがもし私の生存を知ったならば、『レシエトメンテ』を開発し、対策も作れる私が邪魔になるから必ず殺しにくるからな」
「だから、自殺に見せかけて逃げたんですね」
「そうだ。そして、そのときの策を用いて再度、天使を騙す」
そこでアースは自身が死んだ映像を生成し、カメラ機材を制御しその映像を差し替える方法を告げた。
「私としては高良組を活用する方法もあったが、こちらは天使と戦わせても勝率は五十パーセントぐらいだ。それよりも、キミが協力してくれるのならばその方が勝算は高い」
「その映像というのはどのような?」
「私が天使の策を読むと、キミを陥れる為に彼は虹河原を利用するだろう。確実な勝利の為、肉体面と精神面で攻めたいからだ。キミに虹河原を殺させれば精神面で追い込める。もしくは、虹河原の攻撃で一色がダメージを負えば良い。死んでくれたら最良だ。相打ちも視野に入れるだろう。つまり、どちらに転んでも天使にとっては良いんだ。だから、『虹河原がキミを射殺する生成映像』を、監視カメラをハッキングして差し替える。そうすれば死体の回収に天使が赴くだろう。そこをショットガンで吹き飛ばす」
「天使を殺害しろと?」
「天使は何度も隙を作れるほど甘い人間ではない。その映像で生み出した隙をついて、一撃で仕留めないと彼は逃げて体制を立て直す。それぐらいは想像に容易いだろう?」
「…………」
一色の沈黙は肯定を意味していた。
「一色、キミが天使を逃すようなことがあるならば、天使は映像のトリックに気づくだろう。それはすなわち、私が生きていることに気づくことにもなる。そうすれば、彼は『レシエントメンテ』を創り、その対抗策も創れる私を消すことに注力するはずだ。私は残念なことに頭しか使えない。誰かを利用して戦うことしかできない。天使は頭脳も戦闘能力も高い。頭脳では私が上回っていても総合力では負けているんだ。仕留める機会を逃すことは私の死につながる」
アースと一色の会話に対し、奉日本は静観を貫いた。この状況で決定を下せるのはこの二人だけだ。しかし、話を聞いている限りではアースの言っていることに説得力がある。
一方で、一色が天使を殺害したくはない気持ちも読みとれた。しかし、そんな余裕を天使に対して持つことは敗北に直結する。それに、一色の過去も知っている奉日本としては、今はその過去を捨ててでも平和を取り戻す為に、一時的にシミガミ時代の自分を呼び戻すことになるのだろう、と思っていた。初めて人を殺すのではない。これまで殺した経験のある人間が、その数を一つだけ増やすだけだ。
しかし、このとき奉日本は一色を侮っていたことを解らせられることになる。
「……解りました。アース博士、映像を使った策に乗らせてもらいます」
「そうか」
「ですが、その映像を『俺が虹河原を殺害する映像』にすることはできますか?」
一色の発言にアースは目を見開いた。そのような彼女を見るのは奉日本は初めてだったので驚いたが、何故そのような反応を見せたのかは解らなかった。
「一色――キミは本当な優秀だな。その案が頭になかったわけではない。ただ長いスパンのプロジェクトになるから避けただけだ。勝率も最初の案よりもわずかに劣る。それに――高いリスクを負うのはキミ自身だぞ?」
この時点で、アースが姿を現すのはリスクがあるのに違いない。それは彼女自身も理解しているはずだ。それでもそれを実行したのは、理由がある。しかし、それはきっと奉日本がいくら思考を巡らせても届かないのだろう、と思うと今はこの場を彼女に譲るべきだと思い、静観することにした。
「――生きていたんですね」
「彼に匿ってもらっていたんだ。いきさつは省くが、今はそれよりも天使を止める方法に興味があるんじゃないか?」
「何か策でもあるんですか?」
「あぁ、もちろん。一色、キミの協力が必要不可欠だがね」
アースの口調から何かしたの策があるのは明らかだった。そして、その為には一色、という駒が必要なのだろう。彼女にとって天使が一番のリスクである。そして、一色も天使を止めたい。つまり二人の共通の敵であることには違いない。
「聞かせてもらっても?」
「天使を排除する方法について最も適した策はないかと考えてきた。あいつがもし私の生存を知ったならば、『レシエトメンテ』を開発し、対策も作れる私が邪魔になるから必ず殺しにくるからな」
「だから、自殺に見せかけて逃げたんですね」
「そうだ。そして、そのときの策を用いて再度、天使を騙す」
そこでアースは自身が死んだ映像を生成し、カメラ機材を制御しその映像を差し替える方法を告げた。
「私としては高良組を活用する方法もあったが、こちらは天使と戦わせても勝率は五十パーセントぐらいだ。それよりも、キミが協力してくれるのならばその方が勝算は高い」
「その映像というのはどのような?」
「私が天使の策を読むと、キミを陥れる為に彼は虹河原を利用するだろう。確実な勝利の為、肉体面と精神面で攻めたいからだ。キミに虹河原を殺させれば精神面で追い込める。もしくは、虹河原の攻撃で一色がダメージを負えば良い。死んでくれたら最良だ。相打ちも視野に入れるだろう。つまり、どちらに転んでも天使にとっては良いんだ。だから、『虹河原がキミを射殺する生成映像』を、監視カメラをハッキングして差し替える。そうすれば死体の回収に天使が赴くだろう。そこをショットガンで吹き飛ばす」
「天使を殺害しろと?」
「天使は何度も隙を作れるほど甘い人間ではない。その映像で生み出した隙をついて、一撃で仕留めないと彼は逃げて体制を立て直す。それぐらいは想像に容易いだろう?」
「…………」
一色の沈黙は肯定を意味していた。
「一色、キミが天使を逃すようなことがあるならば、天使は映像のトリックに気づくだろう。それはすなわち、私が生きていることに気づくことにもなる。そうすれば、彼は『レシエントメンテ』を創り、その対抗策も創れる私を消すことに注力するはずだ。私は残念なことに頭しか使えない。誰かを利用して戦うことしかできない。天使は頭脳も戦闘能力も高い。頭脳では私が上回っていても総合力では負けているんだ。仕留める機会を逃すことは私の死につながる」
アースと一色の会話に対し、奉日本は静観を貫いた。この状況で決定を下せるのはこの二人だけだ。しかし、話を聞いている限りではアースの言っていることに説得力がある。
一方で、一色が天使を殺害したくはない気持ちも読みとれた。しかし、そんな余裕を天使に対して持つことは敗北に直結する。それに、一色の過去も知っている奉日本としては、今はその過去を捨ててでも平和を取り戻す為に、一時的にシミガミ時代の自分を呼び戻すことになるのだろう、と思っていた。初めて人を殺すのではない。これまで殺した経験のある人間が、その数を一つだけ増やすだけだ。
しかし、このとき奉日本は一色を侮っていたことを解らせられることになる。
「……解りました。アース博士、映像を使った策に乗らせてもらいます」
「そうか」
「ですが、その映像を『俺が虹河原を殺害する映像』にすることはできますか?」
一色の発言にアースは目を見開いた。そのような彼女を見るのは奉日本は初めてだったので驚いたが、何故そのような反応を見せたのかは解らなかった。
「一色――キミは本当な優秀だな。その案が頭になかったわけではない。ただ長いスパンのプロジェクトになるから避けただけだ。勝率も最初の案よりもわずかに劣る。それに――高いリスクを負うのはキミ自身だぞ?」
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