有栖と奉日本『千両役者のワンカラ―』

ぴえ

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第七章:Dots and Lines

反保_7-2

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「さっきから何してんだよ!」

 反保は鼻血を流す飛田のぽかん、とした表情に対して真っ直ぐに苛立ちをぶつけた。

「すまない、俺が弱くて不甲斐ないばかりに――」

 勘違いをしている発言を繰りだそうとしていた飛田に対して、反保は再び頭突きをして言葉を止める。

「痛っ」
「見当違いなことばっかり言ってんじゃねぇ。俺が苛立っているのは――」

 反保は目を紅くして感情を露わにして伝える。

「本当はもっと強いくせに馬鹿みたいな戦い方をしてるからだ馬鹿!」

 その目の色で語る言葉に嘘はない。それは飛田も解っていた。

「俺が強い?」

 飛田が首を傾げながら言うが、それがまた反保を苛立たせた。それはわざわざ自身を事例に出してまで伝えなきゃいけないことだったからだ。

「俺が何回お前にボコボコにされたと思ってんだ。何回も有栖さんや一色さんと手合わせした俺が、お前は強い、と感じてんだよ! 少なくともあんな双子なんかよりずっと強い。それにお前が弱かったら、お前に負けた俺がもっと弱いことになるだろ! そんなお前があんな情けない戦い方すんな!」
「…………」

 反保の真っ直ぐな怒りを飛田は受け止めたあとに思わず笑ってしまう。

「俺が強い、か。そっか、俺、お前をボコボコにしてんだもんな」
「何笑ってんだよ、腹立つな」
「そっか、そうだよな。俺が弱かったら聖先輩はこの場を任せないし、それに――イチさんの部下で色々教わってたお前が言うなら間違いないか」
「少しは解ったのか――」
「肩借りるぞ」
「え?」

 そう言った飛田が反保の肩に手を掛けるとそのまま飛び出し、いつの間にか接近し、襲いかかってきた双子を素早い蹴りの二連撃で撃退した。蹴りは双子の腹部に炸裂し、距離が離れた二人は苦い表情を見せて、飛田を睨んでいる。

「悪い、ここからが本調子だ」
「遅いよ、馬鹿」

 反保も立ち上がり、飛田の横に並ぶ。

「あと、作戦変更」
「え? どんな作戦だよ?」

 反保の提案に飛田は文句を言わず、聞こうとした。

「お前の方が経験豊富なんだから、サポートだ」
「お前が前、俺が後ろってことか?」
「あぁ、俺が絶対に分断させる。二対一なら厳しくても一対一なら負けないだろ」
「二対一でも余裕――って言いたいところだけど、これまでの体たらくでは説得力ないよな。まぁ、一対一なら確実に負けない。そっちは大丈夫か? 前衛は被弾率が高いぞ」
「ちょっとの怪我なら大丈夫だ、知ってるだろ?」

 血が流れている自身の肩を叩きながら、反保は不敵に笑ってみせた。
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