有栖と奉日本『千両役者のワンカラ―』

ぴえ

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第十一章:緞帳を後ろに

京_11-1

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 仏壇の前では虹河原が静かに手を合わせて、目を瞑っていた。対話、というよりは報告をしているのだろう。彼にはきっと話したいことが多くあるのだろうから、と京は虹河原の背中を見つめながらそう思った。

 しばらくすると、虹河原が目を開き、立ち上がる。

「ありがとうございました」
「言いたいことは全部言えた?」
「全部は難しいですね。伝えたいことが多すぎます。それに、これからも増えていくでしょうから」

 虹河原の顔に少々の疲れが見えるが、それでもどこか充実感のあるようにも見える。

「警察は大変そうだものね」
「ユースティティアもでしょう。お互い様ですよ」

 天使の逮捕から数ヶ月経過した。季節は厳しい寒さを乗り越え、陽光は暖かさを帯び始めて、春の訪れを感じさせている。
 ユースティティアでは未だに天使が証言したことの裏取りや警察への信頼を失った市民からの依頼も多くなっており、対応に追われている状態だった。
 警察もまた失った信頼の回復に努めていた。嫌がらせに近い通報も一時に比べれば少なくなったがそれでも未だに続いている。だが、信頼があったのにも関わらず、天使の工作により理不尽に辞めた者も復職しつつあり、内部改革は少しずつだが形になりそうではあった。ちなみに、真木も復職している。

「京さんはこのままユースに在職するのですか?」

 虹河原の問いに京は笑う。

「天使の件が終わって、一段落したら退くつもりだったんだけどね」
「一段落がこない、と」
「そういうこと。部下も増えるし、気になるしね。後進が育つか代理が来るまでかな?」
「京さんほど優秀な人の代わりはそう簡単に見つからないでしょう。可能であれば警察に戻って来て欲しいぐらいです。こちらも贅沢なことが言えないほどに人材不足ですから」

 警察への影響は人材の採用活動にも影を落としていた。現時点の内定者の数も希望者数も過去最低である。その結果、これまでは大学卒業者を中心に行っていた採用活動を高校卒業者の採用枠を増やすと共にインターンも実施する方針となっていた。それは、変わろうとする警察の活動の一環ではあったが――

「良い活動だと思うけどね。インターン制度」

 京の笑みが何を意味するのかは察しながら、虹河原はため息をつく。このインターンが彼に想像もしていなかった悩みをもたらしていることになるとは微塵も考えていなかった。

「がんばってみますよ。色々と」

 虹河原はそう言って笑ってみせた。
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